挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
非公式部活動ALM 作者:泉野 六
132/133

クラスの事件

 人を募っての意見調査の効果はすさまじかった。二時間ほどで千人ほどに連絡ができた。まだ一割ほどだったが、文化祭まで残り一日ある。朝から作業に当たってくれる者もいるらしく、おそらく全体の八割は意見が聞けるめどがついた。
 あまり遅い時間まで電話をかけ続けることはできなかったため夜の八時で一度解散となった。
 そのまま泊まっていってもよかったのだが翌日の準備もあるため湧哉は古野濱、荻とともに奥崎の車で寮まで送り届けてもらった。前日に奥崎ととも現れたせいなのか時間が遅いせいなのか、今回は寮の前に記者の姿はなかった。

 意見集めも軌道に乗り、なぜかはわからないが記者も消えた。いろいろなことが好転して順調だった。そう、順調だったのだ。
「なんだよ、これ……」
 翌日になって湧哉が教室を訪れるとそこはひどいありさまだった。教室で作られていた文化祭の屋台。それがめちゃくちゃに壊されていたのだ。先に登校していたクラスメイト達が壊された箇所を修復していたが、これでは一から作り直したほうが早いような気さえした。
「畑原君……」
「澤! どうしたんだよこれ!?」
「昨日私が最後に教室を出たんだけど、その時は問題なかったの。だけど、朝来たらこんな状態で……」
 文化祭まで残り一日。先週からこつこつ準備していただけに屋台の出来はよかった。それだけにクラスの落胆具合は大きい。
「とにかく、急いで修復するけど、どこまでできるか……。みんなのモチベーションも下がり切っちゃってるし」
「誰がこんなこと……」
「わからないけど、私が帰った後だと思う。朝一で来た時にはこうなってたらしいから」
 一体だれが何のために。目的がわからない。こんなことをすれば学内で問題になることはわかり切っている。それでもなお実行した。よほどの恨みがあったのか、やらなければならない理由があったのか……。
「ちょっと、これ何なの!? めちゃくちゃじゃん!」
「あ、紗希。おはよう」
「詠歌、これどうなってんの?」
 美術室でのことがあってから高坂は文化祭の準備にも積極的に参加するようになっていた。そのせいか態度には出していないが高坂の声からは怒りが伝わってくる。いい変化ではあるが教室の有様を見ると素直に喜べない。
 そんな三人の下へクラスメイトが数人やってきた。
「おい委員長! 昨日はほんとに何もなかったのか!?」
「最後に残ってやることがあるとか言ってたけど何してたんだよ」
「私は井ノ瀬先生に報告があるから職員室に行ってそのあと荷物を取りに戻ってきたけど何もおかしいところは……」
「ほんとにそうなのか? 何かあったんじゃないのか?」
「わ、私は何もしてないよ!」
 このクラスメイト達は澤を疑っているようだった。だが昨日教室に最後まで残っていた澤が疑われることはわかるが理由がない。そんなことは誰しもがわかっているはずだ。
「ちょっとあんたたち。このクラスで一番忙しく動き回ってる詠歌がそんなことするわけないでしょうが!」
「お前は黙ってろよ。最初は全く手伝わなかったくせに急に手のひら返しやがって。どうせ猫かぶってるだけだろ!」
「はあ!? そういうあんたこそいい子ぶってるだけなんじゃないの!!」
「おいおいちょっと落ち着けって! こんな時に!」
 一触即発の雰囲気を止めようと湧哉が両者を制す。澤と高坂の関係は解消したようだったがクラス全体と高坂はそうはいかないらしい。
「今は犯人捜しをするより屋台を直そう。文化祭は明日だ。時間は無駄にできないだろ?」
 高坂と数人のクラスメイト達は互いをけん制するように距離を取ると高坂は自分の机へ、他の者は屋台を直しに戻っていった。
(まずい雰囲気だな……)
 クラスの溝は消えたものと思っていたが、今回のことでまた深くなってしまったようだ。ここから巻き返さなければならないことを考えると湧哉は頭を抱えるしかなかった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ