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従属(極)

≪はぁ!?何を言ってるんだ?≫


クローディアだ。倒したらダメってなんでだよ。放置してたら王国滅ぶぞ。


≪いいから聞いて。リヴァイアサンはこの近辺の海の魔物も支配しているわ。居なくなれば抑圧から解放された魔物が襲い始めるの!≫


≪じゃあどうしろってんだ!何とか今俺が抑えきれるけどそれでも限度があるぞ?≫


≪リヴァイアサンは本来海の平穏を司るドラゴンなの。帝国の船も眷属を使って攻撃していたわ。今、王国を襲っているのは何か理由があるはずよ≫


≪その理由を探れって訳か≫


戦闘しながら理由を探れって無茶ぶりにも程がある!でもやらなきゃいけないことだ。海の魔物が解放されたら帝国どころか他の港町まで大打撃になるだろう。


≪そういう事。無茶だと思うけど頑張って!≫


≪気楽に言ってくれる!やってやるよ!≫


念話で伝えると俺は再度デカブツに対して意識を戻す。

今までも避けながらだったが、今度は攻撃をしつつ観察だ。

観察するとなると一つだけ有効なスキルがあったな。

本来は敵の強さを計ったり未鑑定品に使うスキル『鑑定』だ。

俺は避けながら『ソニックブレイド』を外し『鑑定』を入れる。

ダメージを無効化できても強すぎる吹っ飛びは無効化出来ない事から回避はしないといけない。


スキル枠の中に『鑑定』を入れ終ると即座にデカブツに対して使用する。





水神リヴァイアサン

種族:ハイエンシェントドラゴン

HP:????????/????????

MP:??????/??????

状態異常:従属(極)





HPとMPが見えねぇ!鑑定しても見えない程多いのかよ!

とは言え、気になるものが見えた。状態異常の従属(極)。

従属となるとどこかにそれらしき媒体があるはずだがデカすぎて見当たらん。

根気よく探すか。


俺は攻撃を避けつつも注意をひきつけ続ける為に波動剣で攻撃を加える。ダメージを与えないように鱗に傷をつける程度だ。

それだけでも十分こっちに食いついてくれた。


根気よく探そうと思ったが……長すぎる。尾は海上に出ているがマップで見てみるとこいつの全長はkmを超えてる感じだった。


(首輪とかこいつに付けるのは無理過ぎるもんな。デカすぎるし)


鱗の中に入れられたとかされたらもう俺は泣くしかないと思っていた時にアデルから念話が届いた。


≪マサキ。そのリヴァイアサンは操られているぞ!!決して殺してはいけない!≫


≪解ってる!だがその従属の物が見当たらん!≫


≪離れてた船は帝国の船だった!多少痛めつけたらすぐに白状してくれたぞ。槍のようなものらしい≫


≪端から端まで見たが槍なんて…≫



ふと、とあることに気付いた。

そうだよ。こいつ水の膜あるのに外表に槍なんて刺さる訳じゃないじゃないか。

外がダメなら内側。つまり帝国は何かしら手段を用いてデカブツの体の中に従属の槍を入れた。

可能性は高い。


≪マサキ、どうした?≫


≪体内だ。槍はリヴァイアサンの体内にある!≫


≪体内だと!?それなら打つ手が…≫


≪あるじゃないか。俺が食われて槍をとり除く。これで解決だ≫


≪何を言っている!それではマサキが…!≫


≪これが一番確実で手っ取り早いんだよ!≫


≪待て!マサキ!!≫


強制的に念話を打ち切ると俺は突進してくるデカブツの鼻に向けて剣を振う。

水の膜に激減されるが鼻の先を傷つけられたデカブツは痛みで激昂し、近くにいた俺に向けて大きく口を開けた。このまま食らいつくつもりなんだろう。


だが俺はそれを狙った。口の近くにいるなら突進よりも食らいついた方が速いからな。


そして俺は皆の目の前でリヴァイアサンの口の中に消えて行った。








暗い。見えん。

俺は無敵で生きてはいるが、中は明かりもないから真っ暗だ。

照明用の魔法『ウィスプ』を使い明かりを出す。


(うへぇ…流石に体内。生々しい)


生き物の体内だから生々しくて当然だ。洞窟とかになってる訳がない。


マップを開くとここでも有効で内部がよく解る。これ下手なダンジョンより長いぞ。


足元には強い酸性の液体があって迷彩装備の蒼龍のクロークを端から溶かしていた。

貴重な代物を溶かされては敵わんと今だけ迷彩を解除する。

迷彩を外すと派手に俺自身が光り輝く。


強力な酸の液体でもGM装備は溶かせないようで煙も起きない。

俺は空を飛ばずに慎重に足を運ぶ。無敵があっても何があるかわからないからな。


すると程よく進んだ先に一体の骸骨と、鈍く怪しく光る一本の樹を見つけた。

樹の根元を見ると元は槍だったようだが根を張っている。

樹は黒く光っていて見るからに怪しい。


これが元凶か。この骨は…帝国に捕まった奴隷か捕虜。

骸骨には見た事がある首輪が付けられていた。俺が最初付けられようとしていた首輪だ。


リヴァイアサンにこいつを捧げて食わせる。そして食われたこいつは命令通りに槍を持ったまま力尽き、残された槍はリヴァイアサンに根を張った。


大まかにこういう事だろう。ならばこいつも被害者だ。


遺骨をアイテムの中に入れた後、体内に根を張っている樹にセブンアーサーを叩きつけると樹が水の膜を張り攻撃を防がれた。リヴァイアサンと同じような膜だ。


「チッ!だがこれならっ」


攻略法は既にリヴァイアサンで見つけてある。

俺は全力でフレイムジャベリンを樹に叩き付けると狙い通り膜は蒸発し、塞がる前にセブンアーサーを叩き付けると7回に追加攻撃が加わり樹は粉みじんに砕け散った。

木片か何かを回収しようとしたがそれら全てが紫色の煙上げて消滅する。


「証拠は残さずか…」


剣を腰に収めた瞬間、大きくリヴァイアサンの体内が脈動し始めた。

俺は慌てて変な所に押し込まれないうちにウィングで飛翔する。


ウィングで真っ直ぐ飛翔するとようやく入口というかデカブツの口が見えた。


空いているうちに俺はデカブツの口から脱出する。

久々…というほどでもないが外だ。生々しい体内には二度と行きたくない。


あ、忘れないうちに迷彩を付けておこう。GM装備は目立ちすぎる。

迷彩を付けた俺に聞きなれない声が念話で届く。


≪異世界の者よ、よくぞ我を忌々しい楔から解き放ってくれた。感謝する≫


デカい念話の声の主を探そうと辺りを探すがこの辺りにはこれしかいない。

海神リヴァイアサンだ。


≪こっちこそ人間のゴタゴタに巻き込んで悪かった。随分と鱗も体も傷つけてしまったしな≫


≪ククク…従属されていたがまさかこの我に傷をつける人間がいるとは思わなかったぞ。傷を付けられたのも何万年ぶりか≫


随分とこの神さんは長く生きてるらしい。


≪こっちも必死だったし、操られてるなんて調べてから解った事だからな。そこは許してほしい≫


≪許すも何も忌々しい帝国の楔から解放し、この我の身体を傷つけた汝に褒美を与えたいところだ。まこと久しい戦い。我は満足したぞ。まさか傷一つ負わせることが出来ぬとは長生きするものだ。ハッハッハ≫


目の前の神さんがすげぇ楽しそうです。

無敵のお蔭ですけどね!それが無ければ即死する!


≪一応聞くが褒美って何だ?永遠の命とかなら要らんのだが≫


≪我にそのような力は持っておらん。汝に差し出す褒美はこれだ≫


目の前にいる神さんは光の塊を作りだして俺に差し出してくる。

これは手に取ればいいのかと両手で受け取る。

光が収まるとそこには青く立派な腕輪が現れた。

装飾も綺麗で見事だ。青色も派手に光らずに俺好み。実にいい。


≪これはいいものだな。デザインセンスも素晴らしい≫


素でそう思った。


≪でざいんせんすとやらが解らぬが気に入ってくれたようで何よりだ。その腕輪があれば我の眷属が手を貸すであろう。帝国との戦でも役に立てるが良い。更にその腕輪には『水竜召喚』の力がある。汝なら容易に使いこなせるだろう≫


水竜召喚?俺のやってたMMOに召喚系ジョブなんて竜騎士しかなかったはず。出せるのも飛竜だったが……スキル欄を調べてみると本当に水竜召喚が増えてた。


リヴァイアサンリング:海神リヴァイアサンの恩恵を帯びた腕輪。この腕輪の持ち主に海が力を貸すだろう。特殊能力:『水竜召喚』レア度:EX


EXレアとか初めて見たぞ。

MPの消費もただの魔法とは比べ物にならない程激しいが、装備で何とかできる範囲だ。連発は無理そうだな。


≪なるほど。こいつは凄い物を貰った。ありがとう。帝国に復讐とかはしないのか?≫


≪古の盟約により人の住む土地に危害を加えてならぬ。我が仮に暴れれば手加減が出来ぬ故、罪なき命、大地まで海へと沈めるだろう。それは我の本意ではない。我が復讐を諦めれば済む話だ。細かき事は汝ら人に任せるとする≫


確かにあのブレスだったら大洪水で捕虜やら関係ない一般市民まで死んでしまうな。

それどころか人以外の動物まで殺すだろう。神であっても配慮してるんだな。


≪正直、復讐など面倒だ。動きたくない、働きたくない、我は寝る方が良い≫


≪それが本音かよ!≫


感心したと思ったらニート神だったぞこいつ!


≪我は去ろう。このままでは人に迷惑をかけ続ける。最後に面白き異世界の者よ。忠告だ。同じ異世界の者に注意するが良い。強き力を持つゆえにこの世界のバランスを乱す。汝もそうならぬように願っておるぞ≫


≪忠告有り難く受け取った。今度は悪いもの食うなよ≫


≪貢物に人は懲りた。今度はもっとマシなものを神官に要求するとしよう≫


懲りたみたいで何よりだ。でも食うのが好きならこれもこっちからあげておこう、


≪それは何より土産にこれやるよ。その巨体には物足りなさすぎるかもしれないけどな≫


そう言って俺はアイテムの中から手作りクッキーを差し出すと光が包み込み神さんの傍に光が浮遊した。


≪受け取ろう。我は之より再び海底へと身を沈める。汝も励むが良い≫


≪ああ。帝国は叩きのめしておくから心置きなく休んでくれ≫


俺の言葉にリヴァイアサンは首を大きく縦に振って頷いた。

そしてその大きすぎる巨体をゆっくりと波を立てないように器用に沈ませて海の底へ消えていく。


出来ればもう会わない方がいい。あの巨体とやり合うのはコリゴリだ。

何度も吹き飛ばされるのは勘弁してほしい。

そう思っていたところに、何か高速で下から突っ込んできた。


「うおおっ!?」


強すぎる衝撃で軽く俺が動いた。

無敵発動したままなのに次に何か来たのかと思ったらなんか抱きしめられている。

腕の中を見るとそこには強く抱きついてくるアデルの姿があった。


「無事で…良かった……!!」


アデルは俺に抱きつきながら震えていた。


「しんだ…かと…!」


アデルは前に目の前で親や王を失ってるのだ。

民も仲間も大勢。

そしてまた今度は俺が…と思ってしまったのだろうな。悪い事をしてしまった。

泣いているのだろう。落ち着かせるように俺は肩を抱いて頭を撫でてやった。


「この通り無事だ。無事という確証がなければあんな無謀な真似はしない」


「だが…せめて…一言くらい…!」


「時間がなかったんだよ。手早く手を打たないとリヴァイアサンの攻撃がいつ王国に向くかわからないしな」


言い訳ばかりが続いてしまう。説明しなかった俺も悪いが、時間が無いのも本当だったんだよな。


≪あのー折角雰囲気が良いところ悪いんだけどー…皆見てるわよ≫


「「あっ…」」


クローディアから俺達に念話が届いて気付いた。

そう。俺が今いた所は元リヴァイアサンがいた場所。

皆の視線は釘づけだ。

そしてたった一人残った俺に飛びついてきたアデル。

優しく撫で返した俺。


その姿を大勢の海兵や部下達に見られてたのだ。

伯爵とかすげぇ微笑ましそうに見てた。




羞恥で死ねる………!!状態異常無効や無敵でもどうにもならねぇぇぇ!






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