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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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悠の思い

 悠は三十分ほどで教室に戻ってきた。
「参加枠には通ったよ」
「一発で行けたのか?」
「うん。決まった後に何人かから参加権を譲ってくれって頼まれてたら少し遅くなっちゃって。早く記念館に行かないと」
「ああ……そうだな」
「ハタハタ、どうしたの?」
「討論会、ほんとに大丈夫なのか?」
「どういうこと?」
「門紅集について門白から聞いたんだ。いろいろと……」
 結の話によれば門紅集の話術は相当なものらしい。渡ヶ丘の歴史を大きく変えたともいえる存在だ。そんな相手にいまだ準備不足の状態で渡り合うことができるはずがない。
「集めた意見に取り壊し反対が多ければいいだろうがまだまだ終わりは見えてない。文化祭まであと三日しかないのに全部こなせるのか?」
「……」
「お前のことだから大丈夫だとは思うし俺がこんなこと言うのはおかしいけどさ―――」
 湧哉はその言葉を発する前に大きく息を吐いた。
「―――これはお前の自己満足のためにやってるんじゃないよな?」
 悠の策は成り立っているが、現状ではそれを成功させるには時間が足りない。そのために湧哉や奥崎、古野濱の手を借りているわけだが、それでもやはり時間が足りない。それでも焦らないのは他にも何か策があるのか。それとも始めから終わらないことがわかっていたからなのか……。
 教室は文化祭の準備をするクラスメイト達のにぎやかな声が響く。そんな中で悠は小さくつぶやいた。
「自己満足か……確かにそうかもね。集兄について回ったあの校舎での思い出は僕にとっては宝物。生徒会長として活躍する姿はヒーローだったよ」
 懐かしむその表情はどこか楽しそうだった。だが次の瞬間には無表情になってしまった。
「だからこそ旧校舎の取り壊しに関わってると知ったときは信じられなかった。何も話してくれなかったことを恨んだこともあるから今回の討論会が報復かって言われると否定はできない」
「お前の本当の目的は復讐?」
「いや……。どうなんだろう。実は自分でもよくわからないんだ。記念館を残したいっていうのはほんとだし本気でそう思ってる。でも、その理由が思い出を守りたいからなのか、集兄への当てつけなのか……。そこがはっきりわからない……」
「じゃあ意見集めの数が非現実的なのは」
「別に、無茶をやってるわけじゃないよ」
「でも終わる見込みはないだろ?」
「確かに、“全部”を終わらせることは、難しいかもね……。でも全体の四割弱だけどそのうち九割が取り壊しには反対だよ。これだけでも半数近くが反対だってことになる。これならそれなりに打撃を与えることはできるはずだよ。討論に勝たなくてもいいんだ。反対が多いのに取り壊しを強行したってことが多くの人に知らせることができればね」
「それは……」
 それはただの嫌がらせだ。喉元まで出かけた言葉を湧哉は飲み込んだ。悠に普段の余裕はなく、いつになく弱弱しく見えたからだ。だが飲み込んだ言葉は湧哉の中で声を上げる。取り壊しの話はもう進んでいる。ならば取り壊しを阻止するためにはそれなりの結果が必要だ。討論会で成果を残さなければそれを覆すことはできない。それでは、今行っていることは一体何のためなのか? 無駄な抵抗? 独りよがり? このままではどう転んでも悠の自己満足に終わってしまうことになる。
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