恋愛仲介部の結末【真意】
タイムリミットは近づいている。
しかし、余裕は無い。
計画を揺るがす存在は排除しなければならない。
真崎はゆっくりと椅子から腰を上げ
侵入者の元へと向かった。
「さて、最後の仕上げと行くか」
真崎は扉を開き、侵入者と対面する。
バタンと音がして扉が開いたと思うと
真崎がそこには立っていた。
しかも、手には銃を持ち、今にも俺たちを撃ち殺さんと言う勢いだ。
女は真崎を見ても動じていない。
それよりも心配なのは月さんである。
俯いたまま動こうともしない。
「あら、随分と物騒ね」
女が真崎に言う。
「ああ、お前が裏切らず、計画通りに足止めしていてくれていれば、こんなことにはならなかったんだがな…」
真崎は冷酷に呟いた。
「…まぁいい、既に用済みだ、消えろ」
引き金に手をかけると真崎は容赦なく女へと発砲した。
銃声が鳴り響くと共に女の身体に銃弾が打ち込まれる。
女は抵抗も出来ないままにその場へ倒れこんでしまった。
所々から血を流し、紅い血がフローリングを深紅に染めていく。
「さて、次はお前たちの番だ」
銃口はどうやら俺の額を狙っている様だ。
こりゃ本気でゲームオーバーかも知れん。
どこで選択肢を間違ったんだよ、こんちくしょう。
サァーっと血の気が引いていくのが解った。
「まさかそのまま彼を撃ち殺す訳ではないでしょうね?」
奴の後ろから叶野までも出現。
おい、どっかから沸いてきた。
どこぞのボスラッシュじゃねぇんだ、俺は一人の相手でも精一杯だっての。
「何が言いたい?」
全員の視線が叶野へと注がれる。
「僕が出した条件は神崎家以外の人間には手を出さないと言うことです、お忘れになりましたか?」
「さぁな、あんな約束…あってない様なものだろう」
「そうですか…それだと僕としても貴方の計画に手を貸す理由がなくなります」
二人は話を進めていく
「お、おい…全く意味が分からないんだが…」
と、叶野に説明を催促。
「僕は…皆さんの身の安全を確保するために…あなたの持ち出した取引に乗っただけです」
「嘘を吐くな、お前が裏で何かをしていたのは南から聞いている」
「ええ、あなたとの口約束では彼の安全の確証が得られなかったので…高峰さんを彼の側近として送り込みました」
透子の一件はやはり叶野の仕組んだことだったらしい。
「現に貴方は何度か彼を利用しようと考えた。刺客を送るも失敗に終わった様ですが」
「…なるほどな、全てはお前の仕組んだことか…」
「ええ、強引な手段をとりましたが…今のところ計画通りです、ここで貴方の身柄も拘束できますから」
「俺を誘き出すにしては滑稽な作戦だが、重要な事を忘れている」
整理しろ…俺。
つまり、叶野は敵じゃなくて?
真崎を誘き出す為に敵になったと演技をしていて
真崎の手が俺に伸びないように透子に暗示をかけてボディガードとして俺の近くに置き。
…今、この場で油断しきっていた真崎を捕まえるってのが…叶野の作戦…?
いや…無理あるだろ正直。
「学校に一人、仲間を置いてきた様だな…安否の確認はいいのか?」
真崎の言葉に背筋が凍った。
冬…。
「何人か部下を送り込んである、身柄を拘束するのは一瞬だろう」
真崎はニヤリと笑う。
「それに事件の件がネットに流れ込むのは時間の問題だ、回避は出来まい」
「迂闊…でしたね」
叶野が言う。
「くそっ…卑怯だぞ」
人質を取られては成す術も無い。
「残念だったな、途中までは完璧だったのにな」
真崎は銃を構えたまま、左手でポケットにしまってあった無線機を取り出した。
「森羅、そっちはどうだ…?」
しかし、無線機からの応答は無い。
「………」
「ん、森羅…どうした?」
「お久しぶりね、真崎」
無線機の向こうから聞こえてきた声は少し高飛車な北条の声だった。
「北条…だと!? どういうことだ!?」
「残念、叶野がそんなへまをすると思って?」
「ちっ…」
真崎は無線機を叶野に向かって投げつけた。
それを叶野はひらりとかわして
「全員の身の安全は確保したと言ったんですが、聞こえなかったみたいですね」
解るぞ叶野…なんか今、してやったりって表情だな。
「ちなみに、ここのセキュリティですが紀野里先生と影島君の協力で無力化されていますので、あしからず」
「…くっ…貴様…」
「ホールドアップです、諦めたらどうですか?」
「そうか…お前を見くびっていたよ、もう少し早く始末して置くべきだった。」
「……」
「なら、神崎家への復讐は…全てを壊すことでしか晴らせないんだな…」
真崎は銃を構え弾丸を放つ。
「お前も道連れだ、叶野!!」
「っ…」
何発かを足に被弾した叶野はその場で膝を着いた。
「この屋敷ごと…全てを消し去ってくれる…」
どこからかドゴォンと何かが爆発した様な音が聞こえてきた。
「…焼け死ね…神崎家に味方する者たちよ…」
真崎はそれだけ言い放ち、入ってきたドアの方へと走っていった。
追うにも、この状況を何とかしないことには…
「大丈夫か、叶野…!?」
「はい、この通り…重症です」
「ヘラヘラ笑ってる場合じゃないだろ…」
「そうですね…どうやら真崎は屋敷全体に火を放ったみたいです」
「呑気に言っている場合か、逃げるぞ」
俺は叶野に手を貸す。
「いえ、僕は後で大丈夫です、それよりも…」
叶野は俺に鍵を手渡した。
「神崎さんが閉じ込められている部屋の鍵です、ここから先の部屋に閉じ込められています…早く助けに行ってあげてください」
「…だけど…」
叶野や月さんを置いては行けないだろ
「行ってください、姫が待っているのはナイトの到着ですよ」
「あー…もう、最後の最後までキザったらしい奴だな」
「…すみません」
「行って来る、ここを動くなよ」
「ええ、この足ではとても動けそうにはないので…ね」
なんて苦笑している叶野を置いて
俺は真崎が出て行った扉の方へと脚を進めた。
それから秋の閉じ込められているであろう部屋までは一本道で
途中階段があったくらいで他には何もなかった。
ドアノブに鍵を入れて開ける。
「秋っ…」
そこには泣き崩れ、助けを求める純白の姫君…ってのは言い過ぎか
でも、そんな服装なんだよ。
「早く、逃げよう」
俺の姿を見るとひしっと抱きついてきた。
そんな彼女は小動物の様に小さく
俺と出会った頃の彼女の様な印象を受けた。
説明は面倒だ。
簡略して俺は秋を抱きかかえる。
「……走るから、しっかり摑まって」
「はい」
俺は彼女を抱きかかえて部屋を後にした。
遅刻しそうな時の速さで階段を駆け下りる。
どうやら階段は裏口に繋がっていたらしい。
俺は秋を下ろしてから再び屋敷内へと戻る。
「あのっ…」
そんな中、秋に呼び止められた。
「…ごめんなさい、私のせいで…」
「謝るなって…それより、時間が無いから俺は行く、ここは危ないから早く逃げてくれ」
「に、逃げるって…どこに逃げればいいんでしょう…?」
「あーもうっ…とりあえず屋敷の門辺りまで逃げてくれ」
そうすれば西沢さんとかが駆けつけてくれるだろう。
「…分かりました、待ってます」
「ああ、すぐ行くよ」
俺は彼女にそれだけ行って走り出した。
彼女も俺のことを見ていた。
いや、早く逃げて欲しいってのに…
しかし、視線は俺の後ろにあったことを俺は気がついてしまった。
気がつかなけりゃよかったのに…
あんな涙目で見つめられてたら気になるっての…
そして再び屋敷の中へ
バカと煙は高いところにって…聞いたことはあるが
本当に煙は上の方に集まるらしい。
階段を上るたびに煙が濃くなっていくのがわかった。
やっとの思いで3階まで駆け上がり、先ほどの部屋へ
「やぁ、早かったですね」
「遅かったら死んでるぞ」
「はは、そうですね」
全く、緊張感のカケラも無い野郎だ。
「ほら、支えるから立て」
「すみません…」
「歩けそうか…?」
「なんとか…ですかね」
「よし、…それと月さんはどうした?」
「彼女なら、無事に逃げれると思います」
「そうか…しかし、大分煙が濃いな…このままじゃ」
「間に合わない…かも知れませんね」
「いや、違う…」
「違うとは?」
「悪い…叶野、実はさ…野暮用がある」
俺は気まずそうに言った。
「…そうですか」
何かを悟ったかの様に叶野は呟いた。
「僕がいては足手まといでしょう、置いていってくれても結構です」
「アホ、…ちょっとじっとしてろ」
俺は叶野を背負う、やはり男ってだけで重たい。
「北条がこの光景見たら、驚きそうだな」
「そうですね」
「鳩尾に蹴りが飛んできそうだ…」
「はは、確かに」
「なんか…アイツには嫌われてんだよな…」
「そうですか? 気のせいだと思いますよ」
「ああ、そう思いたい」
体育祭で1位を取るために無駄に張り切る奴いただろ?
多分俺はそんなのと無関係だろうって思ってたけど
どうやら、性格上…頑張っちゃうタイプらしい。
「ほら、後は自分でなんとかしろ」
裏口まで叶野を運んで一言。
「あなたは…どうするつもりですか?」
「もちろん…聞かなくても分かるだろ?」
「…お気をつけて…あなたが戻らなければ傷つく人間は多いのですから」
「分かった、生きて帰るさ」
「…お待ちしてます」
叶野は足を引きずりながらも俺を見送った。
さぁーて、どうしたもんだか…?
とりあえず、裏口からは入れる感じがしないので
正面玄関へと向かうとするか…。
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