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男爵令嬢と王子の奮闘記 作者:olive

2章:結婚しました

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16.シャナ・コキニロ、いきます!

2015年4月修正済み
 早いのもので、あれから二カ月が経過した。
 で、今の私はというと、王城内のとある一室内にいた。

「お姉様…綺麗!!」
「うむ、見違えるものだな。まさに馬子にも衣装か」
「シャナが立派に育ってくれて、私も嬉しいわ…」

 純白の、乙女の夢と憧れと希望の詰まったウェディングドレス。さすがは王族御用達の仕立て屋作。ドレスにはこれでもかってくらいにダイヤがふんだんにあしらわれている。胸元には存在を主張するかのごとく輝く大粒のダイヤの首飾り。耳はそれとお揃いのイヤリング。とどめに頭の上には大きな大きなティアラが。もちろんこれもダイヤまみれだ。
 ちなみに装飾品は、代々王家に伝わる由緒正しいもの。
 そして、それらをすべて装着させられているのがこの私。

 えぇえぇ、そうですとも。今日はまさに私と王子の結婚式。
 国中のみんなが注目する超一大イベントだ。そして私は身分の差をものともせず、レイン殿下の心を射止めたこの世で最も幸せな花嫁としてこの式に出席しするのだ。
 主役として。
 普通なら私は幸せいっぱいの満面の笑みを浮かべ、家族に今まで育ててもらった感謝の気持ちを涙ながらに述べ、その後心浮き足立ちながら愛する王子様との結婚生活に向けて新たな一歩を踏み出す…んだけど。

「おいシャナ!お前もっと嬉しそうな顔しなさい。せっかくの晴れ舞台だっていうのに」
「そうよシャナ。国中のみんながあなたを見に来るのよ?ほら、笑って?」

 父&母がそう必死に言ってくるけど、私の顔は依然として固い。

 私は二人の言葉をスルーすると、この二ヶ月間で起こったことに想いを馳せる。
 ………思えばひどかった。いや、過去の経験上予想はしてたしそれに負けることもめげることもなかったけど。さすがにあれはひどかった。

 私と殿下との結婚話がおそらく国中に回ったんだろう、もう来るわ来るわわんさか。貴族たちからの結婚を祝福するお祝いの品、に混じって大量の無記名の嫌がらせのプレゼントが。
 不幸の手紙から始まり、毒入りのお菓子や飲み物なんて序の口、中にスズメバチを仕込ませた花束に待針を埋め込んだドレスの数々、猛毒の塗られたペンダント等のアクセサリーや開けたら異臭を放つ謎の瓶やら血文字で書かれた呪いの手紙に釘の打たれた血付きの藁人形、それから布でくるまれた包丁に動物の死骸の入った箱や、厳重に封のなされた中から聞こえてくる、がさごそ物音のする謎の箱まで。

 それだけではない。昼夜問わず家の周りを徘徊する怪しい男たちや、明らかに堅気ではない雰囲気を漂わせる集団。そんな物騒な事態が私の周囲に起こり始めたのである。

 しかし外の不審者に関しては問題ない。
 なんだかんだ言いながらあの貴族、私の家の周囲にかなりの数の護衛の人間を放ってくれていた。
 私の鉄拳が予想以上にきいて心を入れ替えたのか、それとも王子の無害な妻になりえる貴重な人材をここで無くすわけにはいかないという心の表れなのか。…まぁ後者だろうけど。
 そのおかげで怪しい人たちは翌日までには駆逐されてるんだけど、日が変われば今度は別の人間が立ってるという、駆除してもしてもきりがない状態。

 どう考えてもコレ、私と王子の結婚に対する嫌がらせである。タイミング的にばっちりだし、それ以外に恨みを買う覚えがない。どこの世界でも女の嫉妬と嫌がらせっていうのは似たようなものらしい。前の世界と全く同じだから。

 贈られてくるものの半分以上がこうした嫌がらせの物品のため、アネッサはすっかり贈り物にないして恐怖を感じるようになったみたいだ。……まあ、初めてぱっと開けた中身がいきなり牛の頭(しかもご丁寧に血糊付き。まだ温かかったらしい)だったっていうんだから、そりゃあびっくりするし警戒するし怖くなるだろう。普段目にすることのないスプラッタだからね。

 それに外出すれば危ない目つきをした男たちがちらほら見え隠れして、家の外に行くのも怖い。おかげで心労でげっそり痩せてしまっていた。
 せっかく今日のために新調していたドレスも、サイズが足りなくて違うものを用意してもらったくらいだから。繊細な子だよ、うん。

 え?私???残念、そんなやわな神経もちあわせちゃいない。
 前の人生で拉致されて、自殺者の多いと言われている森の奥深くに真冬に置き去りにされ、三日三晩獣たちに命を狙われながら過ごしたあの時に比べたら全然ましだ。あれは怖かったよ。今でも夢でうなされる。
 それどころかもりもり食べすぎて、ドレスが若干きつかったという始末。当然母様には叱咤された。ドレスに無理やり肉を詰め込んだため、苦しいし痛いしで笑うどころじゃないっていうのも硬い表情の一つではあるが。

 私は今、とてつもなく憂鬱なのである。マリッジブルーなんて可愛らしい理由なんかじゃない。
 結婚前ですらこんなありさまだったのに、これが結婚したら更に加速するんじゃないかってことにうんざりしたのだ。

 私が仮に離婚されたり最悪死んだ場合、王妃の座はぽっかり開く。そうすれば王子を狙う女性たちはその座に我先にと群がるだろう。
 しかし、そう簡単に事が動くとは限らない。ならば私がぽっくりいくよう仕向ければいいという訳だ。

 王城は男爵家より安全なんじゃないかって?いやいや、相手は警備すらくぐりぬける執念の塊のような方々だ。フェロモンという未知の物質に支配されている彼女たちの力は、おそらくこちらの想像の範疇を超えるくらいすごいに違いない。
 なら、私は他の力を当てにせず、全力で己自身を守らなければならない。当然それくらいはできるって自負はあるし、術も身につけている。そう簡単に彼女たちの思い通りになるつもりはない。
 だけどあれ、かなり神経すり減らすんだよね。めんどくさい。とてつもなくめんどくさい。しかしやらなきゃヤラレル。

「申し訳ありません、そろそろお時間です」

 外にいる兵士がそう告げてきた。

「そんな時間か。ワシらは先に言ってるからな。お前と殿下の二人並んだ姿を見られること、楽しみにしているぞ」

 上機嫌でそう言い残すと、父様達は出ていった。
 …まったく、あれだけ不気味な危険物を我が家に贈られたにも関わらず、全く平気そうに振舞う父様も母様もさすがだ。普通は取り乱したり、可愛い娘をこれ以上危険な目にあわす訳にはいかん、とか言って式をとりやめるよう言ったりしなかったからね、そんなの一切。能天気でホント困る。

 あとは、まあ、あれだ。
 あの日ディーゼル卿と話したことは、父様にはいってない。だから、私と殿下の情熱的な恋物語を今も信じている。
 故に、あんな恐ろしいものが送られてきても、むしろ「負けるな、こんなことでお前たちの愛は砕けたりはしない!」…なんて警備に更に力を入れていた。

 さて。一人部屋に残された私は、ゆっくりと大きく深呼吸を一つ、二つ。

 これから私が向かうのは戦場だ。不本意ながらも巻き込まれてしまった形だが、引き受けてしまった以上全力投球だ。
 なんとしても危険を回避し、そして私は私の夢を叶える…!! 

「よし、行くかっ」

 ばん、と気合入れに太ももを一叩きすると、私はその場から勢いよく立ちあがった。
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