デートの時の話だ。
街を歩いてる時、オレは芳子さんにこう言われてカチンときた。
「たけしクン。あなたってほんと可愛いわねぇ」
「うるせぇなあ。可愛いのはオレじゃなくて君の方だろ?」
芳子さんはフフフと笑いながら続けて言う。
「あら。ありがとう。でも、たけしクン。あなただって可愛いのよ? 自覚がないだけで・・・・・・」
オレはますます腹が立ってきた。
だから、あまりいいことではないのだが、芳子さんを殴った。
芳子さんは頬を押さえ、泣き始めた。
「わぁーん。わぁーん。痛いよぅ。痛いよぅ」
オレはあわてふためいた。
「ご、ごめん。ついムカついて殴ってしまった。ごめんよ。悪気はないんだ」
それでも泣きわめくのでうっとうしくなってきて、オレは芳子さんの腹を蹴飛ばした。
すると、おもしろいことに、芳子さんの体がゴロゴロ転がり、車道に飛び出した。
もちろん、車にはねられた。
オレは悲しみのあまり、人目もはばからず、大声で泣き叫んだ。
「わぁーん! わぁーん! 芳子さぁーん! 芳子さぁーん!」
すると、近くのカフェテラスで新聞をひろげていたどっかのオヤジがオレのとこまで寄り、「おまえ、ちょっとうるさいぞ」と言って、泣いてるオレをグーで殴ってきた。
オレは痛くて痛くて、余計泣いた。街行く人々がジロジロ見ている。
「わぁーん。わぁーん。痛いよぅ。痛いよぅ」
オヤジはげらげら笑いながら、「こりゃおもろいわ! こりゃ愉快だわ!」と叫んで、さらにオレを殴った。警察は来ない。
「ふぇーん。やめてよぅ。やめてよぅ」
オヤジはなおも執拗にオレを殴り続ける。興奮してるようだ。
「もうやだよぅ。もうやだよぅ」
まだまだ殴り続ける。リズミカルに殴り続ける。オレの顔はもーパンパンだ。
犬が遠くでわぃーんと鳴いた。
オレはオヤジに殴られながら、薄れゆく意識のなかで、
(こ、こ、ここで死んだら芳子さんが昨日作ってくれたカレーライスの残りが食べれなくなっちゃう・・・・・・ぐはっ)
と思っていた。(了)
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