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恋愛仲介部
作:MOR



恋愛仲介部の欠員1




二学期が始まってそろそろ二週間になる。
つい先日、合宿を終えて虚弱状態を引きずっていた俺に
これでもかと言わんばかりに悲劇が降り注いだのさ。
それは…まぁ普通の日常を過ごしていると突然やって来た…。

時間ギリギリに校門をくぐり
俺はいつものように担任の先生との教室へのデットヒートを期待していたのだが…。
教室に入るとまだ担任は着ていないらしく。
騒がしさが残る朝の風景を久々に俺に拝ませてくれた。
まぁそれはありがたいのかどうか微妙なのだが…。
気を取り直しつつも自分の席に座るとしよう。
鞄を机の横に置き、席に着席すると
日々の日課のように…そして最大公約数の如く、栄治が話しかけてきた。
「おはよう、珍しいね、先生より先に教室にいるなんて」
おいおい…俺は不良学生としてお前に認識されていたのか?
奴はともかく、俺は平凡と言って不備の無い一般人だ。
「そうか?俺はいつもと同じに着いただけだが」
そうそう、寸分の狂いもなく、朝起きてから、登校にいたる手順までいつもと同じさ。
「じゃあ先生が遅れてるのかな…?」
なんて小首を傾げながら栄治は悩んでいる。
俺としてはこのまま一時間目が自習とかになってくれた方が助かるんだがね。
奴の方に目をやると…手を振って来たのだが…軽く無視をしておく。
「みんな着席して」
と、教室に入ってきた教師さんは
いつも見慣れた中年男性ではなく
なんと…部室で見慣れた女性が立っていた。
「今日からこのクラスの担任になりました紀野里です、みんなよろしくね」
マジですか…ここ最近姿を見ないと思ったらそんな事になっているとは…。
またしても極秘的に理事長権力が働いたに違いない。
それにしても…男子全員が喜んでいるのは気のせいじゃないよな…。
「それでは早速だけど、転校生を紹介するね」
なんて言われて教室へと入ってきたのは我らが部活のマネージャーさんでして
来るとは聞いていたとは言え…本当に有言実行するとはな…。
そんなに大事か仲介部…?
「池上です、これからよろしくお願いします」
丁寧にお辞儀をした…池上もどうやら人並みに緊張はするらしい。
「それじゃあ…新学期ということなので、席替えをしたいと思うんですが…」
そんな先生の提案に反対する奴なんてこのクラスにはいなかったのさ。

てな訳で…例の如く、くじ引きで席を決めたのだが
俺は窓側一番後ろ、念願の最高の席を手に入れた。
つい嬉しさに顔が緩んでしまう、なんて言ったって授業中の居眠りがバレる確率が一番低いからな
でも…嬉しさと悲しさの等価交換はこの世の常らしくて。
悲しくも…。
「よう」
と俺に話しかけるのは偶然にも俺の前の席になった部長で
「よろしくね」
なんて猫を被っている池上が俺の右隣になったのさ…。
はぁ…将棋で最後に残った歩くらいの空しさが俺の心を襲う。
それで一時間目のホームルームは俺を除くみなさんには平和的に終了した。

それで一時間目や二時間目は池上から授業に対しての質問攻めを受けることになり…。
いや、俺も正直授業の内容は分かりかねないのだが
池上はそんなことお構い無しに九官鳥なみの五月蝿さで俺に話しかけていた。
頼む、貴重な睡眠時間を奪わないでくれ。
まぁ三、四時間目は体育なので強制的に授業に参加になってしまう。
早く着替えて体育館へと移動せねば

授業なのだが、どーやら池上さんは大活躍をしたらしく。
しかも、性格は猫を被っているので…。
俺たちのクラスではスポーツ万能で男女問わず人気者の位置を不動のものとしていた。
まぁそんな池上が恋愛仲介部のマネージャーだなんて誰も信じないだろう。

そして、昼休みがやって来た。
俺は叶野と昼飯を食うために屋上へと向かう。
「ちょっと待って、私も行く」
クラスの女子に一緒に食べようよ、なんて誘いも断って、なぜ池上は俺の後をついて来るのだろうか…?
でまぁ池上さんをお供につけて
俺は屋上のドアを開いた。
「今日は池上さんも御一緒ですか?」
と、先に屋上についていた、季節感の無いスマイルを放つ叶野が俺を見る。
「ああ」
適当に流していつもの様に床に腰掛て弁当の包み取る。
「こんにちは、叶野君」
池上も叶野に挨拶をして俺の隣に座り自分の弁当の蓋を開ける。
「おや、池上さんのお弁当は手作りですね」
なんて池上の弁当箱を除いて羨ましそうに見る叶野。
「お前料理なんてできたっけ?」
確かこいつの中学時の家庭科の成績はクラスで一番か二番だったよな…下からだけど。
「人間は日々成長するものなのよ」
努力家の池上さんは夏の間に様々なスキルをつけていたらしく。
叶野から聞いたのだが、転入試験も理事長の力ではなく自分の力で合格したらしい。
「そりゃご苦労なこった」
俺は自分の弁当をかっ込んで弁当箱を片付けて壁に寄りかかる。
「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど」
なんだ?お前からの質問の募集は午前中に終了したぞ。
「なんだよ?」
「叶野君といつもここでお昼食べてるの?」
「ああ」
なんか喋る相手がいないと言うか…教室にいると奴の餌食になるからな…。
仕方なくだ、好き好んで一緒に居るわけじゃない。
「ふぅん…そうなんだ…だから、あんな噂が…」
最後の方が聞えなかったが…池上は何かを納得したようだった。
「どうした?」
「ううん、なんでもない…知らないほうがいいよ」
そう言われると余計に気になるのが人間心理さ。
「気になるだろ」
「本当に知らないほうがいい、うん、知ったら多分ショックを受ける」
…ショックを受ける?
いや、…それだったら聞かない方がいいのかもな…。
叶野を見ると微笑してるし…。
おそらくコイツには話の主題が分かったらしい。
「それより、今日の部活は自主参加みたいですよ」
「自主参加か…」
嘘つけ、そんな日は確実に全員参加日だ。
「わかった」
俺は弁当箱を持って立ち上がり屋上を後にした。

「ねぇ、今日は参加するの?」
帰りの廊下で池上が聞いてきた。
「ああ、帰ると嫌がらせ電話が携帯にかかってくる」
「え…誰から?」
「部長」
と噂をしていると奴が教室の前に立っていた。
「なにしてるんだ?」
俺が聞くと
「お前らを待ってたんだよ」
と言って俺のブレザーの裾を掴み席へと戻る。
はぁ…お前はおもちゃ売り場へと親を連れて行く子供かよ…。
「で、なんだ?」
無理やり席に座った俺は奴に問う。
「よく聞け、今日はお祭りだ」
お祭り?お前の頭の中の話か?
「なんの祭りだ?」
「紀野里先生の教員に昇格祝いと、マネージャーの転入祝いだ」
「それいいわね、やりましょう」
なんて乗り気の池上さん。
「まぁいいんじゃないか」
別に誰に害が及ぶ訳でもないしな。
「それじゃ放課後部室に集合、今日は帰りは遅くなるから家には連絡するように」
なんて保護者のようなセリフを吐いて奴は教室を出てった。
おい、授業はどうする気だ?

それで、六間目を終えた俺と池上は何の迷いもなく部室へと足を運んだ。
「こんにちは」
ドアを開けると神崎さんがいた。
「こんにちは神崎さん」
と、池上が挨拶する。
「こんにちは、池上さん」
まぁ挨拶はそれくらいにして…。
部室内は折り紙とかで綺麗に飾りつけがしてあった。
「こりゃ本当に祭りだな…」
なんて感心していると
「お前も手伝えよ」
と後ろから現れた部長、ちなみに影島は最初から部室にいた。
「先生が来るのが4時半だから、それまでに飾り付けを完了させる」
俺はあまり本意じゃないが適当に手伝うことにしよう。
「お前は買出し」
座ろうとしていた俺を制し奴が言う。
「買出しだと?」
「ああ、お前はクラッカーを買って来てくれ」
はて、あの鳴らす方か食べる方か…?
まぁ祝いたいのだから鳴らす方か…。
「わかったよ」
仕方ないが行くとしよう、ここで奴にこき使われるよりはマシだ。
「あ、私も」
と名乗り出る池上だったが
「祝われる方は椅子に座ってお茶を飲んでいるがいい」
と奴が言ったので池上は着席。
「じゃ、行って来る」
と軽く手を振り俺は部室を後にした。

「おや、どちらに行かれるのですか?」
下駄箱に行く途中、叶野と廊下で会った。
「買出しだ」
近くの百円ショップへだがな。
「そうですか、御気をつけて」
「はいよ」
せいぜいこの世の危険に気をつけるよ。

校門を出て、いつもの通学路を歩き。
神崎さんといつも別れる交差点をいつもと逆方向に向かうと商店街がある。
さて、適当に買い物を済ませて帰ろう。
と、思ったが…この町唯一の百円ショップにはクラッカーは売っていなかった。
ここはもう、お菓子のクラッカーを買って行ってネタにでもしようかと思い。
俺は近くのスーパーへと向かう。

まぁ適当なクラッカーを買う…ちなみに鳴らす方もあったので買ったが
制服での買い物は周囲から妙な目線で見られていた。
それもそうか…こんな学生がクラッカーなんて買ったらいったい何に使うんだと思われるだろう。
安心してくれ、正規の使い方で使うから。
なんて考えながら歩いていると
小学生くらいの子供たちが何人かで走っている。
「この白いとこだけだからな」
「わかった」
小学四年生くらいだろうか…微妙な幼さを残す顔立ちの少年少女が横断歩道で遊んでいる。
ほら、あの白い線を踏んで遊んでいるのさ。
みなさんも一度は経験があるんじゃないだろうか?
…って、危ないだろ。
と、思った時には時既に遅く。
一般乗用車が走ってきている。
信号機の無い横断歩道だ、普通に走り抜けようと考えているに違いない。
「や、やべぇぞ」
なんて言って男の子たちは車に気づき歩道へ非難したのだが。
「バカ、やめろって」
なんて言われているのは一人の女の子で…どうやら靴が脱げて横断歩道に取り残されてしまったらしい。
そんな靴なんて放って逃げりゃいいものを…。
なぜか女の子はその靴を取りに横断歩道へと戻って行った。
女の子は自分の靴を拾い、安心しているが車は目前に迫っている。
くっ…。
体が動いていた、おそらくアノ女の子は放って置いたら車に跳ねられて死ぬだろう。
だが、…あの位置ならまだ間に合う。
俺は持っていた袋をその場に放置して走る。
「えっ?」
やっと女の子は車の存在に気づいたが…もう遅い。
しかし、ギリギリで俺は女の子を抱え歩道へと走る。
間に合った…。
これで明日の新聞の一面は「高校生が女の子を事故から救う」なんてことになるに違いない。
なんて思っていると。
「パァァァァァァン」
とクラクションの音が聞え
ドンッと言う鈍い音がしたと思うと俺の身体は中を舞っていた…。
まるで、無重力になったかの様に飛ぶ俺の体。
実際あんまり飛んじゃいないが。
次の瞬間にはゴロゴロと地面を転がる…あちこち痛いと思うが…今は感覚が無いみたいだ…。
はは…自分が事故にあってるよ…俺確実にバカだな…。
しかし、腕の中の女の子は無事みたい…それなら…まぁいいや。
人間、良い事をして死ねるなら本望さ。

…………。


目が覚めたのは奇跡なのか…はたまた改造人間として生まれ変わったのかは分からなかったが
救急隊員らしき人が指を俺の目の前に持ってきて
「これ、何本に見える?」
なんて子供でも分かることを聞きやがる。
まぁここはふざけて700本とか答えてやろうかと思ったが…。
「…2本」
と素直に答えていた…。
「そうか…」
隊員さんはしばらく何かを考えて
「タンカに乗せますね…少し痛いですよ」
と言ったが…俺の身体に感覚は無い訳で…痛いかどうかは関係ないのさ。
二人がかりでタンカに乗せられ
五月蝿くピーポーと鳴いている赤と白の車の中に俺は運ばれた。
やれやれ…野次馬だろうか?…みんな俺のこと見てやがる…。
俺は見世物じゃないんだけどな…。
「では、病院に運びます」
はぁ…少し動かしたせいか…血が垂れて来た…。
はは…ホントに赤いや…緑とかじゃなくてよかった。
その時俺が思っていたのは…早く部室に帰って神崎さんの笑顔を見て体力を充電しよう…ってことだった。

次に気が付くと俺は病院のベットに寝かされていた。
いやぁ…随分寝心地のいいベットだなぁ…。
「っ……」
えっと…目の前で涙目の両親が俺になんか話しかけてるけど…。
「…あのさ…俺、生きてる?」
と俺が言ったら。
「生きてる…生きてる」
と涙ながらに母さんは俺の手を握った…すまん、痛いから早く離してくれ。

その後…精密検査やら何やらを行ったが…俺はどうやら体の傷のみで他に故障した場所は無いらしい。
いや…体の傷って言っても全身の打ち身と擦り傷が大半で、別に縫い合わせる様な傷はないんだとさ。
検査が終わったら俺は再びベッドに寝かされてそのまま眠りについた…。
はぁ…怪我してるんだからそっとしておいて欲しい。

翌日…。
目が覚めて自分の部屋じゃないことにちょっと戸惑ったが
寝起きの悪い俺の頭でも昨日の出来事を鮮明に思い出せた。
あぁ…俺事故にあったんだっけ…。
その後、看護士さんが来て採血なんかをしていったりもしたが…。
俺としては今日は土曜日なのでゆっくり家でテレビでも見ていたかった。
朝ごはんも用意されたが食欲なんて起きる筈もなく。
ただ、暇な時間が過ぎていった。
まぁ一週間ほどで退院はできると先生は言っていたが…こんな暇な時間が一週間も続くと思うと鬱になる。
親に頼んで本でも買ってきてもらおうかな…。
なんて考えていると
「コンコン」
と、病室をノックする音が聞えた。
また、学校関係者か?そろそろ面倒な話は聞き飽きた。
さっきも事故に会いそうだった子供の両親がお礼に着たばかりなんだが
「失礼します」
礼儀良く入ってきたのは見飽きた顔にフォーマルジャケットを羽織った叶野だった。
「はぁ…」
思わず溜息が出る。
「元気そうで何よりです、知らせを聞いたときは驚きましたが」
「あのなぁ…俺のこの状況を見てどう解釈をすればそんな見解にいたるんだ?」
傷だらけで身体もろくに動かないんだが
「いえ、本当に無事でよかったですよ、僕としても大事な友達を失うのは嫌ですので」
「あーそうかい」
いったいコイツは何しに来たんだか…。
「フルーツでも切りましょうか?」
「…遠慮する」
お前が枕元でりんごをむいているなんて変な光景過ぎる。
「そういや、恋愛仲介部は今日は活動しないのか?」
休みの日でも二分の一の確率で活動があるからなぁ…。
「いいえ、部長はメンバーに欠員が出てしまったので、しばらく活動は停止…と言っていました」
「そうか…」
奴もそれなりに俺のことを考えてくれた…と解釈しておこう。
「僕もしばらくはつまらない毎日を送りそうです、あなたさえ良ければ毎日でもお見舞いに来ますが」
「いや、たまにでいい、そんなに頻繁に来られると気の休まる時間が無い」
「そうですか、残念です」
どう残念なんだかなぁ…。
叶野はその後、「今度面白い小説でも持ってきます」…なんて言って帰っていった。

しばらくして…。
「し、失礼します」
なんて病室に入ってきたのは可愛い私服姿の神崎さんだった。
「神崎さん?」
「あの…怪我とか…大丈夫ですか…?」
「ええ、それなりに痛みますけど、大事には至らなかったみたいです」
「そうですか…よかった」
神崎さんがお見舞いに来てくれるなんて嬉しい限りだね。
「あの、これ持って来たんです」
と俺に渡したのは
「クッキーですか?」
「はい、その、私が作ったんです…その、ごめんなさい、私これしか上手く作れなくて…」
いえいえ、十分ですよ。
全然食欲無かったが、これならいくらでも腹に収めることができますよ。
俺はクッキーを一口食べる。
「どうですか?」
「お、美味しいです」
本当に美味しい、文句のつけ様が無い。
「よかったぁ」
可愛らしく微笑んで神崎さんは嬉しそうにしている。
「あの…池上さんはもう来ましたか?」
「いえ…まだ、ですけど」
「……」
神崎さんは黙っている。
「あの、池上がどうかしたんですか?」
「気にしてたみたいだから…」
何を気にしているのだろう?
「あ、もうこんな時間…私、そろそろ帰らないと…」
「そうですか」
「じゃあまた来ます」
神崎さんは急いでいたのかそそくさと部屋を出て行った。
さて俺も疲れたし寝るとするか…。

その後、栄治&笹枝と影島や先生たちがお見舞いに来たりもしたのだが…。
なぜか部長と池上は姿を見せなかった。
…薄情者め。

まぁそんな訳で退屈な一週間を過ごした後に
俺は本来の学校生活に復帰したのさ…。

久しぶりに登校した俺は
もちろん勉強なんて分かるはずも無い。
笹枝がノートなんかを見せてくれたがさっぱりだ。
そんな条件が重なったので俺は授業を睡眠時間として消化し
来たる恋愛仲介部の復帰一日目が始まりろうとしていた。
幸いにも、部長は今日も欠席で有意義な時間を送れるだろう。

俺は期待の混じった感情を前面に押し出し部室のドアを開いた。
しかし…返って来たのは神崎さんの「こんにちは」と言う声では無い。
てかむしろ、そこには何も無い状態、つまり、教室だけの状態の空間が広がっていた。
「な、なんだこりゃ…」
もちろん俺愛用のパソコンも綺麗さっぱり無くなっている。
まさか急な引越しでもしたのだろうか?
いやいや…そんな筈は無い。
なんて思っていると
「どうかしましたか?」
つい二時間前に一緒に昼飯を食べた叶野がそこにいた。
「おい、こりゃどういうことだ?」
訳が分からん、早めの回答を期待する。
「見ての通りですよ、言いませんでしたか?しばらくは活動中止だと」
「それでか…で、荷物はどこに行った?」
「生徒会に差し押さえられました」
「なに…?部活に手を出さないんじゃなかったのか?」
以前の勝負で勝ち取った切り札じゃなかったのかよ。
「いいえ、恋愛仲介部はもう部活ではありませんから」
「な…」
叶野の口からこんなセリフを聞くなんてな…。
「どういうことだ?詳しく聞かせろ」
「そうですね、ですが立ち話と言うのも難ですので、屋上にでも行きましょうか」
ああ、それがいい、てかな叶野よ、なぜ昼休みに俺に言わん。

「それでは、あなたが休んでいた時に起こった事を話させていただきます」
丁寧な動作はいいから、早く本題を述べろ。
「部活での活動の最低人数はご存知ですよね?」
「ああ、確か五人とか…」
「そう、五人です、正規恋愛仲介部のメンバー、つまり僕、あなた、神崎さん、影島君、そして部長の五人です」
「それがどうした?」
「池上さんはマネージャーと言うポジションです、つまり正式な部員ではありません」
「だから、何が言いたいんだお前は」
「あなたが事故にあったことで恋愛仲介部は四人になってしまったのです、これでは活動ができません、生徒会規約に一週間以上活動しない部活は休部扱いとする…というのがあるので、僕たちは現在、休部という形なのです」
「おいおい…でも、それだったら俺が復帰すればいいんだろ」
「復帰…できればですが」
苦笑とも微笑とも取れる笑みを零す叶野。
「なにかあるのか?」
「ええ、現在あなたは恋愛仲介部ではありませんから」
「な…」
「部長さんは部活からあなたを除名しました」
さらりとキツイことを言ってくれるな部長さんよ。
「除名理由はなんだ?」
「そうですね、あれはあなたが休み始めて三日目のことです、部長さんは活動を制限してきた生徒会に抗議をしに行っていました」
確かに、奴ならやりかねん。
「ですが、結果は変わりませんでした、ここまでならいいのです…ですが」
「なにか言われたのか?」
「はい、会長に、部員の復帰を待つよりは新しい部員を入れたらどうだ?…と言われました、つまり、部長さんに他の部員を入れるように諭したのです」
「なるほどな…それでか」
「僕としては、あなたに代わる適応性の高い人間は存在しないと思っているのですが」
それは誉められているのか軽蔑されているのか…どっちなんだ?
「部長さんは既に新しい部員の確保に専念しています」
「そうか…」
俺は立ち上がり鞄を持つ。
「どこに行くんですか?」
「とにかく、俺は除名されたんだ、これ以上お前らに付き合う義理もない」
帰ろう、せっかく平和な時間が戻ってきたのだ。
「本当にそれでいいのですか?」
「ああ、俺には普遍的な日常がお似合いなのさ、お前がよければ友達でいる、昼休みにでも仲介部の面白い話でも聞かせてくれ」
俺は叶野に手を振って屋上を後にした。
はぁ…神崎さんに会えない日々が続くのは辛いんだけどな…。

それから三日くらいたったのだろうか…。
俺の席の前と右は俺を無視するようになった。
早く席替えをしてくれよ…。
まぁ昼飯は変わらずに叶野と一緒に食べているが
「なぁ、最近仲介部はどうだ?あたらしい部員は入ったのか?」
なんて聞いても
「すみません、外部の方には教えるなと部長に言われてますので」
冷たく言い返されてしまった。
叶野よ、部員時の俺の扱いと微妙に違っているぞ。

放課後、特にすることも無いので栄治でも誘って遊びに行くとしよう。
「栄治、これから駅前行かないか?」
「いいね、僕欲しいCDがあったんだよ」
直ぐにOKを出してくれた。
持つべき物は友達だね。

駅前にやって来た俺たちは本屋、CDショップ、ゲーセンとお決まりのルートを巡り
適当なゴールデン番組の話などをして盛り上がった。
で、現在はデパート内の休憩所にいる。
「ねぇ、部活はどうしたんだい?最近出てないみたいだけど」
飲み物を飲み終えた栄治が聞いてくる。
「ああ、俺やめたからな」
本当はやめさせられたんだけどな。
「ええっ、本当かい?もったいないなぁ…面白そうだったのに」
「それを奴に言ってみろ、即座に正規部員にしてもらえるぞ」
そうすればおめでたくとも仲介部復活だな。
「無理だよ、僕は塾があるからね」
そうかい…。
さてさて、することが無くなった俺たちは適当な所で分かれて帰路につくとしよう。
帰って晩飯まで部屋でマンガでも読もう。
なんて考えて道を歩いていると
よく知った女の子が元気無さそうに歩いてきた。
「こんにちは神崎さん、今帰りですか?」
「え、あ、…こんにちは」
俺に気づいてなかったのか神崎さんは驚いた表情を見せている。
「部活の調子はどうです?」
と俺が尋ねると
「その…あまり、楽しくないです」
元気無さそうに言われると気になる。
「なぜですか?」
「その…あなたがいないし…あと、池上さんや叶野君も最近来て無くて…」
池上や叶野まで?いったいなにがあったんだ?
「そうですか…大変ですね…」
これ以上、今の俺に言う資格は無いな。
それで適当に「頑張ってください」なんて言って俺はその場を後にした。
神崎さんとこんな距離が離れるとは…痛いね。

まぁそれはそれとして叶野に真意を確認しなけりゃいけない。
自宅に帰り、私服に着替え、電話をかける。
「どうかなさいましたか?」
おいおい…コール無しで出るなんて…きっと俺からの電話を待っていたんだろう。
「聞きたいことは分かるだろ」
「ええ、…ですが…」
「なんだ?」
「あなたは仲介部を辞めたかったのではないのですか?」
「そうなんだけどな…神崎さんを一人残す訳には行かないだろ」
「そうですか、あなたらしいですね、それの優しさを少しでも池上さんに向けてあげた方がいいと思いますよ」
「なぜ池上に?」
「いえ、今のは聞き流してください」
そんな聞き流しにくいことを言われて流せるかよ。
「では、あなたが聞きたいと思っていることを言ってください、説明なら得意なので」
んなこたぁ知ってるよ。
「じゃあまず、お前が部室に行かないのはなぜだ?」
理事長直属的な任務でもあるのか?
「そうですね…簡潔に言いますと、僕も部から除名されたからです」
「な、マジか…」
「ええ、マジですよ」
「じゃあ、昼休みに部活のことを聞いても答えなかったのは…」
「教えない…ではなくて分からなかったので答えませんでした」
分からないのは嘘だろうが…まさか、作戦参謀まで首にするなんて正気か部長?
いや…まぁいつも正気じゃないのは知ってるけど…。
「待て、俺の除名理由は分かるが…お前はなぜ除名されたんだ?」
「簡潔な理由ですよ、前にも部長さんは言っていましたが、僕の敬語を使うキャラクターに飽きを感じてきたのでしょう」
「おいおい…そんな理由でか?」
「はい、遅かれ早かれ来る事は予想していたので僕の方は対処のし様があります、もちろんあなたもですが」
「どんな対処だ」
「そうですね、部長さんに興味を引く人材を確保させない、と言うのはどうでしょう?、もし、個性の強いおもしろい人間がこの学校に存在しなければ、消去的に僕らが再雇用されると思います」
「…どうやって?」
「そうですね…転校、あるいは留学してもらいましょう」
「理事長権限とやらの力か?」
「ええ、理事長権限です」
まぁそれで俺たちは部活に復帰できるとして…。
「池上はどうしたんだ?もしかしてマネージャーまで除名したのか?」
「いいえ、彼女は…そうですね心的ショック…と言う感じのものでしょうか…」
「心的ショック?なんだそりゃ?」
「これは…僕個人の意見ではあなたに解決していただきたいのですが」
「なぜ、俺が?」
「はぁ…本当に分らないのですか?、まぁいいですが、あなたに原因の一部はあるのです」
「原因だと…事故のことか?」
「え…ええ、それも原因の一部ですね…」
「じゃあどうすりゃいい?」
「そうですね…まずはお話するところから始めてみてはどうでしょう?」
そんな友達を作る訳じゃないんだぞ。
「…わかった、じゃあ明日話しかけてみる」
「お願いします、この件はについて僕はなにもお手伝いができないので」
なんて言って叶野は電話を切った…。
やれやれ…早いとこ、晩飯食いに行かないと母さんに怒られる。

はぁ…明日からまた忙しくなりそうだ。


そろそろ…恋愛の話を載せなければ…。








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