挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
嘘斬り姫と不死の怪物 作者:Hiro

偽りの救世主

34/50

第二章 七話a

「騙されたぁー!」
 翌朝、竜討伐に山を散策したトールが、黄金の錫杖を前方に構え絶叫する。
「竜って死竜ドラゴンゾンビじゃねーかぁー!」
 岩鬼人に戻った身体が半透明な球体に包まれ、死竜の放つ闇色の炎から守っている。錫杖形態でのみ発動する防御魔術だ。
「いまさ文句を言ってもしかたあるまい。彼らの言った特徴に間違いはない。赤く、でかく、凶暴。勘違いをしたのはおまえだトール」
 山間に立ちふさがる死竜の双眸は闇色に染まり、牙も抜かれほとんど残っていなかった。
 眉間を大きく割られたその死竜は、数日前にレーヴェストが葬ったものであった。それが死体のまま生者への恨みを晴らすべく動いている。
「牙もねーんじゃお宝にならねーよ。しかもすでに死んでるから急所とか弱点とか関係ねーし。問答無用で全力攻撃かましてくるし、こんなデカくて硬いもん動かなくなるまで徹底破壊とか、ひたすら重労働じゃねーか」
「文句ばかり言わず、攻撃をしろ」
 一角獣姿のスミが魔法の光であたりを照らすと、死竜の身体が崩れ動きが鈍る。しかし、全体を崩壊させるほどではなかった。死んで間もない竜の身体は腐敗の進行が遅く、浄化の魔法の効果が低い。
「ぴっぴぴぴ~。死竜とは強い恨みを残して死んだ竜の死体が動き出したもの。不死アンデットとしては低級な存在でも、もとの肉体と魔力が強力なため恐ろしい力をもつ。また材料さえ揃えば、魔法あるいは魔術による創造も可能」
 木の陰に隠れたピキが解説をする。
「んなことはわかってるって」
 言いながらも、トールは死竜に有効な魔具を選別し取り出す。
「てけてけってってって~ん。『魔弓銃マジックボウガン』&『転移弾テレポートブリット』。これでもくらえ!」
 ズボンから取り出した、ボウガンに黒色の玉をセットし、死竜へ向けて撃ち出す。
 こぶし大の球体は死竜の胴体に着弾すると、その肉を大きくえぐり異空間へと転送する。
「どうだ!?」
 えぐられた範囲は、人間の身体ならば半分は消失していたろう。だが、極大の死竜の身体からすれば、それはほんの一部部分でしかなかった。
「だー、範囲がちいせー。つうか、この死竜デカすぎんだろ」
 魔具が思ったほどの効果を上げず、トールが愚痴をこぼす。
「しかし、効果はあるようだ。何発も打ち込めばいけるな」
 死竜の攻撃をかわしながらスミが言う。
「バッ~ト、弾が一発しかねーんだよ。さっきの弾を使い直すのにも三〇分はかかる」
「つっかえな~い」
「うっせい。こうなったら弱点なんてカンケーねー、接近戦だ」
 トールは連射の利かない武器をしまうと、錫杖を金棒へと変形させる。
 無闇に暴れ回る死竜の死角から回り込み、いっきに殴りかかる。
「殴る殴る殴る殴る防ぐ! 殴る殴る殴る殴る防ぐ!」
 トールが死竜へと攻撃を繰り返すと、鱗が砕け肉が削れていく。
 だが、それでも巨体の一部でしかなく、痛みを知らぬ死体は動きを鈍らせることはない。
「しつけー。だいたい誰だよこんなとこに竜の死体を放置したやつは!」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ