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帰宅途中で嫁と娘ができたんだけど、ドラゴンだった。 作者:不確定 ワオン
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ご町内迷宮を突破せよ!⑤

 田んぼの周りを取り囲むように森は形作られていた。
 道路脇の民家や塀に沿うように樹木は広がっていて、道路の部分には数本の枝が横断している。

「ここいらは、森が深いな」

「そうですね……何も見えない」

 ガサライオがぼそりと呟く。
 周りを見渡して、魔法バズーカを肩から両手に構え直す。
 その声に応えた日下は身を縮めて上空を仰ぐ。

「日下くん。風待くんから離れないでね?」

「はい」

 ドギー巡査の言葉に頷いて、日下は俺のそばに近寄る。
 武器だったトンボを捨てたから、俺も手ぶらだ。
 もう折れる一歩手前だったからな。

 ドギー巡査は腰のホルスターから拳銃を取り出し、砲身を上向きにして構える。

「ここから先は視界も悪いから、用心してね?何か動いたらライオットくんか私に伝える事。私の銃は殺傷能力のない魔法式拳銃だから大した威力はないけれど、牽制にはなるから」

 警察に正式採用された魔法式拳銃。
 前に補導された警官に一度聞いた事があったな。
 魔族との交流によって導入されたこの銃は、鉄の弾丸の代わりに圧縮した風の塊を打ち出す物だ。
 点の威力ではなく面の威力。打ち出される風の弾は使用者の意思をある程度反映してその大きさや威力を変える。
 込められらた魔法はとてもシンプルな物らしく、量産が可能でメンテナンスも簡単と言う優れものらしい。
 犯人の死亡を絶対に避けたい日本の警察には御誂(おあつら)え向きだから、ほとんど時間をかけずに採用決定されたそうだ。
 なんか長ったらしい正式名があったけど、覚えていない。

「ここから公民館まで、だいたい1キロ弱か」

「まっすぐならね。牙岩の魔石はあんまり細い道だと道だと認識してないみたい。塞がってるのもあるわ」

 あんまり高性能じゃないみたいだな魔石。

「ウチの兄貴達の今日のスケジュールはここいらの巡回だ。大規模調査と別に龍の探索をするのが俺たちの仕事だったからな。さっきまでは連絡がつかなかったが、もう少ししたらもう一度電話してみるか」

 なんて迷惑な仕事だ。

「お前の兄貴って、あのナマケモノ族か」

 一度しか見てないからあんまり覚えていないけど、なんか頼りにするにはノロすぎる気がするんだが。
 灰色のでかいナマケモノが、ゆっくり喋っていたのを思い出す。

「ああ、兄貴を見た目で判断するなよ?日本で十人もいない『龍殺し(ドラゴンスレイヤー)』の一人だ。正真正銘の一流ハンターだぜ?」

「龍を、殺した事があるのか?」

 思わず身構えてしまった。
 アオイの龍の姿ですら、巨大で強大だ。アレに勝てるなんてバケモノかこいつの兄貴は。
 それに字面が良くない。
 俺はもうかなり龍サイドの人間だ。
 空龍以外の龍種には会った事ないけれど、気分的には身内。
 殺されると、困る。

「バカかお前。龍なんて滅多に現れないし、殺せるわけないだろ。過去に殺したとか嘯いた奴らは大抵ペテン師か目立ちたがりだよ。『龍殺し(ドラゴンスレイヤー)』ってのは、トレジャーハンター達の中で使われる称号だ。龍ですら殺してしまうんじゃないかってぐらい強いハンターに送られる、一種の名誉だ。物凄い昔、それこそ獣人戦争とかの時には本当に龍を殺してしまった奴もいたらしいけど、眉唾物だぜ。実際に龍を見た俺だからわかる。ありゃ生命の頂点だ。勝てるわけねぇ。まぁお前は馬鹿そうだからわかんねぇと思うがな」

「泣いてたもんなお前」

 必死だったもの。

「本当にぶっとばすぞ悪人面!」

「事実だろうが毛玉!」

 胸ぐらを掴まれたから、掴み直した。とことん俺と相性が悪いなこの野郎。

「やめなさい!」

 ドギー巡査が間に割って入ってきた。
 こめかみをヒクヒクさせて、口元が引きつっている。

「もう!風待くんは普段そんなに喧嘩っ早くないでしょ!?ライオットくんも拘留中やさっきまでは素直で大人しかったじゃない!」

 金色のフサフサの尻尾を逆立てて、ドギー巡査はプリプリと怒り出した。

「だってこの野郎ムカつくんです!」

「このヤンキーが喧嘩売ってくるんだよ!」

 銃の砲身で額をコツコツと叩きながら、ドギー巡査はため息を吐く。

「……貴方達、どことなく似てるタイプね。お願いだから喧嘩しないで頂戴。そうでなくても、お互いデリケートな時期なんだから」

 まさか!
 俺とこいつは似てなんかいない!

「デリケート?俺は分かるがこのヤンキーは何だよ?観察処分でも食らったか?」

「うっせえな。お前には関係ないだろ」

「図星かブフーッ!」

 ムカつく。
 確かにこいつは先月に拘置所から出てきたばかりだから、今もドギー巡査の監視の元でしかこの町を歩けない。
 俺の場合は、やっぱり双子達やアオイの事だ。
 立場が違うし理由も違うが、言い返せないのが本当にムカつく。

「ん?」

 また三隈からの着信だ。
 胸ポケットのスマートホンを取り出し、画面をタップして耳に当てる。

「も、もしもし?」

 ビビりながら電話に出た。
 酷い事されたくない。
 この速度で電話を取れば三隈だって許してくれる筈だ。

『薫平くん!早く逃げて!』

「は?」

 焦った声は間違いなく三隈夕乃だ。

『早く避難所か近くのトレジャーハンターの所に逃げて!』

「ど、どうしたんだよ三隈。落ちついてくれ」

 急に逃げろと言われても。

『二丁目の避難所の情報をネットで調べてたら!出たの!』

「何がだよ」

 あまりの声量に、スマホ上部のスピーカー越しでも日下やドギー巡査に聞こえていた。
 ガサライオも一緒に、俺のスマホに聞き耳を立てている。

『二丁目の近くで怪鳥ルテンの目撃情報が続出してるの!早く逃げて!』

「ゲェッ!」

 ガサライオが、とんでもない声を出した。

「んなアホな!アイツは牙岩の最上階から出られないはずだ!」

「怪鳥ルテン?なんかどっかで……」

 聞き覚えのある名前だ。
 確かあれは……。

 思い出すのは、真っ赤な光を放つ両目。
 岩の体をギチギチに通路にはめて、情けない声を出していた……。

「……あぁ!?あの岩のグリフォンか!?」

 上半身が岩で構成された、下半身フサフサの牙岩のボスモンスター!
 アイツか!

『つぶやきとか画像とかがいっぱい上がってきてる!何かを探すように飛び回ってるらしいの!お願いだから早く逃げて!』

「キシャア!クォオオオオオオオオオオオオオ!!」

 上空から聞こえてきた伸びの良い怪音に俺たちが身構えたのは、その時だった。
2018/01/16
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