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帰宅途中で嫁と娘ができたんだけど、ドラゴンだった。 作者:不確定 ワオン
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君が居れば(エピソードEP)

文章が途切れてたので再アップしました!
なろうシステムで復元もできない不思議……元データはちゃんとしてたのになんで?
更新日調整のため、一日早く更新しています。申し訳御座いません。
 
 危なかった。
 もう少しで泣くところだったぜ。
 ふう。歳を取ると涙腺が弱くなるってな本当なんだな。
 愛車である馴染みのワゴンを運転している俺の横、大口を開けてアホ面で寝ている我が長男を見る。

【母さんが居なくなってからこっち! 親父が頑張ってんの! ちゃんと知ってるし! そ、そのっ! カッコいいって、お、おおお思ってるからっ!】

 ありゃ卑怯だ。なんつー事言いやがる。
 薫平が恥ずかしがってこっち見なかったから助かった。
 目を見て言われてたら耐えきれなかっただろう。

【だ、だから! ちゃんと『父ちゃんの背中』っ! しっかり見てんだよ! 俺も翔平も!】

 背中、か。
 意外に、見られてたんだな。俺は。
 薫が行ってしまってから今日まで、色んな事に振り回されて充分に息子達を甘やかす事ができていなかった。
 翔平はまだ小さかったから、甘えたい盛りだったはずだし、長男である薫平は必要以上に背負いすぎて空回りをしていた。
 仕事が立て込んで夜遅くに帰宅し、既に布団に潜り込んで寝息を立てている息子達を見て、何度落ち込んだかもう数えきれていないぐらいだ。
 不甲斐ないと。
しっかりしろと。
 自分を叱咤激励し、その裏で自分に幻滅していく日々だった。
 薫にできていて、俺にできない事が多すぎる。
 だけど俺にできて、薫にできそうにない事はあんまり思いつかないんだ。
 掃除をやらせたら詰めが甘いし、料理を作らせたら焦がしてしまう。
 洗濯は皺が残るし、ご近所付き合いだって苦手だ。
 俺にできるのはがむしゃらに働いて、少しでも息子達に美味い飯を食わせて、帰る場所である暖かい家を守る事。
 それだけだと思っていた。

 薫平とアトル王子の決闘を終えて、なんだか無性に体を動かしたくなって、セイジツ君に少しスパーリングを付き合ってもらった。
 ああ、やっぱり歳は取りたくないもんだ。
 昔なら三十分ぐらいのスパーなら余裕で動けた筈なのに、最初の十分程度でセイジツ君に付いていけなくなっちまってたなんてな。
 リングの上っていうのも久しぶりだった。
 セイジツ君に一発当てれただけでも、良しとするか。こっちは数発良いの貰っちまったがな。
 でも懐かしい感覚だったな。
 あの頃は、そうか。ちょうど薫平達と同じ歳ぐらいだったか。
 野良の賭け試合の闘士をやってた頃は、勝たなきゃ明日の命が無かったから必死だった。
 俺は薫に会うまで、家族というものを知らなかった。
 物心ついた時には新宿のドヤ街にある孤児院にいて、同じ境遇の奴らと日々の糧を得るために、今じゃ法に触れるような事も平気でしていた。
 あの頃は世界衝突のせいで俺達みたいな孤児は腐るほどいたし、比較的影響が少なかったこの日本でも大分酷い有様だったからな。
 最初から親を知らない俺達なんてまだ良い方だ。
 獣人の子供達なんかは、親が金に困って捨てられたみたいなもんだ。
 孤児院の経営が立ちいかなくなって、少しでも助けになれればと腕っ節に自信のあった数人と一緒に、野良の賭け試合の胴元に自分を売りに出した。まぁ言うなればヤクザとかマフィアとかいう連中だ。ロクなもんじゃない。
 今じゃ国が動いてそこそこ綺麗になったが、あそこは色んなゲス野郎達の欲望の坩堝るつぼだ。
 非力な人間族を相手にした、何倍もの体格と身体能力を持った獣人との賭け試合。それが当時のドヤ街では大人気で、選手生命どころか寿命が短い傾向にある俺達闘士は、上手く生き残れば一攫千金も夢じゃなかった。
 まぁ俺達の契約はほとんど奴隷契約みたいなもんで、今じゃ生き残ってるのも俺だけだけどな。
 そんな俺の溜め込んだ金も、俺自身の解放と薫の件での散財で一銭も残らなかったが、後悔した事は無い。
 そのおかげで、俺は薫と生きてこれたから。

 ちらりと横目でバックミラーから後部座席を見る。
 なにやら楽しそうにおしゃべりをしている、アオイちゃんと夕乃ちゃん。
 はー、最近の子は可愛らしい事。
 よだれを垂らしてだらしなく眠っているこのアホには勿体ねぇな。
 なんて思っても、実は誇らしかったりする。
 こいつの長所である、実直で誠実な面を評価してくれている貴重な二人だ。
 不器用で、頑なで、昔の俺にそっくりなこの長男を、見てくれじゃなくて内面で認めてくれて、そして惚れてくれている。
 一度に二人にも言い寄られて大変だろうし、どっちも素直で気立ての良い子達だから、薫平はこの先とんでもなく苦悩するだろう。
 悩め悩め。お前が決めた道ならば、俺は全力でフォローするさ。
 俺の役目だし、薫との約束だしな。

 もうすぐ我が家に到着する。
 留守番してくれているのは、初孫である双子達と翔平、そしてルージュちゃん。いちかちゃんと浩二くんもいるな。
 男だけで寂しかった我が家も、いつのまにか賑やかになったもんだ。
 毎日が楽しくてしょうがない。
 ジャジャもナナもとんでもなく愛らしいし、目に入れても痛くないってなああいう子達の事を言うんだ。
 俺の部屋のノートPCに保存してある孫フォルダも、ずいぶんなデータ量になってしまったな。外付けの外部保存機器、何か安い奴ないだろうか。明日会社の若い部下に聞いてみよう。
 今じゃすっかり会社でも孫馬鹿扱いだからな。それが全然苦じゃないってのも、我ながら凄い変化だと思う。

「おい、薫平起きろ。そろそろ着くぞ」
「んぁ、あー……んが」

 寝ぼけてんじゃねぇよ。
 今日はそこそこカッコいい仕事したんだから、最後までビシっとしろよなもう。

「薫平さん、起きてください。ジャジャとナナが待ってますよ」
「翔平くんのお説教も待ってるよ」
「しょ、翔平! 違うんだ兄ちゃんだって頑張ってだな!」

 アオイちゃんが薫平を揺らし、夕乃ちゃんが恐ろしい現実を突きつけた。
 その波状攻撃で一気に覚醒した薫平は体を硬直させて言い訳を口走る。
 はあ、本当に締まらねぇヤツだこと。いつまで弟の尻に敷かれてるつもりなんだお前は。
 とはいえ俺も翔平の正論には永遠に勝てそうにないから、人の事言えなかったりする。
 年々薫に似てきている末っ子様は一度怒ると手がつけられないもんな。

「よしっと。ほら、着いたぞ」
「おう、サンキュ」
「荷物、私が持ちますねお義父とう様」

 バックドアを開けたアオイちゃんが、ほとんどの荷物を持って行ってしまった。

「じゃあ、私は薫平くんのバッグを」
「あ、ああ良いって三隈。そんぐらい俺持てるから」
「ダメですー。実はもうヘトヘトで足元がおぼついてないの、お見通しなんだから」

 ガヤガヤと騒がしくじゃれあいながら、薫平と夕乃ちゃんは玄関に向かう。
 少しズレ落ちたメガネを左手の人差し指の関節で押し上げて、我が家を眺める。
 ウチの駐車場は道路を挟んだ対面にあって、ここからなら家の全景が見渡せる。
 多少古臭いデザインだが、耐久性や快適性は申し分ない。
 薫が昔、楽しそうに読んでいたハウジング雑誌にこんな家が載っていた。
 こっそり付箋までして眺めていたのは知っていたから、多少金は掛かったがリフォームまでして手に入れたものだ。
 その分ローンは二世代。薫平の代まで残っちまったがな。

『あの町にね。女の子が居たの。青い髪がよく似合う、空龍の女の子。とっても寂しそうに、一人で森に佇んでいたんだ』

 ああ、見つけたよ。
 お前が最後まで気にかけていた、あの女の子を。
 今じゃ薫平の嫁だってよ。
 世の中何がどう転がるか分かんねぇもんだな。

『お腹に赤ちゃんがいるって言ったら、とても驚いてた。触らせてあげたら、この子とっても喜んでいたから、もしかしたら男の子かも知れないね』

 その男の子が、その女の子と孫までこさえてんだぜ? お前でも想像してなかったろ。

『この子が生まれたらお友達になってねって言ったら、困った様に笑ってたの。晃平くんも起きてたら連れてったんだけどなぁ。本当に可愛い女の子だったよ?』

 ああ、初めて見た時から、すぐにわかったよ。
 お前が言ってた女の子。相変わらず寂しそうだったけど。

『あの町、良いと思わない? お金貯まって、余裕ができたら引っ越すとかどうかな? あ、そうか。晃平くんのお仕事の都合もあるもんね。そう簡単に行かないか』

 何をおっしゃる薫さん。
 お前が望むなら、俺はなんだってしてやるって、あの新宿の夜空の下で誓っただろうに。

「親父! 親父ちょっと来いって! 早く早く!」

 薫平の大声で我にかえり、何事かと玄関に走る。

「なんだなんだ」

 玄関で急いで靴を脱ぎ、リビングへと急ぐ。

「良いから! 写真撮れって! 早く!」

 写真? なんの話だ?
 リビングには全員揃っていて、双子達を遊ばせる為に設置してあるベビーマットの周りで天井を見上げていた。
 俺も同じ様に、天井を見上げてみる。

「あは、あはははははっ!」

 思わず笑いがこみ上げてきた。

「父さんおかえり。これ、ジャジャ凄くない?」
「ジャジャちゃん、もうちょっと頑張ってね!」
「にぃー!」

 翔平が天井を指差して、いちかちゃんと浩二くんがジャジャに声援を送る。

「ああ、ただいま。凄いな。なんでああなったんだ?」
「父、おかえり。今日のお昼ぐらいにジャジャとナナを飛んで遊ばせてたら、ナナがジャジャに甘えてきて、ナナがあれ気に入ったみたい。さっきそのまま寝ちゃった」

 ベービーマットに座りながらタオルを構えるルージュちゃんが説明してくれた。
 なるほど。
 だからジャジャは降りるに降りれなくなってあの状態になっちゃったのか。

「んー、あだぁー」
「すぴー」

 賑やかなリビングの天井で、風待家のお姫様二人がふわふわと浮いている。
 ジャジャは顔を強張らせて、ナナはそんなジャジャの背中におぶさって。
 仲良く二人でくっついて、可愛らしい俺の孫娘達はみんなの笑顔の中心に居た。

「うにゅううううう!」
「すぴー」

 マイペースな妹はその背中に頬をぴったりとつけてスヤスヤと寝息を立てていて、お姉ちゃんはそれを文句ひとつ言わずに頑張って支えている。
 ああ、やばい。超可愛い。

「親父早く写真撮ってくれ写真! もしかしなくてもそろそろジャジャが限界っぽい!」
「ああ、可愛いのに! 可愛いのにとってもジャジャが可哀想で私もうどうしたら!」

 若夫婦は嬉しいのか心配なのか、双子達の真下でオロオロと狼狽えていた。

「慌てすぎだろお前ら。別に俺じゃなくても写真なんか誰だって撮れるんだからさ」

 そう言いつつもポケットからスマートフォンを素早く取り出して、素早くカメラを起動する。
 ふふふ、最近はこの動作も板についてきただろ?

「いや、カメラマンは親父の役割だろ?」
「ああ、ジャジャ! もうちょっと頑張ってね!? じーじがお写真撮るまで!」

 あ、そうなの?
 いつのまにそんな役割になったんだろう。まぁ良いか。不満は無いし。
 そう言われてる間も俺のスマートフォンは連写機能を遺憾なく発揮し、ベストショットを求めてアングルや構図に拘りつつ、双子達の姿をファインダーに納めていく。
 んー、やっぱり少し無理して良いカメラ買おうかな。
 写真については不勉強だから宝の持ち腐れかも知れんが、もしかしたら今のスマートフォンより綺麗にジャジャとナナを撮れるかも知れないし。

「うににににっ、ぷあっ」

 ついに限界が来たのか、吊られた糸が切れた様にジャジャが落ちて来た。

「はいっ、よくできましたぁ」
「おう、ナナは俺が抱っこするよ」

 大きな翼を現して浮き上がってスタンバイしていたアオイちゃんがすかさず双子達を受け止め、床に降りると薫平がナナを貰い受けた。

「どんぐらい飛んでいたの?」
「んーナナちゃんが眠ったのはつい十分ぐらい前だよ?」

 薫平とアオイちゃんの抱える双子を覗き込もうと、夕乃ちゃんといちかちゃんが駆けよる。
 へぇ、もう十分も飛べる様になったのか。
 日々日々成長してるんだな。
 人間の子の成長の仕方とは違うけれど、毎日毎日驚かされるばかりだ。
 この感覚、懐かしいな。
 薫平が生まれた時は俺も薫も育児初心者だったから毎日てんやわんやだったし、翔平の場合は生まれつき体が弱い子だったから目が離せなかった。
 あれから数年経っても、子供を育てるって事に飽きは来ない。
 ただまぁ、今が一番可愛い盛りだからこいつらも平気そうにしているが、歩いたり走ったりできる様になったら一気に大変になるんだ。
 ひひ、その時になったら俺に助けを求めて泣きついて来るんだろうなぁ。

「親父?」
「父さん?」

 息子二人が俺の顔を覗き込んでくる。
 ん? なんだ?

「どうしたの? お腹すいた?」
「疲れたんならさっさと寝ろよ? もう良い歳なんだから」

 失礼な、確かにセイジツ君には敵わなかったが、同年代の奴らに比べれば全然動けるおっさんなんだぜ? 俺は。

「なんで、そんな辛そうな顔してんだよ。 腹でも痛いのか?」

 辛そう?
 ああ、違う違う。
 今日はちょっと薫を思い出す事が多くてな。
 だから、少し寂しがってるだけだ。

 アイツが、なんでここに居ないのかって、そんなどうにもならない憤りを感じてるだけだ。

「だぁ!」
「お?」

 アオイちゃんの胸の中でケラケラと笑うジャジャが、俺に向かって手を広げた。

「じーじのところ、行くの?」
「あぃ」

 ほう、珍しいな。いつもなら薫平にべったりなのに。
 だが大歓迎だ! 

「ほうら! こっちゃ来ーい!」
「きゃーい!」

 大げさに両手を広げると、満面の笑みで返事を返してくれた。

「はい、お義父とう様。お願いしますね? 多分もうすぐ眠っちゃうと思います」
「ん。任せとけ」

 アオイちゃんからジャジャを受け取り、顔を付き合わす。

「うだぁ」
「おーそうか。大変だったな。さすがお姉ちゃん」

 推測で話を合わせる。
 ジャジャが何を伝えたいのか正直わからないけれど、赤ん坊は結構大人の話を聞いているもんだ。
 薫平も翔平もそうだった。
 周りの大人が楽しそうならとっても楽しい。
 周りの大人が悲しそうならとっても辛い。

 子供は親の鏡だ。
 それどころかみんなの鏡でもある。
 だから、家族はいつだって仲良くいたい。
 この子達が寂しそうに泣く姿なんて、想像ですら拝みたくもない。

『いつも、仲良くしてね? 私が居なくなっても、ずっと』

 ああ、分かってる。
 いろんな約束は未だ守りきれてないけれど、その約束だけはずっと守って来たんだ。

『家族は、いつも一緒が一番だよ』

 うん。
 俺だって、この賑やかで落ち着きのないこいつらが大好きだ。
 でもやっぱり、お前が恋しいよ。
 薫。

『愛してるよ。晃平くん』

 そんなの、俺の方が愛してるに決まってる。
 ああ、会いたいよ薫。

姿形すがたかたちが変わっても、私は晃平くんの奥さんで、薫平と翔平のお母さんだから』

 そうだ。
 泣き言なんて言ってられない。




 お前は今も、孤独に耐えて頑張ってるんだもんな。




 
2018/01/16
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