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海神リヴァイアサン

アデルは哨戒していた我が目を最初疑った。



あの海の神と崇められているリヴァイアサンが軍船を眷属と共に襲っているのだ。


王国も必死に対応するが、リヴァイアサンを護る水の膜に砲撃も弩弓も魔法も通じず、水のブレスによって軍船が粉々に打ち砕かれていた。


眷属も手ごわくシーサーペントが漁船や軍船を襲っている。

軍船も必死に対抗するが数が多く、手練れの騎士たちは苦戦していた。


アデルは直ぐに自分を助けてくれた恩人である彼…マサキに念話を飛ばす。

彼もまた気配を察知していた。アデルに劣らず、またはそれ以上の察知能力だ。


≪こっちでも存在を確認した。今すぐ俺も向かう。決して無茶をするな!≫


≪解った!≫

アデルはマサキとの念話を終えると、直ぐに一番近くで漁船に被害を加えていたシーサーペントに向けて魔力を凝固した槍を投擲する。


その槍はシーサーペントの頭を貫き、即死させた。


「た…助かった…けどいったい何がどうなって…」


「考えるのは後だ。直ぐに避難しろ」


「あ…あんたが助けてくれたのか!ありがとう!」


「礼はいい。急げ!」


「ああ!」


漁師は声に急かされるように直ぐに船を走らせる。運河の中までは敵も入ってきておらず漁師の船は運河を通って行った。


アデルは次々とシーサーペントに向けて魔力の槍を投擲、複数に対しては魔力をリング状にして纏めて長い胴や首を切り落とすが数が多すぎた。


シーサーペントもただではやられずに、水のブレスをアデルに向けて放つ。

アデルはそれらを避けるが、数が多すぎるせいで段々追い詰められ始めた。


≪無茶はするな≫


さっきのマサキの念話が頭によぎる。だがここで引けばシーサーペントの群れは再び軍船に向けて攻撃を加えるだろう。後数発も受けたら近くにある軍船は沈んでしまう。


(彼は無茶はするなと…だが今引いては目の前の命が…!)


アデルは短く思考する。(彼はまた私を助けてくれるのだろうか)と、一瞬考えたが戦闘でそれは命とりだった。


その一瞬の隙を見逃さない敵ではなかった。一匹のシーサーペントが範囲を増した水のブレスを放つと回避がほんの一瞬遅れ、片腕を水流の刃が斬り刻む。


「ぐうっ!」


日の下で行動できるとはいえ、ヴァンパイアの本領は夜だ。

自己治癒能力が著しく落ちて傷の回復は夜になるまで望めないだろう。


ブレスにより弱ったアデルを追い詰めるようにシーサーペント達は水流のブレスを放ち続ける。

アデルは攻撃せずに回避だけを優先したが、一部のシーサーペントが狙いを弱った軍艦へと頭を向ける。


「しまった!!」


このままではまた目の前で命が尽きてしまう。

水流のブレスが軍艦へ放たれるとアデルはブレスの前に立ちふさがって最大限の魔力の壁を張って防ぐ。


ブレスを魔力の壁で防ぐアデルの元へ無慈悲に周囲のシーサーペントがブレスを放とうと口を開く。



「…マサキ…!!」



悲痛な声をアデルはあげた。騎士らしくなく、助けを求める女の声。

周囲のシーサーペントからブレスが放たれる直前、それら全ての頭に向けて巨大な火の槍が突き刺さりブレスごと頭が消し飛んだ。






「間に合ったか!アデル大丈夫か!」





声の方にはアデルが思った人、マサキがいた。









あっぶねぇ!ぎりぎり間に合った!

全速力で飛ばしてもマップの端は遠く時間が思った以上にかかった。

ようやくたどり着いた時にはアデルが水のブレスから軍船を護ってた。

無茶はするなって言ってたのに怪我までしてる…人の命を助けるのは良いが助かった自分の命も大事にしろよ。


俺はブレスを続いて吐こうとするするシーサーペントに向けてフレイムジャベリンをとあるイメージと混合して放った。

強くイメージしたのはマルチロック。目標はシーサーペントの頭。


強くイメージしたお蔭と魔力の調整の練習が実って空中でフレイムジャベリンが解れ、全てが頭に命中。

見事全部消し飛んだ。上手くいくと爽快だ。


一先ずアデルの怪我を治そう。今のままじゃきついはずだ。


「怪我をしてるな…アデル。また血を吸え」


そう一方的に告げると『無敵』を解除して自らの腕をミスリルナイフで切りつける。


「すまない…無茶をしてしまった…」

「だが護る為だろう。それなら咎める事はしない。よくやった」


アデルに傷口から血を吸わせながら頭を優しく撫でてやった。

戦場でそれを見逃すあいつ等じゃないよな。


俺達にブレスを放とうとするが俺は撫でていた手を前にかざして誘導性のフレイムジャベリンで撃墜する。


ふははまるでシーサーペントがゴミのようだ。調子に乗りそう。



腕の中でコクコクと喉をならし血を吸い続けるアデル。

戦場にいる昂揚感なせいか押さえてる感情がにじみ出てくる。俺は必死にそれを押し殺した。

今はただひたすらに戦いに集中だ。


アデルはある程度血を飲み終えたら腕の怪我が直ちに完治した。

俺もHPを回復するためにHPポーションを飲み干す。


「すまない。世話をかけた」


「世話を掛けたと思うならこれから挽回すればいい。俺はあのデカブツの注意を引く。アデルは眷属どもを倒してくれ。くれぐれも無茶は」


「しないさ。同じ過ちをするものか」


「ならいい。いくぞ!」








俺等二人は別々に行動する。『無敵』を設定し直して俺は移動しながらホーミング式フレイムジャベリンで眷属の身体や頭を拭き飛ばし数を減らす。

ある程度数を減らすと、今度は目の前にいる巨体に向けて威力を集中させたフレイムジャベリン。以前、軍艦のマストを吹っ飛ばしたのと差異が無いサイズをデカブツ…リヴァイアサンにぶちかます。





結果を言おう。

全然効いてないってどういうことだ!相性が悪いにしてもノーダメージってフリゲート艦吹っ飛ばす威力だぞあれ!



俺の放ったフレイムジャベリン(大)はデカブツの水の膜を大きく蒸発させて本体にもあたったが鱗に黒焦げ一つ負わせることが出来なかった。


「属性変えないとダメか」


だが、デカブツは自分を覆う水の膜を吹き飛ばした俺に注意を向けてくれた。

引き寄せるという目的は達することが出来たので良しとしよう。


デカブツは口を大きく開き巨大な水のブレスを解き放つ。

先ほどのシーサーペントのブレスが水鉄砲と思えるほどの巨大さだ。


だがそのブレスは俺の『無敵』によって無効化される。弾かれる事なく水のブレスが収まると俺は平然と浮いたままだった。

それにはデカブツとしても驚きだったのだろう。戸惑ってる戸惑ってる。


ならば今度はお返しだ。これだけデカいんだ。実験含めて色々試そう。


「ボルテックスバースト」


風属性系統の上位、雷の呪文スキルを念じる。

MPがフレイムジャベリンとは比べ物にならない程減るが飛行に影響はない。GM装備追加効果、MP消費3分の1の追加効果のお蔭だ。


両手に青白い光が集まり手の中でバチバチと放電をしている。

力強く貯めるイメージをし、それを一気に両手を突きだすと雷のレーザーみたいなのが出た。

ゲームの中でも思ってたが実際に自分から放つのを見ると某レールガンだなこれ。

レールガンというよりも荷電粒子砲なのかもしれない。


ボルテックスバーストはまっすぐに放電しながらデカブツへとあた……る前に全部止まった。プラズマで軽く蒸発したが雷が全部再生した水の膜に吸い取られた感じだ。


(MPの無駄遣いした!)


雷が通用しないという事実が解っただけでも無駄という事ではなかったがそう思わずにいられない。

しかしこれもリヴァイアサンの注意を引くのには役立った。

ブレスが通用しないと思ったら今度は水の竜巻の魔法を放ったり、巨大な身体を生かして突撃してきたりした。


魔法も突撃も無敵で無効化できたが、突撃による物理はある程度までしか押し込みを抑えきれず俺はそのまま空中に弾き飛ばされた。

ダメージはないがグルグル回って気持ち悪い。

状態異常無効化とかこの酔いに適用されるのかと思った。


≪マサキ!大丈夫か!?≫


≪ああ、問題ない。そっちはどうだ?≫


アデルからしたら酷いダメージを受けたように見えるが、この通りぴんぴんしている。

心配されるのも悪くない。


≪こちらはあらかた眷属は片付けた。王国の者達も倒せる程余裕が出来ている。救助は円卓の皆が行なっている≫


≪解った。ところでアデル。ここから北西に一つだけ離れた船の反応がある。そこに余裕が出来たら向かってくれ≫


≪解った≫


視界の端にマップは移動させてたが、小さく反応はあった。

今は目の前のデカブツをどうするかで俺は一杯一杯だった。

一応風の刃や岩のミサイルの魔法も試したが、阻まれてダメ。水は試さなくてもダメだろう。


魔法はダメなら次はと『波動剣』『ソニックブレイド』のコンボを繰り出したが水の膜で大きく威力が軽減された。鱗には傷が入ったので上手く当てればダメージが通るだろう。


鱗を傷つけられたデカブツは大きく吠えて、今度は巨大な尻尾を撓らせて俺に叩き付けてくる。俺はそれを避けれずに弾き飛ばされて海の上を何回もバウントしてしまう。


視界がグルグル回るがある程度までしか気持ち悪くならないようだ。

状態異常無効化なかったら酔い死とかするんじゃないかと思う。


これが効いたとデカブツは勘違いしたのか、こっちに更に突進をしてくる。

俺は当たる前に急上昇して回避するが、追尾するように追ってくる。


(しつこい!!だが攻略の糸口は見えた!)


こいつの厄介なところは直ぐに再生する水の膜だ。これが魔法も物理も軽減か無効化してしまう。

それならばこれをとり除けばいい。最初放ったフレイムジャベリンで。


俺は追尾してくるデカブツに向けて急速に移動してドデカい腹めがけて至近距離でフレイムジャベリンを全力で叩き付ける。

すると目の前が真っ白になり今度は全力だったおかげか鱗が焼けている。


今が好機!水の膜が再生する前に『波動剣』でデカブツの身体を切りつけた。

追加攻撃は3回ほど起きたが威力を増し、水の膜で軽減されなかった攻撃はデカブツの身体を切り裂いて大きく傷を負わせた。出血もしている。




グオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォ!!!




デカブツから悲鳴にも似た声が大きく轟いた。神といえども痛いものは痛いのだろう。


だがこいつならいける。水の膜が再生するがもう一度焼けばまた突破できる。

それを再生する前に切りつける。繰り返せばこのデカブツは倒せるはずだ。


その前に全力で放ったフレイムジャベリンにMPをごっそりと持っていかれた。

ボルテックスバーストの後に撃った所為で精神力が半分を切ってる。

これじゃ打てないと思いMP回復ポーションで回復しているとクローディアから念話が飛んできた。




≪マサキ!リヴァイアサンは倒したらダメよ!!≫



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