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嫌な予感

 高級宿で俺達は食事と十分な睡眠を取って朝になった。

朝になった俺は日課通り身体を動かすべく顔を洗ってから外に出ると、そこには空き地で剣を振うアデルの姿があった。

アデルの剣は変幻自在で型に縛られない変則的な動きをする。

これはマトモに戦う相手の方が可哀相だ。兵士は型通りの戦いをするのが多いからこのような動きとは相性が絶望的に悪い。

それでも数を武器にして力押しが可能なのは否めない。戦いは数も力だからな。


「お早う。マサキ殿」


俺が外に出てきたのにアデルが気づいたらしくこちらに声を掛けてきた。

船でも身体を動かす為に朝になると甲板で遭遇することが多かった。


「今日も組手するか?」


「今日は止めておこう。互いに怪我をしても直ぐに治るが、街中ではやらない方がいい」


「それもそうか。それなら俺は走りこむけどアデルはどうする?」


「付き合おう。朝日を浴びながら走るのも気持ちよさそうだからな」


朝日に照らされ微笑むアデルの笑顔に俺は思わずドキッとしてしまった。

何年ぶりの感情か解らない。強引に俺はその感情を押し込めて走り出した。


「よし、いくか。負けた方がルームで珈琲を作るという事で」


「あ、おい待て!」


誤魔化すように俺は先に走り出す。この感情は押し殺したい。

二人で朝日が登りつつある街中を走ると、掃除や店の準備をしている人たちが目に入る。

道の隅で酒瓶を抱えて眠るおっさんもいる。こうして寝られるということはここの治安も良いという事だ。外で寝るのは褒められた事じゃないけどな。


二人で軽く街を走りこんで宿まで戻ってくる。これくらいだとヴァンパイアであるアデルと『身体能力上昇(特大)』を付けている俺は汗ひとつ掻かない。

丁度いい具合に身体が解れた。


勝負は俺の負けだった。俺より速いとは恐るべし。


宿の部屋に戻り、ルームの魔法を使って俺が珈琲を入れていると、ノックする音が聞こえた。俺の部屋には珈琲を堪能しているアデルもいる。茶菓子に俺自作のクッキーだ。今日はチョコ入り。


「入っていいぞ」


多分、部下かと思ったら開けて現れたのはアラン伯爵だった。


「失礼する…いい香りがするな。その部屋は一体なんだ?この宿にはそんなのは無いはずだが…」


あ~…ばれてしまっては仕方ない。秘密を知った彼には悪いが…なんてことはなく説明しておこう。


「特殊な空間につながる魔法を使いました。ここなら水道や家事も万遍なくおこなえて風呂まであります。便利すぎるのでこれは俺ら海賊団と保護した人たちの秘密にしてありますので伯爵様もご内密に。口止め料はこれという事で」


俺の分へとついであった珈琲をアラン伯爵に差し出す。


「確かにこれは凄まじい魔法だな…。調度品の数々もその魔道具も見た事がないものだ。他の貴族の連中に知られたら何が何でも手に入れようとするだろう…解った。内密にした方がこれは良い」


魔道具ということにされてしまったコラボアイテムのコーヒーサーバー。

実際便利だから助かる。


「ほう……これは味に深みがあって美味しい」

「これも食べてみると良い。マサキ殿の手作りクッキーだ。王宮の料理人が作った菓子を上回る一品だぞ」


珈琲を堪能しているアデルが俺の作ったクッキーを勧める。

俺の菓子にそんな評価を下していたのか。


「頂こう。………確かにこれは。昨日貴殿たちが微妙な顔をしていたのがよく解る。なるほどな。これを口にしていてはあの菓子では特別に美味いとは言いづらい訳だ」


気づいてたみたいだな。鋭い。


「お褒めに頂き光栄です。それで今日は何のご用事でしょうか?出発までまだ時間はあるはずですが?」


「その件だが今朝にとある報告を受けてな」


「報告?」


「ああ。帝国の船が一隻、我らが王国に向かっているとの報告だ。捕まえようと思ったが風の魔法使いがいるらしく捕縛し損ねたと報告が上がった」


「一隻だけか……怪しいな」


怪しすぎるな。帝国の手段を考えるなら力技でゴリ押しが多かった。

それを一隻だけ。何かあると思った方が良いだろう…嫌な予感がする。


「出発を早めましょう。嫌な予感がする」


「貴殿もそう思うか。だが報告が朝に上がってきたばかりでまだ船の出発の準備が出来ていない」


「うちの船なら荷物も積んでありますし、直ぐに出航可能です」


「それにぜひ私と部下も同行させてくれ。予感が外れてくれればいいのだがな」


「うちの船で良ければ」


俺は珈琲を一気に飲み干すと朝食を摂っていた部下達にその旨を伝える。

こういう時の全員の行動は早い。直ぐに残さず食べつくして荷物を抱えて船へと向かう。

俺も向かおうと思ったが一人たりねぇ!!クローディアがまだ寝てる!


「…はぁ。私が連れて行こう。マサキ殿は先に伯爵と向かってくれ」


「すまん、流石に俺が女の部屋に入る訳にはいかんからな」


クローディアをアデルに任せて俺達は伯爵の部下と共に海賊船へと戻った。

それから程なくして未だ寝ぼけているクローディアをアデルが背負って船へ戻ってきた。


「ねーむーいー…」


「いい加減起きろ!」


あれじゃ朝は使い物にならない。やれやれ。


「起きないとダメソファー没収するぞ」


「起きました!はい!おはよう!」


現金過ぎる…!少々疲れたがこれで全員の出発が整った。

停泊料は伯爵が払っていてくれたので直ぐに出航。急ぐためにパドルとぺドルの二人で風の魔法を使い高速で船を走らせる。


俺はマップで周囲を探る。周りには漁船のようなものがいるが、これは魚のマークをしていてすぐにわかる。偽装していても漁船?が付くので直ぐに解る。


王国まではここから船で半日。この速度で風の魔法を使い続ければ伯爵曰く2時間もすればつくとのことだ。

パドルとぺドルにはMP回復ポーションを多数渡してある。彼らには頑張ってもらわないといけない。


俺はいつでも戦えるようにスキルの組み直しだ。


パッシブスキル

MP自動回復(中)

HPMP自動回復(中)

身体能力上昇(特大)

近接戦闘能力上昇(大)

気配感知能力上昇(大)

リーダー統一能力上昇(中)


アクティブスキル

波動剣

ソニックブレイド

グランドアーマー

エアレイド



何時ものセットに加えて今回は要護衛対象の伯爵がいるので、防御系スキル『グランドアーマー』と一定時間浮遊の能力を得る支援系スキル『エアレイド』を付けた。


両方とも範囲が仲間に及ぶアクティブスキルで、グランドアーマーは3回だけ攻撃を完全に無効化するスキルだ。その分HPの消費が大きい。


エアレイドは仲間に浮遊の能力を得させる。何かアクシデントで海に落ちた時沈むのを防ぐ為だな。ウィングみたいに空は飛べないが、ジャンプできるほどの高さは維持できる。


スキルを組み終わった俺の頭に声が届く。


≪周囲に怪しい気配はない。引き続き哨戒をする≫


頭に届いた声はアデルの声。念話という魔法使い同士が使える魔法だ。

パドルとぺドルは知っていたがどうやって覚えればいいか解らずに使えてなかったようで。

これはクローディアが教えてくれた。意外と覚えやすくパドルとぺドルも直ぐに使いこなせた。

俺の方は特殊で頭に声が届いた瞬間にログが出てきた。プレイヤーやGM時代にも使った『ウィスパー』という個人通話だ。

それをイメージすると直ぐに念話は使えるようになる。

同時にパーティー通話も一緒に使えるようになった。仲間のみに声を伝えられる設定だな。向こうは受信はできても向こうから送信は出来ない。


『シャウト』は試してない。これするとマップの遠い所まで声が出るから試す事も出来やしない。


≪解った。きつくなったら戻れよ≫


俺は念話を返すと視界を海に向け…てるふりをして俺だけにしか見えないマップを見つめる。


マップは立体構造になっているから海の底、更に地面の中まで見ようと思えば見れる。

海上だけではなく水中からの不意打ちを防ぐ為に二重で警戒していた。

マップのサイズは最大にして広範囲に及ぶ警戒網を敷く。


「この速度ならそろそろ王国が見えるはずだ。あの崖を過ぎれば我らがセントドラグ王国だ」


「崖の上に大砲が多いな…それに砦も。これなら帝国も数に任せて攻めるのはきついはずだ」


地図を見せてもらうと王国はリアス式海岸のような地形で崖の上に立っているらしい。

崖の中に軍港があって、軍港の中に運河もあって運河の先は王国が誇る巨大な湖でそこにも商業用の港があると説明してもらった。

崖の上には多数の砲台や弩弓。防衛に関しては相当力をいれているようだ。


だがこれを見てもどうも嫌な予感がぬぐいきれなく……それはやがて現実となる。


「っ!!?」


≪マサキ殿!大変だ!!王国を海神リヴァイアサンが攻めている!!海軍が交戦中だ!もう被害が出ている≫


マップの端に今まで見た事がない巨大な影が出てくると同時にアデルから連絡が入る。


≪こっちでも存在を確認した。今すぐ俺も向かう。決して無茶をするな!≫


≪解った!≫


念話を終えると何かあったと察した伯爵が声を掛けてきた。


「何かあったのか」


「海神リヴァイアサンとやらが王国を攻めているという報告が来た」


「何だと!何故、リヴァイアサンが!?」


「解らん。だがもう被害が出ている。先に行くぞ。パドル、ぺドル。全速力を出せ!バルバロッサ!後の指示は任せる!頼んだぞ!!」


「アイアイサー!!」


俺は仲間全員にプロテオールとクイックバイトの魔法をかけ物理防御を強化し、攻撃速度を上げる。更にグランドアーマーとエアレイドのスキルを重ね掛けして支援を整える。

減ったMPやHPを回復するためにアイテムからHPとMPのポーションを取り出してがぶ飲みする。今は少しでも回復にかかる時間が惜しい。


「マサキ殿。頼む!」


「頼まれた!!」


伯爵からからの頼みに俺は短く返してウィングの魔法を使い最高速度でリヴァイアサンの元に向かう。



崖の先ではフリゲート艦とは比べ物にならない程巨大な、まさに海神と言うにふさわしい全長が計り知れない竜が猛威を振っていた。




パッシブスキル

MP自動回復(中)(マジックフェンサー)

HPMP自動回復(中)(ロードパラディン)

身体能力上昇(特大)(グラップラー)

近接戦闘能力上昇(大)(ダークロードナイト)

気配感知能力上昇(大)(アサシン)

リーダー統一能力上昇(中)(ギルドリーダー)


アクティブスキル

波動剣 (ハイナイト・ロードパラディン)

ソニックブレイド(剣士系)

グランドアーマー (ハイナイト)

エアレイド (マジックフェンサー)

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