恋愛仲介部(23/79)縦書き表示RDF



部長の話です。
恋愛仲介部
作:MOR



恋愛仲介部の追憶




昨日の俺にさようなら。
再充電完了の俺に怖いものなんてないのさ。
さぁて、問題難題どんと来いってんだ。

と、まぁ…調子に乗ってる。
俺はまだ未熟ってことだ。

朝起きてリビングにやってくる。
「おはよう」
と笑顔で俺を迎えてくれる…のが先生ってことに違和感がなくなって来た。
いや、もう先生じゃなかったな。
「おはよ…」
でも、エプロン姿を見ると少しドキドキしてしまう…。
「早く、朝ごはん食べちゃいなさい」
「はい」
だいぶ打ち解けて来たのか
かなり俺達は距離を縮めてきている。
まるで…本当の親子の様に。

学校に来ても親が元先生なので勉強には困らなかった。
と、言うか…最初のほうは家庭教師状態で不登校だった2週間の勉強を見てもらう予定だったが…。
今までの復習、予習までやってもらった。
最初のうちは苦痛だったけど…なんか、時間が経つにつれて…先生の喜ぶ顔が…嬉しくて…。
…って…相手は仮にも母親だぞ…そりゃ先生としては…綺麗な人だとは思っていたけど…俺は…そんな…。
「なに、ニヤケてるの?」
「なっ、い、池上っ…」
急に話しかけるなよ…びっくりするだろ。
「悩み事?」
「い、いや…別に…」
「…もしかして先生となんかあったの?」
「何にもないぞ、ああ、気のせいだ」
「誤魔化した…」
本当になにもないんだ。
その…今のところはな…。
「それよりも授業終わったし部室に行くぞ」
「ちょ、ちょっと待ってよ」

考えてみたら恋愛仲介部もかなり人数が減った。
神崎さんに叶野、それに母さん。
現メンバーは俺と影島と部長だけだし。
池上はマネージャーだしな。

活動らしい活動は…できないか…。


部室のドアを開けると影島だけが部室にいた。
「よう」
「…こんにちは」
影島は一人部屋の隅に座っている。
「部長は…来てないみたいだな」
「…今日は…用事だそうです」
「そうか」
久しぶりに…部室でゆっくりするのもいいかな…。
それにしても…奴はどこに行ったのだろう?

特に何もしない時間って言うのは微妙な退屈をもたらせる。
そんな退屈に耐えられなかった俺は部室を後にするのだった。

池上を家まで送って行った後。
俺は久しぶりに街へ遊びに行ってみることにした。

街は前回の市内散策時と特に変わった様子もない。
だが、街はクリスマスのオーラに包まれていて赤と緑の色が多く確認できる。
もう…12月も終わりか…。
期末試験の結果も良かったし
俺は何も心配する事がない。
案の定、田中とロリ坂は補修だったけど。

ふと…大通りから道をそれて裏道へと入ると
一箇所の幼稚園があった。
なにやら、園児の皆さんが楽しそうに騒いでいる。
「ほら、みんな見て、サンタさんが来てくれたよ」
若い保母さんが児童諸君にそう告げる。
すると奥から赤と白のサンタコスチュームを着た男が現れた。
「メリークリスマス、さぁ良い子にはプレゼントをあげよう」
と、その男は一人一人にお菓子やら玩具を配っていく。
どこかで聞いた声だな…。
「では、サンタは忙しいのだ、園児の諸君、また来年会おう」
そう言ってサンタは俺の横を通り過ぎて走って行った。
近くで見たサンタの顔は…紛れもなく…恋愛仲介部…部長。
なにやってんだ…こんなところで?
するとこちらを見ていた保母さんと目が合った。
向こうはお辞儀をした。
…あいつがなにをやっているか…聞いてみるか…。

暫くして園児はみんな親に引き取られ。
彼女は俺のところへやってきた。
「…あの、サンタさんなんですが…お知り合いですか…?」
「え、ええ…まぁ…」
「その…あの人は…なに者なんですか?」
「ええと…説明すると長くなりますけど…」
俺はそのまま幼稚園の職員室へと通された。

彼女はここのバイトで保母さんをしているそうだ。
名前は佐藤さん。
どうやら…聞いたところによると、奴は今年からここの園児たちの遊び相手をしているらしい。
「…でも、名前をお尋ねしても教えてくれなくて…」
佐藤さんが尋ねると「人に名乗るほどの者ではない」
とか言ってすぐに帰ってしまったとか…。
「そうですか…俺、あいつと知り合いですから、ちゃんと名乗るように言っておきます」
「そうですか、ありがとうございます」

その夜。
俺は初めて奴を携帯で呼び出した。
家に奴を呼んで真意を確かめる。
「来たぞ」
俺は奴を居間に通す。
「こんばんわ」
母さんがお茶を用意、奴の前に置く。
「で、用はなんだ? まさかくだらない用じゃないだろうな?」
「いや…お前がなにをしているのか…教えてもらいたい」
四月からちょくちょくいなくなっていた行き先を教えて欲しい。
「別になにもしていない」
「嘘つくな…今日のサンタはなんなんだよ」
「……見ていたのか」
「ああ…」
「…そうか」
奴は深く考え事をしているようだった。
「それで…あの幼稚園でなにをしてるんだよ」
「…佐藤に会ったか?」
「え、ああ…バイトの子だろ」
「…あいつは…俺が恋愛仲介部に誘おうと思った最初の人間だ」
「えっ…」
「俺とあいつは中学の頃…つきあっていた」
「お前と…佐藤さんが…?」
「ああ…俺は…彼女に…取り返しのつかないことをしてしまった…」
「…取り返しの…つかないこと…?」
いったい…なにをしたって言うんだ…?
「…だから罪滅ぼしだ」
「じゃあ…名前を明かせばいいだろ」
「…ふ、彼女には俺の名なんて…聞きたくもない名前だ」
「………」
「これ以上、このことに口を挟むな…部長命令だ」
と、俺に言い捨て
今までしたことのない切なそうな顔をして部長は帰って行った。

「母さん…月さんに連絡してくれる?」
「調べるのね」
「ああ…」
佐藤さんに約束したし…あんな顔をした奴のことが気になるしな。

その後。
月さんを家に呼んで俺は奴について調べることにした。
「これがデータです」
月さんが渡してくれた書類に目を通す。
中学以前は真っ白だったが…ひとつだけ重要な発見をした。
「中学卒業後…留学…?」
そう中学のデータには表記されている。
留学…?
つまり海外に行くってことと今現在…いや、入学式に奴は俺と一緒にいた…。
どうして…?
「問い合わせてみますか…?」
「ああ、頼む」
月さんは中学と留学先に問い合わせてみた。

中学で得られた情報は中学時代、奴は結構まともだったということ。
留学先は美術系の高校らしい…美術留学をしようとしたのだろうか…?
しかし、奴は留学を直前に拒否されたらしい…。
ここに…なにか問題があるのか…?

そして佐藤さんのデータも調べた。
彼女は成績優秀で将来も有望だったらしいが…。
奴と同じ高校に願書を提出している…。
つまり…一緒に留学しようって思ったんだな…。
でも、合否結果は不合格…。
なるほど…。
だいぶ、見えてきた。

明日…佐藤さんに会って真意を確かめよう。


学校が終了し俺は部活に行くのを無視して
あの幼稚園へと向かった。

俺はそのまま応接室へと通された。
さて、上手い話術で真実を引き出そう…。
叶野のような話術が俺にもあれば楽なんだが
「あなたのことを調べさせてもらいました」
「えっ…」
まずはインパクトのある切り出しから…叶野のいつものパターンだ。
「あなたには…交際している男性がいましたね…?」
「………」
彼女は答えない。
「質問には、はい、いいえ、で答えてください」
「…はい」
このまま強引に話を進める。
「いやなことを聞くかもしれませんが…あなたは彼との交際が今も続いていますか…?」
「…いいえ」
現在…交際関係はないようだ。
「では…彼の現在の所在を知っていますか…?」
「…いいえ」
つまり、奴が留学していると思い込んでいるらしい。
しかし…
「ガラッ」
とドアが開き、サンタが応接室へと入ってきた。
「お、おいっ…」
サンタは俺を引っ張って外へと連れて行く…。

幼稚園から少し離れたところで奴は掴んでいた手を離した。
「なんなんだよ…」
「それはこっちのセリフだっ!」
どうやら本気で…怒っているようだ…。
「じゃあ…聞かせろよ。納得のいく答えを…なんで、お前は今日本にいる?留学したんじゃなかったのか?」
「…調べたのか…?」
「ああ」
お前が何も話してくれないからな…。
「…俺はもう、あいつには会えないんだよ」
「…どういうことだ?」
「あれは…俺がまだ中学生だった頃」

話は恋愛仲介部設立前にさかのぼる。
奴と佐藤さんは運命的恋愛で結ばれて幸せな日常を送っていたらしい。
お互いに本物の美術の勉強するために同じ高校に進学しようとしたらしい。

二人で勉強して頑張って偏差値を上げていったそうだ。

入試の日…最後の試験内容は作品を作ることだった。
彼も彼女も最高の作品を作った。
でも…合格枠は1人だけだった…。

合格発表日まで奴と佐藤さんは知らなかったらしい…。
合格したのは…奴だった。
彼女は奴のことを本当に祝福したらしい。
私は日本で頑張るから、あなたも海外で頑張って…と。

春休み中、彼はその学校を視察に行ったらしい。
そして教員にこう…言われた。
「君と佐藤と言う生徒、迷ったんだが君に決めたよ…もう一人はねぇ…才能はあるんだけど…金銭的に留学はキツイだろうから」
奴は…耐え切れなかった。
そこで教師を…殴った。
自分の好きな…大好きな人を作品を…金銭的に…それだけの理由でバカみたいに扱われたのに耐え切れなかった。

奴は…その結果…入学を拒否された。
当然だ、暴力沙汰を起こしたんだからな…。

だから…もう、彼女の前に…姿を現す事ができなかった。
彼女から…留学を勝ち取っておいて…無駄にした。
そんな自分を許せなかったらしい…。

そんな中、叶野や神崎さんに出会ったらしい。
叶野のコネでこの高校に募集終了後だったが入れてもらい。
恋愛仲介部…そう、彼女と作る予定だった部活を…。
俺たちと立ち上げた…。

よく奴がいなくなっていたのはそのせいだったらしい…。
文化祭でボーカルを演じなかったのも…もし、彼女に見つかったら…お互いに困る…と言う理由から…。
無我夢中だったんだろう。
奴は奴なりに…試行錯誤考えて…彼女に償いをしていた。
バイト先で…少しでも彼女の笑顔を見る…。
それだけで…自分は満足だったらしい…。

俺は…あいつの言葉を…聞いているたびに…あいつが言って来た一字一句が心の中で流れていた。
向こう見ずの行動…。
我侭で自分勝手な態度…。
すべて…人間の…醜い部分だ…。
そんな行動をとって…彼は周囲から嫌われ…。
彼女にしたことの償いを…しようとしているんじゃないか…?

「だから…俺は…あいつには」
「違うだろっ!」
「なに…?」
「それはお前の思い込みだろ…彼女は佐藤さんはお前のこと…今も想っているかもしれないのに…」
「…そうかもな」
「なら…彼女に会って…伝えろよ」
「俺は…」
お前らしくない、…もう、最終手段だな。
「池上」
「うん」
物陰から池上が佐藤さんを連れて出てくる。
「なっ…お前…」
「そ、そんなことになってたなんて私…知らなくて…」
佐藤さんは涙ながらに奴に抱きついた。


もう…俺たちに出番はないな。
邪魔者はさっさと退散するとしますか。


「大丈夫かな…?」
池上が心配そうに俺に尋ねる。
「大丈夫だろ、あいつだって…上手くやるさ」
そう、足りないのはきっかけなのさ、恋愛は。
俺が池上とつき合ったように…ほんのちょっとの出来事で人間の運命ってもんは変わるからな。
でもこれで…奴も理性を取り戻して…大人しくなってくれればいいな…。
そんな風に奴が変化してくれることを期待していたのさ。


次の日
俺は部室でネットサーフィン中だった。
昨日の一件だ、奴も少しは大人しくなっただろ。
なんて甘い考えをめぐらせていると
「遅くなった」
と奴は登場した。
しかも…後ろには佐藤さんを連れてるぞ…?
「紹介しよう、今日付けで転校してきた佐藤だ。」
「初めまして佐藤です。みなさん、よろしくお願いします」
以前…見た彼女とは程遠く…。
活発な…水を得た魚のような元気さの彼女がそこにはいた。
「よしっ市内散策行くぞっ!」
「えっ…今からか?」
「ああ、遅れをとるなよっ」
奴は勢い良く、部室を後にした。
そして佐藤さんは俺に
「これから、よろしくね」
と嬉しそうに笑顔を見せてくれた。
まぁ…一件落着か?

歓迎会兼市内散策を終了させる頃には雲行きが怪しくなっていた。
どうやら夜から明日の朝にかけて雨が降るかもしれない…。

早く帰って寝るか…。

家に帰ってご飯を食べて風呂に入り、もう、寝るだけが。
「ゴロゴロ、ピカッ!!!」
と、雷の音がしたと思うと…ふっと家中の電気が消えた。
「…停電?」
珍しいな…どこか雷で電線が切れたのだろうか?
まぁいいや…このまま寝よう。
別に暗くても困らんし。
「コンコン」
俺の部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「…母さん?」
「………」
無言のまま母さんは部屋に入ってきた。
「どうしたの?」
「…その、雷…」
「ああ、停電…だな」
「…こ、怖くて…」
え……。
「う、嘘でしょ…?」
母さんは首を横に振る。
「雷…怖いから…ここで…寝てもいい?」
「…冗談ですよね…?」
「…本気」
母さんはマジな顔で言っている。
「わかったよ…」
俺はベッドの端へ移動する。
もぐりこむように俺の傍による母さん。
「…じゃ、じゃあ…お休み」
「うん…」
その後も…なんていうか…俺は眠れなかった。
でも、母さんは本当に雷が怖いみたいだった。
音がするたびに震えてたしな…。
でも…先生のときは美人で近寄りがたいってイメージだったけど…。
…その、今はなんか無邪気で可愛いな…。
…ってダメだろ俺。
俺には池上っていう彼女がいるんだから。

自分との葛藤のお陰で寝不足だ…。
さっきから…電話の音がするのは気のせいかな…?
ああ、気のせいだろ…もう、ちょっと寝てよう…。
………。
「いないのー?勝手にあがるよー」
なんか声が聞こえた様な…。
階段を上る音がする…空耳か…?
「バタンッ」
そしてドアを開ける音…もしかして…これって…。
「おはよう、起きてる?」
部屋に入り込む池上…。
まぁ目にした光景は…俺の隣で母さんが寝ている姿で…。
「な……」
言葉を失っている池上。
「誤解だ…」
「…ううん?もう朝?」
母さんが起き上がる。
「昨日はありがとね…その、嬉しかった。…また、その時はお願いね♪」
「頼むっ…誤解を招く言い方をしないでくれ!」
「そんな…先生と…」
「ちょ、ちょっと待て…俺の話をだな…」
「バカっ!!!!!!!」
池上の鞄で体を強打され
俺はまた眠りの世界へと旅立った…。

ああ、朝から騒がしいなぁ…まったく…。



ネタバレしてしまいましたが…まぁ新メンバー佐藤さんを加えて恋愛仲介部は絶好調。あと先生ともフラグが立ちました(笑)それとちょっと忙しくなるので更新は数日後になると思います。あとホームページもよろしくお願いします。http://rennaityuukaibu.ho-zuki.com/








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