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第十七章 文化祭
閑話 舞の努力
「いやいや、そこはユーなのフェでしょ?」
「はっはっは、何言ってんだバカ。やっぱりユノフェかユーなのだろ? なのフェは売れるからできりゃ作る。どうせならまどほむも行くか」
 笑顔で空狐くんと刹那くんが話しているけど、お互いその眼は欠片も笑ってない。
「なにいってるのかな刹那くん。やっぱり世にいるなのフェどもを嘲笑うためにもユーなのフェは必要でしょ? アリすずがつくならなお結構!」
「ハーレムなんて現実にできるか。一気に数人なんて作画する方も大変なんだよ」
「そこを夢とロマンと妄想でカバーするのが同人でしょ!!」
「読み手の理屈と理想を押し付けんな! こっちは締切と作画っていう現実があるんだよ!!」
 なんかどんどんヒートアップして顔を突き合わせる二人。
 いったい何のお話なのかなあ?
「さて、バカはほっといて今日の訓練始めるよ」
 と、朱音さんに言われて私は地下のアトリエに向かいました。

 最近は、近接戦のためのムーンライトの使い方を習っています。
「ほら、そこが甘い」
 と、朱音さんが訓練用の槍で私の足を叩く。
 私はさらに踏み込んで穂先を突き出して、朱音さんに柄を掴まれてしまう。
「槍使いが得物を掴まれたら駄目だよ」
 そういって朱音さんが懐に入ってくる。私はムーンライトを手放して離れようとするけど、朱音さんは早くて……
 どすっと私のおなかに朱音さんの膝が入りました。
「かっ、は!」
 私はお腹を抱えて膝をついてしまう。
 痛くて痛くて仕方ない。まだ、痛いのには慣れない。
「うーん、ここ一か月でだいぶ力をつけてきたとは思うけど、まだまだね」
 と朱音さんが感想をいいながら、私の横にムーンライトを突き刺す。
「とりあえず、一度休憩にしよっか」
「い、え……」
 私はムーンライトを執って立ち上がる。
「もう少し……お願いします」
 震える足を支えて私は立つ。
「……あまり無理しない方がいいよ。休むのも訓練のうちなんだから」
 そう、かもしれないけど……
「でも、頑張らないと……追いつけない」
 私はほとんど積み重ねがない。お父さんの残した本で少しそっちの知識があった程度だから、頑張るしかない。
 朱音さんはため息をつくと、槍を構える。
「じゃあ、あと一本行ってみよっか」

 空に月が浮かんでいる中私はムーンライトをふるっている。
 アトリエには太陽も月もない。でも、擬似的に昼夜が作られている。
 朱音さんは仮眠室のベッドで寝ているけど、私はまだ頑張っている。
「ふう……」
 目の前にイメージを作る。背は私より少し上位で、武器は刀。防御や力ではなくて速さをメインに置いた相手。
 ムーンライトの手助けでなんとか作ったイメージに向かって穂先を向ける。
「行くよ、空狐くん」
 私はムーンライトを突き出した。

 それから十分後、私は砂浜の上に転がっていた。
 やっぱりたった数か月頑張った程度じゃ、イメージ相手でも追いつけないよね。
 でも、少しだけ、イメージの中でも動きが見えるようになってきた。
「早く追いつきたいな……」
「誰に?」
 いきなりかけられた声に私は振り向く。そこにはきれいな銀色の髪。
「美狐さん」
「やあ」
 ひらひらと手を振りながら美狐さんが近づいてくる。
「さっきのイメージは空狐?」
 すっぱりと私のシャドーの相手を言い当てられた。
 隠す必要もないし頷く。
「追いつきたいのは空狐ってことね。なんで?」
 また当てられた。それに、なんでって言われても……
「追いつかなくちゃ、始めた意味がないんです」
 もともと魔術を教えてって言い出したのだって、少しでも空狐くんの仕事を知りたかったから、そうすれば、空狐くんに近づけると思ったから。
 だから、空狐くんの好きなアニメのこともいろいろと勉強している。今日空狐くんと刹那くんが話していたのはカップリングっていうののことだというものってことはわかってる。
 でも、そのうち退魔士になれば、ずっと、一緒にいられるんじゃないかって思ってしまった。空狐くんが危ない場所に行っても私も着いていけるんじゃないかって。
 空狐くんはそっちに近寄らないように私に注意していた。まあ、模擬戦を見せたりとかしてたから言葉だけでいいとか思ってたのかもしれない。
 でも、私はできれば、空狐くんのそばにいたい。もっともっとそばにいたい。
 離れられたら嫌だから。知らないところに行かれるのは嫌だから。
 わがままとはわかってる。空狐くんに負担を負わせるかもしれないのもわかってる。それでも……
「これでくっついてないなんて、信じられないわね」
 美狐さんが呆れたように息を吐く。
「まあ、頑張んなさい」
 そういって美狐さんは腰を上げて、立ち去った。
 ふう、あと一回やってから私も休もうかな?
 私はもう一度ムーンライトを執って、立ち上がった。

 それからアトリエを出れば現実では夕暮れの時間。
 あれ? 空狐くんと刹那くんが、なぜか夕日を見ながら涙を流してる。
「そうだよね。一人一人ちゃんと描かないと心はわからないよね……」
「いや、俺もみんなで幸せっていうことまで考えてなかったさ」
 二日間、あ、アトリエだから二時間の間になんかわかりあったみたい。
 むう、空狐くんとなんでもいいから分かり合えるなんて、少し刹那くんがうらやましいなあ……
鈴:「どうも~、最近なんか筆の進まない鈴雪です」
刹:「携帯を変えたもんだから書き辛いって言ってたな」
鈴:「うん、今流行のスマートフォンにしたんだけど、タッチする部分が小さくて打ち辛くて、しかも打っている気がしないし」
刹:「そこらへんは便利だけど考え物だな」
鈴:「技術の進歩は必ずしも便利っていうわけじゃないって言うのを実感したよ」
刹:「複雑化して煩雑になったりするもんな」
鈴:「それでは、また次回!」


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