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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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煽りの大将

 購買に向かうまでには幾人か話を聞いてきた者いたがクラスで話した以上のことを口にすることは話さなかった。だが、校長が話していた生徒、それが湧哉だと全校が知っていることは嫌でもわかった。
「すっかり有名人だね」
「だからってどこに行っても声を掛けられたんじゃ堪らない」
「時間が経てば皆興味を無くすよ」
「だといいんだけど」
「文化祭で忙しくなるしおとなしくしてれば皆忘れるでしょ? っていうかそんなに気になるもんかな?」
「全校で六百人弱いるからね。それだけいれば話を聞いてくる人もいるよ。逆に気にならない人もいるでしょ? クラスでだって机を囲まれたけど全員がそうしたわけじゃないし僕らみたいに気にならない場合だってある」
「私たちは少し気になってるけど。ねえ、澤ちゃん?」
「わ、わたし? うーんと、それはまあ、気にはなる、かな」
「ほら、気にならないほうがおかしいんだって。直接聞くか聞かないかってだけで」
「え? じゃあ僕がおかしいってこと?」
「まさか、あんた全く関心なかったの?」
「ハタハタが悪ふざけであんなことするとは思ってないからね。何か理由があったんでしょ。だったら別に聞く必要もないよ」
「私にはあんたのその感覚はわかんないわ……」
「まとめるとハタハタは信用できるっていうことかな」
「信用できるってことは私もわかるんだけどねえ」
 結は頭を掻きながら同意するも、悠の言うことをすべては理解できなかったらしい。似合わない難しい顔をしていた。
「ってほら。またまたこちらに向かってくる人がいるみたいだけど」
 悠の視線を追うと購買から出てくると明らかにこちらに向かって歩いてくる生徒の一団がいた。ある生徒を先頭に後ろにぞろぞろと坊主頭の生徒が続いている。坊主頭にするのは野球部ぐらいのものだ。だから後ろにいるのは野球部員だとわかった。問題は先頭の生徒だった。野球部と比べても体格の良さが目立つ。それは先日、クラスメイトの西谷と言い争っていた岩木だった。岩木はこちらに睨みを利かせながらどんどん近づいてくる。嫌な汗が背中をつたう。
「よお」
 岩木は湧哉たちの前で立ち止まるとまるで知り合いであるかのように声を掛けてきた。
「こりゃ有名人の畑原湧哉君じゃないの。いやーやっぱり本物はオーラが違うなあ。お前らもそう思うだろ?」
「は、はい」
 後ろの野球部たちは返事は切れが悪い。岩木より体は小さいが湧哉や悠よりは大柄だ。そんな彼らは肩を小さくしてしまっていた。野球部内でも全員が西谷のような態度をとれるわけではないことが伺えた。彼らは嫌々岩木に付き合わされているのだ。
「俺に何か用ですか?」
「いや別に。ただ有名人さんには挨拶しとこうと思ってよ。なんせ、悪徳教頭を倒した正義の味方様だからな。それともそりが合わなかった共犯者だったりしてな!」
 岩木の振る舞いには悪意が満ち溢れていた。湧哉のことを馬鹿にしたようなその口調にユウ二人と澤の雰囲気もピリピリとし始めていた。
「そんな言い方―――」
「待て」
 澤が抗議の声を上げようとしたが湧哉はそれを遮った。前回の事から岩木が暴力を振るうことになんの抵抗もないことはわかっていた。もし、変な気を起こされてここで暴れられでもしたら。湧哉一人ならまだしも悠、それに結と澤の女子二人もいる。怪我でもさせようものなら大変なことになってしまう。
「んん? なんだ? なんか言ったか? 言いたいことがあるならはっきり言えって」
「俺達購買に行―――」
「それじゃあ言わせてもらうけど―――」
 何も起こらないうちにここから離れようとした湧哉の言葉を今度は悠が遮った。そして……。
「―――あなたはお山の大将だ」
 悠の言葉に岩木は顔を歪ませた。
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