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最近ドロドロな展開で申し訳ないです。
恋愛仲介部
作:MOR



恋愛仲介部の混迷1


恋愛仲介部の混迷1


指輪を池上にプレゼントしてから約一週間が経過していた。
俺としては…池上の機嫌がよくなったことに安心し
平凡な毎日に埋没しつつあったのだが…。
神崎の動向に気を配る暇がなかったのは俺の失敗だったと思う…。
つまり…彼女の思惑を知る術なんてなかったのさ…。

休日ってのは休むから休日っていうんだが…。
「…なんで俺の家にいるんだ?」
俺は当たり前の様にリビングにいる神崎に問う
「あら、いけない?」
「いや…いけなくは無いが…」
なんでこうタイミングがいいのだろうか…?
今日は池上はひさしぶりにお母さんと会うらしく出かけてるし
月さんと母さんは買い物に行ってるから丁度暇だったんだよな…。
そんな俺が暇で暇でしょうがない日に俺の家に来るなんて…。
もしかして…俺の行動を監視しているんじゃないか?
「ねぇ、今日暇?」
「…まぁ…暇と言えば暇じゃないこともないが…」
俺がそう言うと彼女は嬉しそうに微笑んで
「じゃあ一緒に旅行に行こう」
「はい?」
今…旅行と聞こえたのだが…。
「すぐに車呼ぶね」
携帯電話を取り出すと神崎はどこかに電話をかけた。
「あ、もしもし…うん、私、…彼の了承が取れたから宿の準備して…」
と言うだけ言って電話を切る。
「…あの…どちらに電話を…?」
「西沢に宿の準備の連絡」
「宿…?」
「ええ…温泉宿」
「…なぜに…?」
「今から二人で行く為に」
ちょっと待て…一緒に行く…だって?
おかしいだろ…池上ならともかく…なぜ神崎と二人で温泉に行かなきゃならん…。
「神崎家の私有地だから気にしないでゆっくり寛いでね」
「俺は…」
断れ、そうだ…池上の為にも
「…その、いつものお礼なんだよ」
「えっ…」
「いつもお世話になってるから…私からの休息のプレゼント」
休息…?
「でも…俺は…」
「大丈夫、私じゃなくて…この子がお相手するから」
と言って彼女は目を瞑って深呼吸をした。
「…ええと…その…ごめんなさい、いきなりで…」
くそう…間が悪くなって表に変わりやがったな…。
「あの…ダメでしょうか?」
久々の可愛らしい神崎さんに…頼まれると…断れない…。
「はぁ…」
俺…なさけねぇ…。


こんな成り行きで…俺は現在西沢さんの車に乗っている。
「あの…どこまで行くんですか?」
運転手の西沢さんに聞いてみる。
「もう少しで到着いたします」
と言ってくれるが…行き先は内緒な様だ…。
高速道路を走ること2時間弱…。
俺達は…秘境?
いや…神崎家の特別私有地らしき所に到着した。
「では、明日の朝、お迎えに上がります」
「は、はい」
ペコリとお辞儀をする神崎さん。
「あ、あの…今日って…泊まりなんですか?」
「え…その…ダメですか…?」
「…ダメじゃないですけど…」
帰ろったって…無理だろ…西沢さん帰っちゃったし…。
「………」
微妙な沈黙…。
「まぁ…とりあえず、中に入りましょうか…」
「え、はい…」
神崎さんと俺は敷地内へと入ることにした。

敷地内は広くて…色んな設備が色々あった。
ジムみたいな施設や遊園地的な施設まである…。
本当に金持ちなんだな…神崎家。
事ある事に納得させられてるな…。
施設内を案内に沿って歩いていくと大きな宿泊施設の様なところまで辿り着いた。
「えと…ここです」
「へぇ…」
大きな建物だ…でも人の気配がしない…。
「あの従業員の方は?」
「いません…その…二人きりですから…」
じょ、冗談だろ…。
彼女はIDカードらしいものを扉に通し
中へと入っていく。
「宿泊は4階でできるんですよ」
俺達はエレベーターに乗り、4階へと向かった。

…部屋が沢山あるのに人の気配がしないのは不気味だな…。
神崎さんの後をついて行くと一つの部屋の前で彼女は止まった。
「ここが泊まるお部屋です」
「ここが…ですか?」
部屋の中に入ると…和風だった外観とは違い
ベッドが二つと白が特徴的明るい洋風な部屋だった。
「えっと…思ったより広いんですね」
「ええ…二人部屋ですから」
「…そうなんですか」
…ん?
二人部屋…?
さすがにそれは…。
「浴衣に…着替えて来ますね…」
と言って神崎さんは浴室の方へと行ってしまった。
…さて。
俺は少し横にでもなるか…。
浴室の方から…彼女の着替える音が聞こえてくる…。
…いかん。
こうも静かだと寝るに眠れない…。
まぁ…ベッドに入って目を瞑っていればその内眠れるだろう…。
俺も浴衣に着替えて寝よう…
うん、それが一番良い。

浴衣…ってのは普段着ないが寝心地はかなりいいものなんだと思った。
通常のパジャマより着ている感覚が軽いから体にかかる負担が少ないのかもしれない…。
「ううん……」
どのくらい寝ていたのだろうか…
ちょっと寝汗をかいたみたいだ。
「あっ…起きましたか?」
俺の横のベッドに神崎さんが座っていた。
「あ…すみません、俺…寝ちゃって…」
退屈にさせてしまったのだろうか…。
「いいえ、寝顔を見せてもらいましたから…」
彼女は可愛く微笑む。
よくみると…この間の指輪をしている…。
「あの…それ…」
「あ、これですか…」
確か…「Autumn」だっけ…?
「あなたが選ばなかった…残りのリングです」
彼女はそれを見つめている。
「え…」
「なんで…買ったと思いますか?」
「いえ…わからないです…」
そういえば…どうして態々買ったのだろう…。
「この「Autumn」は…私に似ているから…」
「似ている?」
「はい…」


そう…この指輪は私に似ている…。
イメージも…池上さんと対象的だし…
なにしろ…名前が…。
でも彼はそれを気づいていない…。
…でも…それでいい。
私は…春の様に芽吹き、花が咲き誇るイメージじゃない。
そう…秋のように…紅葉して、冬の寒さに向けて葉を落とす…
まるで…誰にも相手にされない…葉を無くした木々のように…。
彼にとって…私は…そんな存在なのだろうから…。


「神崎さん?」
彼女は少し寂しそうな顔をしたまま黙っていた。
「え、あ…ごめんなさい…考え事してて…」
「…えっと似ているって…」
「ああ…ごめんなさい…質問の途中でしたよね」
彼女は遠くを見つめて…
「…選ばれない辺りが…私にそっくりだなって…」
「選ばれない…?」
「…あなたにですよ」
「えっ…」
「私は池上さんの様には…あなたに…見てもらえませんから…」
「…神崎さん…」
「だから…今日…だけ…私と…私だけのことを考えてくれませんか?」
「え…それって…」
「今日…一日…私を…彼女にしてください…」
彼女は俺に必死に訴えかけている様だった。
「え…それは…その…」
「…ごめんなさい…無理ですよね…」
彼女の瞳が潤んでいるのがわかった。
でも…言わなければならない…
俺は…
「ごめんなさい…俺は…その…池上が…好きだから…」
神崎さんの言葉を肯定する。
彼女を泣かせてしまったと思った…。
俺は…それほど彼女を弱い存在に思っていたからだ。
「そうですよね、わかってました」
彼女は俺に向き直り、作り笑顔でそう答えた。
「えっ…」
「断られるくらい…予想していました」
予想…していた?
「あなたは一途な…方ですから」
「…え…えと…」
「そこが大好きなんですけどね」
彼女は笑顔を作ると俺に近づいてきた。
「か、神崎さんっ!?」
そして俺に抱きついて胸に顔を埋めてきた。
「…最近、寂しかったんですよ…」
「…え…あの…」
「ずっと…別の私と…楽しそうにしてて…」
彼女はすすり泣いているのか…
俺には…彼女が俺を…
『放したくない』…そう、訴えている様に思えた。
「羨ましかった…私も…あなたに…キスしたり…抱きしめて欲しかった…」
俺に巻きついている手に力が入る。
「…だって文化祭の時も…私…あなたと…一緒に…いたくて…でも…」
裏が…彼女を…乗っ取ったんだよな…。
「………」
なにも言えなかった…
彼女になにか優しい言葉をかけてしまったら池上を裏切ることになる…
それはダメだ…。
だから…
「…すいません」
そう言って俺は彼女の手を俺の体から離し
「…その…汗…かいたんで…温泉…行って来ます」
彼女の顔を見ずに俺はその部屋を後にした。

やれやれ…。
神崎さんは保護欲をそそる可愛らしくて儚いイメージだった。
でも…それはもう違う
彼女は彼女なりに…
俺に気持ちを伝えるまでにいたっているのだ…。

温泉に向かう。
案内板を見たら温泉は下の階の3階だった。
エレベーターを待つのも面倒なので階段で行くとしよう…。

温泉に来ると一人で入るには広すぎる空間が広がっていた。
温泉なんてひさしぶりだったが…。
俺は…素直に楽しむ…ことが…できなかった。


部屋に戻ると神崎さんはいなかった。
タオルとかも無くなっていたので彼女も温泉に行ったのだろう…。
…沈黙が重苦しい。
どうを考えても俺は…彼女に答えてやる事ができない…。
だから…彼女に会ったら…今度こそ…
「………」
そんなことを思っていると神崎さんが帰ってきた。
「………」
俺は彼女から無言で目をそらした。
「…ごめんなさい」
彼女は一言それを言うと…。
部屋の電気を消した。
「えっ…」
不意に視界が真っ暗になったので焦る…。
「……好き…」
俺のことを神崎さんは後ろから抱きしめる。
その手は…震えている。
どうして…?
解かれて…諦めれば…楽に…なれるのに…
俺なんかじゃなくて…もっと良い男くらい…いっぱいいるのに…。
「……私…」
彼女は俺からの返答がないので手を離した。
そしてスルスルと浴衣の帯を解いていく…。
「か…神崎…さん…」
彼女は半分ほど浴衣を脱ぎ捨てて俺に抱きついた。
「…抱いて」
大人しくもない…大胆な彼女でもない…
そんな口調で俺に求める。
彼女の身体を見てはいけない…
そう思い俺は目を閉じる…。
「っ…」
だが、それを見て彼女は俺の唇を塞ぐ…。
「っ…ん…」
嫌らしく舌をねじ込んでくる…。
酔った時の月さんなんて比じゃないくらいに…彼女は俺を求めてきている。

どうしてこんなにも…
俺は…池上が…。
もし…池上と出会ってなければ…。
あの時…文化祭で…壇上に一緒にいたのが表の神崎さんなら…。
そして…あの場に池上がいなかったら…。

この…儚く…可愛らしいこの子を…存分に抱きしめて…
愛して…キスをしてあげれるのに…

自分の中にもどかしさが渦を巻いている…。
なんで…
俺は池上を愛しているのに…。
神崎さんを…。

「あっ…」
と、神崎さんは声を上げた…。
「えっ?」
「…ふぅ…もう、あの子ったら…」
一瞬にして…裏に…神崎に意識を乗っ取られたらしい
「…ごめんなさい」
神崎は浴衣を直して俺から遠ざかる。
「…本当にごめんなさい…あの子…最近不安定だったから…あなたを旅行に誘って慰めてもらおうと思ったんだけど…」
「…不安定…?」
「ええ…その…あの子らしくないの…」
確かに…今日の彼女は…彼女らしくない
「…あの子の事…嫌いにならないで…あの子は…本当にあなたのこと…」
「……ああ…わかってる」
神崎さんを嫌いになる訳が無い…
でも…これ以上距離が近づいたら…俺は…
池上じゃなくて…神崎さんを…選んでしまう。
そう、考えると怖くなった…。
「しばらく…あの子とあなたを会わせない方がいいわね…」
「…ごめんな」
「…いえ、私の…せいでもあるもの…」
神崎は申し訳なさそうに言った。


ふざけないで…。
私の怒りはピークに達していた。
どうして…あんなこと…。
私とあの子は一心同体。
彼女が何を考えているかは直ぐに分かった。
彼女は…彼に…抱いてもらうと思っていた…。
後のことを考えずに…。
私は自分を粗末にするあの子が許せなかった。
だから…あの子が落ち着くまで…私が主格になろう…。
じゃないと…あの子は…自分を見失ってしまうと思ったから…。


とりあえず、落ち着いたので夕食にするとしよう。
神崎に連れてこられた食堂はかなりの広さで
学校の2学年の生徒全員が入っても余裕があるくらいだ…。
それでまぁ…そこには知った顔が三人いた。
「どうも」
と挨拶する手負いの叶野と
「お待ちしていました、ご主人様」
深々と頭を下げる月さん。
「あ、こっちだよ」
と俺を手招く母さんの三人。
「え…なんでここに…?」
「二人じゃ気まずいから呼んだのよ」
神崎が答える。
確かに…あの状態のまま二人きりは少々キツイものがあったな…。
彼女なりに気を使ってくれたみたいだ。
とりあえず…席につくとしよう。
「誘っていただいて光栄です」
「それは神崎に言え」
「そうですね…ですが、あなたにも一応」
そうかい…勝手にしろ。
「じゃあ、夕食の用意をいたします」
と月さんが言ったと思うと
豪華な料理が大量に運び込まれてきた。
「豪華だな…」
「神崎家では標準よ」
「へぇ…」
金持ちの感覚はわからないな…。
そこら辺で俺が庶民と思い知る…。
ま、折角だし…ぼやかずに夕食をいただくとするか…。

夕食後。
叶野に温泉に行かないか?
と、誘われたのでご同行…。
べ、べつに…変な意味じゃないからな…
一応、断っておく。
「なぁ…骨折れてても平気なのか?」
「ええ、少し痛みますが…支障はないでしょう」
ならいいけどさ…。
俺達は二人して湯船につかる。
「…どうかなさいましたか?」
黙っていると叶野が俺に話しかけてきた。
「ん…別に…」
「神崎さんとなにかあったのではありませんか?」
「…鋭いな」
「これでも人間観察は得意な方なので」
と気取る叶野。
「ああ…あったよ…」
色々とな…。
本当…どうすればいいかわからないくらいのがな…。
「…彼女に…答えられない…それで悩んでいますね?」
「………」
「…図星ですか?」
「ああ…図星だよ」
そこまで的確に当てられたら俺はなにも言えないだろ…。
「…あなたは池上さんを本当に大事にしているのですね」
「当たり前だろ彼女なんだから」
「そうですね…ですが、僕から見るとあなたは女性全般に優しいですが」
「…女好きとでも言いたいのか?」
「いえ…それはとても大切なことだ…と、言いたかっただけですよ」
本当か?
疑いが尽きん。
「…なぁ、お前に聞くのは間違っているのかもしれないが…一つ聞いても良いか?」
「ええ、どうぞ」
「…俺は自分の気持ちが…池上と神崎さんで揺れ動いてるんだ…」
池上のことは好きだ…。
でも、神崎さんの気持ちも…俺は…痛いほど伝わってくるから…。
どちらがいいか…はっきりと選ぶことができない…。
「それは…あなたの気持ちに整理がつかない…と、解釈していいのですか?」
「ああ…そんな感じだ」
「そうですね…」
叶野は少し考えた後。
「直ぐに決断する必要は無いと僕は思います」
「え…」
意外なことを叶野が言ったので俺は少し驚いた。
「じゃあ…どうすればいいんだよ…?」
「答えは自ずと見えてきますよ、それに人の心は変わるものです、ずっと…想っていても…」
「なんだ…経験談か?」
「ええ、…近いものですね」
意外だな…叶野に恋愛系の話があったなんて…。
まぁ考えてみたら俺は叶野の事あまり知らないし…話してみればそんなもんか…。
「だから、そんなに気負わずに普通にしていてください、彼女たちも普通のあなたが好きなのですから」
叶野は上手くまとめると風呂から上がっていった。
「…普通…か」
俺の普通…。
最近…自分のことがわからなくなってきたからなぁ…。
そんな哲学的な年頃でもないだろうに…。
でも、叶野の言う通りだと思うのは確かだ。
焦って決断を誤るよりも
慎重に答えを選び抜く…
なんか…そっちの方が…俺らしい気がする。

ふぅ…のぼせそうだし…俺もそろそろ上がるか…。

無駄に青春を堪能してるねぇ…今の俺は…。

「はぁ…」

俺のついた溜息が音も無く闇夜に溶けていった…。


今回は神崎さんメインの話なので池上さんは一切登場しません(笑)あと…質問が多かったのですが…池上さんと神崎さんの名前についてですが…ヒントを出しすぎたかな…気づいてる人がかなりいました。まぁ…作中では明かさないでしょうが一応、設定のため名前も決めてありました。では、また近いうちにお会いしましょう。








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