合流
日刊ランキング178位、ブックマーク数232件、アクセス数がなんと18,630アクセス行きました…皆様ありがとうございます!急に伸びてガクブルですが頑張ります。あ、祝日なんて無かったよ。
「王子、『番長』様がこちらにご到着されました!」
「ご苦労。下がって良い」
「はっ!」
砦の作戦会議室でこれからの事を話しあっていた俺達の元に王国からの最後の援軍。『番長』とその部下達、援軍20万が兵糧と共に辿り着いたと連絡があった。
だが兵糧は…うん。春香のチート的な農業のお蔭で辺り一面が麦と米とカレーの木の実で埋め尽くされた農地となっていてそこまでいらなかったりした。
最近は近場のトカゲや牛型のモンスターも狩って肉にもレパートリーが増えてきた。
美味い飯で兵士の士気は最大まで上がっていた。不味い飯では士気がどうしても下がるからな。
「失礼します。『番長』のハヤト。到着しました!」
「長い旅路ご苦労だった。ハヤト、紹介する。此方が噂の蒼き英雄のマサキだ」
「英雄なんて言われてますが実際はこんなのだ。マサキ・トウドウだ。宜しく頼む。此方は俺の臣下であり婚約者の二人であるアデルとヨーコだ」
「ああ。宜しく頼む」
「宜しくお願いするわね」
「私達は最近まで帝国に居たけどマサキさんに助けられた『狙撃姫』の如月・秋葉です。今はお姉ちゃんと一緒にマサキさんの部下になってます」
「同じくー、『農家』の如月・春香ですっ。表の作物作ったのは私なんですよぉ。宜しくお願いしますね。番長さん」
「みなさん宜しくお願いします」
番長っていう割にはすげぇ礼儀正しいな。
でも……腰に差してある木刀が紅いんだがあれって……詮索するのはよしておくか。
番長とも合流した俺達の総勢は50万程になった。
砦近辺の国で待機していた兵士が20万、番長が一緒に来た兵士で20万、残りの10万は何と冒険者と小国連合の援軍だった。
以前に帝国の船を潰したときに助けた隊長が実は将軍でこちらが作戦をやっているのを諜報で聞き、ぜひ我らも参加させてほしいと冒険者ギルドにも頼み込んで10万の兵士と冒険者を送り込んできてくれたのだ。情けは人の為にならずというが本当に帰ってくると嬉しいものだ。
マップに一つの青いマーカーが人並み外れた速度でこちらの部屋に迫ってくる。
青いマーカーは味方でこれはジロウだな。
「偵察から戻りました。やはり帝国も決戦を意識してか大多数の兵士を集めているもよう。西の方はまだ魔族との戦闘が継続しておりそちらからは兵士を回せなかった様子です」
「一時停戦の使者を送ったと聞いたが物別れに終わったのか?」
「ええ。情報によればあれは一時停戦するにしても愚かすぎる態度でしたね。上から目線で「一時停戦してやる。捕えた捕虜も解放だ。受けなければ即座に女子供が標的になると思え」と馬鹿なのかと思う事を子爵が言ってましたね」
「アホだな」
「ええ。その態度に激怒されて猛反撃を受けてます。上手く撃退できればそのままこちらに合流すると魔族の将軍から私に連絡が来ました」
帝国にもアホが居た様だ。色々な所に戦争吹っかけたツケがここに来た感じだな。
南の方は制圧されてるがそれでも全軍は回せない。小国の方も攻める手を緩めざる得なく、そのおかげで小国連合が俺等に援軍を出せる余裕まで作ってしまってる。
更に西からも魔族の援軍が来るかもしれない。出来れば今回で一気に兵力を削っておきたい。
「ですが、それでも帝国の兵は推測…70万ほど。若干彼らの方が上ですね。更に『魏武将』『ハンター』『超合金』などの異世界人も発見したと報告が上がってます。彼らは如月さんの様に人質とはとられておらず、自らの意志で帝国にいるので引き込むのは無理でしょうね。私達も何度も交戦してます」
出来るなら味方に引き込みたいが、自分の意志でいるのなら仕方ないか。異世界人が3人か…武将とハンターは何となく前衛系と解るが最後の超合金ってなんだ?
「なぁ…超合金の力ってどんなのかわかるか?」
「彼の力は…そうですね。…ロボット系のMMOからの召喚だと思われます」
「そんなのありかよ…!」
この世界に色々召喚されてるとは言えロボット系統まで出てるのかよ!
何でもあり過ぎるだろ。俺自身が人の事はいえないけどよ。
「ねぇ、マサキ。ロボットって何?」
「あー…なんといえばいいか…鋼鉄のゴーレムみたいなものだな。それの中に自分が入って操作する…ジロウ、超合金も同じタイプか?」
「ええ。今までの交戦からそれですね。高さは10m程。拳を飛ばしたりビームを放ったりするようですよ」
「鋼の城かっての…こいつは厄介な奴もいるな」
100m越えのサイズじゃないだけましだが十分デカい。
これは俺が相手した方が無難か?
「10mね…鋼鉄のゴーレムっぽい相手なら私が相手できそう。私の傑作のギガントゴーレムも8m位のサイズよ。中に巨人族の骨が入ってるから凄く頑丈だから相手が鋼鉄でも劣らないと思うわ」
「ヨーコはそういう隠し玉も持ってたのか。でも一人で大丈夫か?」
「心配してくれるのは嬉しいけど大丈夫よ。ギガントゴーレムを使役するのに魔力凄く使うけど私もアデルみたいに英雄のお嫁さんに相応しい活躍はしないとね。それにちょっと試してみたい事もあるわ」
「活躍は良いが決して無理はしないでくれよ」
「大丈夫よ。引きどころは二度と間違えないわ」
間違われたら本気で困る。
式の前に婚約者を失うなんてドラマの中だけで十分だ。
戦争に出している時点で何を言ってるのかと思われるが手の届く範囲でアデルもヨーコも如月姉妹も護りぬきたい。
ヨーコの自己推薦で『超合金』の相手はヨーコがすることになり、他の『魏武将』は『番長』ハヤトが、『ハンター』は『忍頭』ジロウが相手にする事になった。
俺とアデルは空から攻めれる利点を生かし、空から魔法やスキルで敵兵の数を減らす要員として動くことになった。
秋葉の方もヨーコが作った高台になりそうなゴーレムで超超遠距離狙撃にて部隊長クラスを打ち抜くことになった。
部隊長が崩れれば兵士も戦いやすくこちらに有利な状況を作れる。
春香さんは王子の護衛…というより王子が護衛に回っている。王子も前線に出るようだが春香さんは大丈夫なのかと秋葉に聞いてみると。
「大丈夫よ?お姉ちゃんってああ見えて色々えぐいの」
何がえぐいのか解らないが危ないなら王子が抱えてでも引いてくるだろう。何となく敵が可哀想に思えるが敵なので同情はしない。
細かい部隊配置や密度のある作戦に時間がかかるがそれはあっちも同じことだ。
兵は迅速を重んじると言うが早く動いても雑な動きしかできず連携取れた動きの前にはただの餌にしかならない。
こっちは熟練の兵士が更にジロウからの現代日本警察の戦闘技術を学び兵力は少し劣るが兵士一人一人の強さは帝国の兵士よりは上だ。
冒険者たちの強さはバラバラだが魔法使いが程々にいたのでパーティーを組んで遊撃で動いてもらうことにする。
この大群が集まるまでに俺は更に大量のハイポーションを作りこんだので冒険者のリーダーや兵士の隊長格にまとまった個数を渡し生存率を引き上げる。
薬草とかではハイポーションは作れなかったがまたしても春香さんが良い素材の上位薬草とハーブを空き地で大量に作ってくれたので十分な数が作れた。
素材の質が良いので高品質なのが助かる。これで生存率もある程度引き上げれるはずだ。
作戦会議終了後でもまだ大量のポーションを作っているときに『番長』が俺を訪ねてきてた。
「失礼します。貴方が蒼き英雄と言われてるマサキさんですね」
「ポーション作りながらで悪いな。英雄ってほどじゃないけどそうだ。それにしても『番長』という割に丁寧な口調だが普段でもそうなのか?」
「ええ。よく言われます。気づいたら『番長』と呼ばれていただけですので」
「俺と似たようなものか」
「マサキさんはブリタリアオンラインからの召喚だそうですが職業は一体なんですか?今の姿を見るに薬剤師にしか見えませんが」
「…悪いな。詳しくは明かせん。立場的に『英雄』とでも思ってくれ」
王様から劇にさせてくれと頼まれたしな…。もうどうでもいいよ。
今度から街を歩く時は迷彩を変えなければいけないな。ああ…でもアデルはどうするか。新しい衣装でもプレゼントするか?ヨーコは和服が似合いそうだなぁ。
「劇にもなってましたし、言いたくないのであれば『英雄』とでも付けておきますね」
「それで、それだけを話しにきたんじゃないだろ?」
ポーションもある程度作ったし、今は『番長』の話を聞く方に集中しよう。
今のまま作っても良い品質は維持できそうにないし休憩がてらだがな。
「ばれてましたか。マサキさんは左程帰還の方法を探してないようですがなぜかと思いましてね」
「帝国から逃げるときはそれ所じゃなかったしな。それにジロウの話を聞いてから探すのは諦めた」
「帰りたくないのですか?」
帰りたくないわけではない。元の世界に愛着もあるし先輩に迷惑かけたのを謝りたいのもある。ダチもいるし親もまだ生きてる。
「そうではないが…帰れないのだろ?この世界は。あったらジロウが何かしら情報を見つけてるはずだ。20年も王国に仕え続けて探さないはずがない。もし見つかっていたならそれを帝国の異世界人に伝えて交渉なりするはずだしな」
今まで帰還の話は誰からも無かった。帝国の奴等からもだ。
俺が従属出来ないと知った時に帰還させる事も出来たはずだがしなかった理由は召喚は一方通行だけか、または殺す事で何かメリットがあるかだろう。
「それに…もう今は大事な人達がいるからな。帰ろうと思う気はかなり消えてきている。もし、こっちにまだ戻ってこれるなら一度くらいは帰りたいとは思ってるさ」
「そうですか。確かに今のところは帰還の方法は見つかってません…でも俺はまだ帰るのを諦めません。向こうにも残したものがあります」
これが普通の考えなんだろうな。俺が変わっているのだろうか?如月姉妹も帰りたがるとするなら手伝いたいが王子がなぁ…。
「そうか…出来るなら俺も手伝ってやるよ。だが今は」
「帝国を潰さなければこの大陸は戦いの渦のままですね」
「だな。ハヤト、そっちの部隊の分のハイポーションだ。部隊長に渡しておいてくれ」
「有難うございます。それでは、戦争の方。頑張りましょう」
「ああ。武運を祈る」
戦争だ。恐らくこれがこの大陸の運命を決める一大決戦の一つになるだろう。
ならば俺は俺の出来る限りの事をして皆の勝利に貢献しよう。
このまま血生臭い戦争にはいります。ほのぼのが書きたいが戦争終わらないと無理そうですね。