辞書
テレビで辞書の特集をしていた。
一口に辞書と言っても様々な個性があるようで、なかなかに面白い。
久しぶりに辞書を手に取ってみた。
テレビにあったような卑猥な言葉にマーカーされてはいなかったが、落書きはしてあった。
辞書の端に『亜希』と書かれてあった。
語釈にはこうあった。
『・・・恋人』、と。
お世辞にも上手とは言えない字で、恥ずかしさと好きだという気持ちをない交ぜにしたようだった。
書いている様子を想像してみれば、何とも微笑ましいものだ。
書いたのが自分でなければ・・・
私は机の上に転がっているペンを手にした。
そして、辞書の落書きの語釈にこう付け加える。
『(昔の)』
あの頃あったセンチメンタリズムは、まだ私の中で息づいているようだ。