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チョコレート
 「あ、あのっ……付き合って下さい!」
 と、言ったのは学校一の美少女、奈美川聡美――ではなく、俺、山下咲也である。
 「ちょ、ちょっと待っていて下さい。また今度、答えますので」
 ドモって言ったのは、今度こそ学校一の美少女、奈美川聡美――のクラスメイトの友達の友達。ようは、俺のクラスの女子、河野由美香。
 大体、学校一の美少女なら、その学校が相当低レベルの学校以外なら、1回や2回は告白されているだろうし、「あー、まただー」という風になりそうだ。ちなみに、俺の学校は普通のレベルの学校である。
 「……そうですか」
 フラれてしまったのだろうか。失恋を機に、やけ酒でも煽ろうか。まだ、未成年だが、そんなことを考えてみる。
 河野が教室から出た後も、俺は教室の自分の机に座ってぼーっとしていた。
 しばらくすると、吹奏楽部の演奏が聞こえてきた。その音が、無音の教室で響いた。

***

 「行ってきます」
 鍵をかけると、庭を通って門を出た。門の近くで、路面が凍結していたのか、滑ってしまう。
 さくっ。
 おや。霜柱じゃないか。
 久しぶりに霜柱を見た俺は、気分よく出ていった。
 しかし、女子が通るために、昨日のことを思い出してため息が出る。
 肩を叩かれた。
 「おう、山下」
 親友の鈴木である。
 二人共ありふれた名前で、よく名前を勘違いされる。
 「いいよな、山下は。どうせ、アテがあるんだろ?」
 昨日告白したことなんて言っていないが、無神経だと思った。
 ムチャぶりだが、気分を察しろと思う。
 「ねえよ」
 「またまた~」
 「ねえって!!」
 つい、声を荒らげてしまう。
 「あ、ワリィ」
 「いや、こっちもごめん」
 そのまま、無言で続いた。
 下駄箱から上履きを取り出して、3階まで上がる。
 「んじゃあ」
 クラスが別なので、(自分が1組で、鈴木が4組)そのまま別れた。
 いつも通り、教科書を机にぶち込む。
 おや。
 なにか固い物――。

***

 今日は、ホワイトデーの前日だ。
 あの時机に入っていたのは、河野からのチョコレート。
 そして、今。俺は、3倍返し(地味に高いやつだったので、貯金を少し崩した)をするべく作って入る。
 ゆっくりと、ボールで溶かす。
 良い匂いが漂ってくる。
 それは、ただのチョコレートなどではなく、料理が苦手な俺でも、失敗をしなかった。
 
―END―
 
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