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恋愛仲介部
作:MOR



恋愛仲介部の設立2



俺と恋愛仲介部部員二名は俺の家の前まで来ていた
「着いたぞ」
俺は定位置に自転車を置く
「なるほど、ここが貴方のお宅ですか」
叶野は手帳を取り出し何やらメモっている
一体何のメモだ?
「どうぞ」
俺はドアを開けて神崎さんを招き入れる
「あ、お邪魔します」
ペコリと一礼し神崎さんは玄関に入る
「それでは僕もお邪魔させてもらいます」
叶野も玄関へと入る
「こっちです」
俺は神崎さんと叶野を居間へと案内する
「ほう…なかなかの広さですね」
叶野は何かを感心している
「これくらいどのご家庭も一緒だろ」
感心するところなんてひとつも無いぞ
「とりあえず適当に座ってください」
「あ、はい…」
神崎さんは借りてきた猫の様な態度で椅子に腰掛ける
叶野はその隣に座り辺りを見回している
「何か飲みますか?」
お客をもてなすのは当然の行為だからな、相手が神崎さんならなおさらだ
「えっと…じゃあ…紅茶を」
神崎さんは申し訳なさそうに注文をする、遠慮なんか必要ないですよ
「僕はコーヒーをお願いします、できれば無糖で」
お前はちょっとは遠慮しろ
「はいよ…」
俺はやかんに水を注ぎ、火にかける
「じゃあここで待っていてください、ちょっと部屋を片付けてきます」
俺は神崎さんに一礼し、階段を上がり自室へとやって来る
部屋を片付けて置けばよかったと後悔
俺は適当に神崎さんの目に付いてはまずそうな物をクローゼットの中にでも隠しておくとしよう
「それがいいと思います」
急に後ろから叶野が現れる
「待ってろといった筈だが…」
こいつは俺の言うことを聞く気が無いのか
「これはすいません、好奇心が抑え切れなかったもので」
初めて上がった人の家を詮索するのがお前の好奇心なのか?
「それと、忠告に」
「忠告?何のことだ?」
「神崎さんのことです、彼女は直接理事長と繋がっています」
何が言いたい
「ですから今日は、喫煙、飲酒などは控えてもらいたいのです」
失礼な奴だ、祝い事以外で飲酒はしてないぞ
「お前には俺がそんな事をするような男に見えるのか?」
叶野はいつもの気取り声で
「いえ、あくまで忠告ですよ、彼女のことです、悪気が無くても言われると不味い事も喋ってしまいそうでしょう」
確かに、あの方は口が軽そうだもんな、いろんな意味でだが
「それよりもお湯が沸いたようですが」
そういえばさっきから居間の方から、けたたましいやかんの音が聞こえている
俺は叶野をその場に放置し居間へ戻る
すると今ではとんでもない光景が
「あわわっ…どうすればいいんでしょう…」
慌てている少女が約一名
俺は急いで火を止める
「すみません…」
「いえ…でも急に大きな音がしたのでびっくりしてしまいました…」
びっくりって…神崎さん…やかんを使った事が無いんですか?
「それより、先に俺の部屋に行っていてください二階で叶野が待ってると思いますんで」
「あ、はい」
彼女は転ばないようにゆっくりと階段を上っていく
「神崎さん転ばないように…」
全てを言い終える前に、ガンッと言う音が聞こえた
「あいたっ……うぅ痛いです…」
遅かったか…

俺はコーヒーと紅茶を入れて、さらに氷枕を持ち二階へと上がる
俺の部屋には叶野と神崎さんが待っていた
神崎さんはクッションにちょこんと座り、叶野はベッドに腰掛けていた
俺は紅茶とコーヒーを机に置く
「…ありがとう」
「ありがとうございます」
二人はお礼を言い、一口飲む
俺は自分の勉強机の椅子に座り、ピンク色の封筒を叶野に手渡す
「これは?」
「俺の机の上にあった、中身は依頼書らしい」
中身を開け、叶野は一読する
「なるほど…わかりました、では、これを初の依頼として受理するのですね」
「見てしまったものは仕方ないだろ」
「そうですね…」
俺と叶野は話しているが神崎さんは蚊屋の外だ
紅茶の温度を冷まそうと必死に息を吹きかけてる
あっ…忘れるとこだった
「神崎さん」
「はい、なんですか?」
俺は一緒に持って来た氷枕を神崎さんに渡す
「さっき階段でぶつけた所を出してください」
「え…」
神崎さんは靴下をめくり膝を見せる、見事に青く変色している
俺は氷枕を変色した部分に当てる
「ひゃう!」
「そのまま冷やしてください、悪化すると大変なので」
「あ…ありがとうございます」
神崎さんは丁寧にお礼を言う
いえいえ…気にしないでください、当然の処置ですから
「よろしいですか?」
叶野が俺に向かい喋りかける
「ああ、勝手に喋れ」
「はい、実は僕はこの沢渡さんに…彼女に面識があるのです」
「知り合いなのか?」
「ええ、多少は、中学の頃にサッカー部のマネージャーをしていた方ですね」
「マネージャー?」
「でも、僕の記憶では部長と付き合っていたはずだったのですが…」
なんともベタだな…
「ですが、この手紙には好きな人がいると書かれています」
「何が言いたい」
さっさと結論を述べてくれ、お前の話し方は聞いてる方も疲れさせる
「では結論から言いましょう、でも手紙から全てを察することは難しい、しかし大きく分けて三つの解釈が出来ます」
奴は自分のポケットから紙を取り出しすらすらと何やら図を書き出す
「まずはこれを読んで大多数の方が思うであろうA案です」
叶野は図を紙に書いてゆく
沢渡、部長、X、と書く
そして沢渡から真っ直ぐに矢印を書きXへと繋げる
「これは部長との関係は既に終了していて沢渡さんに好きな人が出来た、つまり文書通りのパターンです」
それがどうした、俺にはその解釈しか出来ないが
「そして次はB案です」
今度は沢渡から部長へと線を引く
そして線の真ん中に×印を入れる
「これはなんだ?」
「これは沢渡さんと部長さんの仲が悪くなり、それを良くしてくれないかと言うことです」
なるほど…確かにこれで二つの解釈が出来るな、文書的に矛盾も無い
「そして…一番厄介なC案です」
叶野は部長から沢渡に矢印を書き、沢渡からXへと矢印を書く
「これは部長さんと付き合ってるにも関わらず、他の男性を沢渡さんが好きになってしまった、と言うパターンです」
「確かに…厄介だな、俺達は別れさせ屋じゃ無い」
もしその部長が不服を申し立てたら面倒なことになる
「そうですね、C案であるなら仲介は難しいですね、第三者の僕らが解決する問題じゃありません」
ならこれは止めとくか?
「まぁ最終決断は部長に任せましょう、つまり月曜日にならないと活動はできません、ここで話し合うのも時間の無駄と言う訳です」
無駄とか言うけど、お前が勝手に喋ってただけだけどな
で、することも無いなら次は何をするんだ?
「ですから今日は難しい話は無しにして友好関係を深めようじゃありませんか」
爽やかな笑みを浮かべ叶野はコーヒーを飲み干し、カップを机に置く
「友好関係か…」
叶野はともかく神崎さんとは仲良くしたいね
俺が神崎さんに目をやると彼女は紅茶を美味しそうに飲んでいた
猫舌なのかな、なかなか量が減っていかない様だ
さて、これからどうするか

午後11時、俺達は何をするか迷っていた
「どうしましょう、娯楽と言う娯楽は遊びつくしてしまいましたね」
トランプ、人生ゲーム、麻雀、etc…
確かに、こんなに遊んだのは中学生の修学旅行以来さ
どのゲームも神崎さんの圧勝で、残された俺と叶野は二番を争った
勝率は五分五分くらい、それにしても神崎さん…賭け事や勝負事がもの凄い強い
宝くじでも買わせたら一等を当てかねないな、今度、機会があれば適当な六つの数字でも聞いておこう
「ふぁ…なんだか眠くなってきました…」
神崎さんは手を口に当てて大きなあくびをし
傍にあったクッションにもたれかかりそのまま眠ってしまった
無防備すぎるよ神崎さん、それにしてもここに叶野がいるのが残念だ
叶野は神崎さんを一瞥し
「寝てしまいましたね…では、僕達は二回戦でもしましょうか」
叶野は机にあったトランプを取り、軽く混ぜ、上から二枚取り俺に渡す、今度はブラックジャックか
俺は手札を確認する、エースとジャックだ、俺は勝利を確証する
「いい手のようですね…では勝負です」
カードを机の上に置く
叶野は十と九のカード、勝負は俺の勝ちだ
「負けてしまいましたか…どうします、もう一勝負しますか?」
「ああ」
俺達はその後、俺が疲れて寝るまでの間、叶野の相手をさせられた
お前は疲れを知らんのか、と聞くと
「僕も人並みには疲れます、ただそれを表に出さないだけですけどね」
と爽やかに答えやがった
俺は溜息を着く暇も無く、叶野の配るトランプを確認する
叶野は自分の手札を見て肩をすくめている、どうやらいい手札では無いらしい
そんなこんなで就寝したのは午前4時、次の日休みで助かった。


俺が目を覚ますと叶野と神崎さんは既にいなかった、そして机の上には書置きらしいメモが
そのメモには叶野の字でこう書かれていた
「昨日はお疲れ様です、僕達は帰ります、では月曜日にまた学校でお会いしましょう」
俺はそれを読み終え手紙を机に置き、再び夢の世界に旅立とうと布団の中に潜り込んだ
「プルルルルルル」
その時、俺の枕元で携帯電話がけたたましい音を立てた
誰だ?こんなベストタイミングで俺に電話をかけてくる奴は、携帯のディスプレイを見ると…
栄治だった、俺は予想外の相手に対し仰天、そしてベッドから跳ね起きて服を着替え
洗面所で顔を洗い、歯磨きをし、空腹をこらえつつ髪をセットし家を出る
この間たった五分、普段からこの神業を使えれば遅刻とは無縁の生活を送れるだろう
だが朝の五分は重要な睡眠時間だ、多くの学生にはこの気持ちを共感していただけると思う
自転車にまたがり、はっきりとしない頭で駅へと向かう
たくっ…今日はのんびり寝ていようと思ったのに
脳内のストレス値が限界を振り切ろうとしていたとき
やっと目的地である中央公園へとやって来た
自転車を駐輪所に止め、走るでもなく歩くでもない歩調で進んでいく
そして、待ち合わせである公園の中心、噴水の広場へとやって来る
「遅い」
俺のことを見つけると一人の金髪の女子が寄ってきた
金髪なんて私立であるうちの高校では即刻NGだぞ、神崎さんは茶髪だが理事長の娘と言うことで黙認なのかな
それにしても随分とカジュアルな格好をしているな、ファッション雑誌に載ってる奴みたい
「うるさい…俺は今日は寝てる予定だったんだ…」
いつものようにだるそうに答える、休日は休むから休日と言うんだぞ
「まぁまぁ…いいじゃないか、たまに遊びに行くくらい」
俺達の間に栄治が割って入る
「あのなぁ…お前はともかく、何でこいつがいるんだよ」
俺は女子を指差す、指を指され彼女は目をぱちくりとさせてる
「良いじゃないか、遊ぶときはみんなのほうが楽しいしさ」
「…はぁ」
お前の博愛主義には感服するよ、俺は既に疲れてしまったので近くのベンチに腰掛ける
「池上…高校違うのにまだ俺らとつるむ気か?」
一応聞いておこう、ちなみに池上は俺の中学の同級生、家が近かったのでよく栄治と俺でつるんでたっけ
高校は近くの公立に進学した、まぁ成績が足りなくて俺らの高校に来れなかったのだが
「いいでしょ、高校生になって、はい、さよならじゃ親友じゃないよ」
俺は今までに親友を作った覚えは無いが、こいつの感覚では俺は既に親友らしい
俺は軽く溜息を着き、これからどうするのか訊ねることにしよう
「で、これからどうするんだ?」
どうせいつも通りだろうが一応聞いておこう、セオリーって奴さ
「いつもと一緒、町を歩いて遊ぶだけ」
池上は好奇心の塊のような笑みを浮かべて半分眠っていた俺の頭を起こすような声量で
「それでは出発っ!」
俺の耳元で言い放った
池上は耳鳴りしている俺の手を引きずりながら歩いてゆく、自分で歩けるから離してくれ
相変わらず、こいつのテンションにはついて行けんね、俺にはその30%位のテンションで十分だ
そんな事を思っているうちにデパートへとやってきた、何でもある便利な所なのでこの町の市民は一ヶ月に一回はお世話になる
入り口の自動ドアを勢い良くくぐり、エスカレーターに乗る
三階まで上りエスカレーターを降りる、ちなみに三階は衣料品売り場だ
池上は到着するや否や何着か服を持ち試着室へと入っていく
しばらくして…
「じゃーん」
池上がその服を試着してカーテンを上げる
俺と栄治はそれを褒めたり、こっちの方がいいんじゃないかと意見を述べる
最初のうちは真面目に意見を述べていたものの段々疲れてきた…
「俺、ちょっと用を思い出した」
と、栄治に言ってこの場を後にする
さて、どこに行くかね…あの様子じゃ後一時間はかかるな…
何で女ってあんなに買い物に時間がかかるんだろう…俺には分かりかねん
特に行くところも無いので同じ階にある本屋へとやって来る
すると見知った人物を発見した
「影島…」
俺が声をかけると影島は「どうも」と一礼する
黒いズボンに黒い上着…地味と言うか…喪服か?
俺がつっこもうとしていると影島は一冊の本を指差す
何々…花札入門…
「…部活でいっしょにやりませんか?」
影島はか細い声で聞いてくる、耳を澄まさなければ聞こえないくらいだ
口元にスピーカーでもつけたほうがいいんじゃないか?
にしても花札か、正月に母方の田舎でやった覚えがあるが…どんなルールだっけ?
「別にいいけど…こういうの好きなのか?」
「はい…」
一緒に居るとこちらまでダウナーな気分になりそうなオーラをかもし出し、影島は本を抱えレジへと向かった
さてと、俺は漫画でも買ってくか…

漫画を数冊買い、今月の小遣いも後半分か…何て考えながらさっきの場所へと戻る
「もう、どこに行ってたのよ」
すっかり、おかんむりの池上の後を両手一杯に買い物袋を抱えた栄治が着いてくる
「悪かった…ちょっと知り合いに会ってな」
「そんなことは聞いてないの、それよりお腹空いちゃった、ご飯食べに行こっ!」
池上はそそくさとエスカレーターに乗る
俺は栄治から片方の買い物袋を受け取り、池上の後に続く
ファーストフード店に入り、適当に注文を済ませ席に着く
「どう、学校は楽しい?何か面白いことあった?」
池上は興味津々に聞いてくる
「別に」
俺は即答、あったとしてもこいつには言わん方がいい、昔から首を突っ込みたがる性格だからなぁ
恋愛仲介部を作ったなんて言ったら活動に加えろって言いそうだしな
「あれ、面白い部活を作ったんじゃなかったけ」
と、栄治が口を挟む、おのれ栄治、余計なことを…
俺は栄治を後ろからつねる
「っ……」
顔を歪め痛がる栄治、いつも一言多いんだよお前は
「部活?どんなの?面白い?」
ほら、既に興味を持ち始めたぞ、あっという間に質問攻めだ
「つまらん、どこにでもある普通の部活だ」
簡潔に言っておこう、下手に関心を持たれると困るからな
「そんなこと無いでしょ…ねぇ教えてよぉ」
甘え口調で聞かれてもなぁ…その手には乗らないぜ
「ダメなものはダメだ、それにお前には関係ない」
と、言って俺は残ったジュースを飲み干し、トレイを戻し
「じゃあな、俺は帰る」
池上と栄治に手を振る
早くこの場を後にするとしよう、撤退すること疾風のごとくだ

翌日、俺はいつもの遅刻ギリギリの時間に通学路を歩いていた
綺麗な青空の下、俺はどんよりとした気持ちを引きずっていた…
そう言えば今日から本格的に活動を開始するらしい
めんどくさいねぇ…俺は重たい鞄を持ちながら校門をくぐる
この時間はさすがに人が少ないな
今度から自転車通学にしようかと考えていると栄治がやってきた
「やぁ、おはよう」
それから俺達は他愛も無い会話をしながら教室へと向かった
こいつは気楽で良いよな

一時間目を睡眠に費やし、はたまた二時間目、三時間目と睡眠に費やし
挙句の果てには四時間目と五時間目も睡眠に費やした俺は
六時間目終了直前に奴の声で目が覚めた
「起きろ、部活に行くぞっ!」
充電池を一日充電して置いてもこんなに元気は持続しないだろうよ
俺は冬眠から覚めた熊のように立ち上がり、鞄を持って部活へと向かう
部室へと来ると既に全員集合していた
ソファーにちょこんと腰掛けたフランス人形のような神崎さん
壁にもたれかかり「どうも」と、爽やかに言い放つ叶野
そして部室の隅で花札入門を熟読中の影島
こいつらは既に部室の付属物か…と、言うくらい部室に溶け込んでいた
俺は神崎さんにお辞儀をし、いつものパソコンデスクの横に鞄を置いた後
いつものお茶を入れる作業へ移るとしよう
五人分の湯飲みを机に置いた後、順々に茶を注いでいく
自分の湯飲みを取り、俺はパソコンデスクに座り椅子に寄りかかる
各自お茶を取り、自分の定位置へと戻る
すると叶野が口を開いた
「例の沢渡さんですが、昼休みに僕が会ってきました、放課後部室に来るようにと言っておいたのでそろそろ来ると思います」
叶野の長ったらしい発言の後、タイミングを見計らったかのようにドアをノックする音が聞こえた
「どうぞ」
誰も答える雰囲気が無かったのでとりあえず俺が返事をする
そして一番近くに居た叶野がドアを開けて沢渡さんを中へと招き入れる
記念すべき依頼人第一号の沢渡さんはいかにも普通が似合う女子であった
叶野にエスコートされてお客様シート(神崎さんの座っているソファーの反対側)に座る
「ようこそ我が恋愛仲介部へ、あなたの悩みは既に解決されたも同然、大船に乗ったつもりでいてくれ」
奴の発言に沢渡さんはポカァンとしていた、そりゃそうだ泥船の間違いだろう
それにしても奴の自身の発生源はどこなんだ?
俺が頭の中でそれを一生懸命探していると叶野が説明をしだした
「では、依頼内容をお聞かせ願いますか?」
叶野はホワイトボードの前にスタンバイ
「はい…その…私は最近好きな人が出来たんです…」
どうやら叶野のB案は否決されたようだ
叶野はサラサラと沢渡さんが喋る言葉を一字一句丁寧に書き込んでいく
「それは一体誰なんですか?」
俺が聞くと
「えと…貴方は?」
そりゃ当然の疑問だな、名前も知らん奴に自分の意中の相手を教えるバカなんてこの世にいないよな
「俺は…」
「副部長だ」
俺の紹介を制し奴は勝手に俺を紹介をする
頼むから黙ってろ
沢渡さんは続きを喋る
「相手は…五組の子なんですが…」
「五組…ですか」
五組と言われても俺は五組に知り合いなんていない
「五組ですね、ここに五組全員の名簿があります、今日の六時間目終了時に先生から借りてきました」
叶野は生徒名簿を沢渡さんに手渡す
「いいのか、生徒名簿なんて借りてきて」
俺が叶野に聞くと
「大丈夫ですよ、悪用するわけではありませんから」
と爽やかにスマイル、さらっと怖いこと言いやがって
沢渡さんは名簿をペラペラとめくっていき、一人の男子生徒のところで手を止めた
「この人です」
沢渡さんが指を刺した男子学生はいかにも普通が似合う男子学生だ
沢渡さんと付き合っていても自然な形になるだろう
「それでこの彼との接点はあるんですか?」
ちょっと突っ込んだ質問をぶつけてみよう
「実は…」

彼女の話はこうだった、彼女は中学の頃にサッカー部のマネージャーをしていた時に
彼と知り合ったらしい、だが、サッカー部部長に付き合おうと迫られ断ることも出来ずに交際
しかし、違う学校に進学したので部長氏とは疎遠になったが、いまだに連絡をしてきて迷惑しているのだと言う
叶野の言う一番面倒なC案が正解だったらしい
叶野はそれらを聞いた後、沢渡さんを送っていった
残された俺達は今後の予定でも考えとくか
「で、どうする気だ?」
俺は奴に問いかける、俺や叶野が何を言っても聞かないし
この部のルール的存在の奴に聞く他無い
「まずはその部長に話を聞きに行こう、叶野が戻ったら直ぐに行くぞ」
奴は鞄を背負い込む、すると叶野が戻ってきた
「ただいま戻りました」
俺達は鞄を持ち部長の家へと向かうことになった
場所はと言うと叶野が沢渡さんに聞いたらしい
俺達はまるで集団下校のように集団で歩いてゆく
部長の家は電車に乗り二駅ほど行ったところにあるそうだ
そんな訳で俺達はまずは駅に向かうことにした
駅といってもそんなに大きくは無いので快速などの止まらない駅だ
俺達は順々に切符を買っていく
「?」
頭に?マークを出現させている神崎さん
「どうしたんですか?」
神崎さんは叶野が人数分買い配布した切符をまじまじと見つめている
「あの…これはなんですか?」
と、聞いてくる神崎さん
「切符ですよ、知らないんですか?」
「はい…初めて見ました」
「初めてって…神崎さん今までに電車に乗ったことは?」
「無いです…移動は全部車でしたから」
なんという箱入り娘、それと財力の差を感じさせられるな…
俺達は改札を通る
「ううぅ…通れません…」
改札を通り抜けられずにあたふたする神崎さん
…切符を入れないで通り抜けようというのは無謀ですよ

俺達は電車に十五分ほど揺られ隣町へとやってきた
普段は来ないので道が良く分からないな
「こっちのようですね」
叶野は地図らしきメモを片手に歩いてゆく
その後について行く俺達、叶野だから迷うなんてことにはならないと思うけどな
それから五分ほど歩き、一つのマンションが見えてきた
一見豪華に見えるマンションは25階建てだった、中に入り俺達は呼び出し口から部屋番号を入力する
すると直ぐにだるそうな声が聞こえて来た
「どなたですか」
部長氏と思われる男の声だ
「僕達は沢渡さんの知り合いの者でして…少しお話する時間をいただけないでしょうか?」
叶野の口調はまるで怪しげな勧誘に来たセールスマンのような感じだ
「あーあいつの…分かった…今から降りて行くから」
そういうと部長は回線を切ってしまった
しばらくして部長と思われる男がエレベーターから降りてきた
「どうもすみません」
叶野は会釈をする
部長氏はちょっと戸惑った顔をしている
そりゃそうか…こんな大人数で来たら誰だって驚くよな
そしてエントランスのベンチで話を始める
「つまり、沢渡さんと別れていただきたいのですが…」
一通りの説明を終えて叶野が言う
「そりゃ誤解だな…」
部長氏は腕組をして困った顔をする、二枚目はどんな顔をしてもかっこいいな…
「どういうことでしょうか?」
そして部長氏は説明を始めた
…………
「と、言うわけなんだ」
部長の言い分はこうだった、沢渡さんの方が部長に言い寄って付き合い
貢だけ貢がせて関係を切られてしまったらしい
なんとも哀れな話しだねぇ
「なるほど…これは予想外の展開ですね」
帰りの電車の中、叶野が悩んだ顔をして呟いた
「悩むことは無いだろ、どっちかが嘘をついてるのは確かだろ、俺にはさっきの部長が嘘をついてるようには見えんがね」
「僕もそう思います…ですがなぜ嘘をつく必要があるんでしょうか?僕はそこがわかりません」
世の中そういう女もいるって事さ、特に理由は無いんだろ
「もうこんな時間ですか…では…そろそろ解散にしましょうか」
時計を見て叶野は奴に向かい言う
「わかった…じゃあまた明日」
本当に何もしない奴だ…叶野に部長を譲ったらどうだ?
それだけ言い終えて奴はさっさと帰ってしまった
さて、俺も帰るかね、ちょうどお腹も減ってきたし

両親がやっと実家から帰ってきたので今日は食事の支度をしないでいい
俺は食事を終えて見るテレビも無いのでさっさと風呂に入り十時には既に布団に入っていた
すると携帯電話がけたたましく鳴った
本命が叶野、対抗馬が栄治、大穴が神崎さんと言ったところか
俺は携帯を取り電話に出る
「もしもし」
「よかった、まだ起きてましたか」
本命的中、受話器から聞こえる叶野の声に溜息が出る
「すみません…あれから色々調べたんですが…」
「調べたって沢渡さんのことか?」
よくそんな暇があるねぇ…俺だったら暇があってもやらないけどな
「はい、実は…」
…………
「何てことだ…」
「そうですね…僕も知ったときには驚きました」
「で、これからどうするんだ?これを奴に言うのか?」
「そうですね…僕としても部長には言わない方がいいと思います」
そりゃそうだ…これじゃあ仲介なんて関係ないもんな
「はぁ…」
溜息、最近つく回数が増えてきたな
「それで僕らで何とかしようと思いまして…」
「どうやってだ?」
「…明日の放課後に沢渡さんを部室に呼んでください、僕に考えがあります」
「そうか…わかった」
「では、おやすみなさい、また明日学校で会いましょう」
叶野はそう言うと電話を切ってしまった
明日は忙しくなりそうだ

翌日、俺は叶野に言われた通りに沢渡さんを部室に連れて行くために
帰りのホームルーム後すぐに三組の教室へと向かう
「沢渡さん」
俺は鞄を持ち、帰ろうとしている彼女を見つけ呼び止める
「貴方は…確か恋愛仲介部の…」
俺は昨日のことを寄り詳しく聞かせてほしいなどと適当なことを言って沢渡さんを部室へと連れてきた
部室のドアを開けるといつもの爽やかスマイルが俺を出迎える
「ご苦労様です」
俺の労をねぎらってから叶野は沢渡さんを昨日と同じ場所に座らせた
「では、簡単に説明させていただきます」
叶野は今日はホワイトボードを使うことなく口で説明してゆく
「僕達は昨日、サッカー部の部長さんに会いに行ってきました」
「…そう」
「それで部長さんに貴方のことを諦めるようにと事情を説明したのですが…逆上した部長さんは貴方の好きだと言う男に合わせろと言ってきましてね…仕方が無いので会わせたんです貴方の好きと言う男子生徒に」
あれ?お前そんなことまでしていたのか…?
「…それでどうなったの?」
沢渡さんは続きを聞かせろと言わんばかりに叶野に言い寄る
「落ち着いてください、僕の監修の元で平和的に解決してきました」
「ならいいんだけど…」
「おや、結論は気にならないのですか?」
「別に、だって解決したんでしょ、だったら結果なんて…」
「両方とも…貴方を諦めると言う結論になりました」
「えっ…」
ありえないことでも聞いたかのように沢渡さんの顔が豹変する
「そんな筈は無いわ…だって…」
「だって彼は私の彼氏なのに…ですか?」
涼しい顔で叶野が言い放つ、…なんだって?
「すみませんが貴女のことを少し調べさせていただきました」
「なっ…」
「貴女のクラスの女子に聞いてわかったんです、貴女が男癖が悪いことは」
叶野…さっぱり話が見えないんだが
「これを見てください」
叶野は俺に一つのファイルを渡す
「これは…」
その中には言っては失礼だがあまりはっきりしない男子の顔がずらりとプロフィールと一緒に明記されている
「中学一年生から沢渡さんが付き合ってきた男の数です」
なんだって…ざっと二十人はあるぞ
「一人一人に細かに貴女のことを聞くのは骨が折れましたよ」
叶野は肩をすくめる
「全て、好きな人が出来たと言う理由で振ったそうです、貢だけ貢がせてね」
「信じられない…わざわざそんなことまで調べてくるなんて…」
沢渡さんは驚きと困惑の表情を浮かべている
「性分でして、気になったことは最後まで調べないと気がすまないので」
お前は探偵か刑事にでもなったらどうだ?
「……ばれちゃしょうがないわね…でも騙される方も悪いのよ」
沢渡さんは開き直り鞄を持ち部室から出て行こうとする
「まぁ貴女の言い分もわからなくはありません、しかし高校生でそんな事をしているのは学生としてどうかと思いますが」
「へぇ先生にでも言おうっての…好きにすると良いわでも、貴方の発言だけじゃ決定的な証拠にはならないわ」
確かに…俺達の妄言と取られる確率の方が高いのは目に見えている
「それくらいのことは予想の範囲内です、影島君」
叶野が指をパチンと鳴らして、隅に居た影島を招き寄せる
てか、居たのか影島…
影島はポケットからテープレコーダーを取り出す、まさか…
「この通り、録音済みです」
叶野の爽やかスマイルが沢渡さんに止めを刺す
「どうでしょう、このまま生徒指導室へいかれると言うのは」
沢渡さんはがっくりと力が抜けてその場に突っ伏す
叶野はそんな沢渡さんの腕を引っ張り、生徒会室へ連れて行き、本人に自供させて
処分は自主停学一週間と言う形で平和的に解決した
「では、機会があればまた相談にいらしてくださいね」
叶野は生徒指導室の中で先生にこっ酷く叱られている沢渡さんに言い
外で待っていた俺と影島に合流した
「待たせてしまってすいません」
叶野は俺に一瞥、そしてその後
俺達は三人そろって部室へと帰還した
俺は三人分のお茶を入れてから定位置のパソコンデスクに腰掛ける
さて、どういうことか聞かせてもらいたいねぇ真相を…
「で、どういうカラクリなんだ?俺には何がなんだか分からん内に解決しちまったが」
俺は茶をすすっている叶野に尋ねる
「これは僕の仕組んだことなのです」
なんだと?
「まずは僕の正体をお教えしましょう、実は…僕は理事長直属の生徒指導係なのです」
「生徒指導係だぁ?」
「そうです、詳しくは生徒や先生を監視する生徒のことです」
「…へぇ」
「僕は独自に調査して沢渡さんのことを知りました、それで告発する機会を狙っていたのです」
「で、恋愛仲介部と関係があるのか?」
それならお前の個人活動でよかったんじゃないのか?
わざわざこんな部を作らんでも
「いいえ、はっきり言うとありませんね、言わば副業、つまりこちらは娯楽ですよ、今回は都合上利用させていただきましたが」
「利用だと、俺は東奔西走と忙しかったんだが」
俺の努力は無駄だったのか…まぁ特に何もしてなかったけど
「すみません、お詫びにコーヒーでもまた奢りますよ」
微笑する叶野、こいつの前では下手に隙を見せられんな…今度からは気をつけよう
「一つ疑問なんだが」
「なんですか?」
「あの手紙もお前が書いたのか?」
「はい、うまく書けていましたか?結構苦労したんですよ、それに彼女は自分が手紙を出したとは言っていません」
そういえばそうだったような…全てはこいつの思惑通りか、
この三文芝居に付き合わされる身にもなってくれ
それと、今度は俺にあらかじめ説明してからやってくれ
そしたら第三者目線でいられるからな
「それよりもテープレコーダーを用意してるなんて準備が良いな」
「これのことですか?」
叶野はポケットからカセットテープを出して近くのゴミ箱へと投げ入れる
「お、おいっ、それは重要な証拠じゃ」
「大丈夫ですよ、録音なんて最初からしていません、これは所詮、彼女から確信を得られる発言を引き出すトリガーですよ」
「何て奴だ…」
こいつだけは敵に回したくない…
そう思った一瞬だった

結局、叶野は真実を語らないまま依頼は迷宮入りとなった
しかし奴はそんなことは気にせずに次の依頼者に期待している様だ
俺は仕方なくロッカーから手紙を一枚取り奴に渡してやった
それを一読し奴はにやりと口元を緩ませた…
嫌な予感
さて、俺はさっさと非難するかねぇ
俺は家に帰るために鞄を探す、が無い…
もしや…
奴はニヤケ顔で窓の外の部室を指差す
「はぁ…」
俺は溜息を吐き、恋愛仲介部部室へと向かった
もの凄い重い足取りで…
まいったねぇ…次は何が起こるやら


もう…『。』とか全然無い(涙)作者の未熟さを感じさせます。文書ミス、誤字脱字等はこまめな更新で直して行きたいと思います。精神幼き頃、書いたのをそのまま掲載しているので…本当にすみません。








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