Albino〜声〜
起床するとパソコンの電源がつけっぱなしになっていた様で
静かな部屋にファンの回る音が鳴り響いていた。
「あ…」
現在時刻は7時10分前…でも、メールが1件届いていた。
「はぁ…」
眠たい頭をなんとか稼動させてメール開封。
「おはようございます、よく眠れましたか?」
SIROからだった。
どうやら、ついさっき届いたらしい…。
「微妙だ、俺は朝弱いから、いくら寝ても昼間は眠い」
と返信する。
とりあえず返信を待つほど時間に余裕がないので
俺はリビングに下りることにした。
朝食を食べると遅刻ギリギリの時間になっていたので
俺は登校しつつ、携帯電話でサーバーに問い合わせることにしてみた。
そしたら案の定返信が1件。
まぁ昨日の話からいってSIROは学校に行っている訳ではないみたいだし
この時間帯に返信が来るのもおかしくはない。
「そうなんですか? 私も朝はちょっぴり苦手です。」
やれやれ…。
放置するのも悪いので携帯から返信。
「SIROはいつもは何時に起きるんだ?」
と他愛もない問いかけを送信。
送信した時には予鈴が鳴っていたので俺は携帯をポケットにしまい。
教室へとダッシュを開始した。
「おはよ」
教室について一番最初に顔をあわせたのは池上だった。
「どうした? 朝から辞書なんて持って勉強か?」
「違うわよ、先生に頼まれて図書室に返しに行くのよ」
「そうか、手伝うか?」
「バカっ」
「な、なんだよ」
「神崎さんのところに行ってあげなよ、私は一人で大丈夫だから」
池上なりに気を使ってくれたのだろうか?
「そっか、悪いな、春奈」
「ううん…別に…って…えっ!?」
名前で呼ばれたことに戸惑ったのか春奈は辞書を落としそうになったが
なんとかバランスを保ち、辞書を落とさなかった。
「…………」
そのまま彼女は彼が最愛の人の元へと歩いていくのを
じっと見つめていた…。
「おはよう、秋」
「おはようございます」
丁寧に頭を下げる秋。
「あの…昨日はごめんなさい」
「ん、なにが?」
「一緒に…帰れなくて…」
「いや、気にしなくていいよ、池上も言ってたけど女同士でしか話せないこともあるだろうし」
俺にしにくい相談もあるだろう。
「でも、今日は一緒に帰れます」
「そうか、じゃあ一緒に帰ろうな」
「はい」
秋が頷き、嬉しそうな笑顔を浮かべると同時に
「授業を始めるぞ」
担任の一喝が入り、朝のホームルームは終了した。
授業に集中することが苦痛になり…って、昨日学校に来た時は妙な嬉しさに溢れていた俺だったが…。
結局のところ、最大公約数に乗っ取り、俺は普通の高校生の意見を代弁できる。
「はぁ…」
要するにだ。
ないと寂しいが…あってもそんなに嬉しいもんじゃないってことさ。
そんなことは置いておいて…
2時間目の終わりにまたSIROからメールが来た。
「あの…これって…携帯電話のアドレスですか…?」
あーそっか…。
面倒なんで携帯で送信したんだっけ。
「そうだけど、パソコンの方がいいかな?」
と送る。
返信するのを待っていたかの様に数秒で返信が返ってきた。
「嬉しいです、これで二人でメールできますね。起きるのは大体7時くらいです」
……?。
なにが嬉しいのか良く分からないが…まぁいい。
で、見るともう一通、返信来てるし…。
「…好きな色…教えてくれますか?」
これは狙っているのか?
まぁいい…なら、期待にそえるように答えるまでだ。
「そうだな、SIROが好きかな」
返信後…ちょっと冷静に考えてみる。
あれ…おかしくないか?
メールを確認…。
白…と打ったつもりが…どうやらSIROと予測変換されていた様だった。
しかも返信来ないし…。
「嬉しいです、でも、彼女さんがいるのにそんなこと言っちゃダメですよ」
と帰ってきて一安心。
どうやらSIROも秋のことを知っている様だ。
「すまん、変換ミスした。軽く流してくれると助かる」
謝罪文を速攻で送る。
「はい、でも、ちょっとドキドキしました」
照れているのか…俺がからかわれているのか…?
なんとも言い様のない文面で返ってくるとリアクションに困る。
恥ずかしくなってしまったので…返信するのを午後にしようと思い。
俺は三時間目の授業に励むのだった。
放課後。
俺と春奈、秋は恋愛仲介部の扉を叩いた。
「入れ」
久しぶりに聞く、奴の声…。
扉を開けると壁に寄りかかっている叶野と
難しい顔をしている奴の姿がそこにあった。
「悩み事か?」
パソコンデスクに鞄を置き
とりあえず、聞いてみる。
「ああ、お前、確か井上達と仲よかったよな」
「一応、中学からの友達だけど…それがどうかしたのか?」
「実は今日、依頼があってな」
「栄治からか?」
「いや、笹枝からだ」
「委員長?」
「ああ、なんでも…井上が好きらしい」
ついに告白ですか?
なんとも長い複線の引っ張りよう。
一年生の時でいいじゃないか…。
「で、どうするんだ?」
「それを悩んでる」
あっそ…。
まぁあの二人なら少し背中を押せば大丈夫だろう。
「それで、お前には井上をここに連れてきて欲しいんだが」
と奴に渡された紙にはこの街の地図が書かれていて
一箇所、赤い印がついていた。
「ここどこだ?」
「笹枝の家だ」
「そっか、じゃあ栄治に連絡入れてみる」
俺は携帯を取り出して
栄治に連絡を取る。
「もしもし」
3コール目くらいで栄治は電話に出た。
「なぁ、今暇か?」
「これから塾だよ」
「じゃあ塾が終わったらでいい、この場所に着て欲しいんだが…」
笹枝の指定した場所の近くの喫茶店を指定。
「わかった、多分10時くらいになるよ」
「ああ、待ってる」
約束を取り付けて電話を切る。
「上出来だ」
「そりゃどうも」
そのままデスクに着席。
で、ケータイを見るとSIROからのメールが…
ちょっと…鬱陶しい…かな。
俺が返信する前にメールを送られても…ちょっと困る。
はぁ…ちょっと俺、深入りし過ぎたのか?
「…………」
俺は…SIROのメールを無視することにした。
元々…SIROだって話し相手が欲しかっただけだろ。
顔も知らないのに…。
俺には関係ないから…そう思って俺はSIROからのメールを無視した。
夕食後、栄治を待つために俺は喫茶店に向かうことにした。
ちなみに俺一人。
秋と春奈は今回は笹枝側に回るそうだ。
「……」
「どうも」
喫茶店に入ると待っていたのか叶野がいた。
「…はぁ」
溜息を一つついて俺は叶野の横に着席。
「なにか頼みますか?」
「じゃあ飲み物…コーヒーでいい」
叶野に注文を言ってもらう。
「お疲れの様ですね?」
「ああ…」
「どうかしたのですか? 最近は問題ごとなんて特にありませんが」
「まぁ…個人的な事情だ」
「それは僕が介入できることですか?」
「無理だな」
「…残念です」
そんなやり取りをしていると栄治到着。
早速、指定された場所まで栄治を連れて行く。
「…これは」
栄治が驚いたのにも無理は無い。
そこには笹枝が立っていた。
しかも、一人で…。
他の連中はどこに行ったんだ?
「僕達もお邪魔のようですね」
と叶野と共に栄治たちから距離を置く。
「どうしたんだい笹枝さん?」
「あのね…言いたいことがあって…」
笹枝は随分初々しい感じだな…。
委員長としての面影とか皆無だ。
「言いたいこと?」
「うん…あのね…ずっと…私ね…」
頬を染める笹枝…
「栄治君が好きなの…」
ついに…言ったか。
「えっ…それって…」
「私と…つきあって下さい」
誰もが認めるほど仲が良い二人だ。
きっと告白を受理するのだろうと思ったが…。
「ごめん…」
「えっ…」
一瞬にして笹枝の表情が悲しみに満ちていく。
「今、受験で忙しくて…本当に大事な時期なんだ…だから…その付き合ったりとかはできないよ…」
止めに入ろうかと思うくらい…
栄治は笹枝に言い放つ。
「うっ…うぅぅ…」
終いに笹枝は泣き出してしまった。
それを見て驚いたのか…栄治は笹枝に近づいて
「えっと…だから…入試が終わったら…でも…いいのかな…?」
「えっ…」
「それまで…待って…くれるなら」
「うん…待つ」
「ごめんね…」
栄治は笹枝を強く抱きしめた。
いやぁ…よかったね。
笹枝さんよ。
てか…抱きついているの見てるのって案外恥ずかしいもんなんだな…。
あとは若い衆に任せて…みたいな老人みたいなことを言って
俺たち仲介部はすぐさま撤退するのであった。
なんか最近…妙に仲介が楽な気がするが…気のせいだよな?
そんな訳で俺は帰宅。
風呂に入って後は寝るだけ…。
さーて、お休み…おっと、明日のためにアラームの設定をしないとな…。
俺が携帯を開いた時…。
「メールを1件受信しました」
また…SIROからのメールが届いていた。
いいかげんにしろと思い。
俺はもうメールをやめて欲しいとSIROにメールを打つことにした。
「どんなメール送ってきてるんだよ…」
とりあえず、中身を確認…。
「私…もっと…もっとお話がしたいです…でも、迷惑…でしょうか…?」
二通目は
「電話…したいです…」
なんなんだよ…と怒りが込もる。
自分勝手すぎる。
迷惑にも程があるぞ。
でも…必死…なのか…。
友達いないって言ってたし…。
「電話番号090−XXXX−XXXX」
電話番号を送る。
直接話して真意を確かめた方が早そうだ。
送ってから数分後…電話がかかってきた。
「もしもし…」
受話器を取る。
表示は知らない番号
でも市外局番もついてるからおそらく実家の電話だろう。
「あの…」
女の子の…か細い声が聞こえた。
「…電話…したかったんだろ?」
「…はい、でも…ご迷惑じゃないかって…」
「ああ、迷惑だ…」
断言すると
「………ごめんなさい」
と小さな声で謝罪した。
「だから…会わないか?」
そっちの方が手っ取り早い。
「えっ…」
「俺の友達もいっぱいいる…そいつらと友達になれば一人じゃなくなるだろ」
「でも…」
「俺は平気で他はダメなのか?」
「…特別だから…」
「えっ…特別?」
「あなたは…特別だから…」
なにが特別だっていうのか?
「そりゃ嬉しいけど…特別な理由を言ってはくれないのか?」
「…はい」
「そうか…」
しばらく重い空気が流れる。
「…でも、会うのはダメ…です」
「どうして…?」
「私…見られたくないから…」
「それは外見をって意味か?」
「…はい」
「別に外見なんて気にしない、俺としては知らない奴からメールが着続けたら、そいつのこと気になるのは当然だと思うが…」
「………きっと…軽蔑します」
「しない」
「無理です…軽蔑しますっ…」
ちょっと必死になっているようだった。
「そんなに…嫌か?」
「………」
「なら…もう、電話を切る…そしてこれからメールもしないでくれ」
「…えっ…」
「じゃあな…」
俺は携帯を閉じる。
「うぅぅ…」
泣いてる声が聞こえる…。
まだ電話を切った訳ではない。
「…ごめん、謝る…言い過ぎた」
「うっ…ぐすっ…」
「もう、会うなんて言わないから…ホントごめんな…」
「いえ…私の方こそ…ぐすっ…急に泣き出したりして…ごめ…ごめんなさい…」
「あのさ…話し相手になってもいいけど、俺…あんまり返信できないんだ…だから電話にしないか…?」
「いいんですか…本当に…迷惑じゃないんですか…?」
「ああ、だけど、電話は夜にしてくれ、朝は学校だしな」
「…はい」
「それと…今日、返信遅くてごめんな…」
「いえ…それでも返してくれて…嬉しかったです」
「あ、ああ…」
なんか…怒りを覚えていた自分がバカらしくなった。
きっとSIROはいたずらとか軽い気持ちじゃなかったんだと思う。
じゃなきゃ…普通泣いたりしないよな…。
「あの…」
「あ、俺そろそろ寝るよ…だからお休み」
「え、あ、はい…お休みなさい」
何か言いたそうだったが…俺は電話を切ってしまった。
電話を置くと…胸が高鳴っていた。
「私…こんなに…」
手で押さえても…どんどん…心拍数が上がっていく。
でも…あの人と…話せた。
それだけで胸がいっぱいになる。
本当は会いたい…
でも…。
私…絶対…軽蔑されちゃうから…。
今は…声だけでも…幸せです…。
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