挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
亡霊葬稿ダイホーン だれが変温の哺乳類を操っているのか/コリカンチャとカト●チャはインカに違うのか 作者:烏田かあ

第九章『深まる闇』

60/93

箸休め 我々の生活を支える植物たち① 世界一人間を救ってきた(かも知れない)植物

 番外編です。
 今回は蚊取り線香の材料について紹介しています。
 醒ヶさめがい小春こはるの浴びせた制汗せいかんスプレーは、ネズミの大群を一瞬にして追い払いました。これは決して大袈裟な話ではなく、ミントに含まれるメントールには害虫やネズミを遠ざける作用があると言います。事実、虫除むしよけスプレーやネズミの忌避剤きひざいには、多くの場合、メントールが配合されています。

 またミントと言えば、肌に触れた時のひんやり感も特徴です。不快な熱を揮発きはつさせるような冷たさは、医薬品にも多く使われています。筋肉痛をやわらげるために湿布を、肌のかゆみをおさえるために皮膚薬をと、メントール配合の医薬品を使った経験は誰にでもあることでしょう。

 勿論もちろん、心地よい冷たさは涼を得るためにも利用されています。制汗せいかんスプレーに日焼け止めと、夏にお目見えする商品には、お約束のようにメントールが採用されています。真夏のバスタイムを快適に過ごすために、ハッカ油を湯船に垂らしている方も多いのではないでしょうか。

 ハッカ油はミントから算出される油で、食品しょくひん添加物てんかぶつとしても利用されています。この事実からも判る通り、ミントは口に入るものにも多く使われています。すうっと鼻に抜けていく爽やかな香りは、のど飴やガムの定番です。時に歯磨き粉の味と揶揄やゆされますが、チョコミントがアイス売場から消えたことはありません。

 我々に恩恵を与えてくれているのは、何もミントだけではありません。古来、人間の生活は多くの植物に支えられてきました。

 ミント同様、虫除むしよけとして有名なのがシロバナムシヨケギクです。
 ジョチュウギクとも呼ばれるシロバナムシヨケギクには、ピレスロイドと言う殺虫成分が含まれています。
 害虫への速効性を持ち、また人間への影響が少ないピレスロイドは、長い間、蚊取り線香の材料として利用されていました。現在では化学的に合成したピレスロイドが使われていますが、それもシロバナムシヨケギクの成分を研究した末に開発されたものです。人間に多大な貢献をしたシロバナムシヨケギクは、蚊取り線香を開発した(株)大日本だいにほん除虫菊じょちゅうぎく金鳥きんちょう)の社名にも採用されています。

 さて現在は渦巻き型で親しまれている蚊取り線香ですが、1890年(明治23年)に発明された際は棒状だったそうです。当時のそれはまさしく線香のような細さで、簡単に折れてしまう代物でした。また長さも20㌢ほどで、40分しかたないと言う欠点がありました。
「燃焼時間が短いなら、もっと長くすればいいのではないか?」と思いますが、
長ければ長いほど線香は倒れやすくなります。火のいたそれがタタミや布団に触れれば、火災が発生する可能性もあります。蚊取り線香は就寝中に使うことも多く、安易に長くすることは出来ませんでした。

 現在の形になったのは1895年(明治28年)のことで、発案者は初代社長のご夫人だそうです。何重にも巻いた渦巻き型は、長さを稼ぐのには最適な形です。また安定して置くことが可能で、就寝中にも安心して使える品物でした。
 1902年(明治35年)に発売された蚊取り線香は空前のロングセラー商品となり、今では夏の風物詩になっています。渦巻き型の線香を直線に伸ばすと、全長75㌢ほどになると言います。棒状の頃は40分だった燃焼時間も、7時間程度まで延びたそうです。

 マラリアやデング熱などを媒介する蚊は、全生物の中で一番多く人を殺していると言います。もしかしたらシロバナムシヨケギクは、予防接種や抗生物質以上に多くの命を救ってきたのかも知れません。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ