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昇格試験

現在感想返信が遅れております。申し訳ございません。

仕事が割り込んで一日投稿がずれました。

前の話の〈ブロンズコーティング〉を〈アイアンコーティング〉に差し替えました。効果も攻撃力+1から+3に。


ジークの名はジークハルトとなってます。愛称がジークです。


「お久しぶりでございます。ジークハルト様、それと……」


 南街『サウンシェート』の領主であり、獣王国4大貴族の一人、リデア・エルハルトの屋敷。

 その玄関ではウサ耳を生やした執事長がジーク、レヴィアの二人を出迎えていた。


「セバス、久しぶりじゃの。妾は今の名はレヴィアと名乗っておる」


「畏まりました。レヴィア様、お久しぶりでございます」


 レヴィアはフリルが付いた袖を振りながら気楽に挨拶をする。旧知の仲の様に振る舞う姿を見て腕を組みながらジークは眺めていた。


「ほう、レヴィアの嬢ちゃんはセバスの爺さんとも知り合いだったんだな」


「うむ、ちょいと昔に世話をしてのぅ。リデアは相変わらずかの?」


「ははは……はい。相変わらずですね」


「残念じゃの……多少なりとも変わってくれた方が妾としては良かったのじゃが」


「……そっちの事も知ってる仲なんだな」


 ジークは可哀想な人を見る目でレヴィアを見ると、はぁっとレヴィアは深くため息を吐き、どこか遠い目をしていた。

 

「昔襲われたからのぅ……」


「そりゃ災難だ……。所でセバス。俺達の要件なんだが……」


 暗い雰囲気になりかけたが、ジークが話を本題に変えるとレヴィアの苦笑いも消え、いつも通りのにこやかな可愛らしい表情に戻る。


「ご要件の方は承っております。政務室までご案内致します」






 政務室に向かうまでの途中、様々な獣人の執事やメイド達がレヴィア達とすれ違い、お辞儀をしては次の仕事へと早歩きで歩いていく。

 

「昔に比べると、随分と使用人が増えた様じゃな」


「ええ。彼らは全てリデア様が救い上げた孤児達です。全員が信頼置ける子達ですね」


「なるほどのぅ。リデアはそこも変わっておらぬか……良き事じゃ」

 

 領主であるリデアは、病気や狂獣、戦争によって親を失った子供達を積極的に助け、孤児院を設立して飢え死にしないようにと毎日奮闘している。

 孤児院では歳で働けなくなった商人や隠居し、暇をしている老貴族を招き、数字や文字を教えてもらっている。

 

 このアイディアはダンが出したもので、ダンも幼い頃は近所のお爺さん達に勉強を教えてもらったという過去をリデアに話した。リデアはその話を聞いて老い隠居して暇になった商人や老貴族達に声を掛け、数字や文字を教えるアルバイト教師として雇う事にした。

 最初は住民達から無駄な事をと、否定的な目で見られていたが、時間を持て余していた隠居達からは丁度いい暇つぶしで、孫のような年代の子達に慕われるということで好評だった。その成果は徐々にだか実り、一部の商店では見習い商人として孤児院の子達が働いている。

 ダンに勉強が身についたかと言うと……日ごろの行いと見ると身につかなかったようだ。




 他の部屋とは違い、一層豪華な細工が施された扉の前にレヴィア達は案内された。

 コンコンコンコン、とノックが鳴らされるが返事が無い。

 再度、セバスがノックをするが返事が無く、ガチャリとドアを開けるとそこには。

 

 『ちょっと遊びにいってきまーす!』

 

  と書かれた紙を机の上に座っている兎のぬいぐるみが持たされていた。

 

  その光景を見た瞬間、ピキリと何か音がなる。音の出先はセバスからだ。


「あんの馬鹿領主! 仕事を放って何処に逃げやがりましたかぁぁ!」


  屋敷を轟かせるほどの怒声に、ジークは驚き、レヴィアはため息を吐き、呟いた。

 

「良くも悪くも、自由奔放な所は変わっておらぬようじゃな……」




◇◆◇





 ん? 何か聞こえた気がするが、気のせいだろう。

 まぁいいか。さっさとCランクの昇格試験受けてしまおう。宿も探さないといけないし。

 

 Cランクの昇格試験は冒険者ギルドの奥にある、訓練場が使われる。普段は冒険者になり立ての新人の基礎訓練や、新しいスキルを覚えた者達が魔道具の木偶人形にスキルを打ち込む時にこの訓練場が使われる。


 冒険者ギルドの奥は、表の賑わいとは打って変わって静けさに包まれていた。

 壁に掛けられた魔道具明かりだけが照らす中、階段を下っていく。


「思ったより静かなんですね。私の時は訓練や試験を受ける人がいたんですけど」


 秋葉はアタミでCランク昇格試験を受けているので、今回は見学で付いてきていた。

 昇格試験の見学は基本的に同じパーティーの人にしか許されない仕組みになっている。

 下手に野次で普段の実力や集中力が欠け、本来の力を発揮できず試験に落ちる可能性を防ぐ為だ。

 中には大勢の見学を集め、どのような状況でも普段通りの実力を出せるかどうか見る試験官もいるが、そこはギルドの方針で決まるようだ。

 

 秋葉の時は見学は自由。付添いは春香だけで、試験は一瞬の内に終わったと聞いた。

 〈クイックドロウ〉の早撃ちで放たれたゴム弾を、試験官は動く事すら出来ずに頭に受け、昏倒したと見学していた春香から聞いたことがある。

 数日間はその試験官はショックで立ち直れずに家に籠ってしまったらしい。もうちょっと加減をしてやろうな。


 秋葉の問いに三段腹と顎に着いた脂肪をタプタプと揺らし、猫髭を弄りながらブタタが答える。


「訓練するような奴らは皆、『ワイルガード』に出払ってるからにゃー。表に居る奴らは旅費を稼いでる奴らにゃ。狂獣の所為で討伐依頼も採取依頼も厳しくなってるからにゃー」


 だからあんなに皮が高額なのか。ブロンズフロッグなんて、舌の動きにさえ気を付ければ雑魚だったぞ。氾濫した川から群れで出てきた時は驚いたけどな。

 続いてアリアンアリゲーターも出てきたが、出た瞬間に秋葉のマグナムで脳天を打ち抜かれて倒された。出落ち乙。

 しかし、獣王国で何かあるのか? ヨーコの手紙にはそういう事は書かれてなかったんだが。気になるし聞いてみるか。


「獣王国で何かあるのか?」


「にゃにゃ? 知らないのかにゃ?」


「生憎とこっちはここに来たばかりなんだ。途中で仲間と逸れたしな。」


「にゃるほど。それにゃら教えておくかにゃ。『ワイルガード』でもうすぐ獣王祭が開かれるのにゃ」


 獣王祭とは『ワイルガード』の初代獣王。ハティルスの生誕祭の事のようだ。

 ハティルスはフェンリル族で、気性の激しい獣人達を全て叩きのめし、一つにまとめ上げ、国を建設した建国の祖だ。今では血縁は途絶えてしまったとも言われるが、隠し子がいるという話もあるらしい。まぁ、これはよくある話だ。

 

 そのハティルスの偉業の一つがアース大陸全体が天災の影響で飢饉の襲われた際、ヨルムンガルドの許可を得て禁忌の地に入り、仲間達と共に尤も凶悪で山の様に巨大な狂獣“アポイタカラ”に挑み、激戦の末に倒してその肉と血で国民全体を飢えから救ったと言われる。

 

 その偉業を称えて獣王祭では、ある地域をステージとした大規模な狩り大会が開かれるらしい。獲物として狂獣もいて、腕自慢の獣人達や冒険者達が集まるらしい。遠くから魔族も来るほどの大規模な大会のようだ。

 獣王祭はそれだけでなく、大地の浄化の意味もあるとのこと。魔力嵐ガストが蔓延してる状況でも開催される意味はそれか。


「大会では上位商品としてドワーフ特製のオリハルコンの武器が贈られるそうにゃ。そいつを求めてベテラン連中は『ワイルガード』に向かってしまったのにゃ。オイラも仕事が無ければ行きたかったにゃー」


「あー……オリハルコンと言えば冒険者の夢の武器だもんな」


「マサにゃーも判るかにゃ。夢のような目標にゃけど、目指すといいにゃ」


 言えない。オリハルコンのロッドとか、槍、大剣から刀まで持ってるなんて言えない。

 実は『ロストドミニオン』もフレーバーテキストでは。

 

 ロストドミニオン:天界のオリハルコンから作られ、歴史から隠されした元聖剣。その刃は創生龍すら断頭すると伝えらえる。ゆえに神々から歴史から消された聖剣の銘を奪われた魔剣。

 

 となっている。つまりこれもオリハルコン製だ。先に〈アイアンコーティング〉を掛けておいてよかった……オリハルコン製の武器を持ってると知られると面倒な事が起きるに決まってる。

 

 獣王祭の話をしていると、出口が見えてきた。あの先が訓練場だろう。それにしても随分と深く降りたものだ。

 

「ここが訓練場にゃ。ここなら威力が高いスキルでも大丈夫にゃよ。周りが地面にゃから、壊れる心配もないにゃー」


「深い理由はそういうことか」


 とはいえ、ブタタ相手に高火力のスキルを打ち込むわけには行かないな。

 スキル構成は……これでいくか。

 

 パッシブスキル:〈武神の心得(近接戦闘能力上昇(大)身体能力上昇(特大))〈気配感知能力上昇(大)〉〈HPMP自動回復(大)〉

 

 アクティブスキル:〈ホーミングシュート〉〈疾風の如く〉〈震脚〉〈手加減攻撃〉〈ヘキサスラッシュ〉〈豪気投げ〉

 

〈空き〉

 

 〈波動剣〉は威力が高すぎるので今回は無しだ。その代わりに入れたのが〈ヘキサスラッシュ〉。アクティブスキルで攻撃力の倍率は1.1倍と低い代わりに、高速で6回連続攻撃を叩き込むスキルだ。

 『セブンアーサー』があれば要らないとか思われるが、廃人レアなので比べる方が間違えている。

 

 〈震脚〉は足に気を込めて地面を踏み抜く事で、自分の周囲に振動ダメージとバランスを崩す効果を持つ。範囲スキルなので威力は低いが、俺のステータスだとかなりのダメージが出る。

 レヴィアとの訓練時にやってみたら、周囲の木を倒してしまい、無駄な自然破壊するなと怒られた。

 

〈豪気投げ〉は密接状態時に使えるスキルで、単純に相手を力任せに投げるスキルだ。補正が掛かるのか、3メートルの熊相手でも軽々と投げることが出来た。

〈豪気投げ〉抜きだと、不思議と上手く投げる事が出来なかったので、補正が入ってるのは確かだろう。


〈空き〉はいつでもスキルセットできるようにと、入れ替えるスキルを考える手間を省くために最初から抜いている。空けておけば直ぐに色んなスキルをセットできるからな。


「武器はここから選ぶにゃ。刃を潰した武器にゃけど、当たり所が悪ければ死ぬから注意するにゃ」


 ブタタが壁に掛けられた様々な武器を示す。

 長剣から大剣、お、珍しい。刀まであるな。アタミの武器屋でも見かけなかったのに。

 俺が選ぶのはダガーと長剣だ。


「二刀流かにゃ。オイラはこいつで行くにゃ」


 ブタタが選んだのはナックルだ。やはり格闘系か。

 

 あ、そうだ。戦う前にアリスを預けないと。フードの中で妙に静かだから忘れてた。


「おい、アリス」


 小声で話しかけるが返事が無い。

 

「すぴー……」


 こいつ、寝てやがる。

 軽くフードを揺すると「わわわ!?」と慌てたような声を出して、顔を覗かせてきた。

 

「ちょっと何するのよ! 気持ちよく寝てたのに!」


「俺のフードはお前のベッドじゃない。ちょっと今から戦うから秋葉の所に行っててくれ」


「ぶー」


「アリス、いい子だからこっちにね」


「はーい」


 渋々と秋葉の胸ポケットの中にアリスが収まった。ブタタは訓練場に舞台に向かって歩いてるので、アリスの事は気付かれる心配はなさそうだ。


「わっ! マサキマサキ!」


「ん? なんだ?」


「凄いよ秋葉のおっぱい! 物凄くフカフカで柔らかいの!」


「ちょっとアリス!? 何言ってるの!?」


「ほら、凄くふかふか! マサキも触ってみてよ!」


「んあっ……こら!」


「やめんかセクハラ妖精」


 確かに秋葉の胸に腕を挟まれたときは心地よかったが、戦う前にそんなこと言うじゃない。


「おーい、準備が終わったら早くくるにゃー」


 退屈そうにブタタが座り込んでいた。三段腹がしゃがむと鏡餅だな。


「あ、ああ。分かった。じゃ、いってくる」


「正樹さん、頑張ってください」

「頑張れー!」


 訓練場の舞台に降りると、何か空気が変わった。


「気づいたかにゃ、この舞台には結界が張られてるから外に攻撃が漏れる心配が無いから安心するにゃ」


 なるほど、結界系か。魔法封じの結界もあったし、こういった外に干渉しない結界があってもおかしくはないな。


「それじゃ、始めるかにゃ」


 すっとブタタの纏う気配が変わった。今まではのんびりとした穏やかな雰囲気だったが、今纏っている雰囲気はまるで狩人だ。熟練の冒険者とはこういうものなのか。

 ブタタが拳を構えると、後ろ脚に力を込めるのが見える。来るか。

 ブタタの姿がブレたかと思うと、一瞬の内に5メートルの距離を詰めたブタタが俺の顔に向けて右拳を打ち込もうとしていた。

 初手から顔狙いで来るという事は、これはフェイントだな。直ぐに引けるようにと力を抜いているのが見える。

 

 本命は、左手による腹! 

 腹部に迫る左拳を左手で受け流しつつ、右腕だけで長剣を振り抜く。

 

 剣の速さにブタタが驚きの表情を浮かべつつも、ブタタは判断を鈍らせることなく既に後ろに跳ぼうと足に力を入れていた。

 チッと僅かに服が掠れるような音を立てて、ブタタは後ろに跳躍していた。


「顔は当てるつもりはなかったんにゃけど、良く見えたもんにゃねー。剣の速度も力もDランクとしては異常にゃ。にゃにゃにゃっ! こいつは面白くなってきたにゃ!」


「そいつはどうも!」


 ブタタは着地と同時に前のめりに姿勢を変えて猛烈な速度で拳と蹴りのラッシュを繰り出してくる。その太った身体には不釣り合いなほど攻撃が速い。

 ブタタの攻撃は時折フェイントや抜き手、鎌手など変化を加えてくるがレヴィアやダン、竜馬の攻撃に比べたら遅い。手や剣で受け流しながらブタタの攻撃を見切ると、カウンター気味に〈ヘキサスラッシュ〉を打ち込む。

 6回の連続攻撃をブタタはナックルで受け流すが所々避けきれずに肉薄する。

 最後の一撃に魔力を込めて剣速を上げると、ブタタの光る猫足が剣を打ち上げた。

 当たった触感はまるで鋼鉄のようだ。剣を持つ手が軽く痺れるが手離してしまう程じゃない。


「いいにゃねー! 熱くなってきたにゃ」


「こっちはそろそろ終わらせたいんだがな。これでもまだダメか?」


「もうちょっと付きあえにゃ!」

 

 はぁ、このバトルジャンキーめ。仕方ない、少し痛い目を見てもらおうか。

 

 楽しそうに笑うブタタに向けて、〈疾風の如く〉で風を切りながら近づいていく。

 剣の届く距離まであと2メートル、と言う所で〈震脚〉を発動!

 

「にゃにゃにゃ!?」


 移動速度が上がった状態という事は、脚力の身体能力が強化されているという事だ。

 これに気付いたのは、雨の日のレヴィアとの訓練の時、〈疾風の如く〉を使うと素の時より地面が抉れていたことに気付いたからだ。

 この脚力が強化された状態での〈震脚〉は通常の時より、地面の揺れが大きくなり、振動のダメージを与える。

 

 予想もしてなかった地面からの攻撃にブタタは床を高く蹴り、跳躍した。


「にゃにゃっ! 床が割れてるにゃ! なんちゅー攻撃にゃ!」


 チラリと足元を見ると、石畳の床が割れていた。これは結界が張ってないのか?

 後で弁償とか言われないだろうか。

 しかし、狙い通りブタタは空を飛んでくれたな。あのまま踏ん張っても転んでもやる事は変わりはないが。

 ブタタの武器は『神速』の二つ名の通り速さにある。なら、その速さを活かせないようにすればいい。

 

 空中で身動きが出来ないブタタに向け、〈ホーミングシュート〉でダガーを投げつける。

 ダガーは高く跳躍したブタタに向かい真っ直ぐ飛ぶが、そこから遅れて俺もブタタに向かい跳躍する。

 

 空中でブタタはダガーを弾き、高速で接近してきた俺に驚きつつも笑みを浮かべる。

 ブタタを剣の距離に捕えると、跳躍の勢いをつけたまま〈手加減攻撃〉で剣を横薙ぎに振り抜く。

 

 ブタタはその剣を下に叩き落とそうと左腕を振り下ろす。が、俺はここで長剣を『アイテムボックス』の中に仕舞った。


「にゃにゃ!?」


 すかっとブタタの拳が空を切り、降りぬかれた左腕を掴み、更に右肩の服を掴む。

 

 

「せーーの!!」


 〈手加減攻撃〉〈豪気投げ〉を発動させ、思いっきり床に向けて投げつけた。


「にゃーーー!!?」


 ブタタは高速で地面に叩きつけられる直前に体を捩り、四つん這いで着地に成功するが勢いまでは殺せずに衝撃で手足が痺れるようだ。

 まぁ、それで終わらずに。


「これで終わりっと」


「ふぎゃ!?」


 ダメ押しに『アイテムボックス』から剣を取り出して、長剣の柄頭を先にするようにし、〈ホーミングシュート〉で投げつけると、後頭部に直撃して倒れ込んだ。

 着地してブタタの様子を見ると、気絶してしまったようだ。

 あ、たんこぶが出来てる。これで立派な鏡餅だ。

 

 

 

 



 ブタタが気絶してしばらくすると、通路から鹿の角を生やした獣人女性が怒気を孕みながら訓練場にやってきた。

 ブタタがたんこぶを作って気絶した様子に驚いていたが、その後すぐに深く頭を下げられた。

 

「申し訳ございません。本来ならば他のギルド員が試験官を務める所、うちの馬鹿猫が勝手にやってしまって」


「え? という事は試験は……?」


 ここまでやったのに意味がないのか? レヴィアとの鍛錬の結果を示すには良い相手だったがそりゃないだろ。

 

「い、いえ。試験は間違いなく合格とさせていただきます。本来ならばBランク冒険者のギルド員がやるべきだったのですが、この馬鹿猫が」


 あ、よかった。合格にはなったんだな。

 ガスッと、靴でブタタのたんこぶを蹴ると全身の毛を逆立たせて飛び上がった。


 

「痛いにゃーー!! にゃにゃ!? テティス!? にゃんでこんにゃ所に」


「シンシアから聞きました! ギルドマスターが試験官やるなんて何考えてるんですか! 馬鹿ですか貴方は! Sランクの試験官なんて聞いたことありませんよ」


 シンシア? ああ……あのシンにゃーと呼ばれてた子かな? 確かにあの場に居たはずだし、その子が告げ口したんだろう。

 しかし、ブタタはSランクだったのか。確か……国に認められる必要がある……だったかな。そういえば、スキルは使った様子はなかったな。一応仕事はしてたとは思う。


「そんにゃこといったってー!」


「そんなもこんなもありません!! マサキ様、申し訳ございません。今回は冒険者ギルドの豚猫がご迷惑を。何かお詫びをしたいのですが……」


 うーん、鍛錬の結果を試せたし、昇格試験もクリアしたからなぁ。ここでBランク……は欲張り過ぎだと思うし、Bランクの昇格試験はダンジョンクリアだったからな。そのうちやるつもりだからこれもパス。もう宿でいいか。


「それなら、ギルドおすすめの飯が美味い宿を教えてくれないか? 後、出来れば風呂があると嬉しい」


「判りました。でしたら、『ルッツの銀狐亭』がお勧めですね。お詫びとして紹介状と代金をギルドからお支払致します」


「いや、そこまでしなくても金は」


 ここまでされるとは思ってなかった。まともな宿に泊まれるだけでありがたいので紹介だけでいいんだが……。

 とここで気づいた。テティスの顔が物凄く笑顔な事に。この笑顔に見覚えがある……怒り状態の春香だ。ヤバい。


「大丈夫です。代金はこの豚猫の給料から引きますので。温泉もありますので希望に添えるかと」


「そんにゃー!?」


 あ、これは相当怒ってる。ブタタが助けて(´・ω・`)と見てるが、無理だ。巻き添え喰らうのは怖いので諦めよう。すまん、俺らも我が身が可愛いのだ。温泉もあるのは嬉しいしな。

 

「正樹さん、こういってくれてる事だし」

「うんうん」


 アリスも秋葉も同じ考えのようだ。特に秋葉は必死に頷いてる。


「あ、じゃあそれで」


「マサにゃー!?」


 テティスが腰のポーチから紙と羽ペンを取り出して何か書き始める。最後にポンとハンコを押して俺に紙を差し出す。髪は四隅に鳥、パンダ、獅子、兎を模した文様が書かれてある。


「これが紹介状となります。それではうちの豚猫のしつ……こほん、調教がありますのでこれで失礼いたします。此度はうちのギルドマスターが大変失礼を致しました」


 しつけを言い直して調教とはっきり言ったぞこの人!

 


「そんにゃーー! 誰か助けてにゃーーー! ノーロープバンジーは勘弁にゃーー!」


 ブタタの嘆きが冒険者ギルドに響くが、俺の知った事じゃない。

 



感想や評価ポイントを下さるとモチベーションの維持にとても繋がるのでありがたいです。


ブタタはこういう結果になりました。善戦した方ですね。太ったキャラが機敏に動くとカッコよく見えますね。


関係ありませんが北斗の拳いちご味がアニメ化だそうですね。どういう風になるかワクテカが止まりません、ん、何だあのターバンの子供h

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最近はこちらの方も日曜更新で頑張ってます。 宜しければこちらの方も感想や評価諸々を下さると大変喜びます。 TSさせられた総帥の異世界征服!可愛いが正義! re:悪の組織の『異』世界征服記~可愛い総帥はお好きですか~
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