恋愛仲介部(10/79)縦書き表示RDF


恋愛仲介部
作:MOR



恋愛仲介部の論外2



枕元で五月蝿く鳴る目覚まし時計に一撃を加え
ベッドからのそのそと起き上がり洗面所で顔を洗う…。
それにしても何で目覚ましってのは律儀に毎朝俺を起すんだろうか?
そんなことを考えつつも制服に着替え鞄を持ち家を出る。

梅雨時と言うことで今日は午後から雨が降るそうだ…。
この時期はどうもやる気が出ないね。
元気があるのは奴とカタツムリくらいだろうよ。
「よう」
教室に入ると真っ先に声をかけてくる部長。
「今日は何をするんだ?」
放課後の予定を聞いておくか…。
「それは後のお楽しみ」
俺にとってはお楽しみ以前に不安が大きくなるんだが…。

さてさて、放課後。
鞄が無いので部室に顔を出すのは既に規定事項で…。
「こんにちは」
ドアを開けると梅雨時の紫陽花の様な笑みを見せてくれる神崎さんがいた。
「あれ?他のみんなはいないんですか?」
「はい、みなさん用があるとかで…どこかに行っちゃいました」
なんの用だろう?
まぁその内戻ってくると思い俺は神崎さんと二人でトランプなんかをして楽しんでいた。

三十分くらい経っただろうか…。
「あれ…」
外を見ると雨が降って来ていた。
「雨…ですね」
「どうしましょう…私、傘を持ってきてないんです」
神崎さんは困った顔をしている。
「俺の傘でよかったら貸しますよ」
「いいんですか?」
「ええ」
俺は神崎さんに傘を渡す。
本当は一緒に傘に入って下校…と思ったが。
それをした場合、池上に後ろからナイフで刺されるかもしれないからな。
いや…それは考えすぎか…。
まぁ暗くなってきたので神崎さんは先に帰ってしまわれたのだが…。
いよいよ、本格的に土砂降りになってきた。
こりゃ帰り辛いな…。
そんでまぁ…現時刻は6時で…。
雨に濡れても良いから、そろそろ帰ろうと思っていた時に
「待たせたな」
と部長と叶野、そして影島が戻ってきた。
「別に待っちゃいないが…今まで何してたんだ?」
神崎さんを一人で部室に放置していたら、誘拐されてしまうかもしれないだろうに
「生徒会に掛け合って来たのさ」
「いったい何をだ?」
「正々堂々、俺たちと勝負をしろとな」
勝負…何の勝負だ?
「僕たちと生徒会、それぞれ条件を提示し合い、勝負…つまり、勝ち負けを争います」
「ちょっと待て…それはいったい何の勝負だ?」
「三回勝負の対抗戦です、僕たちは条件を1個決められますが…最後の勝負では二回目に負けている方が条件を提示できます」
「それに勝ったらどうなるんだ?」
「無条件で俺たちの部活を生徒会に認めさせる」
と奴が答える。
「もし、負けたらどうなる?」
「負けることなど無い」
断言するなよ、それに俺は文頭にちゃんと「もし」をつけたぞ
「負けた場合は…そうですね、おそらく生徒会に吸収され奉仕団体と化してしまうでしょう」
それだけは避けたい。
「今日は解散、勝負は明日からだ、全勝して奴らの鼻をへし折ってやろう」
部長はやる気が溢れすぎるくらいあるようで…かなりのハイテンションのまま部室を後にした。
「では、僕たちも帰りましょうか」

俺が現在雨に濡れていないのは…叶野が二つ傘を持っていたからであって…。
心から感謝すべきか…どうか悩んでいると
「明日からは忙しいですよ」
と話しかける叶野。
「はぁ…よくもお前たちはこんなにも面倒事を持ってくるよな…」
「いえいえ、今回は僕は関係ありませんよ、部長さんが決めたことです」
「はいはい…」
明日からはどうなることやら…予想もつかないね。

翌日…。
放課後、恋愛仲介部と生徒会のみなさんはグラウンドに集合していた。
「それではこれより恋愛仲介部対生徒会を開始する、仲介部の諸君、ルールは考えてきたかね?」
またしても気取った感じに喋る生徒会長殿。
「ああ、もちろんだ、お前たちが驚くようなとっておきなのをな」
こちらも負けじと反論する部長氏…。
「さぁ、ルールを提示しろ」
「はい、僕たちのルールは部活の名の通り、恋愛仲介で勝負します」
おお…珍しく本題を思い出したか…。
「…仲介か」
「ええ、期間は3日間、その間に早く仲介を成立させた方が勝ちです」
「なるほど…それで依頼はどうする」
難しい顔をして聞く生徒会長。
「それはこちらから選んでください」
叶野が取り出したのは俺のロッカーから取り出した手紙の束だった。
「公平性のために、あなたが二通選んで一通を僕に渡してください」
「ふむ…」
会長はその中から適当に二通取り
一通を叶野に渡した。
「それでは3日後、仲介をした方達を連れてきた方が勝ちです」
「わかった、では、3日後に」
それだけ言って生徒会は本陣である生徒会室へと戻って行った。

それで俺たちも部室に戻って手紙の封を切ったのだが
「なんだこりゃ…」
手紙の内容はこうだった…。
「私は一年生です…最近、クラスメイトの男の子が気になって夜も眠れません…これは恋なのでしょうか?」
…恋なのでしょうか…?、と聞かれてもなぁ…。
「それでは早速、この手紙の差出人の所に行きましょう」
相変わらず行動だけは早いのがこの部活の長所だからな…。

で、さっそくその子のクラスに顔を出したのだが…。
「おい、誰もいないじゃないか」
俺に怒る部長…。
当たり前である、今は放課後だからな。
「そうですね…どうしますか?」
そんな緊張感の無い笑みで俺に質問しないでくれよ。
「じゃあその子の家に行って見たらどうだ?叶野ならその辺は既に調査済みだろ」
「ええ、それではその子の家に向かいましょう」
マジか…冗談のつもりだったんだが…。
大人数で行くと迷惑になると言うことで
俺、部長、叶野のメンバーで行くことになった。
神崎さんと先生と影島はお留守番。
ちなみに、池上はなぜか今日は顔を見せていない…。

ピンポーンとインターホンを鳴らすと直ぐに返事が返って来た。
「どちらさまですか?」
「恋愛仲介部だ」
こら、まずは名を名乗れ…。
「……」
しばらくの沈黙の後…。
「どうぞ、上がってください」
なんて感じに言われたもんで遠慮をしらん奴を筆頭にずかずかとお邪魔する。
「あなたの手紙のことですが…これを仲介してもよろしいのですね」
叶野は手紙の差出人かと思われる女の子に問う。
「え、ええ…でも、いまいち自分の気持ちがハッキリしなくて…」
「わかる、わかる」
頷く部長。
嘘つけ、お前に女心が分かってたまるか。
「そうですか…一応聞きますがあなたが気になる生徒はどの人ですか?」
クラス名簿を渡す叶野。
また理事長権力を盾に勝手に持ってきたのか?
「この人です」
指を刺したのはいいが…。
活字のみで顔が分からないんじゃコメントのしようが無い。
「では、後は我々にお任せください、必ずしもこの方との仲を仲介いたします」
なんて大見得を張って出てきたのは良いが…。
「なぁホントに仲介なんてできるのか?彼女はあまり乗り気じゃない気がしたんだが…」
「大丈夫ですよ、3日もあれば人の心は大きく揺れ動くものですから」
そんなもんかねぇ…到底、俺には理解できん。
「じゃあ俺は部室に戻ってみんなに今日の戦果を伝えてくる」
と言って俺たちに先に帰っていいぞ。
なんて言って奴は走って行ってしまった。
「あら、みんな今帰り?」
と、声をかけてきたのは敵チームの一員である桐谷さんだった。
「どうも」
と髪を掻き揚げる叶野。
「そっちももう終わりですか?」
「ええ」
と素直に答えてくれる。
この人からは全く敵意を感じないので安心できるね。
「すみません、僕は桐谷さんと話すことがあるので…」
「わかったよ…じゃあ邪魔者は退散するとしますか」
なにを話すか気になったが…。
知ってはいけない気もしたので俺はその場を後にした。
「私に話って?」
「あなた方が手にした仲介の依頼についてです」
「これのこと?」
桐谷さんは先程会長が取った封筒を取り出す。
「中を…御覧になりましたか?」
「ええ、もちろん…」
「どう…思われました?」
不敵に微笑を浮かべる叶野。
「率直に現状では無理…だと思ったわ」
「そうですね、その仲介は…おそらく我々でも無理でしたね…何しろ差出人が…」
「ふふ、仲介部の部活メンバーが差出人の手紙を混ぜて置くなんて良く考え付いたわね」
「ええ、僕もその手紙を一読した時は驚きました…しかし、彼女の言動、行動を見ていれば大体予想はできてましたが」
「確実に勝ちを取りに来たのね、さすがに会長も気がついてるわ、あなたの作戦だったって事に」
「そうですか、しかし僕はこちらに有利になるようなルールを提示しただけですよ」
叶野は桐谷さんに背中を向けて歩き出す。
「それと、言い忘れていましたが、彼女はここの生徒では無いんです、ご存知でしたか?」
「なるほどね…でも、今回は私たちの存在認識をさせることが目的、別に勝敗は関係ないもの」
と、言い捨ててこの場を後にした。

次の日
その男子生徒とやらに会いに行った俺、部長、叶野なのだが…。
見たところ普通の学生さんでこれと言って特徴的な個性の無い人間だった。
「知っていますか?無個性…とは個性に含まれるのですよ」
知るか、それと俺はお前にそんなことを一言も聞いていない。
「一応、話は通しましたので後は本人次第ですね」
珍しく消極的だな。
「僕たちは後はサイコロが転がる方向を黙って見ていましょう、大事なのは目の数ではなく、投げることにあるのですから」
と、訳の分からん能書きを言っている叶野を無視し
俺は部室のパソコンデスクに寝そべっている訳だが…。
「元気ないですね…どうかしたんですか?」
心配して聞いてくれる神崎さん。
「あ、昨日はありがとうございました、傘、返しますね」
お願いだ神崎さん…叶野の前でそれを言わないでくれ。
叶野はさっきから俺の方を見て微笑してやがる…。
はぁ…。
溜息をついていると
「喜べ、仲介が完了したぞ」
なんて気の狂った様なことを言いながら部長が部室に入ってきた。
「なんだと?昼休みに会いに行ったばかりじゃないか」
「それがな…」
奴はどうやらその後が気になったらしく
二人に交際するようにしつこく勧めたらしい。
そんな縁談を持ち掛けてくる親戚のおばさんじゃないんだから…。
もう少し本人たちの気持ちを尊重してやって欲しい。
「それでは生徒会に連絡を入れましょう」
叶野はすぐに生徒会に連絡をしてグラウンドに再び集合することになった。

「やけに早い仲介だな」
嫌味な口調で部長に言う生徒会長。
「ああ、俺の手にかかれば楽勝さ」
いやいや…確実に叶野の活躍だろうよ。
「そうか、で、証人はつれてきたんだな?」
「ここにいる」
と紹介されたのはあの二人で
「君たちはこの部に仲介をされたのかね?」
会長は二人に尋ねる。
「ま、まぁ…」
「そういうことに…なるのかな…」
なんて曖昧な返事だったが、それでも奴は
「それ見ろ、勝負は俺たちの勝ちだな」
なんて言って胸を張っている。
「そうか、我々は仲介を終えていない…と言う事は今回の勝負、お前たちの一勝でいいだろう」
ホントにいいのか会長さんよ…。
「それでは二戦目ですね、ルールの提示をお願いします」
叶野が会長に尋ねる。
「勝負は投票戦だ、恋愛仲介部と生徒会、この二つの組織の支持率で勝敗を決める」
「支持率…つまり投票を行う訳ですね」
「ああ、告知は明日の朝会でする、開票は明後日の放課後…それでいいか?」
「文句は無い」
言い切る部長…どこにそんな自信があるんだろうか?
「では、明後日、また会おう」
と捨て台詞を吐き会長は去って行った。

明日の告知まで何もすることが無いので今日は流れ解散…。
とりあえず、今日も池上が姿を見せなかったのでさすがに心配になってきた。
なぜなら池上は無遅刻無欠勤が長所の女だからな。
もしかしたら風邪でも引いてるんじゃないか…?
いや…なんとかは風を引かないって言うし…それは無いか…。

てな訳で池上の家に寄ったのだが
池上はちゃんと学校に行ったらしい…。
まぁ向こうの学校でなんか用事でもできたのだろう。

そんで翌日…。
この勝負をいったいいつまで引きずるのだろうか?
まぁかったるくも俺は朝礼で生徒会長さんの話を聞いているのだが
いや、聞くといってもBGMとしてなのだが
これだけはハッキリ聞えたね。
「今日、我々生徒会と恋愛仲介部の人気投票をします、帰りに昇降口の投票箱に投票用紙を提出して帰ってください」
あーあれってマジな話だったのか…。
学校全体を巻き込むたぁやるねぇ会長さん。

で、朝のホームルームで投票用紙を担任から配られたのだが
ギャグで俺も生徒会に投票しようかな…なんて考えていると
奴が俺の用紙を取り上げて勝手に投票しちまったのさ。
やれやれ…。
「これはどういうことなのかしら?」
「知らん」
俺に聞くな学級委員よ。
だが、出来れば仲介部に投票してくれると助かる。

そして何もしないまま開票の日がやって来た。
「では、発表します」
緊張の一瞬だ…。

「恋愛仲介部は81票、生徒会は21票です」

なんとまぁ、しょぼい対決で終わったもんだ…。
全校生徒は軽く千人を越えている筈なのに投票人数が全員で百人ちょっとだとはな…。
しかも仲介部が勝ってるし。
「ふっ…支持率でも負けるとはな、ここは大人しく引き下がろう」
「それがいい判断だ」
奴は部長にそう言って俺にVサインを見せる。
はぁ…。
俺としてはもっと生徒会に頑張って欲しかったのだが…。
そんな感じで俺たちはまさかの生徒会打破を達成したのさ。

帰り道で叶野が今回の事で俺に話しがあると言ったので仕方なく一緒に帰ることになった。
「お待たせしました」
別に待っちゃいないが
「で、話ってのはなんだ?」
また恒例の種明かしか?
「実は今回の件は僕が持ちかけたことなのです」
「やっぱりな、薄々そんなことじゃないかと思ってたさ」
なんか変なことがあれば、お前の持ち込んだと思うのが既に俺の中では規定事項なのさ。
「そうですか、ですが会長さんと田中君の存在は予想していませんでした、僕が用意したのは生徒会との対決のみですから」
「待て、生徒会と対決するなら生徒会長は確実に巻き込まれるだろ」
「いいえ、あの会長さんは学校側の人間です、そして田中君もね…まさかこの段階で会長に就任するとは思いませんでしたので」
どうやら、叶野はこの計画を入学して恋愛仲介部が作られたその日にもう考えていたらしい。
しかし…田中と会長さんは五月に急に転校してきたので予定に入っていなかったみたいだ。
「でも、好都合でしたよ、学校側にとって痛手を負わせたことになりますから」
「痛手?」
「はい、戦利品としての「恋愛仲介部への直接の手出しをしない」と言う条件は我々を守る最高の武器となることでしょうから」
「よーするに好き勝手動けることに保障が付いたって事だろ」
「その通りです、まぁ桐谷さんの協力のお陰でもあるのですが」
あの方も結構不思議な方だからなぁ…。
「なるほど、でも、これで1段落か…俺も安心して毎日が遅れるな」
「はぁ…」
叶野は俺の真似をして溜息をついた。
「なんだよ?」
「いえ…あなたはまだ、この件の本当の意図を解決していません…」
「?」
俺はまだ、叶野の本意を知るなんてことはできなかったのさ。
そう…できていたら俺は…きっと…。

あいつに悲しい思いをさせることもなかっただろうに…。

変化が訪れたのはいつだったろうか…。
いや、おそらく彼女は俺にサインを送り続けていたのだろうが
自分で言うのもなんだが鈍感な俺にそれは分かる筈も無く。
俺はただ平和な時を呑気に送っていた。

部室の空調設備にお世話になるような季節になりかけて来た頃…。
そろそろ池上が部活に来なくなって二週間になるが
誰もその件について触れないのはなぜだろう?
いや、なんとなく触れずらい空気を俺自身が放っていたのだろうか…。
しかし、奴もいい加減に我慢の限界のようで
パソコンデスクで心地よーく寝息を立てていた俺に大声でこんなことを言った。
「おい、マネージャーはどうした?最近来ていないようだが…」
「さあな、俺が知ってる筈が無い」
おそらく、こんなアホな部活に嫌気がさして
学校の女子連中と駅前で遊んだりしてるんじゃないか?
「なら調べに行くか」
遠慮して置きたいね。
池上の動向を探ったところで俺には得する結果にゃならんだろうし
もし、見つかったらあいつに何を言われるか分かったもんじゃない。
だから放置が一番なのさ、俺としても、池上の居ない部活の方が妙に静かで安眠を得られるしな。
「じゃお前だけで行って来いよ、俺は留守番しとくから」
と起き上がるのも面倒なので机に突っ伏した状態で返答する。
「そうか…」
と珍しく引き下がった…。
明日雨でも降るんじゃないか…?
なんて考えていると…。
「じゃあ仕方ないな…お前が行かないんじゃ俺が行っても意味が無い」
どー意味が無いのかは知らんが諦めてくれてよかったよ。
自ら進んで五月蝿さの発生源を引き込もうなんて狂った考えはしないに限る。
「………」
叶野は何かを考えているようで黙っているし
影島は読書…。
神崎さんは影島から借りた将棋入門を熟読している。
まぁ平和な光景なのさ。
俺としてはこんな日常がずっと続けばいいと思っていたが…。
どうやら世界はそれを許してくれないらしい。
それは唐突にやって来た。
「アンサンっ、大変や」
とまぁ…ノリ、流れを完全に無視した田中とか言う生徒が勝手に部室に入ってきた。
ちなみに…奴は対決以来妙にこの部に馴染んじまってちょくちょく遊びに来ていたりする。
「…なにが大変だって?」
お前の頭の中が大変なのは知ってるぞ。
「い、池上の姉さんが…」
ほうほう…池上がどうしたって?
まさか五月病とか言うんじゃないだろうな。
そんな季節は一ヶ月前に過ぎてるぞ。
「うちの学校に転入するらしい」
「なっ…」
マジか…。
最近音沙汰無しに思えたがそんな核爆弾球のエンターテイメントを隠していたとは…不覚だった…。
「そうか、その方が俺たちも動きやすい」
素直に喜ぶなバカ部長…。
「それで、転入はいつなのですか?」
冷静に聞く叶野。
「どうやら、夏休み明けらしい」
話によると夏休み中に転入用の試験があるらしい。
まさか、それに向けての勉強でここのところ部活に出なかった訳ではあるまいな…。
「はぁ…」
平和の世界を一瞬にして地獄に変えるとは…。
田中よ後で覚悟して置けよ。

まぁ帰りに神崎さんと別れた直後
偶然池上と会ったのは運命なのでは…?
と、思いたい。
「聞いたぞ」
「何を?」
「転入の話」
「あ、そう」
別に興味が無いのかあまり話さない池上。
「まさか、本当に転入するのか?」
「嫌なら止めるけど」
そんなつもりじゃなかったんだが…。
「…毎日が騒がしくなると頭が痛いね」
「…………」
池上は無言…。
「まぁ頑張れ、一応応援しておく」
すかさずフォローを入れるのだが…。
「………」
そのまま池上は無言で帰っていった…。
やばいな、怒らせてしまったか?

次の日…。
俺が部室で寝ていると池上が入って来た。
「よう」
俺が挨拶をするが無視する池上。
自分の定位置に腰掛けてムスッとしている。
見るからに不機嫌な様だ。
神崎さん他二名も、反応に困るご様子。
「勉強はもういいのか?」
と、聞くと。
「もういいわ、だっていくら私が勉強してもここには来れないって思ってるんでしょ」
「…別にそんなこと思ってない」
「そっか、私をただ邪魔に思ってるだけなんだ、私が居なければ楽しい学校生活が送れるもんね」
なんで今日はこんなに喧嘩口調なのだろうか…。
「俺は1回もお前を邪魔だとは言っていない」
「でも、態度に出てるのよっ」
池上は立ち上がり部室を出ようとしていたので…。
「……」
俺は池上より先に無言のまま鞄を持って部室を後にした…。
なんか虫の居所が悪かったからな。
今日は帰ることにしよう。
「待ってください」
と神崎さんは鞄を持って俺の後を追う。
はぁ…神崎さんまで巻き込むなんて俺…ダメな奴だなぁ…。

残された叶野は池上に珈琲を差し出す。
「どうぞ、お飲みになって下さい、落ち着きますよ」
「…ありがと」
池上はカップを取って珈琲を少し飲む。
「…なにかありましたか?僕でよければ相談に乗りますが」
「私…ってガサツだよね」
ボソッと呟くように言う。
「性格ですか?」
「ううん、性格って言うか…全部、私…神崎さんみたいには出来ないよ…」
「神崎さんの様にとは?」
「意地悪、…叶野君ならもう気づいてるでしょ」
「……ええ、そうですね、…すみません」
叶野は少し間を置いて答えた。
「………」
池上は黙り込む。
「僕はあなたも大変魅力的な方だと思いますが…」
「慰めはいいよ…あいつは私なんかのこと、ちっとも好みじゃないみたいだし…」
「……」
「それに、私は神崎さんみたいに純粋じゃないから…」
「そうですね…ですが、あなたの思いは強い、だから転入までお考えになったのでは?」
「そうだけど…やっぱり私は恋愛対象的に論外なんだと思う…」
「…僕としては、まだ振り向かせるチャンスはあると思います」
「えっ?」
「高校生活はまだ始まったばかりです、同じ時間を共有すればその分に相手のあなたに対する認識や考え方も変わってきます」
「そうかな…?」
「影ながら僕もお手伝いをします、まぁ本当にお手伝いくらいのことしか出来ないんですが…」
「ありがとう…そうだよね、まだチャンスはあるよね…」
「ええ…応援していますよ」
叶野はそう言って壁に寄りかかり、読書を再開した。

「…すいません」
帰り道の途中で唐突に神崎さんに謝ってしまった。
「え?」
「その…いきなり帰りだしたりして…」
さぞ、びっくりした事だろう。
「いえ…その上手くは言えませんが…私も、その、あなたを追いかけた方がいい気がしたんです」
「そうですか…」
彼女なりのフォローが俺の心に罪悪感をもたらせた…。
そしていつもの様に交差点で分かれる。
「それでは…」
「あのっ」
不意に神崎さんに呼び止められる。
「なんですか?」
「元気…出してくださいね…」
やれやれ…こんな無垢な少女にまで気を使わせるなんてな…。
自分の不甲斐無さに腹が立つ。
「ありがとうございます、では、また明日」
「はい、また明日」
でも俺は…そのまま家に帰る気分にはなれなかった。

気が付くと海へと来ていた。
こんな所に来るなんてな…。
詩人にでもなった気分だね。
でも、確かに海を見ていると心が洗われると言うのは本当みたいだ…。
よく、バカやって先生に怒られては補修をエスケープして栄治や池上と来てたっけ。
そう言えば…仲介部に入ってから
三人でつるむ機会が無くなったなぁ…。
「……海、綺麗ですね」
と、後ろから声がしたので振り返ると影島が居た。
「か、影島…どうしてここに…?」
「…偶然」
本当にそうなのだろうかと疑いが尽きない。
「…悩み事…多いですね」
「ああ…多すぎて潰されてしまいそうだよ」
「…頑張ってください」
お前に言われると気力が三割減するが
「そうだな…頑張らなきゃな」
なんて言い返し俺は鞄を持つ。
「俺帰るよ、お前はどうする?」
「…もう少し…ここに居ます」
「そうか…」
「…一人が幸せになると、幸せでなくなる人間が必ずいる」
「なんだそれ?」
「…昔、本で読みました…恋愛って…難しい」
「お前が恋愛を語るとはな…まぁいいや、それじゃまた学校で」
コクンと頷いた影島に別れを告げて俺は家へと歩き出した。
そして俺たちは…平凡な毎日に埋没することなく…。
学生生活を半ば強制的にエンジョイして行くのさ。

いったい次はどうなることやら…。



ちゃちぃホームページ作りで時間を取られた…ホームページって作るの面倒なんだな…って思いました。








仲介部の掲示板(意見とか感想、雑談をお願いします)






ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう