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最近、会話が多く、文章短くてすいません。
恋愛仲介部
作:MOR



恋愛仲介部の欲心1


「…………」
彼女の言葉に俺は言葉を失った。
ふざけているのだろうか?
そんな考えが一瞬脳裏を過ぎる。
でも、池上の瞳には今朝の曇って自分を見失っている様子は無い。
むしろ、無垢で…辛い事、嫌な事を知らない
そんな瞳を俺に向けてきた。
「ねぇ…ここどこ?…どうして私こんなところにいるの?」
池上は俺に尋ねてきた。
それは俺が聞きたい…。
「急に倒れたって聞いて来たんだぞ…ふざけるのはやめないか?」
「…ふざけてなんかいないもん…」
彼女は下を向いて俯いてしまった。
「……」
意味が分からない…。
いったい池上はどうしたって言うんだ…。
「…つまんない、お家に帰る」
そう言うと池上はベッドから起き上がり出口へ歩き出そうとする。
「お、おい…待てよ」
俺は池上の行く手を遮る。
「退いてよ」
「ダメだ…まだ母さんも帰って来ていないし…一応、倒れたんだ。もし病気とかだったらどうするんだよ」
精密検査とやらの結果もまだ出ていないだろうに…。
「…そんなのつまんない」
「我が侭言うな、ほら、ちゃんとベッドに入ってろよ」
「…むぅ命令、偉そう」
「…あのなぁ…命令してるんじゃ無くてお願いしてるんだ」
「帰る〜」
言い出したら聞かないな…
子供の頃の池上みたいになりやがって…
ん…?
子供の頃…?
「…なぁ、池上、今いくつだ?」
試しに…聞いてみる。
「8歳」
…嘘だろ。
「…本気で言ってるのか?」
「本気だよ」
彼女の瞳は嘘を言っているようには見えない。
「小学…二年生…?」
「うん」
彼女の返事には躊躇いがなかった。
記憶喪失…?
そんな漫画の中の出来事が…本当に起きるなんて…
「ガラッ」
と、病室のドアが開いて入ってきたのは母さんではなく。
叶野と北条の二人だった。
「…叶野」
「池上さんが倒れたと聞いたので来てみたのですが…どうやら厄介なことになっているみたいですね…」
「ああ…」
「…場所を変えましょう」
俺達は近くを歩いていた看護婦さんに一声かけて
池上がどこかに出て行かない様に見張っていてもらうことにした。


そして俺たち三人は場所を屋上に移すことにした。
「そうですか…記憶喪失…」
「確かめてみたけど…でも、嘘を言っているようには…」
「よかったではないですか」
叶野が微笑し言う。
「な、なんだと」
「あなたは神崎さんとつき合い始めたのでしょう、そして池上さんを邪魔に思っていたんですよね?」
「…お前…言って良い事と悪い事があるぞ」
邪魔とまでは思ってない。
「僕は真理を言っただけです、原因はどうであれ、彼女はあなたのことを忘れてしまった。これはあなたにとって望んでいた結果ではないのですか?」
「冗談じゃない…俺はそんなこと…望んでなんかいない」
「いえ、神崎さんを選んだ時点であなたは池上さんを裏切っているのですから、否定する権利はないと思います」
「っ……」
何も言い返せない…。
俺は確かに池上を裏切った…。
「………」
沈黙を通していると
北条が俺に歩み寄ってきた。
「な…なんだよ…」
「パシィン!!」
俺は思い切り北条に頬を叩かれた…。
池上なんて比じゃない…おそらく本気で。
「なんでっ…なんであんな女選ぶのよっ…」
北条は涙を流していた。
「……………」
「春奈は…本当にあなたのことが好きで…周りで見てて恥ずかしくなるくらい…あなたのこと想っていて…昨日、あなたに名前で呼ばれたって喜んでいたのに…なんで…」
「…………」
「やめましょう…今の彼には何を言っても無駄ですから」
「…どういう意味だよ…それ」
「そのままの意味ですが何か?」
「てめぇっ…」
「…北条…下がっていてください」
「え…」
「…どうやら、言っても分からないようです…」
「どっちが…いつも理屈ばかり並べやがって」
「…そうですね、理屈です…しかし僕には理屈でしか自分を正当化できない」
「ああ、そうかい…」
「だから、あなたが…羨ましかった…」
「…羨ましいだって…?」
「ですが、それは以前のあなたです、今のあなたは僕ですら…嫌悪を抱きます」
そうかよ…勝手にしろ。
俺は秋を選びたかった。
彼女は純真で…無垢で…。
俺が望んでいた存在だから。
それを選んで…なにが悪い…。
「その顔は…まだ理解していませんね」
「理解なんてするつもりはない」
「…ならば」
「ブンッ」
普段は理屈ばっかり並べている叶野から
初めて…拳が飛んできた。
その拳は予想とは裏腹に…鋭いスピードを持っていた。
「痛っ…」
しかも…腹とかじゃなく…頬に。
北条に殴られた場所と一緒の場所…。
「やりやがったなっ」
俺も負けじと叶野の頬を殴る。
「くっ…」
叶野は俺の放った拳を止めようともせずに真っ直ぐ頬で受け止めていた。
「…叶野っ」
北条が叶野に駆け寄る。
「…大丈夫です、…この程度、池上さんの心の痛みに比べたら…」
体勢を直して北条に言う叶野。
「池上さんのこと…ちゃんと考えて見てください…僕は…これ以上できる事がありませんから…」
「…………」
叶野は頬を押さえながら屋上を後にした。
なんで…みんな…認めてくれないんだよ。
俺は秋が…好きなのに…。


「いいの…?」
北条が階段を下りている叶野に聞く。
「ええ、彼は…自分が見えていないんです」
「でも…放って置いたら…春奈が…」
「ですが、僕にも…解決すべき問題があるんですよ」
「えっ…?」
「ほら見てください、どうやら向こうから…来てくれたみたいです」
北条が顔を上げて叶野の指差す方向を見ると
一人の少女が立っていた。
「あら、こんなところで何をしているのかしら?」
彼女は問う。
「それはこちらが聞きたいですね…神崎さん」
「別に、彼に会いに来ただけよ」
「…それと神崎さん(裏)はどうしたんですか?」
「ふぅん…やっぱり、生徒指導係に選ばれただけはあるわね」
「ちょっと…どういうこと…」
「簡単なことですよ…神崎さん(裏)は…」
「説明は無用よ、私が教えてあげる」
彼女はいやらしく笑みをつくり。
「神崎さん(裏)そんな人間はもういないわ」
「…なっ…なんですって…」
「彼女は謙虚過ぎるのよ」
「だから…消してしまった…そういうことですか?」
「ええ、まだ完全では無いけど…もう、私が彼女の人格の大半を占めているわ」
彼女は叶野に近づいていく。
「それにあなた達が神崎(裏)って呼んでる、あいつ、邪魔だから消したの」
「…消した…?」
「だってぇ…前までは良かったんだけど…最近は妙に主人格を気にして動いてたみたいだからね」
そう言って彼女は叶野の横を通り過ぎる。
「邪魔したら…あなたも消しちゃうから…気をつけてね…」
彼女はそのまま屋上への階段を上っていった。
「叶野…これはどういうこと…」
「…以前、旅行の時、彼女の動向が怪しくなった時があったんです」
「旅行…?」
「ええ、僕は気になって彼女の後を追った、そして僕は聞いたんです」
「なにを…?」
「彼女が小葉月を理事長の補佐につけるの話を」
「えっ…」
「僕は元々、彼の警護の為に小葉月をメイドとして彼の家に置いていたんですが…」
叶野は困った顔をする。
「彼女は小葉月を取り除き…彼の身の回りで自分を邪魔をする人間を排除した。そして、次に彼女は…神崎さん(裏)をも排除した」
「精神的な人格を…どうやって排除したの?」
「さっきの神崎さんの性格は元々の神崎さんが持っていた邪な心を持つ彼女です。本来ならば彼女の理想体である神崎さん(裏)がそれを抑えて均衡を保っていたのですが…最近は(裏)自体が不安定になっていたので今まで抑制されていた彼女の邪の心が暴走しているようです」
「じゃあ…人格を乗っ取られてるってことなの?」
「そうですね、二重人格とは言っても本来は多重人格なのです。神崎さんの場合、存在する確立の高い主人格である(表)と彼女の理想体で絶対的な支配権を占める(裏)は他の彼女の人格内で逸脱した存在でした。しかし、先ほどの彼女…まぁ神崎さん(邪)とでも言い表しましょうか、彼女は元々、抑圧されていた神崎さん(表)の欲望の塊が具現化された姿です」
「…じゃあ…」
「僕はこの事態を避けたかった…ですが…遅かったようです。彼女は今後何をするか予想がつきません…」
「それじゃあ…私たちは黙って見ているだけなの…?」
「僕は止めますよ彼女を…例えこの身がどうなろうとも」
「…ダメ」
北条は叶野に駆け寄り言う。
「…どうしてですか?」
「だって…せっかく…また会えて…気持ちを伝えられたのに…そんな危ない事…」
「大丈夫ですよ、僕は…見の引きどころは理解しています…それに…」
「それに…?」
「大事な…あなたを一人にはさせませんから」
叶野はいつものように微笑して北条を見ていた。
「…うん」
北条は頬を赤く染めて頷き、叶野の胸に顔を埋めた。


「どうしたら…いいんだろうな…」
答えが帰るはずも無い空に問いかける…。
はぁ…。
叶野の言う事はもっともだ。
あいつは間違った事を言わない。
でも…それだから、踏み出せない局面もある。
なのに俺は…頭に血が昇ってて…。
ダメだ…自分の感情に振り回されてばっかりじゃ…。
周りのみんなに迷惑をかけるだけだから。
「バタンッ」
屋上のドアが勢い良く開いた。
振り向くとそこには秋が立っていた。
「…秋」
「こんなところにいたんですね」
彼女はいつもの笑顔で俺に歩み寄ってくる
「ごめんな…その急に出てっちゃって」
「いえ、大丈夫です、先生が場所を教えてくれて、一緒にここまで来たんですよ」
「そっか、母さんもう病室にいるのか…」
池上のこと…説明しないとな。
「…池上のことなんだけど…さ」
「…なにかあったんですか…?」
心配そうに浮かない顔をする秋。
「記憶喪失…かも知れないんだ」
「えっ…」
「こんなこと言って信じれるほど俺も良く分からないんだけど…あいつの記憶は…小学生の頃のままで…」
「良かった」
「あ、秋…?」
なにを言い出すんだ…?
「もう、邪魔者はいないんですね♪」
「えっ…邪魔者…?」
「ふふっ」
彼女は俺が見たことの無い色気放ち…かわいいと言うよりは美しい表情をして笑い。
「っ…」
俺の唇を奪って行った。
ありえない程にも激しく…そして大胆ではなく…強引に。
唇を離そうとしても…彼女は一向に引く気配が無い…。
「もう、私だけの…あなた…」
秋は…俺を両腕で包み込む。
「…秋、いや…」
これは神崎か?
秋はこんな大胆じゃない…。
きっと神崎が…精神を乗っ取っているに違いない。
「やめろ、神崎っ」
俺は彼女を遠く突き放し。
彼女の顔を睨む。
「もう…終わり?」
「…黙れ、どういうつもりだ…?」
旅行の時、暴走気味の秋を抑えてくれて…いい奴になったと思ってたのに…どうして…?
「いけないの?」
「……ああ」
「嫌よ、あなたは私の彼氏なのよ、私が何をしても自由でしょ」
「…あのなぁ…俺は…」
純真な秋が好きなんだぞ…。
「…ほら…いいんだよ、好きにして」
神崎は制服のシャツのボタンを一つずつ外していく。
「…やめろ」
俺が抑止しようとすると…彼女は俺の手を掴み。
「…あんっ…」
自分の胸へとあてがった。
「お、おいっ…」
俺は急いで手を胸から遠ざける。
「やっと触ってくれた」
いやらしく…そしてなにかを得た様に満足げな表情を浮かべる。
「…お前…」
「いいでしょう、このまま…」
彼女は俺に密着してきて…俺の制服のボタンも外していく。
「冗談じゃないっ…神崎、いいかげんにしろよ…」
「神崎?」
「ああ…もう、わかってる…お前が秋じゃないことくらい」
「へぇ、そうなんだぁ」
「だから…早く秋と代われ」
「残念ねぇ…そんなに奥手だとは思わなかった」
「えっ…」
「まぁいいわ、今日は主人格に返してあげる」
「お前…神崎…だよな?」
行動…言動…が微妙に違う…。
「さぁ…どうかしら、また会おうね、私だけの…彼氏さん」
彼女が目を閉じるとふっと彼女の体から力が抜けて倒れそうになった。
「お、おい…」
俺は倒れそうな彼女を支える。
「………」
彼女は無垢な寝顔で…寝息をたてていた。
どうやら…秋に戻ったみたいだ。
「…とりあえず、病室に戻るか」
俺は秋を背中に背負い
春奈の待つ、病室へと向かう。

母さんも戻ってきているだろうし…詳しい事を聞こう。
後のことはそれから考えよう…。

叶野と北条…そして自分で殴った頬の痛みは…俺の未熟さを痛切に物語っていた。


えっと…なんか凄くカオスな展開ですね…。
もう、なにがなにやら…。
みなさん今後の展開…予想できませんよね…?








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