茨の帝都
1時間遅れで何とか書き終りました…続きも頑張ります!それにしても気が付いたらPVが200万超えてたんですね…。
城門前まで来たが…マップが敵のマークで埋め尽くされて真っ赤だな。だが、これなら巻き添えの心配はないってことだ。一気に道を切り開く!
「道を開けるぞ!六道千塵!」
俺の周囲に多数の武器がオーラとなって浮遊すると、それらが全て、矢のように放たれて敵を貫いていく。植物人間は穴だらけになって消滅していく。死体が残ったら進行にも影響が出そうだったが、これなら問題ないな。
俺がこじ開けた穴にタツマ、ハヤトが前衛として動き、中衛に春香と俺とアデル。後衛に王子と飛竜と秋葉で、隊列を組んで進んでいく。中央には一番狙われてはいけない春香を置いて、その両隣を遠近両方対応できるアデルと俺が囲む形だ。
全員で隊列を組みながら街中に入ると…町中いたるところに植物人間と茨だらけだ。種類も人型だったり獣人型と多種多様な姿をしている。植物人間達は俺達の姿を見つけると、即座に群がってくるが…
「邪魔だ!どけやおらぁ!」
「はぁぁぁ!!」
前衛の二人によって10体以上の植物人間が、文字通り吹っ飛ばされていく。後ろからも敵が来るが、王子が防御ごと植物人間を両断し、秋葉がショットガンで纏めて消し飛ばしていく。戦う姿を見た事が無かったが、凄まじい強さだな。
戦うのは皆に任せて俺はマップで生存者を探そう。俺以外にもマップ持ちはいるが、一番性能が良いのは俺の筈だ。マップを確認すると、周りが全て真っ赤な敵マークで埋め尽くされているが、路地裏に二つほど黄色い反応を見つけた…生存者か!
「ハヤト、タツマ!ここから先の路地を曲がった所にまだ生きてる人がいる!」
「「わかった!!」」
俺の言葉に二人が移動速度を速めるが、まだ敵が多いか…!マップを見ると黄色い反応が植物人間の反応にどんどん追いつめられるのが見える。急がないとまずいなっ…!
「水竜召喚!!」
走りながら魔力を練るのは苦労するが、この間の戦闘でコツは掴んだ。右手に水を絡ませながら突きだすと、腕から水竜が現れて進行方向の敵を薙ぎ払っていく。気分は邪眼の人だ。
水竜のおかげで路地までの植物人間が消滅した。急いで向かうとそこには、小さな子供を抱えた母親らしき女性の姿があった。それと同時に女性に襲い掛かる寸前の植物人間も。間に合わないっ!
「マサキさん!背中借りるわ!!」
「へっ?うおっ!?」
何か伸し掛かる様な衝撃を背中に受け、なにが起きたか振り向いてみると、俺を踏み台にして空を飛んでいる秋葉がいた。
――――ドンッドンドンッ!
銃声と共に女性に襲い掛かっていた植物人間が、倒れ消滅していく。今の距離じゃ魔法でもスキルでも巻き込んで女性を助ける事が出来そうになかったな。秋葉を連れてきて正解だった。
「大丈夫か?怪我は…足を怪我しているか。子供に怪我はないか?」
「は…はい!ありがとうございます…もうダメかと…」
女性は足を怪我していた。なら、俺の出番だな。擦りむき出血をしているぐらいの怪我なら軽めのライトヒールで十分か。
「癒し手様までいらっしゃるのですね…これもユグドラシル様のご加護でしょうか?」
「ユグドラシル?」
ユグドラシルというとよくファンタジー系のRPGや小説に出てくる世界樹の事だがこの世界にもあるのだろうか?
「ああ。帝都にはユグドラシル教の教会があるからな。彼女は信者なのだろう」
「はい。教会なら結界が張られていますので、子供を連れて逃げ込もうとしたところ…植物人間達に襲われてしまって…」
結界か、これだけの植物人間を相手に持ちこたえるのが出来るのか?
マップでエリアを拡大して確認してみると、一つの空間だけぽっかりと植物人間の反応が無い地域があった。その中には多くの黄色いマークがある。ここがユグドラシル教会なのだろうな。
「マップで確認してみたが、教会は無事のようだ。このまま連れて行くわけにもいかないから、一度教会まで連れて行くぞ」
俺達は教会まで向かっていたが、途中で何度か逃げ遅れた人達を見つける。緊急時とはいえ、放ってはおけないな。中には奮戦していた将軍も居たので殲滅力がさらに上がった。
俺達が王国の兵士だと聞くと一瞬だけ警戒したが、今のこの帝国の現状を思い出したのか、剣を植物人間に振りかざして倒していく。最初は一人だった救助者が5人の兵士と、10人の一般人という大所帯になっていた。兵士達も二人一組で植物人間を撃破していて人数の割には移動速度は落ちていない。敵対してた時は簡単に蹴散らしてしまったが、本来の国の実力というのはこういうものだよな。
教会の前までたどり着くと、ライオンの頭をした獣人がスパァンと良い音を立たせて植物人間を吹っ飛ばしていた。…素手で。
俺達が唖然としていると、ふさふさの手で俺達にライオン獣人が手を振ってきた。
「おお〜い!君たちも避難にきたのかね?この中なら安全のようだ。私がこのモンスターを抑えておくから入るといい」
手を振りながら襲い掛かってきた植物人間を蹴りあげて星にする獣人。どうみても抑えてません。
妙な強さを持つ獣人に招かれて教会の中まで入ると、そこには大勢の怪我人が寝転がっていたり、壁に寄りかかっていた。無事な人も疲れ果てていたりしている。シスターはバタバタと忙しそうに水や薬を運んでいるが怪我人が多すぎて対処しきれていないみたいだな。
「オールエリアヒール」
装備をアレクレピオスの杖に代えて、広範囲の回復魔法を使うと教会内の全ての怪我人が驚き、怪我が治るのを見ている。
「おお…怪我が…!」「あれ…俺…死んだ…んじゃ」
死にかけた人もいたみたいだな。間に合ってよかった。
「貴方様が助けてくれたのですね。ありがとうございます!貴方たちは一体…」
「俺達は帝国の様子を見に来た兵士だ。いったい、何が起きたか説明できる人はいるか?」
「ああ……俺は門番を……って魏武将のタツマ様!?」
「お前か。良かった……よく無事だったな。何が起きたか説明してくれ」
「ええ……実は……」
門番が言うには、決戦に敗北して慌ただしく将軍や兵士が防衛の為に動いていたところ、突如大きな音と共に樹がそびえ立ったようだ。それと同時に、城内部から茨がモンスターと一緒に現れて壁を侵食し、兵士や皆を襲いだしたらしい。
元から臆病だった性格が幸いして、直ぐに教会まで逃げ込んだところ、次々と避難民が集まってきて今に至る。無事だったので怪我人の治療もおこなっていたようだ。
「この帝都の原因は城にか……」
「はい……そ……その、タツマ様!申し訳ありません……俺……ビビッて……逃げて……門番失格です!」
「そんな事はない。よく逃げた。無意味に死ぬよりは十分立派だ。それにお前の治療で助かった人もいる。その命、大切にしろよ」
「は…はい!」
門番が涙ぐみながら頷いている。臆病であることは決して悪い事ではないんだよな。罠にも伏兵にも敏感になるし、門番なら危機を察する能力も必要だしな。しかし、原因はやっぱりあの大樹の元にあるか…。城の中の生存者は絶望的だな。恐らく全滅してると見ていいだろう。
「マサキ、さっきのルームでの裏ワザだが城の中で使えるか?」
「牢屋では使えなかったからな……魔法の結界外の部屋なら使えるかもしれん。タツマ、心当たりはあるか?」
「それならば治療室が使えるだろう。以前、治療の為に回復魔法を使っていたのを見た事がある」
「それなら場所を教えてくれ。透明化のスキルと空を飛ぶ魔法でそこまで向かおう」
「分かった……味方にすると心強いが、敵として相対していた身としてはマサキは恐ろしいまでの能力を持っているな」
「その分、取り扱いには注意してるがな……」
強すぎる力は余計な問題を引き起こす。すべての攻撃を無効化し、あらゆる魔法を使え、一人で国さえ滅ぼせる。こんな力を持つ者が居れば国は危機感を覚えるだろう。最悪……世界の敵として認識されかねない。
ゲームでも強すぎる力を持つがゆえに、命を狙われ、大切な人を亡くし、裏切られ、世界に絶望して魔王になった者もいる。破壊神を破壊した者として国を追われた奴もいた。
俺も世界の敵として認識され、大事な仲間や皆を失うのは嫌だ。だからこそ、『無敵』でも防御の努力は欠かさない。……俺が原因で失うなんて真っ平ごめんだからな。
「その気持ちは痛いほどに良くわかる。だが、今はそれを頼らせてくれ。能力に関しては公言しないと誓おう。『魏武将』の名に賭けて」
「ああ。その誓いが守られることを信じて力を貸す。だいじな姫がいるんだろう。助け出すぞ」
「大事な女性がいるというのであれば、私も微力ながら力を貸そう」
この声はさっきのライオンか。大体教会前の敵は殲滅してしまったみたいだな。単独で教会前の敵を殲滅できるなら実力はあるか。
「その申し出はありがたいが、いいのか?獣人の国を攻めた国の王女を助けるんだぞ?」
「問題ないさ。女性を助けたいという気持ちは私にも痛いほどよくわかるものだからね。そういう私も、この子を守る為に傭兵になったものだ。諸事情があって今は国へは居られなかったから、帝国が来たのは私達にとっては好都合だったよ」
ライオンが手招きするとメイド服を着た小さい子がこちらに寄ってくる。見た目は銀髪で青い目をしてるな。獣耳っぽいのが頭から生えている。萌えの塊とはこういうものなのかもしれない。
あ、こけた。…ダメな大人のお兄さんがここに居なくてよかったと思う。
「今から、ちょっと出かけてくるからね。ここで皆のをお手伝いをお願いできるかな?」
「はい。ネメアーおじさんも気を付けてくださいね」
このライオンはネメアーというのか。メイドの子に優しく微笑みけながら撫でてるようすを見ると親子というより近所の気のいいおじさんと子供に見えるな。
孤児院前の敵は今いる兵士達で何とかなると、俺達が助けた将軍が言ってくれた。これなら、余程酷いことにならない限りは大丈夫だろう。飛竜もルームの中に入りきれないので教会の上で守りにつくことになった。
誰も居ない教会の一室でルームを発動させる。この魔法もホイホイ見せていいものじゃないが…緊急時だしな。ネメアーが驚いているが、全員が入っていくのを見て警戒しながら続いていく。
全員が入ったのを確認すると、俺は外からルームのドアを閉め、元の何もない壁に戻した。後は、二度目のスニーキングミッションだ。目標は、大樹の原因の除去。及び姫の救出。
――――――――ミッションスタートだ――――――――
ちょっとキャラを出し過ぎた感がありますが、全員活躍させたいと思います。気力切れの為、明日の更新は難しそうです。申し訳ありません。
アスランの名前を諸事情によりネメアーになりました。ついでに放置されてた飛竜も加筆してます。