挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
男爵令嬢と王子の奮闘記 作者:olive

2章:結婚しました

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

21/61

21.どうぞ、殿下のお気の済むままに

下?ネタ?注意。一応念のため。
2015年5月修正済み
 さて、気が付けば夜もとっぷりと更けていた。そしてさすがの私にもこの時間になると眠気が襲ってきた。今日一日色々な、そう、本当に色々と気を遣うことが多くて大変だったしね。
 あくびをかみ殺したつもりだったが、隣の殿下にはばれていたらしい。私を気遣うような視線を向けてきた。

「…もうこんな時間か。今日は疲れただろう。そろそろ寝た方がいい」
「そう、ですね」

 はい、もう眠たいです。このままベッドに転がれば10秒で意識を失う自信がある。それでもなんとか意識を保っていると、

「お前は寝室で休め。俺は……さすがにこの時間に部屋に戻る訳にもいかないから、そのソファを貸してくれ。そこで寝る」

 ふむ。さすがによくお分かりで。
 今日は初夜だ。夫婦の契りが繰り広げられるこの甘い夜に、夜も更けたばかりの内に新妻の元を去るなんて何事か。もしもこの事実が知れたら、初夜がうまくいかなかったとか思われかねない。そんな憶測が飛び交うのを防ぐためだろう。

 しかし。まだまだ詰めが甘い。
 なので、私はシャットダウン寸前の頭をフル回転させ慌てて殿下を引き留めた。

「それはだめです」

 これでも殿下にしてみたら頑張っている方だろう。隣に女性がいて、部屋が違うとはいえ眠っている自分にいつでも襲い掛かれるという状況。それでも大して気が張ってないのは、やはり相手が私だからだろう。殿下に対して悪意がないことを示し続けた私の努力の結果だ。

 だがそんな見せかけの夫婦生活がいつまで露見せずに続けられるのか。
 敵は、割と自由自在に部屋に侵入してくる腕前を持つ、執念の女性たち。
 もしも、だ。仮に私たち夫婦が同じベッドで共にしていないことがばれてしまったら……。
 そう、部屋の中でさえも、油断することはできないのだ。いついかなる時もこの状況を他者にばれないようにするためには、同じベッドで夜を共にするのも殿下がこの部屋を訪問するのと同様、大事なことなのだ。

 それに私がこの王子に何の欲情も湧かない、何もしないのは分かってもらえたはず。別に一緒に寝るって言っても本当に同じ寝台でただ眠るだけ。将来私以外の女性とそういう関係になる可能性はおおいにあるんだし、女性に慣れておくためにもこれはいい機会だと思う。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 と、いうわけで。

「殿下、この距離なら気にならないと思いません?」

 場所は隣室へと移り、ベッドしかない私の寝室。
 これはキングサイズのベッド…って思っていたんだけど、私が知るものよりもさらに二回りほど大きい気がする。ベッドの右から左、端から端まで約3メートル弱。頭のてっぺんからつま先まで約2メートル半。うん、すさまじい広さだ。

「これなら例え寝返りを4回打っても殿下とぶつかる心配もありませんし」
「…………」

 しかし美しいそのお顔は相変わらず苦渋に満ちている。額に手を当て、うむむむと唸っている様もさすがはイケメン。様になっているが、その様子から見るにやはり躊躇っていると解釈して間違いない。やはり
 あらま、殿下にはまだハードルが高かったかな。
 さてどうしようか。これ以上殿下の恐怖を払拭するために私が出来ることは…。

 と、そういえばあのキャビネットの中には確か……。
 先ほど服を探すのに漁った中にちょうどいいものがあったのを思い出し、私はすぐそばの衣装棚を再度ごそごそ。

 メリダの仕業だろう、中にはいかがわしい服装のほかに、いかがわしいことでしか使用しないアダルトなグッズが山程あった。
 正直、これらのものを新婚且つ今まで女性に対して免疫のないレイン殿下が扱うにはあまりにも難易度の高いもんばっかりだけど。夫婦生活が盛り上がるようにとの、おせっかいおばさまの粋な心遣いとでも言おうか。いや粋すぎますよメリダさん。こういうのは倦怠期の夫婦の元にこそ必要だと思うんだけど。

 まあそういった考察はともかく。
 それらを使用するためにこの禁断の棚を開けたわけではない。
 私が取り出したかったのはコレ。黒くて長い鞭と真っ赤な太いろうそくに交じって置かれている、目隠しにも手足を縛るのにも使える細長い布数本(無論、どういった用途で使用するかは一目瞭然だ)。
 試しにとばかりに私はそれを殿下へと差し出してみた。

「これは?」

 手にしているのは何の変哲もないただの白い布きれ。突然の贈り物に私の意図が読み取れず、ぱちぱち目を瞬かせながらそう問われたので、私はその返答をする。

「もしも心配であれば、この布で私の手足を縛って下さい。ついでに目隠しをして頂いても構いませんが。そうすれば私は身動きが取れないですし、万が一にも襲い掛かられる心配はありませんから」
「………」

 夜、睡眠時は、人間が最も無防備になる瞬間。
 今まで幾度となくその無防備な瞬間を襲われてきた殿下にとって、やはり私が相手であろうと夜を共にするのは恐ろしいもの。いくら頭では私が手を出してこないと分かっていたって、怖いのは怖い。
 ならば私が下手な行動をとれないように動きを制限すればいい。

 我ながらいい案だと思ったんだけど。 
 しかし殿下は差し出された私の手の中の布に手をかけることすらしない。それどころかますます眉間に皺を深く刻ませ、更に困惑気に私を見つめながらもごもご呟いた。

「その、心遣いはありがたいんだが、お前が寝苦しいだろう」
「ご心配なく。私、寝る時は一切動かないんで縛られても不自由はありません。朝殿下が起きるときにでも外して頂ければそれで」
「あー、そ、それにもしもお前が手足を縛られ目をふさがれて眠っているところを誰かに見られでもしたら」
「その時は、そういうプレイですってごまかしたらいいじゃありませんか」
「ぷ、ぷれいか?」
「はい、プレイです」

 その瞬間、殿下の体はぴしりと確かに音を立て固まった。
 ん、あれ?私何か変なこと言っただろうか?世の中にはいろんなカップルがいるし、案外そういうプレイは密かに人気が高いと思うんだけど。だが殿下はますます顔色が悪くなり、顔をぴくぴく痙攣させるという不可解な動きを見せる。

 それからしばらく沈黙が続き。
 ようやく再起動したレイン殿下は深いため息をついた後、

「いや、大丈夫だ。うん大丈夫。平気だ。その気持ちだけ受け取っておこう」

 苦笑いを浮かべながらそう答えたのだった。まあ殿下がいいならそれでいいんだけども。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ