挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
帰宅途中で嫁と娘ができたんだけど、ドラゴンだった。 作者:不確定 ワオン
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

103/166

彼女はまるで、静かに燃える真っ赤な炎③

 俺達の頭上、夕時の空で炎が踊る。
 その炎に包まれた怪鳥ルテンは、今じゃ二分割されて地面へと落下していく。
 重い音が2回響いて、ルテンだったものは静かに燃えながら地面に転がった。

「ん。これで静か」

 何かに納得したように頷いたルージュ。
 ついでゆっくりと右手を横に振ると、周囲に広がっていた炎の壁が一瞬で消えた。

「あ……」

「お、おう」

 姿を現したガサライオと目が合う。
 お互い何が起きたか分からずに、目を白黒させる。

 わかる。
 俺だって全然ついていけてない。

「薫平は体。大丈夫?」

「お、俺?」

 ルージュがその細い腕を伸ばして来た。
 反射的にその手を掴み、引き起こされる。
 そして。

「どこに行けば良いか、教えて」

「待て、待て待て待て!」

 お姫様抱っこされてしまった。
 人生初体験。
 こんな大事に扱われた事なんか今まで無い!

「降ろして!大丈夫だから!」

「ん。ダメ。見るからにボロボロ。怪我人は大人しくしてる」

 有無は聞かない。
 毅然とした態度でルージュは俺の体を横抱きにしたまま周囲を見渡す。
 その光景をポカンと見ていたガサライオに気づいた。

「獅子族のモフモフさん。薫平のお友達?」

「え、俺?」

「そう、モフモフ」

 風に揺れるガサライオのたてがみを指差して、ルージュが首をかしげた。
 指されたガサライオはますます混乱し、同じく首をかしげる。

「ちょ、待ってくれ!あんた誰だよ!ルテンはどうした!なんで急に、真っ二つに!?」

 当然の疑問を喚きながら、ガサライオはオロオロと近寄ってくる。
 その気持ち、よくわかる。

「あの可愛く無い鳥?なら私が片付けた。あの程度なら簡単」

 事もなさげにコクンと頷いたルージュ。
 俺たち、大分苦戦してたんだけどなぁ。

「うそぉ……」

 ガサラは口をあんぐりと開けて地上に落下したルテンの残骸を見る。
 メラメラと燃えるその姿に、俺達を苦しめていたあの化け鳥の面影はもう無い。

『薫平くん!聞こえる!?薫平くん!』

 胸ポケットのスマートフォンから、三隈の必死な叫びが聞こえた。
 慌ててスマートフォンを取り出す。

「お、おう。聞こえる」

『無事!?平気!?怪我は!?ルテンは!?』

 外部スピーカーから矢継ぎ早に質問をされ、返答に少し困った。

「えっと、無事だ。怪我は、まぁ、少し。ルテンはもう大丈夫だ、と思う」

 本当は怪我を隠そうとしたのが、今の俺の姿を見て怪我を隠すのは無理だろう。次に会う時にどうせバレる。
 背中の傷から流れた血が、学ランの内側のシャツを正面まで真っ赤に染めている。
 あんまり心配かけるのもアレだから、大した怪我じゃ無い事にしとこう。

『少し、ってことは大怪我してるんだよね!?そこの公民館に救急隊の人達もいる筈だから!早く!』

 うわぉ、お見通しじゃん。
 賢い三隈に隠し事なんて元々無理だった。

「ん。わかった。こうみんかん、って所で良いのね?すぐ連れて行く」

「ルージュ!?」

 なんて返そうか迷っていたら、ルージュが勝手に返事を返した。
 相変わらずの無表情で、あまりにも自然だった。

『……え?誰?』

 そりゃそうだ。

「えっと、三隈、ほらあの、鼠が迎えに行ってたあの」

 慌てて説明をする。隣にいるガサライオに感づかれないようにアバウトだが、賢い三隈ならこれでわかる筈だ。

『あぁあの。なら、強い人なのかな?』

 さすが三隈さん。話が早いぜ!

「ん。任せて。私はルージュリヒテー。結構強い」

 そのフレーズ、気に入ってんの?
 スマートフォンに向かって、静かなドヤ顔をするルージュ。

「ん?」

 スマートフォンの画面に、充電残量が残り少ない事を示すウインドウがポップした。

「あ、すまん三隈。もう充電切れそうだ。一度切っていいか?」

『あ、うん。ルージュリヒテーさんが居るなら、大丈夫なのかな?一度治療を受けて、余裕があったらもう一度電話してね?心配だから』

 本当に、心配ばかりさせて申し訳ない。
 アオイや双子達、そして翔平とユリーさんともまだ連絡が付いていない。スマートフォンの充電もしなきゃなぁ。

「三隈、さん?」

『はい?』

 ルージュがスマートフォンの向こうの三隈に話しかけた。

「聞いた感じだと、貴女も色々知ってるみたい。なら、これからも何かと会う機会があると思う。ルージュでいい。仲良くしてね?」

『は、はい。じゃあ、私も夕乃でいいです。三隈夕乃。よろしくお願いします』

「ん。畏まったの、いらない」

「え、う、うん。わかった。よろしくねルージュさん」

「ん」

 どうやら納得したらしいルージュは短く頷いて、俺へと視線を移した。

「私、あんまり他の種族とお話しした事ない。大丈夫だった?」

「お、おう。むしろ俺より上手いぐらいだ。凄いな」

「そう。褒められた。嬉しい」

 一度鼻息を荒くしたルージュは、顔を少し赤らめて何度も頷く。
 顔は変わらず無表情だけど、もしかして感情豊かな奴なのか?

 それにしても、俺を筆頭に風待家関連の奴らは人付き合いが苦手すぎるだろ。
 アオイはまだ俺たち以外の人間や獣人と会うと身構えるし、三隈は異性と喋るのを苦手として居る。
 なんだ。類は友を呼ぶか?

「じゃあ、三隈。後で連絡する」

『うん。アオイちゃん達、早く探してあげてね?またね?』

「ああ、またな」

 返事が終わると、通話終了画面をタップした。

「これが、デンワ。話で聞いたことも、耳に当ててる人間も見たことあるけど、実際に遠くの人間とお話ししたの初めて。嬉しい」

「はは、そうか」

 感慨深そうにスマートフォンをみるルージュに苦笑しながら、ホームボタンを押した。

「ん?」

 あれ?
 メールアイコンに、通知を知らせる数字が。
 14件?なんでこんな。

 あ、そうか。通話中は振動でメールの着信を知らせてるから、激しく走り回ってた俺が気づけなかったのか。

「薫平。こうみんかんって、どこ?」

「ん?あぁ、この道真っ直ぐ……ってルージュ!このまま行く気か!?歩けるから!降ろしてくれ!」

「駄目」

 バタバタともがく俺を意に介さず、ルージュは俺を肩に担いだ。

「これで背中、痛くない?」

「グゥっ……大丈夫だ。痛くない」

 さっきまでのお姫様抱っこよりかは、マシか。

「自覚してないみたいだが、すげえ怪我だぞお前」

 いつのまにか地面に落ちていた魔法具の盾を懐に回収していたガサラ。

「え?マジで?」

「マジで」

 あれ?確かに痛いけど、血が多いだけで傷自体はそんなでも無いと思ってたんだが。

「……翔平に怒られる」

「ハハっ、なんで怒られる事を心配してんだよお前」

 呆れた声でガサラが笑った。
 お前は知らんから笑えるんだ。
 我が弟が怒ったら凄いんだからな!

「じゃあ、行こう」

「あ、あぁ頼む」

 大の男を一人担いで居るのに、ルージュは余裕たっぷりで歩き出した。
 なんか、この構図、凹むなぁ。
 気落ちしながら、慣れない手つきでスマートフォンを操作する。
 最初の一件は親父からか。



【今学校か?翔平とようやく連絡が取れた。お前にも電話しようとしたんだが、回線が混み合ってるらしく繋がらん。
 薬局のおじいさん知ってるだろ?あの人消防団の人らしくてな。その指示で翔平とアオイちゃん、双子とユリーさんは公民館に避難して居るらしい。
 翔平がこの混乱で電話を紛失したらしいから、お前の番号が分からずに困っていたらしい。父さんの番号は自治会に登録していたから、公民館で探せたようだ。
 翔平にはお前から連絡させると言っといたから、以下の番号に電話してくれ。
 俺は急いで帰ってる最中だが、規制線が張られてる上に渋滞に巻き込まれて車を捨てて走って居る最中だ。
 だからお前を頼りにする。迎えに行けるなら迎えに行って欲しい】



 うわ、マジか。早く読んどけば良かった。下の方に公民館の電話番号へのリンクが書かれている。
 三隈と電話が繋がったのは偶々だったのか。
 でもこれでアオイ達の居場所が分かった。今から向かう公民館に全員いるのか。
 なら、すぐ会えるな。


 ルージュの肩の上でホッと胸を撫で下ろし、首を少し曲げてルテンの残骸を見る。
 未だ燃えている、二つに分かれたかつての強敵。
 アスファルトのど真ん中だから、燃え広がることもないだろう。

「ん?」

「どうかしたか?」

 俺の声に、ルージュの後ろを歩くガサラが反応した。

「いや、多分、見間違い」

 そうだよな。
 あんな状態なのに、動くわけ、ないもんな。
2018/01/16
新作を開始しました!
よろしければこちらもどうぞ!

天騎士カイリは流星の如く
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ