恋愛仲介部(24/81)縦書き表示RDF



真崎まさき=非恋愛主義グループのリーダー。
北条ほうじょう=悲恋愛主義グループメンバー。
恋愛仲介部
作:MOR



恋愛仲介部の対決1


池上がした誤解は後日母さんが解いてくれた。
終始不機嫌だった池上もさすがに母さんに言われると俺の言い分を納得せざるを終えないらしい。

そして冬休みに入って俺は母さんの実家に呼ばれることになった。
母さんの実家はそれほど遠くもなく。
家族の方も俺の母さんと面識があったらしく、優しくしてくれた。
冬休みは実家にいたので俺は恋愛仲介部の活動には参加していなかった。

ま、俺としては最近色々あって疲れていたので
休息をとっていた…と、そういうことにしておこう。

新年の初詣には池上と二人で行った。
かなりの参拝客で地元神社は大賑わいをみせていた。
おみくじを買ってみたのだが…俺の今年の運勢は吉。
可もなく不可もなくだな…。
池上は大吉を当てて喜んでいたけどさ。
まぁ俺は迷信とか信じないタイプだから別にどうでもいいんだけどな。

しかし、去年は色々あった。

恋愛仲介部を作ったり
生徒会と対決したり
合宿に行ったり
でも…俺の心に一番残っているのはやっぱり池上のことだ。
特別な関係に進展したからといって特に生活に変化は無く
いや…ちょっと俺が色ボケしつつあるが…。
でも、平和で楽しい時間を年末は送る事ができた。

年が明けてからも奴は佐藤さんのお陰で滅茶苦茶な行動を慎むようになっていたし。
俺としてはこのまま高校三年間が終わらないだろうと思いかけていた春休み…。

そう…事件は起こったのだった。

とりあえず、新学期前に一度ミーティングをしておきたいと言う部長の発言で俺達は春休みだってのに
態々、学校まで来ていた。

部室へと来ると影島と月さんは既に到着していた。
「すまん、遅くなった」
奴は五分遅れて登場。
ちなみに佐藤さんは幼稚園のバイトが忙しいらしく
休み中は滅多に顔をあわせなかった。
奴としても彼女は恋愛仲介部予備軍レベルらしい。
「じゃあ、会議を始めるか」
と言って部長が自分の席に座ったと同時に月さんが叶野の様にホワイトボード前にスタンバイする。
「とりあえず、今年の活動方針を決める」
なんて、去年俺が聞いたよなことをそのまま同じように決め直し
俺たちのグダグダな会議は終了した。

「じゃあ、解散。始業式終了後、また部室に集合。いいな?」
「ああ、いいんじゃないか…」
止める奴は誰もいねぇよ。
奴は元気よく扉を開けて部室を飛び出していった。
相変わらず元気な奴だ。
その元気の10分の1くらい思いやりにできないのかね。

その後、俺たちも部室を後にした。

影島と交差点で別れて池上と月さんの三人になった時のことだった。
「君が恋愛仲介部副部長か?」
叶野を悪くしたらこんな感じだろう…そんな男が話しかけてきた。
私服を着込んでいるので学生ではないらしい…でも、同い年くらいだ。
「なんだ、あんた?…俺に…」
用か?
と、聞く前に奴はポケットに手を入れてナイフを取り出した。
「なっ…」
「悪いが任意同行してもらう、文句はないな…?」
冗談だろ…仮にもこんな人前で刃物をちらつかせるなんて…。
頭の一部がおかしいんじゃないのか…?
「返事が聞こえないが…どうする? 副部長…?」
男はニヤニヤと笑を浮かべている…。
「っ……」
俺が黙っていると…男は急に前かがみになった。
「…なっ」
そして、俺に凄い速さで迫る。
「危ないっ…」
奴を月さんが止めに入る。
「ふっ…久しいな小葉月」
「なぜ…あなたがここに…?」
「さぁな」
奴は月さんに向けてナイフを振り続ける。
月さんはそれを紙一重でかわして距離を取っている。
まるで…アクション映画のワンシーンの様だ。
「まぁいい、今日は顔を見にくるだけの予定だったしな」
奴はナイフを収め
そして背を向けてこの場から走り去った。

「………くっ…」
月さんの腹部からは夥しい血が流れていた。
「つ、月さんっ」
俺は月さんに駆け寄る。
「だ、大丈夫です…傷は浅いですから…」
「そんなこと言っても……そうだ」
西沢さんに連絡しよう。
俺は西沢さんに事情を話しすぐにここに来てもらう事にした。

俺の家に送ってもらい、月さんは母さんに手当てをしてもらっている。
「あの…あいつは…いったい誰なんですか…?」
「普通じゃないよ…だって…人を刃物で…切りつけるなんて…」
池上は恐怖のためか震えている。
「彼は…真崎…非恋愛主義の刺客でしょう」
「…非恋愛主義…?」
「その名の通り、恋愛を快く思っていない連中の事です」
「そんな奴らが…」
俺たちを襲ったって言うのか…?
「いえ…やつらは…」
西沢さんが説明を始めようとしたとき。
俺の部屋のドアが開き、一人の青年が入ってきた。

「それは僕から説明しますよ、西沢さん」
「か、叶野…!?」
「お久しぶりです」
俺に一礼して叶野はベッドへと腰掛ける。
西沢さんは俺たちに一礼をして部屋をあとにした。
「お前…帰ってきてたのか…」
「ええ、少し前ですが…会うのは新学期が始まってからと思っていたんですが…彼らが動き出したのでは…僕が動かないわけにも行きませんのでね」
「…その、詳しく説明してくれ」
「はい、彼らは表向きは非恋愛主義グループですが、正体は別にあります」
「正体…?」
「彼らは…そうですね、生徒会とは違う一派、生徒会はPTAなど、学生を重んじる組織ですが彼らはにはそれが無い、ただの集まりですよ」
「でも…なんでそんな連中が…?」
「お偉いさん方も手段を選んでいる余裕がなくなったのでしょう、こんなお遊びサークル、ひとつ許せば各地にできてしまいますからね」
「じゃあ…生徒会の強行派みたいなものなのか…?」
「そうですね、彼らは対立しているわけではありません、どちらかと言うと協力関係にあるので」
マジ…かよ、今度ばかりは…冗談が通じない。
「…じゃあ…俺達は…」
「…なんとかする必要がありますね」
「…そうか、でも、どうやって…」
「簡単ですよ、警察に突き出せばいいんです、通報すれば一発ですよ」
「なら、今すぐ…」
「いえ、今はまだ時ではありません、彼らを裏で操っている者、つまり首謀者がまだ分かっていないので」
「調べるまで時間が必要ってことか…」
「ええ…ですがこちらも恐怖に脅えている訳には行きません。早急に対策を練らないと…」
叶野はそう行って腕を組み
爽やかなスマイルを崩さないまま長考している。
「えと…私…」
「どうしました、池上さん?」
「あの…一人でいる時に…襲われたら…」
そうだ、女子供じゃ奴らには対抗できない。
奴らはあの月さんにまで傷をつけたんだから…。
「なら、池上さんは暫くこの家に滞在してください、僕としても…みなが集まっているほうが安全だと思います」
「そうだな、池上、今日からここに泊まれよ」
「う、うん」
「両親には西沢さんが連絡を入れている頃でしょう、心配は要りませんよ」
そうか、さすが西沢さんだな。

その後、池上は晩御飯の用意の手伝いをしに台所へと降りて行った。
「すみませんね…いつも、面倒なことに巻き込んでしまって」
「いや…もう、慣れたさ」
「そうですか…でも、今回の件はいつもの遊び半分では…解決しません」
「ああ…なにせ、手段を選ばない連中が相手だからな…」
「…僕の今までの情報を駆使して割り出した組織形態は幹部が数名、これも学生が大半です。」
「…ちょっと待て…まだなんか隠してるだろ」
叶野は驚いた顔をして
「さすがに…気づいていらっしゃいましたか…ええ、その通りです」
「非恋愛主義なんて嘘だろ」
「はい」
叶野はなんの躊躇も無く答える。
「元々、真崎を初め数名は神崎家に匹敵するほどのお金持ちたちが集まった組織なのです」
「…金持ちのボンボンが集まっている…?」
「神崎家はその中でも秀でた財力があります、よって他の金持ち達は神崎家に嫌がらせをしてくるのです」
「嫌がらせねぇ…」
「真崎とは何度か、昔会ったこともあります」
そういや月さんは真崎って奴のこと知ってる感じだったな…。
「じゃあ…その組織の人間も分かるんじゃないか…?」
「おそらく…真崎の他に5人…僕の推測でしかありませんが」
「そうか…」
でも、敵の数が分かれば問題はないな…。
叶野がなんとかしてくれるだろう…。
「奴らは凶暴です、神崎家関係者とあらば襲ってくるでしょう」
「マジかよ…」
「あなたは…既に、狙われるほど神崎家に関っているのですよ」
否定はできないが…。
「じゃあ…池上とか他の恋愛仲介部メンバーは大丈夫なのか?」
「ええ、池上さんに害はないと言い切れます、第三者ですから。仲介部のメンバーも僕、小葉月意外は大丈夫だと思いますよ」
やれやれ…。
「…ってことは俺ら三人でそいつらを何とかしなきゃいけないのか…」
そんな危ない連中と俺を関らせないでくれ…。
「そうです、大丈夫ですよ僕達がいるのですから」
それが一番不安なんだ…。
「では、僕は小葉月の様子を見てきます」
「ああ…」
叶野は俺に一瞥し、俺の部屋を後にした。
…変わってないな…あいつも…。


「…小葉月、大丈夫ですか?」
叶野が私の心配をしてお見舞いに来てくれたらしい。
「つ…」
起き上がろうとするが傷が痛む…。
「無理をしてはいけませんよ、僕が来ましたから…彼の安全は保障します」
…そんなの嫌だ。
「あなたは安心して眠っていればいいのです」
…それじゃあ…私が…私が彼の傍にいる意味がなくなってしまう…。
「…疲れているようですね、…邪魔になってもいけないので失礼します…」
私は…叶わない恋なら…彼のことを…命をかけて守りたい。
それで傍にいられるなら…それだけで幸せ…。
だから…叶野…もう少しだけ…私を…彼の傍にいさせて欲しい…。


俺は現在、いつもの公園へとやって来ていた。
さっき電話で
「あのさ、授業で聞きたいところがあるんだけど…」
って栄治の電話を受け取ったからだ。
塾に行くついでに聞きたいと言うので
こうして公園で待っているのだが…。
「待ち人は来ませんわよ」
後ろに人の気配を感じた。
「誰だっ…」
振り向くと長いウェーブのかかったオレンジ系の茶色の髪をした高貴そうな女性がいた。
「初めまして…私、北条と申します」
スカートの両端をつまんで挨拶をします。
「いきなりで申しわけ無いのですが…死んでくださいますか?」
は…?
「ブゥン」
と音がしたかと思うと彼女の持っていた日傘が振り下ろされた。
「っ…危ないだろっ…」
間一髪かわす。
「危なかったですわね…これは特殊な金属で出来た特注の傘、あたったら骨折くらいにはなっていましたのよ」
じょ、冗談じゃないっ…。
まさか…栄治の電話も…罠…だったのか…?
くっ…とりあえず逃げないと…。
距離を離そうとするが今度は傘の先の部分で刺してくる。
よ、よい子は真似しちゃダメだぞ。
…って言ってる場合か…!!

徐々に、北条の傘を動かすスピードが早くなってくる。
「いつまで持ちますか楽しみですわね」
くそう…一発殴って逃げればいいが…。
女を殴るのは…その、男として…。
「黙りなさいっ」
俺の横から黒い人影が傘をかわしながら北条に向かっていく。
誰だ…?
「な、なんですの…!!」
北条はいきなりの第三者介入に驚く。
「ブゥン」
と黒い人影は北条を殴り飛ばす。
「くっ…」
北条はとっさにそれを防御する
「早くっ!逃げるわよ」
と黒き人影は俺の手首を掴み走り出す。
「ちょ、ちょっと…」
俺は引きずられる様にこの場を後にした。

暫く走って路地を曲がる。
「お、おい…」
「なに?」
俺を掴んで走っていた人は足を止める。
「その…助けてくれてありがとう、…えっと」
よく見ると綺麗な顔をしている。
長い茶色い髪を後ろで一纏めにして
スラッとした黒いスーツを着込んでいる麗人だ。
「あら、ひさしぶりにあったのにそんな言葉だけ?」
「えっ…」
「ずっと、会いたかったのに…」
と、髪を一纏めにしていた紐を外す。
ふわっと茶色い髪の毛が広がっていく。
「ほら、これでわかった?」
「か、神崎さん!?」
いや、いくらひさしぶりでも印象が違いすぎる。
可愛いと言うよりは美人が当てはまる
「やっとわかってくれた♪」
彼女は俺に抱きつく。
「な…なんでそんな格好を…?」
「いいじゃない、美人刺客みたいで、私のモチベーションの為よ」
「いや、そうじゃなくて…違いすぎるだろ」
性格が…変化しすぎだろ。
「ああ、性格ね。うん私、裏だから」
「えっ…」
裏の…神崎さん…?
そんな消滅したんじゃ…。
「不思議そうな顔してる、でも、あなたの目の前にいる私は正真正銘、本物」
「え…どうして?」
「彼女が…あの子が私の存在を強く望んでくれたから…」
「…存命したってことか?」
「うん♪」
そうか…。
「じゃあもう一人は?」
「私の中で眠ってる。私が変わろうと思えば変われるの」
「………」
「それと、あなた曰く、私は大胆なんでしょ?」
「え?」
「えいっ…」
と神崎さんは俺の首を掴み引き寄せて自分の唇を俺の唇と重ねた。
「な、なにをっ…!!??」
「ふふ、助けた、ご褒美♪」
あ、あいかわらずの強引さ…。
でも更に磨きがかかったんじゃないか?
「じゃあ、帰りましょ家に」
「え、ああ…そ、そうだな」
やれやれ…。
でも、なんだか…。
彼女に再び会えた事が…。
それが…ちょっと嬉しい。

家に帰ってくると既に夕食の準備がされていた。
「さっき栄治君が来たよ」
と、池上が教えてくれる。
なんだ…罠じゃなかったのかよ…。
「それと…その、横にいる人は…」
神崎さんを不思議そうな目で見る池上
「お久しぶりね、池上さん」
「え、ええっ…もしかして…か、神崎さん!?」
俺と同じ反応、まぁ当然だよな。

夕食を終えてから俺と叶野と神崎さんは俺の部屋へと集合していた。
「では、北条も…敵、なのですか…?」
叶野が言う。
「ええ、間違いないわ。さっき殴って来たし」
壁に寄りかかっている神崎さんが言う。
「………」
黙る叶野。
「どうしたんだよ叶野?」
「いえ…なんでもありません…」
俺には何か隠している様にしか見えないが…。
「それよりも、これからどうするか考えましょ」
「ああ、迂闊に外にも出られないからな…」
俺、暴漢に襲われまくりだし…。
「…そうですね、あなたには神崎さんと一緒に行動してもらいましょう」
「やった」
嬉しそうに笑う神崎さん。
「神崎さん、裏…つまり、あなたが行動できるのは一日どのくらいですか?」
「そうね…12時間くらいかしら…まだ安定していないし、この子の状態で彼を守るのは少し厳しいわ」
「なるほど、なら家にいる時は表、外に出る時は裏でお願いできますか?」
「うん、わかった。あの子にも伝えておく」
「なぁ…ひとつ聞いてもいいか?」
「なに?」
「あの…北条とかいう女の懐に入ったとき…神崎さんとは思えないくらいの隙の無さだったんだが…」
まるで別人のような…。
「ああ…あれはスーツのお陰」
「スーツって今着ているやつか?」
「うん、これは強化繊維で作ってあるの、だから防御に使えるし、俊敏な動きは私の護身術なの」
「護身術?」
「ええ、神崎家の娘として、いつ暴漢に襲われても撃退できるようにって教わっていたの。まぁあの子の変わりに私が毎回教わっていたんだけどね」
「へぇ…」
「あの子は戦えないけど、私ならそれなりにボディーガードにもなるわ」
頼もしい限りだな。
「だから、神崎さんに護衛についてもらいましょう、僕は独自に調査をしてみます。情報がないと僕は役に立たないのでね」
と、言って叶野は部屋を後にした。
まぁ叶野なら一人でも危険に陥ることは少ないだろ。
「ねぇ」
「ん、なんだ?」
神崎さんが話しかける。
「…ありがとね」
「えっ?」
「前は…言いそびれちゃったから…」
「…ああ」
そうか…彼女には…後悔を与えていなかったんだな…俺。
「さてと、疲れちゃったし、そろそろ変わろうかな」
「表の神崎さんとか?」
「そうよ」
「すぐに変われるのか?」
「まぁ出来るけど。彼女の体に負担をかけたし、今日はもう寝るだけね」
「そうか…」
「残念?」
「まぁな」
「…そっか」
表の無垢な神崎さんとも話したかったんだけどな…。
「あのさ…」
神崎さんが俺に話しかける。
「なんだ?」
「私が…このスーツを着込んでいる時…私のことは神崎って呼んで」
「え、なんでだ?」
「表裏じゃややこしいから、私は神崎、あの子は神崎さん、それでいい?」
「あ、ああ…いいんじゃないか…?」
「うん、じゃあ決定ね」
彼女は笑みを浮かべる。
「じゃあシャワー浴びて寝るね」
「お休みな、神崎」
「夜中に襲いにくるからね♪」
「勘弁してくれ」
「冗談よ」
彼女はそう言って俺の部屋を後にした。
さぁて俺も寝るとするか…。

翌日。
俺が眠気眼で目覚ましを確認すると9時を過ぎている。
ああ…少し、寝たり無いが…起きるとしよう。

洗面所に行って顔を洗いリビングに顔を出す。
「母さん…朝飯…」
「おはよう、今、用意するから」
と言ってエプロン姿の母さんが俺の朝食の用意をしている。
「他のみんなは?」
「部屋にいると思うわ」
「部屋って…一階のか?」
「うん、池上さんと神崎さん、それと叶野君用に3部屋ね」
「そうか…」
すっかり大所帯になっちまった。
それはそうと…神崎さん表とはまだ挨拶していないし
朝飯が終わったら挨拶しに行こう。

「コンコン」
神崎さんの部屋のドアをノックしてみる。
「はい」
と、可愛らしい返事が返ってきた。
「俺です」
「あ、えと…はい、どうぞ」
そう言うので俺はドアを開けて部屋に入る。
部屋の中は小規模な神崎ルームそのものだった。
「あ、あの…お久しぶりです」
「…あ、うん」
「えと…お元気でしたか?」
「ええ、色々ありましたけど…なんとか元気でしたよ」
「そうですか…よかった」
と、安堵の息をつく。
彼女も俺のことを心配していてくれたのだろうか…?
まぁ…裏と違って実際はお別れも言ってなかった訳で…会うのは文化祭以降初めてだな…。
「その、お邪魔しちゃってすみません」
「いいんですよ、…えと、あいつには昨日助けてもらったし」
「あ…そうですよね、中から見てました」
「神崎さんも…あいつの時の記憶があるんですか?」
「え、ええ…その、慣れてきたので…」
そっか、なら挨拶とかも…特別しなくてよかったのかな…。
「……」
顔が赤い神崎さん。
「あの…どうかしましたか?」
「い、いえ…」
…記憶の共有…昨日…御褒美…。
あっ…まさか…。
「ご、ごめんなさい…その勝手にキスとかして…」
「い、いや…その…」
誤られても…。
「あ、あいつが勝手にやったことですし…その…き、気にしないでいいですよ…」
「そ、そうですか…」
ああ…ヤバイな…。
あいつの無理な行動が神崎さんの記憶に残るのは厄介だぞ…。
「でも…私とも…して欲しかったな…」
「ん、なにか言いました?」
「い、いえ…なんでもないです」
神崎さんは曖昧な態度で自分の本心をはぐらかした。
いや…思いっきり聞こえてたんだけどな…。
ここは…聞かなかったことにしておこう。

なんか…それが一番な気がしたからさ。



いやぁ…遅くなってすみません(涙)とりあえず当分は1日1話のペースになりそうです、学校とか忙しいので…続きを楽しみにしている方、本当に申し訳ないです。








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