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第六章 温泉へ
第三十三話 温泉ならこれ!
「びっくりだな。みんな同じ旅館だなんて。まあ、俺らは刹那に誘われたからきたんだけどさ」
 龍馬がのんびりと言う。
 確かにいつものメンバーが揃うなんて……刹那くんなに考えてんのさ。しかも二人は先に電車で送るなんて工作しておいて。
 龍馬が言うには、ハルも来ているらしい。なんだかなー。
 僕は何となく女湯の方を見て、
「そして君は何やってるんだ!?」
 女湯と男湯を阻む壁に耳を当てている刹那くんにつっこむ。
 彼は指を一本立ててシーっとすると、ちょいちょいとこっちに招き寄せる。
 僕と龍馬はそれに従って静かに刹那くんのそばに行くと、
「温泉と言えばのぞきだろ?」
 ぐっと親指をたてる刹那くん。
 王道パターン!?
「ダメだよ! それはん、」
 ガシッと口を塞がれる。
「ほれ、静かにあっちに声が聞こえるぞ」
 そう言って刹那くんは耳を壁に当てる。
 全く何が楽しいやら。まあいい。僕も何が楽しいか確かめさせてもらおうか!
 龍馬も耳を当てる。
『朱音さんって肌綺麗ですねえ』
 あっ、ハルの声だ。
 本当に来てるんだ。
『そうだねえ、それにスタイルもよくて羨ましいなあ』
 舞さんの声が聞こえてくる。
 うーむ、あなたがそれを言うのはどうかと?
『そうかな? 私は舞の方がスタイルいいと思うけどな』
 今度は朱音さんだ。
 その言葉にうんうんと刹那くんが頷く。チクるぞ。
 と言うか、なんか恥ずかしい。この壁の向こうに一糸纏わぬ彼女たちがいるとは……やばい。想像してしまって、鼻血出そう。
 なんせ三人ともタイプの違う美女と美少女なのだ。想像するなというほうが無理。
『だよねえ。舞がスタイルよくないって事になったら世界中の女性の七割がスタイルよくないって事になっちゃうよ』
『そ、そうかな?』
 どうも、前から思ってたが、舞さんは自分が美人という自覚が少し欠如しているみたいだ。
 学園トップの美少女の評価を受けているのに何故欠如しているのかよくわからない。
 以前、買い物途中にスカウトを名乗る人に声をかけられた時だって、何で? っていう顔してたし。
 スカウトの電話も来たことあるし、適当に置かれてた名刺は僕も聞いたことのあるアイドル事務所の名前だったこともある。
 つまり、それほどの美少女なのであるが、それでも自分が美人なことを理解していないみたいだ。本当に何で?
 まあ、謎は謎のままにしておこう。
『そうだよ。ほら!』
『きゃふう!!』
 ハルのかけ声と共に舞さんの裏返った声。
 な、なんだ?!
『やっ、ダメだよお。ハルちゃん止めて……』
『うりうり』
『きゃん!!』
 ま、ま、まさかー?!
『舞の胸、すごく大きいねえ。それに柔らかくて、むみゅ、羨ましい。ねえ、何カップ?』
 やっぱりー!!
 ほ、本当に鼻血出ちゃうかも。
『ちょ、ちょっとハルちゃあん』
『うりうり!!』
『きゃふん!』
 あああああああ!! いい、一体どんな事をしてんのおおおお!?
 鼻を押さえながら耳をさらに引っ付ける。
『ううっ、言ったら、止めてくれる?』
 息も絶え絶えな舞さんの声だ。
『うん』
 ハルの楽しそうな声。
 男たちはさらに耳を引っ付ける。何やってんだというツッコミはなしの方向で。
 これは、もう男の本能なんですにょ。ええ! (断言するように)
『い、いー……』
 その瞬間、壁が倒れた。
「「「はい?」」」
 どうも、壁は老朽化してたらしく、力をかけられた瞬間に耐久力が0になったみたいだにゃ。
 バッターン! と僕らは壁ごと女湯側に倒れ込む。
 息を呑む気配。そして、その先に一糸纏わぬ彼女たちが……ありゃ?
「ゆ、湯浴み?!」
「そ、そんな……」
 龍馬と刹那くんがガクッと力を失う。
 そう、彼女たちは湯浴みを着て風呂に入ってたのだ! ま、まさか予想されていた!?
「くっ! ()られる前に生を拝みたかった!!」
 と、刹那くん。正直だね。
 そこで、ゆらりと朱音さんが立ち上がる。
「予想通りと言えば、予想通りだけど、まさかこんな大胆な作戦に出るとはね」
 いやあ、こうなったのはこの壁がたまたま老朽化してたからですにゃ。
 だけど、んなこと主張したって許されるはずない。
 いつの間にか、朱音さんの左手にはあの大鎌が握られている。
 口寄せで呼び出したのかな?
 さらに、服装にも変化が。
 いつもの黒いメイド風の服ではなくて白い服。ロングのスカートとブーツと首にチョーカー。さらに背中から、少しメカニカルな翼が二組生えている。翼以外はな○はさんのエクシードモードに似てるなあとなんとなく思った。
「げっ、リミットオーバー形態」
 刹那くんの顔がさっと青くなる。
 や、やばいの?
 まあ、尋常じゃない魔力があの姿から感じるけど。
「り、龍馬まで」
 ひくひくとハルの顔が引きつる。
 あははーっと龍馬はそっぽを向いた。
「く、空狐くん……見たいなら言ってくれれば」
 舞さんが顔を紅くしてそんなことをのたまう。
 いえ! できませんよ。そんなこと! 見れたら嬉しいけど!!
「覚悟はできたかな?」
 朱音さんが一歩、僕らに近づく。その前にはあの球状の魔力光。しかも、なんか前より大きい!?
 すっと僕らは引く。
 そして、刹那くんが刀を口寄せする。
 よし、僕も……あれ? できない?
「わたしが拒否してるからねえ」
 舞さんの頭の上にいるイヴが笑顔で言った。しかし、その眼は軽蔑の色。
 いや、そんな眼で見ないでよ。
「じゃあ、サヨナラ」
 朱音さんの前にでかい魔力球が強い光を放っていた。
 早い、早いよ朱音さん!!
「一撃入魂、スターダスト」
 ゆっくりと時間が流れる。
 鎌が振り上げられ、刹那くんが防壁を展開する。僕も刀がないからブーストはできないけど術を発動させる。
 そして、鎌が振り下ろされ……
「インパクト!」
 魔力光が炸裂した。


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