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奴隷船

「いてててて……ローハス…水くれぇ……」

「兄さん…大親分の言いつけ守らずに飲みすぎるから…はい。水」


宴から明けて次の日、俺達、円卓の海賊団はビールの飲み過ぎで二日酔いとなったバルバロッサを乗せて北へ出航していた。

俺はある程度飲み食いし終わった後、風呂に入って汚れとともに疲れを綺麗さっぱりと洗い流した。


俺の後には部下達も風呂に入れて二日酔いなバルバロッサ以外は清潔だ。

温かい風呂に入るという習慣は無いらしく、いつもは水で身体を拭くだけのようだ。

全員が風呂上りに気持ちよさそうにしていた。風呂上りに一杯…とビールを行きたいが次の日に差し控えても困るのでやめていた。が、バルバロッサはグビグビと冷たいビールを呷り、今に至る。

船の揺れも厳しいだろうから『ルーム』を開けっ放しにしてソファーに寝かせている。ベッドは俺専用と告げたので使わせん。


朝方はいつも通りにトレーニングを。朝日を浴びながら軽く体を動かす。

身体能力上昇のお蔭でアクロバティックな動きも出来るようになった。

朝食はローハスがバルバロッサの看病をしているから代わりに俺が作ってやることにした。

といってもそう凝ったメニューにはしていない。


白いパンにハムエッグ。それと珈琲だな。それと焼いた魚を解して野菜と合わせ、サラダも付けた。元の世界でも作ってたメニューだな。



某便利店とのコラボグッズで珈琲メーカーを手に入れておいたのが大きい。実に美味いコーヒーが毎日無料で飲める。ビールサーバーと同様どうやって補充されてるかは謎だ。


「大親分の飯うめぇ!!こんな柔らかいパン初めて食った!!」

「大親分お代わり!」


お代わりまで要求してきたが、ちゃんと働いてもらいたいからな。

パンと目玉焼きのお代わりはある程度までしてやった。

親と付くからにはこいつらの飯の面倒も見てやる必要がある。



朝方も昼も何もなく一日は平穏に過ぎた。騒動尽くしだったからな。こういう休息の時間は大事だ。





数日はこのままのんびりとした船旅を楽しんでいた。

軍船も見えず、魔法の練習をしながら船を走らせる。

パドルとぺドルの二人からこの世界の魔法も教えて貰った。


この世界の魔法は自ら体の中の魔力を使い精神世界である「マテリアル界」という世界との門を繋ぎ、そこから使いたい属性の力を自分の体の中で再構築し放つらしい。

「マテリアル界」にも開きやすい場所や開くのが困難な所があって、俺が使った回復魔法はその中でも開ける人が極わずかという光。相当高難易度らしい。だからあんな風に拝まれたのか…。

同時に魔王が扱うという闇の門も同様に難しいが、これは双子でも見たことはないとのことだ。


基本的な火・水・土・風でも才能に左右され扱えるものは魔法使いと呼ばれる。

パドルは風と水。ぺドルは風と土を扱うそれなりに優秀な魔法使いと後でローハスからきいた。


俺がゲーム時代での魔法を使う時はその法則に当てはまらず、どうなっているのか不明なようだ。

双子は『ウィング』を覚えたがっていたようだが、生憎と教え方が解らない。イメージが大事なら空を一緒に飛ばせればイメージが掴めるか?やってみるのもいいかもしれない。


暇な数日間、イメージを重ねて魔法を練習した。ようやく小型の槍をイメージに成功すると試し打ちに跳ねた魚に放つと海の上で香ばしく焼け、海中へと沈んでいった。これである程度のMPの消費が抑えられる。


MPが減ると精神的な疲労が溜り、それがMPが減ったと体感できるので疲れないに越したことはない。全部使い切ると気絶しそうだ。








魔法の練習をしながら、マップで周囲の海域を警戒していると一つの船の反応が現れた。


「船か。軍船じゃないみたいだが何処の船だ?」


船のマークのサイズである程度のサイズが解るがキャラベル船でもフリゲート艦でも無かった。


「ちょっと上に登って見てきやす」


「ああ、頼んだ」


魔法の練習を止めてMPを完全に回復し終える。自動回復が速いとはいえ、集中していると疲れが溜まってしまう。疲労だけは回復は出来ないからな。


マストの天辺から部下が降りてくると慌てた様子でこちらに駆け寄ってくる。


「大親分!あれは奴隷船ですぜ!しかも帝国の紋章も見えやす!!」


帝国の奴隷船か。ならば潰した方がいいか。人数次第ではこの船にも奴隷は積んでやれるだろう。多くても『ルーム』を使えば収容は出来るはずだ。



「バルバロッサ。ちょっとこっちに来てくれ」


「何ですかい?大親分」


「近くに帝国の奴隷船を見つけた。皆に戦闘準備を伝えてくれ」


「うっす!わかりやした!!」


バルバロッサが船内へと戻り部下達に声を掛けると全員手際よく…一人だけ遅れて甲板へと飛び出し奴隷船へ向けて速度を上げる。

一人遅れたのはきっとダメソファーに取り込まれてたからだろう。

アイツは既にダメソファーの虜に堕ちた。

俺も虜なので文句はいわないけどな。



全員の準備が追えると俺は大親分として号令をかける。


「面舵一杯!!目標、右舷にいる奴隷船だ!!お前ら、奴隷には傷一つ付けるなよ!」



「「「「「アイアイサーーー!!!!」」」」



俺達、『円卓の海賊団』は奴隷船へ向け、風の魔法も受けて一直線へと走り出した。全員の装備は充実だ。美味い飯も食って士気は上々。それでも油断はせずに行こう。










「か…海賊だーーー!!!」


奴隷船の甲板にいた見張り役らしき奴が大声を上げる、それに応じて弓や剣、杖を持った奴らが現れた。


「近づかれる前に沈めろ!!打て!撃て!!」


俺達の海賊船へ向けて奴隷船の船員が矢や岩石の魔法、魔力を筒に込めて砲弾を放つがそれらは全て俺の『グラビティウォール』によって遮られ海の中に沈んでいく。


「こいつらには何処から攫ってきたか吐かせる必要がある。出来るだけ殺すな。無理そうなら仕留めても構わん!先に飛ぶ!後に続け!!」


俺は『グラビティウォール』を張りながら奴隷船に海賊船が直撃する前に飛び乗り、海賊船はパドルとぺドルが風の障壁を張って衝撃を押さえこんだ。


船に飛び乗った俺は剣を突き出してくる船員に向けて『手加減攻撃』『ソニックブレイド』を使い後方にいた魔法使い諸共両断した。


『手加減攻撃』を重ねたお蔭でセブンアーサーの特殊能力も抑えられて身体は斬れておらず、生きてはいるが痛みはあるようで二人ともバタリと音を立てて崩れ落ちた。


俺の後に続いてバルバロッサやローハスも飛び乗り、暇な時に練習していたのか船員を感電させて身動きを封じたり、炎上させてそのまま海に落とし消火もさせたりしてた。





奴隷船の船員は少ないらしく10人程度で、それも1分もしないうちに全員を戦闘不能へと追い込んだ。

なんか一人筋肉むきむきな奴が「腕は建つようだな。だがこの俺様の」とか言ってた奴がいたがソニックブレイドの巻き添えを喰らってあっさり気絶した。何を言いたかったんだろう。


全員を縛り終える、船内へ入ると10人ぐらいの奴隷が牢屋に入れられていた。

どうやら俺達が海賊と知って怯えているようだ。


「怯えなくていい。海賊ではあるが、帝国とは敵対している。今ここから出してやるからな」


「だしてくれるの?」「帰れるの…パパやママの元に帰れるの!?」


「ああ。船で行ける範囲までなら連れて行ってやる。そこから先となるとこの先の街の衛兵に頼むことになるけどいいか?」


「うん!あのっ良い海賊さんありがとう!」


良い海賊か。賊と付いてるのに良いとは如何なものだろう。


「大親分、こいつは魔法の檻だ。檻に攻撃を与えちまうと中にいる奴隷達に痛みが出る厄介な奴だ。アイツらから鍵を取り上げねぇと…」


鍵開けをしつつ檻の分析をしていたパドルがそう告げ来る。

魔法の檻か。鍵ならこいつなら行けるか?

牢破りにも使った盗賊王の針金を取り出し、牢屋の鍵穴に差し込むとガチャンと音を立てて扉があいた。


牢屋が開くと奴隷船の船長が信じられない物をみたという表情をしていた。


「そんなバカな…!鍵は俺の靴底に隠して…!」


面倒な所に隠してたんだな。まぁ、俺もこの鍵が無いなら船長を尋問して鍵を奪い取る事はしただろうな。労力の無駄だからサクッと盗賊王の針金を使ったが。


中にいた奴隷達は皆女や子供達ばかりだった。

従属用の首輪は付いていかなかったが、全員が手縄で繋がれていた。何人かは暴行された跡がある…痛々しい。


『オールエリアヒール』


牢屋にいる全員に向けて回復魔法をかけると驚き、特に狐っぽい黄金色の尻尾を生えた女性が驚く様子でこっちを見ている。彼女は魔法使いなのかもしれない。

傷跡が残らなくて良かったが、迂闊に使うと注目浴びそうだ。


「バルバロッサ。この子達を海賊船へ連れて行ってやってくれ。ローハスはルームで温かい食事と風呂を。他の皆はバルバロッサとローハスの手伝いをしてくれ。何人かはこいつらの尋問だ。捕まえた場所を聞き出せ。方法は任せる」


俺の指示に全員が頷き別々に動き出す。俺は船長室へ向かい帝国の資料が何か無いかと調べようと歩き出すが船のマップ端に何やら人?の反応がある。





俺は人の反応に向けて歩きだし壁に突き当たった。人?らしきマークはこの先にあったが行き止まりだ。

後ろを振り向いて船長を見ると慌てて顔を逸らした。何やら挙動不審だ。


「おい、この先に何がある?答えろ」


「な…何もない。ただの壁じゃないか!」


どう見ても怪しい。

剣を構えず俺は見よう見まねで空手の型を思い出しつつ、気合を入れて拳を壁に打ち付けると壁が大きな音を立てて崩れ落ちた。


その先には小さな小部屋があり一つの牢屋があった。

だがその牢屋はただの牢屋ではなく、鉄格子に何やら模様が入った鎖を巻きつけられて厳重に封印というべき形を取られていた。





俺はその小部屋の中に入ると牢屋の中に……鈍く銀色に光る杭を体に何本も撃ちこまれ、十字架に縛られた一人の女性を見つけた。







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