一つの住所縦書き表示RDF


以前、みみずくとして掲載していた小説ですがIDを変更して内容修正を行い再掲載です。
一つの住所
作:シャンク=サフィラ


「あれ?これ誰だろう……」
年末になり、友達宛に年賀状でも書こうと思い、生徒手帳の住所欄を開けている。そこには数人の親しい友達の住所と郵便番号と氏名が並んでいた。しかし、その中に名前が書いていないものがあった。住所だけで郵便番号すら書かれていない。郵便番号は住所から割り出すことは出来るが、郵便番号が書いていない以上、去年に年賀状を出した相手ではないことが分かった。念のため去年の年賀状も出して探したがその住所のものはなかった。僕はこれが誰なのか疑問に思った。全く分からない住所ではなかった。地域的には学校の学区域内の住所だった。地図ですぐ調べ、学校のすぐそばだということが分かった。ただ、自分の通学している方向とは真逆で今まで歩いたことがないところだった。
「ここだと、歩いて二分もしないな」
そう、そんなに離れている場所ではなかった。気になった僕は明日の放課後、行ってみることにした。それは、好奇心もあったが住所を知っているのに誰だか分からないという恐怖感があり、僕の心を霧に覆わせていたから。

 翌日の放課後、いつも帰る方向とは逆の方向へ歩き、その住所へ向かった。やはり、二分ほどで着いた。表札を見た。
「坂下……え?」
表札には坂下と書いてあった。坂下は僕の友達だった。表札をじっと見ているとその坂下が家に帰ってきた。
「森山?……おまえ、何してるの?」
僕は坂下の方を向く。
「あ、あのさ……」
ちょっと戸惑いながら生徒手帳を開き住所欄を坂下に見せる。
「何これ?」
「これさ、坂下が書いたの?」
僕は住所欄の一番上の住所を指さす。そうしたら坂下がうなずいて。
「ああ、そうだよ。気づかれないように書いたんだよ」
あっさりと謎が解けてしまったことに僕はがっかりした。もうちょっと謎解きをしたかったな……。普段からミステリー小説を読む僕にとってこれは凄くつまらなかった。
「ところでいつ書いたの?」
「ん?確か……二年生のときだったと思うよ。最初はさ、森山に見つけてもらって年賀状をもらおうなんて思っていたんだけど郵便番号書き忘れてさ、しかもお前気づかなかったみたいで。失敗しちゃったよ」
坂下は笑いながら僕に言った。僕はこの言葉に矛盾点を感じた。僕らは今中三だから二年のときで正月前だと確実に一年ほど前であった。おかしい点が一つあった。
「ねぇ、生徒手帳ってさ、毎年新しいのに変わるよね?しかも、今年は学校が統合して生徒手帳の中身も変わったじゃん。ということはさ……去年書いた住所が何でこの新しい生徒手帳に書かれているの?」
僕がそういった後、坂下は少し考え、理解した。どうも鈍いやつみたいだ。
「そうだよな。これ今年の生徒手帳だもんな……今年は俺書いていないよ。念のため言っておくけど……」
僕らは困惑した。この書かれている住所は坂下の家の住所で、去年、坂下が書いたということは坂下本人が認めている。だが、今僕が持っているのは今年の生徒手帳である。それなのに坂下は今年、書いていなかった。僕は訳が分からずにいた。そんな僕を知ってか知らずか分からないが坂下が話しかける。
「まあ、いいじゃないか。そうだ!今年、年賀状送ってくれよ。郵便番号教えるから」
僕は、気にしないことにした。
「分かった。こっちも住所教えるね」
僕たちは互いに住所を教え、生徒手帳に書き込む。
「よしっと。それじゃあ、ちゃんと送れよ」
「分かってるよ」
僕たちは互いに笑いながら別れた。

 僕は家についてから生徒手帳を開けた。住所欄の一番初めには坂下の名前と郵便番号が入った。さっきまで誰のか分からず気になっていたのが嘘のようだった。でも……。
「誰が書いたんだろう……」
その謎は未だ解けていない……。














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