9 授業参観
「何。授業参観?」
ウルキオラは織姫の言葉に振り返った。
「うん。明日ね。行くの?」
「当たり前だ。今回は心春も来てもいいと言っているんだろう?病院は一瞬閉めれば問題ないだろ。」
「そうだけど...。」
「何だ。俺が行ってもいけない理由でもあるのか?」
ウルキオラは目を輝かせているので織姫は諦め、もう何も言わなかった。
「おっはよ~シ~ン!あれ?昨日と変わらずテンションひくいねぇ~。」
シンは重い雰囲気で机についている。昨日よりも落ち込んで見える。
「どしたの。メールくれたじゃん。ふっきれたんだろ。」
「.....今日が何の日か知っているか。クソ花。」
「雪花です!あ?今日って....ああ。授業参観.....って!授業参観!?」
雪花の全身の力が抜けた。ヘナヘナと自分の椅子に座る。
「ま、まさか....お前の父ちゃんと母ちゃん来る....?」
「心春が拒否しなかったからな...。来る。」
「げぇぇぇぇ!??マジかよ....。」
雪花が絶句しているのには訳があった。
シンたちが小学1年生のときだった。その日は子供たちが待ちに待った授業参観の日だった。授業が始まると共にあの夫妻が現れ、子供の母親はウルキオラにみとれ子供をまったく見ず、また子供の父親は織姫にみとれ、あげくのはてにはクラスの全員がこの夫妻に心を奪われてしまった。その担任は女の人で完全に目がハートマークであった。結果、授業がまともにできずに終わってしまった。心春は気付いたのかわからないが授業参観にもう二人を呼ばなかった。それでも中学校にあがった時もう大丈夫だろうと呼んだが結果は全く同じであった。
「なんで呼ぶんだよ!?中学の時なんか、隣のクラスからも見に来る親がいて大変だっただろうが!もう俺ら高校生だぜ?中学の頃より悪くなるって!」
確かに歳が上がるごとに異性を気にするのが人間である。あの二人にいろんな虫がたかるのは目に見えている。
「俺にあの人を止められる訳が無い。お前がいけ。ゴミ花。」
「ゆ~き~ば~なでーす!!俺にできるか!死んだほうがマシだ!ボケ!」
「なら騒ぐな目障りだ。」
「何騒いでるの?二人とも。」
不意に心春が現れた。雪花はビックリしすぎて椅子から落ちた。
「いやいや...あのねぇ...心春ちゃん。なんでもないのよ...?ホラ。今日授業参観だから舞い上がっててさ。」
「そうなの?今日ね。お母さんもお父さんも来るんだって!ねぇ。シン?」
「あっ...そうだな。」
シンはぎこちない返事をした。その時黒崎が現れた。
「おーっす!」
「あっ。黒崎君おはよう!ねぇ。黒崎君の両親は今日来る?」
「ん?ああ。親父だけな。まぁ俺のためじゃねぇけど。」
(俺のためじゃない....?)
シンは不思議に思ってから思いきり睨んでやった。
なにはともあれ。時間は進むわけで...。
昼休み
「うわ~次か~もう俺絶対寝る!起こすなよ!シン!」
「貴様。主がおきているにもかかわらず寝るつもりか。許さん。絶対起きてろ。」
「はぁ~!?いつも何も言わねぇくせに!なんだよ!てか誰が主だっつーの。」
「いいから起きてろ。」
シンは静かに言って腕を組む。雪花は昼飯を食べながら真剣な話に話題を変えた。
「マジなのか?あいつを殺して、自分も死ぬって...。」
「ああ。俺は心春に憎まれたら生きる価値もなくなる男だ。しかし今は時期ではない。あいつはまだ仕掛けてきていない。父には近付けるなと言われているがな。」
「じゃ。近付けさせなければいいじゃん。何で許してやってんだ?」
「....心春が話したいと思っているからだ。俺は今まで心春のために守ってきた....そう思っていた。だが違う。俺は俺がやりたいことをした。心春が俺に望んだことなど一度もない。だが俺は守らなければならない。心春をな。」
「意味わかんないねー!心春ちゃんのために守ってんだろうが!まぁたしかに自分の自己満足かもしんないよ?でも守れるのはお前だけだろ?」
「・・・・・。」
鐘が鳴った。
「まぁ。心春ちゃん次第だろ。心春ちゃんが自分の存在を知ってどう行動するか。それをお前が導けばいい。」
シンは何も言わず、授業は開始された。
数十分前。
二人は腕を組み学校の廊下を歩いていた。
「さっきからジロジロ見られるような気がするのだが...気のせいか?」
「そうね。気のせいよ。」
織姫は人々の目線は全てかっこいい旦那に向けてだと思っているので無自覚であった。女が好きな男の目は織姫にいっていることも全く知らない。
ウルキオラはファッションについては全く無頓着である。そのため似合う服を織姫が選んで買ってくる。言うなればすべて織姫に任せている。
「まだ授業は始まらないみたいね。ちらほらご両親がきてるけど。」
「そうか。この学校も変わらないな。」
「えっ!?知ってたの?」
「ああ。お前をさらう時にお前のことは全て調べたからな。」
織姫は顔が赤くなってそのまま何も言わなかった。カシャッ。シャッター音が鳴った。
「チッ。何やらここは気分が悪い。屋上に行くぞ。」
「えっ!は、はい!」
屋上に行くと誰もいないはずだった。
「黒崎一護か。」
「黒崎君!?」
オレンジ髪の男性がいる。死神の姿ではない。
「よう。久しぶりだな。井上。ウルキオラ!」
笑顔で一護は言う。
「織姫。黒崎と話がしたい。離れていてくれるか?」
織姫は何も心配しなかった。彼を信じているから。織姫はうなずき、ウルキオラは前に進み出た。
「久しぶりだな。死神。」
「そうだな。ウルキオラ。」
寒い風が吹く。髪が風にさらわれる。
「貴様に息子がいたとはな。」
「俺もビックリしたぜ。お前に子供がいたなんて。」
「貴様の息子は少々厄介でな。俺の可愛い娘に近付くんだがどういうことだ?貴様のしつけがなっていないのか。」
「うーん。心春ちゃんだろ?知ってる。一は死神だからな。仕方ねぇよ。」
「仕方ないだと...?笑わせるなよ。黒崎一護。俺はもはやアランカルではない。人間の魂を喰わなくとも生きれる。俺はアランカルもどきだ。子供はもう血は薄くなっているのだ。」
「そうでも命令は絶対だ。一はこの町を任された。俺が見るかぎりお前の息子は強いみたいだな。」
「斬魄刀も使えんのに何が強い?貴様ら死神は馬鹿極まりないらしいな。今すぐやめろ。虚なら溢れんほどいるというのに。」
「確かにな...。でも俺は何も言わない。一が処理するならそれでもいい。まぁがんばってくれよ。」
一護は立ち去ろうとした。
「待て。俺は貴様を憎まない。」
「...!」
「だがな人間というのは愚かでな、大切なものを奪われたら悲しみは憎しみに変わり憎む者を必ず喰らう。」
呟くようにウルキオラは言った。
一護は何も言わず織姫にあいさつして帰っていった。
「ウルキオラ...。」
「心配するな。俺は...大切なもののために生きるのだ。昔とは違う。今は....闘わなくていい。」
今は...。壊せれていないから。そして守るのは彼の役目で決めるのは彼女だ。
授業が始まったと同時にウルキオラと織姫は入ってきた。例の如く人々は二人を注目し授業どころではなかったのである。雪花は結局熟睡しあとでシンに殴って起こされた。シンは黒崎の父に気付き、彼が強い死神だとわかった。シンは拳を握り締め何か怒りのようなものを感じた。
「一。」
「どうしてきた。親父。浮竹隊長が仕事が多いからしばらくこちらへはよこせないと言ってたのに。」
「行かせてくれたんだ。それより、一。どうなんだ?」
「何が。」
「シンと闘ってみて。」
「....生命力を感じた。元々虚にはそれがある。あいつは強い。強い意志を持ってる。」
「殺すのか?」
「わからねぇよ。今はな...。」
一護は何も言わず息子のあとをつけて家に帰った。
おまけ
「すみません!写真一緒にいいですかぁ?」
「サインくれませんか!サイン!」
ウルキオラは女子高生からも母親からも熱い視線をくらい、更にベタベタと彼女たちがよってきてしまった。
(何だ...この豚共は。俺を何か勘違いしているのか。)
幸い織姫はトイレに行っていたのでやきもちは妬かれずにすみそうだ。
ウルキオラは長年医者をやっている。なので猫かぶりはできる。
「すみません。俺はそんな身分ではありませんのでできません。」
と言って、微笑をくらわせる。どこかのドラマかマンガのように彼女達は崩れ落ちた。ウルキオラはその隙をねらい織姫の元へ行くのであった。
織姫のいるトイレの前に来ると無数の男達が廊下の隅にいた。ウルキオラはずんずんと男たちの前に現れ最初は笑顔で言った。後半は恐ろしい顔で。
「俺の嫁に何か用か?」
「い、いえ...。」
「俺の嫁に近付いたら命はないと思え。汚い臭いがうつったらどうする?ゴミが!」
「す、すいませんでした!!」
男達は騒々しく駆けていった。
「ふん。」
「どうしたの?ウル?」
トイレから出てきた織姫が聞いた。
「何でもない。ただの掃除だ。」
「?」
織姫にたかる蝿は掃除するのが使命だと彼は思っているらしい。
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