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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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奥崎の知人

「一つ空けてくれって言われてもな―――」
「先生、喫茶店で部屋の要求をするなんて意味が分からない」
「―――元々一つしかないんだからその言い方はおかしいだろ?」
「な、なに!?」
 阿良田は度肝を抜かれたようであまりの驚きに体を震わせた。
「ど、どういうことなんです!」
「まあ詳しいことは後にしてとりあえず行くぞ」
「はいはい、それじゃあ四名様ご案内だ」
 湧哉たちは店員に連れられ店の奥へと通された。

 通されたのは店の奥だった。事務所の戸の前を通り抜けたさらにその先へ。そこにあったのはなんの変哲もない部屋。まだ真新しい畳、季節にはまだ早いこたつに小さめの冷蔵庫と箪笥が置かれていた。キッチンはなかったが店のものを使っているのなら問題はないだろう。とにかく明らかに何者かの生活感があった。
「この部屋って誰か住んでますよね……」
「ああ、ここは俺の部屋だ」
「え!?」
「て、店員さんの? 私たちが使っちゃっていいんですか?」
「ああ。ダメだって言ったって、聞くようなたまじゃないからな」
 店員はチラッと奥崎に視線を向けると奥崎はにやりと笑った。それを見た店員はやれやれと手を上げた。
「まっ、部屋の中を荒らしさえしなければどう使ってもらっても構わない。もし何かオーダーが必要なら表に来てくれ。そっちの駄賃はいただくけどね」
「ああ。悪いな」
「はいはい。そんじゃ俺は表に戻るから何かあれば呼んでくれ」
 店員は戸を閉めて出て行った。
「あの人って……?」
「あいつはここに雇われ店長みたいなもんだ。住み込みでここで働いてる」
「店員さんと奥崎先生って知り合いだったんですね。ここを紹介してくれたのもそれがあったからなんですね」
「あいつはまあ……高校時代の同級生だ。渡ヶ丘に赴任してから再開したんだ」
「高校の同級生と再会なんてロマンティックですねー」
「いや、そんなにいいもんじゃないぞ。昔のむず痒い思い出を掘り返されたりするからな」
「その話って聞かせてくれたり―――」
「なんだ?」
「―――しませんよね……」
「とにかく、有名人の畑原もここなら周りに気にすることもないだろ? しばらくはここを私たちの活動の場にしよう」
「ALMの活動をここで? あの店員は俺達がここに来た理由を聞きませんでしたけど信用できるんですか?」
 そういえば店員は奥崎がここに来た理由を聞かなかった。
「あいつは信用できる。それは私が保証する。なんならこの仕事をかけてもいいぞ」
「しばらく会っていなかったのに?」
「ああ」
 奥崎の自信は確かなものらしく阿良田の質問にも即答で答えた。
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