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恋愛仲介部
作:MOR



恋愛仲介部の欠員2




学校に来て、適当に授業を聞き流し放課後を迎えた。
さて、これからが本番だな。
と意気込みつつもやり場の無い微妙なダルさに弱った俺の精神は飲み込まれそうだが…。
活動のために俺は叶野の待つ、元恋愛仲介部部室へと向かうとしよう。
「お待ちしておりました」
ドアを開けると叶野の声が返って来た。
壁に寄りかかって本を読んでいた叶野が俺に近寄る。
「それで、どうするんだよ?」
早く本題を説明して欲しい。
何をすればいいのか俺にはさっぱりわからんからな。
「そうですね…まずは彼の力を借りましょう」
「彼?」
「ついて来てください」
俺は叶野の後をついて行くが…いったいどこに連れて行く気かねぇ…。
見当もつかん、まぁ実際この部で行動が読めるのは神崎さんくらいだけど。

どこに行くかと思えば図書室だった。
校舎とは微妙な距離を置いて作られたので利用者は結構少ないらしい
俺も初めて来た。
「おいおい…こんなところで何をする気だ?」
読書をする…なんて冗談な返答は返ってこないだろうなぁ。
「こっちです」
と連れて来られると部屋の隅に一台のパソコンが置いてあった。
生徒用に使用が許されているパソコンである。
しかも席には付属物のように影島が座っている。
「影島君、準備はできていますか?」
影島はコクリと頷くともの凄い速さでキーボードを叩きだした。
「何をやってるんだ?」
「…セキュリティに進入…」
「セキュリティ?」
「ええ、学校のセキュリティです、今から学校のネットワークをジャックします」
マジかよ…学校側にサイバーテロを仕掛ける気か?
無謀…と言えないから始末が悪い。
「待て、当初の目的と関係ないだろそれ」
俺まで一瞬、目的を忘れかけるのがこの部活の怖いところだ。
「いいえ、関係ありますよ、最近は生徒会の作成したセキュリティのせいで、なかなか情報を入手することができませんでしたが、これで生徒の情報を手に入れることができます」
なるほどね…ホームページの時も驚いたが影島のパソコン技術は一級品だな。
どこぞのIT企業にでも就職すればいいのに…。
「…今、印刷します」
影島がエンターキーをポチッと押すと何枚か印刷された書類らしきものが出てきた。
「それではこれを元に部長さんに選ばれそうな人材リストを作りましょう」
それで俺たちは部室に戻り、一人一人の経歴、性格、成績などをチェックする。
中には…とんでも無いものが混じっていた。
「田中の成績…赤点だらけじゃないか…」
赤点が全体の半分を占めるって…あいつ進級できるのか?
その前に生徒会なのにこんな成績でいいのかよ…。
「これくらいでいいですね…」
十人くらいに人数を絞り叶野が言う。
「そうだな、今日はこのくらいにするか」
時計を見ると既に六時を過ぎていた。
最終下校にはまだ時間があるが、もう帰るとしよう。
無駄な労力は明日への活動の妨げになるからな。

翌日。
いつものように気だるさとかったるさの中間くらいのやるせなさを背負いつつも
俺は通学路を歩いていた。
いや…歩いていたってよりは義務的に体の覚えている感覚を頼りに学校を目指していた。
今日も恋愛仲介部の復活への活動をするしかないのか…面倒だ…。
まぁ叶野のことだから、昨日の人材リストに書いてあった人間にコンタクトはとっているだろう。
騒がしい廊下を歩き、教室にまだ先生がいないのを確認し
教室に入る、するといつもの様に窓の外を見ている池上がいた。
「よう、早いな」
適当に使いまわしの様なセリフをかけておく。
「別に、いつも通りよ」
なんてキツイセリフが返って来るかと思っていたが…。
「…………」
ありゃりゃ…シカトですよ。
気まずい雰囲気になってしまうのはやっぱり叶野の一言があったからだろう。
「心的ショックです」
心的ショックか…池上にどんな心的ショックがあると言うのだろう。
色んな意味でさっぱり分らん。
「はぁ…」
深い溜息を一つ吐き出し
俺は席に着席するのであった。

その後も池上は口を聞かずに奴は今日も欠席。
おいおい…周囲との会話が無くて暇なんだが…。
それはそれで眠気をそそるには十分すぎる空間なのさ。
要するに授業中に寝る言い訳である。
例によって俺は午前の時間全てを睡眠に費やすのであった。
すまん先生達、不甲斐無い俺を許してくれ…。

昼休みに叶野に呼ばれたので屋上に行く。
まぁ結局、呼ばれなくても俺は屋上に行くんだけどな。
屋上の扉を開けるといつもの爽やかスマイルの姿はそこには無かった。
おかしいな…?
まぁいいか、飯を食べてればそのうち来るだろ
と、思って腰を下ろした瞬間に屋上のドアが開かれた。
「遅れてしまってすみません」
登場から既に謝る叶野。
「………」
その後ろには池上がいた…。
なぜ、池上が?
「池上さんをお誘いするのに時間がかかってしまいました」
なんて言って俺の隣に座る叶野。
「で、用事ってなんだよ」
どうせ、池上を連れて来たって事は池上関係だろ。
「そうですね、では、お話しましょうか」
「…待って」
叶野が喋りだそうとすると池上がそれを遮った。
そういえば久しぶりに声を聞いた気がする。
「いえ、でも、このまま説明をしないのでは次の段階へは進めません」
池上が止めるにも関わらず叶野は喋り始める。
「実は…池上さんはあなたの事を…」
「いや…言わないで…」
おいおい…池上が涙目になってるぞ…。
じゃなくて
「おい、止めてやれよ、こんだけ嫌がってるんだから」
「ですが…言わないと先に進めません」
クールに断言する叶野。
「…お願い…やめて…」
本当に腹が立った。
いくら叶野でも池上を泣かす奴は許せなかった。
なんでだろ…?
「やめろ、いくらお前でもこれ以上言ったら怒るぞ」
「すみません…なにか誤解があるようですが…僕が言いたいのは池上さんの心的な病のことですよ」
「…えっ」
キョトンとする池上。
「決して今、池上さんが考えていることではないのでご安心を」
何を考えていたんだ池上?
俺はそれが凄く気になる。
「話を進めますよ…いえ、こうなったら池上さんが話した方が早いですね」
「私…」
「お願いします」
「……えっと…」
池上の話はこうだった。

俺が事故った日。
部室でお留守番と言われていた池上はこっそりと俺の後をつけていたらしく。
俺が事故にあったもんだからパニックに陥ったらしい。
しかし…いくら混乱状態でも救急車を呼んだのは池上だったみたいで
そこら辺は感謝しておきたいところだ。
でもまぁ…話の途中から池上が泣き出したのは以外だった。
「…そうか」
「それで…私、…揺す振っても起きないし…死んじゃったんじゃないかと思って…」
「おいおい…いくらなんでもそりゃないだろ…」
「だって本当にびっくりしたんだよ…それに歓迎会やろうって言い出したのは私だから…」
なるほどねぇ…責任を感じてたわけだ。
「もし…怪我でもしてたら…って思って…お見舞いにも行けなくて…」
「わかった、最近声をかけても返事をしなかったのはそのせいなんだな?」
「…うん」
「そっか…まぁ気にすんなよ、俺としては五体満足に復帰できた訳で、何一つ失ったものなんてないからさ」
「……うん」
頷くばかりの池上…。
うーん…とりあえず元気がないと気まずい…。
こんなんじゃ自分の中での池上イメージが崩壊しかねん。
「まぁ反省しているのなら、俺の希望としてはもう少し普段の俺に対する態度をまともなものにしてほしいけどな」
いかん…また一言多く言ってしまった…。
でも俺は池上から
「調子に乗るんじゃないの!」
くらいの言葉を待っていたのだが
「わかった…ゴメンね」
なんて意表をつく言葉が返って来た。
もしや…これがデレ…なのだろうか…。
今の世の中に素で、こんなキャラが実在するとは
その前に一番驚いたのは部長がそのキャラを把握してたって事だな。
「これで関係修復ですね」
そこ、勝手に解決しない。
「では本題です、今度は少々厄介かもしれませんね」
いいから話せ、俺が嫌と言ってもそれをやらなきゃいけないんだろ?
「昨日のリストはもう理事長に渡してあるので先生側への圧力は十分にかかっていると思われます、しかし厄介なのは生徒会ですね…僕としては部長が学校に来れば恋愛仲介部を再結成、と言う形で復活させたいのですが、生徒会がその信託を受け入れるとは思えません…」
「んなこと言っても生徒会は前回の対決で手は出さないって言ってたじゃないか」
あの生徒会長さんが卑怯な手を使うなんて考えられん。
「いいえ、彼らの出した条件は「直接手を出さない」と言うもので、現在部として活動していない我々には干渉できます」
「ルールの網目を抜けた手段だな」
「ええ、それほど生徒会も必死なのでしょう、飽きもせずに密偵をよこして来るくらいですから」
密偵…?ああ田中のことか…実際密偵として役に立っているのだろうか?
「じゃあどうするんだよ?このままじゃ復活なんて」
「無理…と、思われていますが、僕たちに心強い味方がいるのをお忘れではないですか?」
「味方?」
「先生ですよ、簡単に言うとこの学校内では最強の存在ですね」
最強だと…叶野がそこまで断言するとは
「いいですか」
叶野は持っていた紙にポケットから取り出した万年筆で図を書き始める。

上位的存在順 理事長→教員指導係→先生方→生徒指導係→生徒会→恋愛仲介部

「この様な図でこの学校は成り立っています」
まぁそうだろうけど…。
「それで先生はこの位置に入るんです、校長、教頭も教員ですから、先生には逆らえません…つまり、生徒会に意見を言う事は簡単でしょう、彼女にはその程度の説得など楽勝の筈ですから」
「わざわざそんなことしなくても…俺たちだけでなんとかならないのか?」
「僕も最初は影島くんに生徒会のデータベースを崩壊させてもらおうとしたんですが…向こうの生徒会長さんもかなりの実力者らしく、プログラムへの侵入を阻止されました」
「それこそ犯罪だ…」
「ええ、ですから強行手段には及びませんでした、影島君も自らの信念に反するのは嫌と言っていたので」
影島の信念だって?
そんな地味な信念まで尊重するとは叶野、ご苦労さん。
「ですから、放課後、先生に同席してもらって生徒会に抗議に行きます、…いえ、生徒会に対する最終的な防衛人を張りに行くと行った方が適切ですね」
はぁ…なにをやりたいかはわかった。
「じゃあ放課後だな」
「ええ、僕は準備があるので失礼します」
爽やかスマイルを強制的に俺に押し付けて叶野は屋上を後にした。
「とりあえず…飯にするか?」
と池上に聞いたところ。
「うん、そうだね」
なんて素直な返事が返ってきて俺はちょっと鳥肌が立った。

放課後、先生ご同行で俺たちは生徒会の門を叩いた。
「どちらさんですか?」
既におなじみになりつつある田中の声が返って来た。
「会長さんはいらっしゃいますか?」
叶野が丁寧に尋ねる。
「騒がしいな、…おっと、これは恋愛仲介部の諸君なんの用だね?」
「ここでは難ですので中でお話したいのですが」
「構わん、入るがいい」
と会長さんが仰ったので俺たちは生徒会室へと足を踏み入れた。
生徒会室と言うのは結構書類やら何やらで散らかっているイメージがあったが意外と小奇麗な空間だった。
「どうも」
と叶野は椅子に座っていた桐谷さんに会釈をする。
「それで、話と言うのは何だ?わざわざ乗り込んで来るくらいだ、それなりの理由があるのだろう」
「ええ、では、先生…お願いします」
叶野が一歩下がり先生が前に出る。
「これは紀野里先生…あなたは確か恋愛仲介部という部の顧問でしたね…それで我々への話と言うのは?」
「簡潔に言います、恋愛仲介部の活動を再開したいと思っています」
「…そうですか、ですがそれは無理な相談ですね、生徒会としても部員数が5人以下の同好会を部活と認めるわけにはいきません」
「いいえ、五人揃っています、それに生徒会に部活動への直接の干渉はできないことになっています」
「それはそうですが…生徒手帳にもあるように我々は恋愛仲介部等と言う半お遊びサークルを放置するわけには行かないのです」
そりゃもっともな意見だね。
こんなお遊びサークルの存在を黙認したら、それこそ生徒会の意味が無くなっちまうからなぁ。
「お遊びサークルではありません、活動はしています」
定期的にだけどな…。
「活動?何をもって活動と言えるんですか?」
「それは…」
と先生が言いかけた時に思わぬ…いやぁまぁ展開的には予想できたが…できれば実際に起きて欲しくないことが起こった。
「恋愛仲介だ」
と言ったのは叶野でも先生でもなく…。
生徒会室の窓から強行的手段で突入した我らが恋愛仲介部の部長だった。
おいおい…ここ三階だぞ…。
「ほう、それは具体的にどんなものなのか説明をしてほしい」
会長さんよ…まず窓からの登場に突っ込みを入れるべきだと思うんだが…。
「ああ、だから校内の風紀の乱れを解消するのさ」
待て待て…確か俺が始めて恋愛仲介部の活動目的を聞いたとき
少子化がどうのって言ってなかったか?
その前に…俺はお前が一番校内の風紀を乱していると思う。
「そうか、なるほどな、しかしそれは我々の仕事なのだがね」
まぁその辺は普通生徒会のみなさんの責務だろう。
「バカか?お前らに解決できないことを解決するのが仕事なんだ、まぁ隙間産業って奴だ、脳みそが論理式でできてるお前には理解は難しいだろう」
コイツは怖いものを知らないのだろうか…。
仮にも上級生にここまで言うとは信じられん。
生徒会長はメガネを抑えて軽く溜息を吐いて
「どう転んでも部を復帰させたいようだな…なら認めてもいいだろう、しかし条件がある」
「なんだ?」
「君たち全員が二学期の中間試験で上から50番以内に入ったら復帰を許可しよう」
「ああ、楽証さ」
なんですとっ…んな無茶な、俺が知る限り奴の成績は屈指の実力だが。
神崎さんや池上はどーする?
それに俺も100番台に入れればいい方だ。
「そうか、では結果は1週間後の中間試験後に」
マジかよ…こりゃ本当に休部かもしれん…。

生徒会室を後にした俺は部室に向かう途中に叶野に話しかける。
「なぁ…先生が奴らを言いくるめるんじゃなかったのか?」
叶野は少し困った顔をして
「ええ、しかし部長さんの乱入でとんでもないことになってしまいましたね」
「全くだ…で、打開策はあるのか?」
「いいえ、これに関しては頑張りましょうとしか言えませんね」
「こらこら…そんなこと言ってて大丈夫なのか?」
「それではどうします?みなさんで勉強会でも開きますか?」
「いや…俺は一人で勉強した方がいいと思う…一学期の期末試験で痛いほど実感したからな」
あれで赤点を取りそうになったのは記憶に新しい出来事だ。

部室に着いて驚いたのは…。
何も無かった部活が既に元通りになっていることだった。
「え…」
唖然とする俺たちを見て
「どうだ、俺が全て運んだんだぞ」
なんて言う部長…だから授業にでなかったのか…。
「あ、お帰りなさい」
久々にお目にかかった笑顔のヒロイン神崎さんは
俺たちの帰りを従順なメイドの如く待っていた。
「茶」
まぁ既に恒例になっているので突っ込みは入れないが…。
部活に来たら俺が全員分の茶を入れる様になっている。
そして俺は全員分の茶を入れてから、懐かしき自分のポジション、つまりパソコンデスクに着席するのであった。
「ねぇ、テストのことどうするの?」
と口を開いたのは池上だった。
「なぁに心配することは無い、こっちには最強の助っ人がいるからな」
助っ人?誰のことだよ。
「先生さ」
「えっ…私?」
まさか…。
「今度のテストで仲介部全員を50番以内に入れるにはあなたの力が必要だ」
答えでも教えてもらうつもりか?
いくらなんでもそれは人の道を外しているぞ。
「なにをすればいいの?」
「簡単なことさ、先生には授業をここでもう一度行ってもらうだけだ」
よーするに…。
一日二回分の授業を受ければさすがに池上さんと言えども
50番台に入れるんじゃないかってことだそうだ。
「補修をするって事だね、わかった、私の教えられる教科ならいいよ」
先生は首尾よく了解してくれた。
いやぁこんないい先生がこんな変てこな部の顧問だなんて…。
「それじゃあ、明日から補修を始める、各自勉強道具をもって放課後部室に集合っ!」

まぁ…そんなこんなで勉強会がスタートしたのだが…。
俺が勉強は一人でやった方が集中できると言ったら。
「却下」
はいはい…いつもの強制参加&部長権限の最大活用ですよ…。
それで補修一日目が開始された。
補修と言っても先生が授業でわからなかった所を
主に池上と神崎さんに教えるだけであって。
俺と影島、そして叶野は適当に問題集をこなしているのだが…。
「ここ、間違ってるぞ」
奴はと言うと…。
俺に張り付いたままエンドレスとも思えるくらいに俺の間違いを指摘している。
頼む…集中できないから大人しくネットサーフィンでもしていてくれ。
なんならホームページの更新でもすればいいじゃないか…。

まぁ二時間くらい勉強した後
俺たちは自然解散になった。

「紀野里先生の授業ってわかりやすいよね」
俺に言う池上、確かにそれは同意見だね。
他の先生と比べると丁寧って言うか…親身になって教えてくれる。
「まぁ…これならお前でも上位に入れるんじゃないか?」
「うん、頑張って50番以内に入るから」
「ああ、頑張れよ」
なんて何気ない会話なのだが…。
三人で下校すると確実に一人余る訳で
神崎さんは一人憂鬱そうな顔つきで俺の隣を歩いていた。

そして二日目、三日目も補修をした我々は
四日目を終える頃には模擬テストでもかなりの点数を取れるようになっていた。
まぁこの調子なら50番台もいけるんじゃないかと思い始めていた恋愛仲介部だったが…。
そんな一筋縄で行かないのが俺たちである。
それは五日目の金曜日に起こったことだった。
いつもの様に俺と池上は部活に集合していたのだが
一向に神崎さんが姿を見せない。
「神崎さんどうしたんだろ?」
心配だね、なにかあったらテストどころじゃないし
叶野が来たら聞いてみるか…なんて思っていたが

最終下校時間になっても、叶野と神崎さんは姿を見せなかった…。


神崎さん…さて、知り合って既に半年が経過して
それなりに高感度も上がってきている頃かと思っていた俺だったが
彼女のことを何も知らないことに変わりは無い。
まず、第一に本名を知らない。
今さらになって聞くのも恥ずかしいので神崎さんで通している。
友達と言えば親しいし…恋人と言えば距離がありすぎる…そんな関係。
俺はそれに満足していたのだが…。

俺が家に帰ると
「お帰りなさい、お待ちしていましたよ」
………おい。
色々と言いたいことがあるが…なぜに叶野が俺の家にいるのだろう?
「不法侵入だな」
「いえいえ、ちゃんと両親には許可を貰いましたよ」
あーじゃあ今日は帰ってこない訳だね…どこぞの高級ホテルでバイキングでも楽しんでいるんだろうよ。
「なにか用か?」
「ええ、今回は…神崎さんについてです」
池上が終わったと思ったら今度は神崎さんかよ…。
「神崎さんになにかあったのか?」
まさか誘拐にでもあった訳じゃないだろうな。
「そうですね、なにかあったのかは分りませんが…最近妙に元気が無いのです」
そういえば昨日も元気なかったな…。
「…そうか」
「それであなたにお願いがあるんですが」
微妙に口元がにやけている叶野…お前、そんな顔もするんだな。
「何だ?」
「彼女に元気を出すように言ってくれませんか?」
「…別に構わんが…なんで俺なんだよ?」
「僕を除く、神崎さんに親しき友人と言えばあなたくらいのものです」
「そりゃないだろ、友達だっているだろうし」
「…友達…ですか」
含み笑いをする叶野。
「いえ、なんでもありません、聞き流してください」
何をだ、知りたくないことを無理やり聞かされても困るだけだから、まぁ別に気にはしないが。
「じゃあ電話すればいいのか」
「はい、お願いします」
俺に携帯電話を手渡す叶野。
やれやれ…。
そして4コール目くらいだったろうか…受話器から一人の男性の声がした。
「どちらさまですか?」
聞き覚えの無い声に一瞬驚いたが…。
「あの、神崎さんの友達なんですけど…」
「お嬢様の友人の方でしたか、これは失礼いたしました、少々お待ちくださいませ」
丁寧の口調が軽く叶野を凌駕している。
きっと本職の方なのだろう。
「おい、今の誰だ?」
と叶野に尋ねると
「西沢さんです、神崎家専属の執事さんですよ」
驚いた、まさか執事がいるなんてな。
しばらくすると受話器から神崎さんの声が返って来た。
「あの…もしもし」
「もしもし神崎さんですか?」
「あ…、こんばんわ…どうしたんですか?」
「いえ…今日は部活に来なかったのでちょっと心配になりまして…」
「えと…ごめんなさい…今日はちょっと体調が優れなくて」
「そうだったんですか…すみません、電話しちゃって大丈夫でしたか?」
「はい、その、わざわざ…ありがとうございます」
「いえいえ」
「明日はちゃんと部活に行きますね」
「はい」
「それでは、おやすみなさい」
と言って神崎さんは電話を切った。
「どうやら、元気が出たみたいですね、よかった」
「そうか、じゃあ帰れ」
いつまでも、お前と一緒にいるのは嫌だからな。
「そうですか…残念です、僕も晩御飯をまだ摂っていないのでよかったら御一緒しようと思ったんですが」
「どこで?」
「そうですね、何でも好きなものを言ってください、僕のおごりですので」

なんて言われたので…のこのこと着いて来てしまった。
だって駅前で豪華中華料理を食べれるんだぜ。
行かない奴はアホか田中くらいだろう。
まぁ店内に入って適当に座り、注文を言った後。
唐突に叶野が話しかけてきた。
「それにしても…もう、半年ですね」
「なにがだ?」
「僕たちが知り合ってからですよ、僕の中では既にあなたは信頼できる友達になっています」
「止めてくれ」
「冗談ではありません、苦楽を共にしてきた仲間…これ以上の存在はないと思います」
「俺はお前を仲間だなんて思ったことは一度も無い」
「そうですか?僕はこの半年、あなたと一番会話をしていますが」
「それはそうだが…」
まぁ無害とも言えないこの男と一緒にいると何かトラブルに巻き込まれるからな…。
その後、運ばれてきた料理を食べ終え叶野は帰ると思われたが
「今日は泊まってもよろしいですか?色々とお話したいこともあるので」
まぁ飯もご馳走になったことだし、仕方ない一日くらいなら泊めてやろう。
どうせ明日は土曜日だからな…。
実際、休日と言っても恋愛仲介部の活動があるんだけど…。

まぁ叶野は結構柔軟に話ができる奴なので
色々と最近の曲の話やテレビ番組の話やらで適度に楽しい時間を過ごした。
これで普通の生徒だったら友達確定なんだけど。

今日は休日、しかもテスト一週間前と言うことで学校は閉まっている。
だから今回はミーティングのみで活動らしい活動はしないらしい。
そんで俺たちは叶野と一緒にコンビニで朝飯を買い。
待ち合わせ場所の駅前の公園に30分前に到着し
菓子パンを食べていた。
「あ……」
と俺たちを見て微妙な戸惑いを見せているのは池上だった。
「よう」
「おはようございます」
俺たちは挨拶をするが
「…二人とも…早いんだね…」
何かぎこちないな…。
「…ちょっと」
俺を手招きする池上。
「なんだよ?」
「あのさ…叶野君とは友達だよね…」
いきなりなにを言い出すんだ。
「周りから見ればそう見えるのかもな」
「それ以上の関係じゃないよね…?」
「いや、親友って感じじゃないな」
「そうじゃなくて…その…」
池上は言いにくいことを言いたそうにしている。
「なんだ?言いたいことがあれば言えよ」
「…ったりしてないよね…?」
「なんだって?最初の方が聞えなかったぞ」
「だから…その…つきあってないよね…?」
一瞬池上の頭が狂ったのかと思った…。
「…俺と…叶野がか?」
「…うん」
「断じてない…第一俺は男に興味のある変人ではないからな」
「…本当に?」
「……ああ、てかその推論の出所はなんだ」
「これ」
と携帯を開き、俺と叶野が一緒に食事を食べている写真があった。
「これだけなら…いいんだけど…」
で、もう一枚見せたのは叶野が俺の家に入る姿で…撮影時刻は夜の11時…。
「…これ、どうした…?」
「友達が送って来たの…それに噂もあったから」
噂?この間言いかけたあれか?
「どんな…噂だ?」
「叶野君と…えっと、実はつきあってるって噂」
誰が流した…直ぐにでも発信源を捕まえて即刻死刑を言い渡したい。
「根も葉もない噂だ、昨日、俺の家に叶野が泊まったんだよ、まぁ話があるとかでな…」
「………」
頼む…信用してくれ池上。
「なぁ…叶野も証明してくれ」
とりあえず、話の筋を説明してもらって叶野に何も無かったことを証明してもらおうと思ったが…。
「僕がもし女性に生まれていたら確かにあなたは魅力的な人に思えたでしょうね、ですから僕が男に生まれたのを少々残念に思うくらいですよ」
止めてくれ、お願いだから少々でもそんなことは思わないで欲しい。
「…冗談ですよ、本気にしないで下さい」
フォローが全く役に立っていないぞ…。
冗談を言うときは時と場合を選べ。
「おはようございます」
神崎さんが登場だ…この空気を打破してくれたことに感謝をしたい。
「おはようございます、体調はもう大丈夫なんですか?」
「はい、おかげさまでもう大丈夫です」
よかった、神崎さんに元気が無いと部活内のバランスが崩れるからな。
で…いつの間にか影島が到着しているのは突っ込まないとして…。
「なんで、お前がいるんだ?」
黒いスーツを着た意味不明男がバラの花束を抱えて立っていた。
そう…田中だ。
「あの〜一つ聞いてもいいですか?」
俺に問う田中。
「なんだ?」
「昨日の綺麗な…えっと紀野里先生でしたか…あの方は何処に?」
「今日は来ないだろ」
「えぇーー!!、せっかく花束を用意したのに…」
既に…彼の中で貧乏キャラは忘れられているらしい。
「ここは聞いた方がいいのか?」
池上に相談する。
「聞いてあげたら…」
まぁそれがいいよな…。
「で、なんでそんな格好なんだ?」
「よくぞ、聞いてくれました、俺は昨日、あの紀野里先生を見たときに身体に電流がビビビッと走ったのさ、ああ、これが恋というものだと初めて実感した、俺の今までの人生の中で最高の女性にめぐり合えたんだ、だから俺は決意したのさ、あの女性に全てをささげると!!」
えっと…どこを突っ込めばいいやら…。
そういや田中が先生と会ったのは野球のとき以来だもんな…。
確か野球の時はボールが頭に当たって記憶ごと吹き飛んだらしいが…。
「まぁ…頑張れよ…その、嫌われない程度にな」
「まかせろ、アンサン、披露宴には真っ先に招待するぜ」
と意気込んで田中は帰っていった…それにしも元気な奴だ。
「お待たせ」
誰も待ってないが…部長が来たのは集合時間から五分後だった。

「それじゃ市場調査ってことで二組に分かれる、叶野、クジよろしく」
いったいなんの市場なのだろうか…。
「了解しました」
例によって叶野の配るクジを引く。
一組目は俺、影島、神崎さん。
そんで二組目が部長、叶野、池上となった。
まぁ妥当なとこだな。
「じゃあ昼に集合」
ってことで俺たちは別々の方向へと向かった。
行くところも無いので適当にウインドウショッピングでも嗜むとしよう。
で、駅前ばかりでも芸が無いので今回は商店街方面にやって来た。
「うわぁ…いろんなお店がありますね」
素直な反応を見せてくれる神崎さん。
実際俺は何をやっているのだろうか…明後日試験なのに…。
「見てください、これ面白いですよ」
なんて俺の裾を引っ張って進んでいく辺りは池上に影響されているのか
最近の神崎さんは何事にも前向きに挑戦する方になっている。
でもまぁ…俺は昔から結構この商店街を見てきたので珍しいものなんて特に無かったりする。
影島はすぐに本屋に行ってしまったので…現在神崎さんとツーショット状態。
どーするかねぇ…このまま神崎さんに引きずられるのもいいか…。
神崎さんが元気なのはなによりだしな。

そいでまぁ一日、神崎さんに引っ張りまわされた俺は
ああ…そういや池上と買い物に来るときと疲労感が似ている。
なんて思いながら帰路に着くのであった。

月曜日、そう…今日からテストが始まるのである。
この緊張感がなんとも好きになれん。
そんでまぁテストが始まった訳だが
以外にも問題がスラスラと解けるのは先生の補修のお陰だろう。
そんなんで特に苦戦することも無く俺は全てのテストを無難にこなしたのさ。

で、待ちに待ったテスト返却を終えて、確かな結果が返って来たことに安堵し俺は部室のドアを開いた。
「こんにちは」
と満面の笑みを見せてくれる神崎さん、テストの結果が良かったのだろう。
昼休みに叶野に聞いたが全員の結果は
叶野が12位。
池上が29位。
神崎さんが34位。
影島が17位。
俺が21位と言う結果になったのだが…。
部長はと言うと
全教科満点と言う快挙を達成し
文句なしの同道の1位の座を手にしたのさ。
ちなみに生徒会長は2位。
桐谷さんが6位だったらしい…。
まぁロリ坂と田中は本人の為にも点数は公表しないで置こう。
「見たか生徒会っ!、俺の作った恋愛仲介部は不死鳥の如くよみがえるのだ、これに懲りたら二度と活動停止なんて寝言をいわないことだな」
って先程部長が生徒会室で叫んできた。
やれやれ…これで恋愛仲介部は奇跡の復活を見せた。

俺としてはもうちょっと平凡な毎日を暮らしていたかったが…。
再建された恋愛仲介部は留まることを知らないらしい。
なぜなら…一週間後に文化祭を控えているからさ。
とまぁ…降りかかる災難を予測できるのはいつものことなのだが…。

まさか…あんなことになるとは…誰が予測できただろうか…。
この時の俺はあんなことが起きるなんて思いもしなかったね。

彼女は既にここで決心していたのだろうか
でも、それを知る術は俺には無かったのだから…。


次回…急展開です。お楽しみに…。








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