サマーバケーション注意報
先日…生徒会との面倒な対決が終わり
あーこれで後は夏休みを待つばかりだぁ
なんて浮かれてた俺に…死刑宣告の様に奴はこう言った。
「夏休みも仲介部は活動するからな」
勘弁して欲しい。
なぜに俺の貴重な夏休みをこいつに奪われなきゃならん。
「はぁ…」
溜息交じりでパソコンデスクに着席した俺に爽やか系美少年君が話しかけてくる。
「今週…」
「無理だ」
まだ何も言わないうちに断る…それが一番良い方法だ。
「僕はまだ、なにも言ってないのですが…」
「俺にとって良くないことなのは良く分かっている、だからそれ以上喋るな」
「そうですか…今週の土曜日に、みなさんでプールに行こうと思っているのですが…」
喋るな…と言っているのに喋りやがって…もう少し俺の言葉に耳を貸してくれ。
それに今週の土曜と回りくどく言っているが…今週の土曜は明日だぞ。
「プールだと?」
「ええ、恋愛仲介部一同で遊びに行く予定ですよ」
なるほどね、神崎さんも来るのなら行かない手はないな。
「仕方ない…俺も行こう」
「では、出席ですね」
と、決定したのは良いものの…。
俺は水着をどこにしまったっけ?
なんて平和ボケしたことを考えていると
「それじゃ今から買い物に行こうぜ、浮き輪とか買わないとな」
グットタイミング…なのかは知らんが今からプール用品を買いに行くらしい。
まぁ俺はこの部活の活動には強制参加なので
奴に引きずられる様に駅前のデパートへとやって来た。
「それじゃ、私たちは向こうだから」
と言って神崎さんを拉致って姿を消す池上…。
先日の件で機嫌を損ねていたが
俺の財布の戦闘力1500ポイントを駅前のデラックスパフェに変換したら許してくれた。
嬉しいやら悲しいやら…。
てな訳で俺と叶野は待機、部長と影島はビーチボールなんかを見に行ってしまった。
「なぁ…どうして急にプールなんだ?」
唐突なのにはもう慣れたが…。
「これはみなさんとの交流を深めるためのものですよ、僕は一人の友達としてあなた方を誘ったまでです」
「そーかい…」
特に理由は無いのか…安心できる。
叶野の用意したものには確実になにかおかしなオマケが付いてくるからなぁ…。
しばらくして…池上と神崎さんが戻ってきた。
「どんなのを買ったんだ?」
と俺が尋ねると
「当日まで秘密よ」
はいはい…別にお前の水着なんざキャンペーンの客寄せにもならないだろうが
神崎さんの水着は一見の価値がありそうだからな。
「買ってきたぞ」
と、部長氏はビーチボールと浮き輪を手にしていた。
でも、なんで浮き輪が必要なのだろう?
まぁ神崎さん辺りは泳げないって素で言いそうだしな。
用意周到は悪いことじゃない。
「では、帰りましょうか」
集団下校の如く、俺たちは帰り道を歩く。
「それでは明日の10時に、町営プールでお会いしましょう」
やれやれ…休日ぐらい昼まで寝ていたいのにな…。
翌日…。
目覚ましを止めた現在時刻は午前9時。
余裕で間に合う時間帯なのだが…。
「頭が…痛い」
激しい頭痛を感じているのは勘違いでもなんでもない真実だ…。
体温計を取り出して熱を測ると38度…完璧に夏風邪…である。
仕方なく叶野に電話をすると。
1コールもしないうちに叶野が電話に出た。
「もしもし…」
だるそうな声で俺が言うと。
「どうかしましたか…?」
「すまん、風引いた…今日のプール無理みたいだ」
「…そうですか…無理をしてはいけません、今日はゆっくり休んでください、部長には僕から言っておきますから」
「助かる」
そう言って電話を切ったら。
妙に目眩がしてきて俺は倒れるように寝ちまった…。
起きると…時刻は午後4時ちょっと過ぎ…。
寝すぎたせいか体がだるい…。
身体を起し台所へと来ると何やら騒がしい声が聞えるのは気のせいじゃない訳で…。
「よっ」
と軽めの挨拶をする部長…。
「おはようございます、お体は大丈夫ですか?」
と、聞いてくる叶野…。
隅で読書中の影島に
神崎さんや池上までがリビングでくつろいでいた…。
「お、お前ら…なんで?」
勝手に人の家に上がるなんて…さすがに人として不味いだろ。
「お見舞いに来たんです」
と、少し湿った髪の毛をドライヤーで乾かしている神崎さんが言う。
「…お見舞い?」
「そうよ、一人でぶっ倒れてるかと思ったから、プールの後、全員で寄ったのよ」
余計な事を…俺のことを思ってくれるなら静かに放置して欲しい。
「まぁ、立っているのも辛いだろ、とりあえず、座れ」
ここは俺の家なんだがな…。
俺は椅子に腰掛ける。
「で、今日はどーだったんだ?」
一応…どんな風に遊んだかは気になる。
「楽しかったぞ、特にあのウォータースライダーは刺激的だったな」
へぇ…しがない町営プールにもそんなものが完備されるなんてね。
税金の使い方間違ってるんじゃないか?
「そういえば…母たちがいないな…」
見渡すが…家族の姿がない。
「ご家族でしたら、僕が豪華シティホテルの宿泊件をプレゼントしましたので今日は一泊になると思います」
なんてこった…さっきから腹が減って死にそうなのに…。
「俺の飯はどうなる…」
「それでしたら、大丈夫です、僕が何か作りますので」
「いや、遠慮する、確かカップ麺があった筈だ…」
神崎さんの手料理ならともかく…。
叶野の手料理なんて死んでも御免だね。
まぁ神崎さんは料理が全然できないみたいだし…残念極まりない…。
お湯を沸かして三分間。
できたてのカップ麺をすすっていると。
「俺、そろそろ帰る」
と、珍しくも謙虚に部長氏は帰って行かれた。
「そうですね…では、僕たちも失礼しますか」
なんて言って叶野、神崎さん、影島は帰っていった。
「で、なんでお前は帰らないんだ?」
と、池上に言う。
「だって家近いし」
答えになってないぞ。
「あーそうかい」
今の俺にこいつを追い出す元気はねぇからなぁ…。
「残念だったね」
唐突に池上が言い出す。
「なにがだ?」
「水着…見れなくて」
確かに…機会を逃してしまったのは痛い…。
「そうだな…ちょっと残念かもな」
「神崎さんの?」
「ああ」
と、まぁ頭で全然考えないで発言した…。
「へぇ…」
「な、なんだよ」
ジト目で見ないでくれ。
今のお前の「睨みつける」のコマンドで
俺のHPは軽くゼロになるからな…。
「ま、いいや、それじゃ私も帰るよ」
「…そうか」
「じゃ、月曜」
「はいよ…」
やっと台風から開放された…。
さてと…もう寝るか、最近無理しすぎていたみたいだし。
なんて考えながら俺は部屋に戻り。
眠りに着いた。
完全…とまでは行かないが。
回復した俺が月曜日に登校すると
「……」
奴は俺の前の席で悩んでいた。
「なにを、そんなに真剣に悩んでいるんだ?」
「いや、昨日の神埼とマネージャーの水着姿を見て思ったんだが」
「なにを思ったんだ?」
どうせろくでも無いことだろ。
「文化祭のミスコンで優勝狙えるんじゃないか?」
「は?」
「まぁ先生も合わせて恋愛仲介部が1、2、3位を独占したら知名度もうなぎ登り」
「あのなぁ…」
「そゆことだから、二学期が始まったら文化祭の実行委員よろしくな」
やれやれ…なんで一学期もまだ終了していないのに
二学期の予定までを決められるなんてな…。
二学期か…。
出来れば平和に送りたい。
その後、担任が教室に入ってきてホームルームを始めたが
初夏の暑さと、奴の提案のせいで俺は全く聞く気が起きなかった…。
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