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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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前も後ろも

 湧哉は駅までの道を走る。その距離は長いものではない。むしろ短い。走れば五分もかからない距離だろう。教頭とのときには気持ちに踏ん切りをつけての事だったが、今回は突然だ。しかもほとんど初対面という知らずの他人に追い回されている。湧哉の頭の中は色々なことがごちゃ混ぜになっていた。
(なんで俺がこんな目に! 誰だよ日曜の事話したやつは! ってそんなこと言ってる場合じゃないか。でもどうするんだよこの状況……!)
 後ろを振り返ると記者の男はまだ追いかけていた。しかし、徐々に距離は離れている。初老に片足が掛かっている者に学生の足についてくるほどのスタミナはないのだろう。
(このまま行けば振りきれるか? いやでもまた寮の前で待ち伏せされてたらなんの意味もないぞ……。ええいとにかく駅まで行こう!)
 そのまま走り続け、駅ロータリーに到着した。まだ時間が早いせいで人の数はまばらだった。これではすぐに見つかるだろう。再び記者の位置を確認するとだだいぶ距離は離れていた。50メートルほどだろうか。記者は相当疲れたのかだいぶ息が上がっているようだ。肩が上下しているのがこの位置からでもわかる。だが諦める様子はなくこちらに向かってきていた。
(駅の向こう側まで行けばどこに行ったか分からなくなるかもな)
 湧哉はロータリーを抜け、駅の階段に向かった。階段横のエスカレーターに飛び乗るとそのまま階段を駆け上がり改札のある二階へとたどり着いた。
(よし、あとは!)
 そのまま反対側の階段を下れば記者を巻くことができる。
 湧哉が足に力を込めたその時だった。今から向かおうとしていた階段からある男が顔を覗かせた。
「う、嘘だろ……?」
 思わず言葉が漏れる。階段から顔を出したのは岩木だった。駅周辺はどちらの出口もそれなりに発展している。向う側から岩木が出てきたとしてもなんの不思議もないのだが、今の湧哉にはそれが信じられなかった。
 岩木は湧哉の顔を見ると最初は少し驚いたような仕草をしたが、すぐにニヤリと嫌な笑みを見せた。
(なんでこのタイミングなんだよ!)
 湧哉は踵を返した。階段下を見ると記者がエスカレーターに乗ったところだった。湧哉はそれならと階段を駆け下り始めた。
「おい! お前!」
 すれ違いざまに記者が声を出したがそんなものにかまっている時間はない。今岩木に絡まれれば最悪の事態だ。
(このまま寮まで走るか? いやでも岩木先ぱ……ああもう岩木でいいだろあんな奴! 岩木は元野球部だし俺の足じゃ追いつかれるかも)
「おいぃ!! 畑原ぁ!!」
 階段の上からものすごい声が聞こえたが振り返らない。その時間が惜しい。と、ここで新たな人物が。
「あれ? 君は」
(こ、今度は誰だよ!!!)
 声を掛けてきたのは喫茶店『MANNER』の雇われ店長(奥崎談)だった。
「そんなに慌ててどうしたんだ?」
「いやもうなんかいろいろぐちゃぐちゃでわけわかんないんですよ!!」
「畑原ぁ!!」
「……何とかく状況はわかったよ。こっちへ」
 岩木の遠吠えで状況把握した店長は素早く湧哉を誘導した。
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