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夜空に光る星に願う
以前、みみずくとして掲載していた小説ですがIDを変更して内容修正を行い再掲載です。2008/03/25 誤字誤変換修正
朝、母親に起こされて起きる。僕は寝ぼけ眼の目をこすり階段を降り、居間へ行く。
「早く食べちゃってよ」
相変わらず大きな声だなと、自分の母親の声に耳をふさぐ。母は家から近い会社を経営している。といっても、従業員六人の工場の社長。でも、それなりに稼いでいるようで普通の生活を送っていた。僕は朝食を食べ終わり、身支度をして学校に向かった。家を出ると、きれいな青空が広がっていてすがすがしい気分になった。ふと、時計を見ると
「え!やばい、遅刻する!」
時刻はもう八時十分を回っていた。学校までは二十分ぐらいかかるから、登校時間が八時二十分ということを考えると、普通に行ったら遅刻してしまう。僕は猛ダッシュで学校に向かった。

「八時十九分……間に合った!」
 辛うじて教室に着いた。すぐにチャイムが鳴り、先生が入ってくる。僕は後ろの方の席なので、先生に遅れたことが分からないよう、静かにカバンから教科書などを出し、机の中に入れる。
「佐藤……」
見つかった。田中先生の普段とは違う、低い声。これは確実に怒っているときの声であることを僕は知っていた。
「また、遅刻したのか?」
先生の怖い声、僕は仕方なく
「はい……」
素直に答えるしかなかった。これが一番安全だからだ。
「まぁ、いいだろう。じゃあ、毎回のようにするからな」
「そ、そんなぁ〜」
クラスメートはみんな笑っている。だが、僕にとって笑えることではない。
「じゃあ、部活のとき、楽しみにしてるぞ」
僕は落ち込むことしか出来なかった。
 放課後、周りのみんなは掃除や部活動に行く人ばかり。僕も重い足取りで部活場所へ向かう。体育館の舞台に着いた。
「……こんにちは」
自分の声が明らかに落ち込んでいる声になっていた。それを慰めるかのような声が聞こえた。
「先輩!大丈夫ですよ。どんなことがあっても先輩なら乗り越えられますよ!」
「あ、ありがとう」
この子は僕の所属する演劇部の後輩に一年生で、名前は野田靖。僕と違って成績優秀なのだが、なぜか僕のことを慕っているようだ。
しかし、その言葉を返すかのような一言が僕に襲い掛かった。
「あんたねぇ〜、何回こうなったら気が済むの?さすがに、飽きてきたわよ」
僕は心に針が刺さったような感覚になった。まぁ、こういわれるのも仕方がないのだが。この毒舌女……。いやいや、僕と同じクラスの加藤有紀。彼女は僕の幼馴染なのだが、昔はこんな性格ではなかったような気がずっとしている。でも、周りの男子からは結構人気があって、告白されては振っていると聞いたことがある。そんな、加藤に僕は恐怖を感じていた。でも、逆に彼女の別の一面も知っている。でも、今は怖い方の性格である。
「だ、だって……」
僕は怖気づくしかない。下手に反抗したら命も危ういからである。
「だってじゃないわよ!まぁ、あたしは別にいいんだけどね。この写真をクラスみんなにばら撒くだけなんだから」
僕は逆らうことが出来ない。今までに、クラスのみんなにたくさんの写真が渡ってしまっているようだ。ある意味、それが僕のキャラになってしまっている。その写真とは僕の女装した写真。何だかんだ言って、クラスのみんなからは「かわいい」だの「似合っている」だの男女関係なしに言われる。だから、これ自体はもう、慣れきっていて、恥ずかしくないはずなのだが、実際やるときは恥ずかしくなってしまう。毎回、衣装や髪形を変えられる。本当に似合ってしまっている自分を憎いと思ってしまう。
「さぁ、今日はこれを着て……髪形はこんなのでいいんじゃない?」
加藤に雑誌の一ページを見せられる。写真の人はかわいい髪型をしていたが、自分がこの髪形になるかと思うとゾッとする。
「さ!おとなしく着なさい!」
「はい……」
僕はおとなしく服を受け取り、更衣室へ向かう。途中、同じクラスの友達から
「頑張れよ」
こんな言葉をかけられた。最近になってはクラス全員公認……。というか、田中先生が演劇部の顧問だからクラス全員に言ってしまっているのだ。
「はぁ〜……」
僕は大きなため息をつき、更衣室に入る。更衣室には数人いたが、状況を理解しているので僕に励ましの言葉をかけ出ていく。
「本当にこんなの着なきゃいけないの……」
その服は女子から見れば、かわいい服。胸の辺りに大きな花柄。全体がピンク色。要するに、男は絶対着ない服。
「ふ〜……」
着替え終わって、さらにため息。更衣室を出て足早に舞台に向かう。その間に何人に見られただろうか。恥ずかしさでいっぱいだった。

 舞台に着いた。すでに田中先生がいた。そもそもこの女装を提案したのが田中先生で、それに大賛成したのが加藤ってわけで、僕はまんまとその策略に引っかかっているというわけだ。
「やっぱり、似合うな」
「うん、本当に似合うわ」
先生と加藤がそんな言葉を僕にかけた。もう、着替えた時点であきらめているので、僕はそれを聞き流していた。で、必ず、その日の部活はこの格好でさせられる。それも分かっていた。

 部活が終わり、やっと普通の格好に戻れて、ほっと一息つく。
「それじゃあ、解散!」
「お〜」
これが部活の解散方法。運動部じゃないんだからと思っているが、別に気にしていない。
 帰り道、加藤と一緒に帰る。もう、幼稚園の頃から帰るときは一緒に帰っている。他愛もない話をしながら帰る。突然、加藤が言ってきた。
「あの、ちょっと時間ある?」
「え?あるけど」
「ちょっと来て」
加藤に言われて、僕は加藤に着いていった。
すぐそばの公園に連れて行かれた。加藤はベンチに座り、僕も隣に座る。
「どうしたんの?」
僕がそう聞いても、加藤は黙ったまま。いつもの加藤じゃないと僕は思った。
「なにか、言いたいことがあるなら、我慢せず言った方がいいよ」
僕がそういった後、加藤が僕の顔を見て言った。
「私、幸一のこと……好きになったみたい」
「え……」
僕は言葉を失った。突然、そんな事を言われたから当然である。今まで、加藤をそういう風に見たことがなかったし、加藤がそう思っていたことも知らなかった。でも、彼女の真剣な顔と、顔を真っ赤にしていたところを見ると、どうやら本当らしい。
「ごめん……突然、こんなこと言っちゃって。でも、この気持ち伝えたくって……」
正直、まだ、信じられなかったが僕は重い口を開いた。
「そう……。ありがとう。そういうこと言ってもらえるの初めてだからさ、少し驚いたけど、そう言ってもらえるだけありがたいよ。…確かに僕も君のこと好きだよ。だけど、それは友達として、おもしろいなとか一緒にいて楽しいなという思いなんだ。裏切るような感じでごめん。だけど、友達としてこれからも一緒にいよう」
「……ありがとう。素直な気持ちが聞けてよかった。気持ちがすっきりしたよ。うん、これからも友達として仲良くしようね」
「うん」
突然のことで驚いたが、加藤の気持ちを聞けて、自分もそれに対して嘘もつかずに答えられたからよかった。
「じゃあ、帰ろうか?」
「うん」
僕たちは帰り道をまた歩いていった。ふと空を見上げた。
「あ、流れ星」
夜の暗い空には星が見え、流れ星もあった。加藤と僕はその流れ星を見上げながら、二人とも同じ願いを念じた。
『いつまでも、仲良く過ごせますように』
僕たちは同じことを言っていたことに笑いあい、家路についた。そして、また、普段の生活が始まるのだった。
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