エピローグ
「あれから、卿は変わったな。切れ味の鋭い刃のようだったのに、穏やかになった」
ヴェルナーはアジェナから一歳年上の参謀長に視線を戻した。
「あら、できの悪い弟を持つと、姉は苦労するものよ。ヴェルナー」
「本当にかなわないな。ナオさんには」
長い金髪をかきあげて、微笑むナオに、ヴェルナーは苦笑した。
あれから6年、2人はコンビを組み、幾多の戦場を渡り歩いた。彼等率いる艦隊はその猛烈な対空放火と艦隊機動から、「ヴェルナー・サーカス」の異名を持つまでになった。そして、今新たなる戦場に出撃している。
かつての乗艦を見つめる2人の間に、ふと沈黙が現れたが、オペレーターの報告が、彼らを現実に引き戻した。
「司令官、参謀長。ジンガー少将の艦隊からの救難信号をキャッチしました。『未確認の艦隊と交戦中。至急来援を請う』とのことです」
「やれやれ……どうやら卿の悪い予感はあたったな。急いで救援に行かなければ。全艦、全速前進。ただちにジンガー艦隊と合流する」
ヴェルナーは、腕を振り上げ、命令を下した。ナオは凛々しくも、どこか放っておけない眼鏡の司令官に微笑むと腕を組み、傍らに立った。エンジンが低いうなりを上げ、艦隊は速度を増していく。全天周モニターから見える星の海をヴェルナーは見つめた。平和を守るために、傍らに立つ大事な人を守るために、戦うのだと。彼の目は生きる意志と気迫に満ちていた。
新帝国歴25年 新たなる事件がまた幕を開けようとしていた。
銀河の歴史がまた一ページ……
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