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非公式部活動ALM 作者:泉野 六
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会見

 昼休み、校舎内を歩き回る生徒は少なかった。何故なら全校生徒は教室で待機していたからだ。会見は丁度昼休み帯に行われるらしく、生徒及び教員は教室、または職員室で会見の時を待っていた。テレビ画面には既に会見会場の映像が映っていたが、そこに映るのは記者たちの頭ばかりで会見に参加するはずの校長や教員の姿はまだなかった。
「思ったより報道関係者が集まってるんだね」
 画面を見た悠の感想は驚いたようにも聞こえるが本人の雰囲気のせいで実際はどう思っているのかはさっぱりわからなかった。
 教室の生徒たちは各々話をしながらも時折テレビを見ては会見が始まらないか確認をしていた。事前に集会があったせいで生徒も今回の会見には関心を持っている者が多い。そんな中で湧哉は居心地の悪さを感じていた。校舎内に入り奥崎たちと別れてからも生徒からの視線を感じた。すれ違う生徒たちは湧哉の顔を見るとこそこそと声を潜めた。教室に着いた際は一瞬教室内が静まり返るということまであった。今もチラチラとこちらを窺う視線があった。
「はあ……」
 思わずため息が零れる。朝のような直接的なことよりもこうして影でこそこそとされる方が気がめいる。会見をするほどの大事ということもあって湧哉に直接聞いてくる者はいなくなったが自分の知らないところで噂が広がっているのかと思うと気持ちが悪い。
「そろそろ始まるみたいだよ」
 その言葉に湧哉テレビへと視線を向けた。マイクが置かれた席に校長と田島が現れたところだった。他にも二人の教員並ぶが顔を知っているだけで湧哉は面識がなかった。教員一同が一礼し席に着くと田島が会見の始まりを告げた。
『この度はお集まりいただきありがとうございます。それでは始めさせていただきます』
 カメラのフラッシュが画面内でチカチカと光った。それが止むと今度は校長が口を開いた。
『今回はある報告があり、会見を開かせていただきました。それは我が渡ヶ丘高等学校の職員が不祥事を起こしたことであります』
 会見場からはわずかだがどよめきが聞こえる。先に話を聞きつけていた学校に来た記者たちもいたが、そうでない者もいるようだ。一方、事前に知らされていた生徒たちはそのようなことはなく静かに行く末を見守っている。
『職員の名はいぬい 重次しげつぐ。役職は教頭でありました。彼は校舎内にカメラを仕掛け生徒を盗撮しておりました。証拠の写真も見つかっております』
 さすがに今回は教室もどよめいた。教頭への批判的な言葉が飛び交う。
『本人は既に警察に出頭しており現在は取り調べを受けております。しかしながらそれを見抜くことができなかった私にも責任がございます。生徒並びご家族の方々に深くお詫び申し上げます』
 校長が立ち上がると並んで座っていた教員たちも立ち上がり深く頭を下げた。その姿をカメラが大きな光を発しながら撮影する。
『これからはこのようなことがないよう職員一同精神誠意、職務を果たしたい所存でございます』
 フラッシュ音が鳴り響く中で校長は頭を下げたまま絞り出すような声でそういった。しばらく頭を下げた後、校長は他の教員たちと同時に頭を挙げると再び椅子に腰を下ろした。
『何か質問があればできる限りお答えしたいと思います』
 その後は記者たちの質問の時間となった。校長や教員たちの責任を問う者や、教頭の人物像について様々は話が飛び交った。
『それでは今回の件はどのような経緯で発覚したんですか?』
 ある記者の質問が湧哉の体を凍り付かせた。
『お恥ずかしい話ですがこのことには職員は誰も気が付くことができませんでした。名前は控えさせていただきますが、このことはある生徒が明るみに出したしだいです』
 校長の言葉により教室中の意識が湧哉集まった。あからさまに顔を向ける者、こっそりとこちらを盗み見る者。ユウ二人も思わずこちらを顔を向けているほどだった。誰が、とは言わなかったがこの会見を見ている生徒のほぼ全員が湧哉のことを思い浮かべているだろう。
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