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第一章 始まりの日
第八話 宴の後
 二人が帰ってから舞さんをベッドに運ぶ。
 舞さんの膝の裏と脇の下に手を通して持ち上げると、思ったより軽く、少し拍子抜けした。
 そのまま、居間から彼女を部屋に運びベッドに横たわせて、寒くないように毛布をかけてあげる。
「よし」
 食器洗いとか残った片付けをしに行こう。
 と、思って立ち上がろうとしたら、
 グイ。
「……」
 服の裾を舞さんに掴まれた。
 少し引っ張る。
 グイ。
 放さない。
 グイグイグイ。
 ダメだ。放してくれない。
 仕方なく、上の服を脱ぐ。そろそろ夏になる頃だから寒くはない。それに、寒かったとしても炎術は得意だから自分の周りの空気だけ暖めることもできる。
 もぞもぞと舞さんが動いて僕の服を抱きかかえる。
 そういえば、舞さんはいつも何かを抱えて寝てたっけ。主に被害者は僕。
 一度、舞さんが焼き芋食べてる夢を見てて、僕の尻尾に噛みつかれたことがあったな(遠い眼)
 僕は明日ちゃんと服を返されることを願って今度こそ立ち上がった。


 皿を洗い終わってから、お風呂に入る。
 相変わらず広い風呂場だな。足を伸ばしてゆったりできるくらい(うちは五右衛門風呂だった)
 尻尾もきれいに洗ってから上がると、舞さんが居間でソファーに座っていた。ほんのり顔が紅い。まだ酔いが抜けきってないみたいだ。
 普通、一眠りしたら酔いなんて飛ぶもんだよな?
「あ、空狐くん。後片付けしてくれたの?」
「うん。ちょっと待って。今、水注ぐから」
 僕はコップを取って水を注いで彼女に差し出す。
「うん。ありがと」
 コップを受け取った舞さんが中身を一口飲む。僕はソファーに座る。
 しばらくして
「ごめんね」
 舞さんが一言。ちょっと俯き加減だ。
「何がですか?」
「空狐くんの歓迎パーティーなのに、君に後片付けさせちゃって」
「なれてますから」
 僕は苦笑する。
「そうなんだ」
 舞さんがじっとコップに視線を落としてから
「空狐くん。こっち向いて」
「はい?」
 舞さんがじっと僕の眼を見る。
「これからよろしくね」
 酔いでほんのり紅くなった顔でにこっと笑う。ちょっとドキってした。舞さんの笑顔は柔らかくてずっと愛でていたいと思ってしまう。
「はい、これからよろしくお願いします」
 とそこで気づいた。彼女の顔が赤から紫色に現在進行形で変化している。
「ま、舞さん?」
「き、気持ち悪い……」
 舞さんが口をおさえてえぇええ!
「ま、待った舞さん! せ、せめて、せめてトイレに!!」
 僕が彼女の肩を掴んでトイレに連行しようとして
「おええぇえぇえぇええぇ」
「ぎゃあああああああ!!」


 その後、僕は床の雑巾がけと絨毯と僕の寝巻きを洗って、もう一度入浴することになった。


「ご、ごめんね。空狐くん」
 布団に横たわった舞さんが謝って来る。
「ううん、慣れてますから」
 僕は苦笑して立ち上がる。ほんとは泣きたい。あの寝巻きお気に入りだったのに……
「あ、あの空狐くん」
「なんですか?」
 部屋を出ようとして声をかけられる。
「お、おやすみなさい」
 すこし紅い顔で舞さんが言った。
「おやすみ」
 そう応えて僕は部屋を出た。
やっと一日目終了。二日目からは学生生活の始まりです。


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