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この小説は、ノンフィクションです。
いとしのMr.HDD
作:志内 炎


 どうして?
 私、あんたのこと、ちゃんと扱ってきたはず。
 娘の次に愛してるわ。どんなにこんだ電車の中だって、どんなにきつい坂道だって、気を使うことを忘れなかった。誰ともぶつからせなかったし、もちろん車道側を行かせたりしなかったじゃない。雨の日だって、私はぬれていたって、あんたをぬらすことなんてしなかったはず。
 なのにどうして?
 そりゃ、あんたとの日々を克明に刻んでこなかった私が悪いって言われたら、それまでかもしれない。でも……今日のその態度は、裏切りじゃない?
 あのオトコ?どのオトコかも想像つかないけど。つまらないこといわないで。浮気なんかしたことないわ。そりゃ、ちょっと別の場所で
「軽くいれてって」
ってお願いされたら、むげにしたことはないけど。それとこれとは別じゃない?あんただって……ねぇ、わかってるでしょ?
 ねぇ、そんな不機嫌な声ださないで。まるで、お腹のそこでぎりぎりいうような。私たちの付き合いって、ほら、もっとドライで、だけどもっとかけがえのないものじゃない?
 覚えてるわ。あんたと出会った時のこと。私、とても迷っていた。調度雨が降っていたの。
 私は、くじかなんかで、ちょっと小金を持ってて、いろんなこと、迷っていたときだったの。だから、あんたとの出会いも、本当はすごく戸惑った。だって、見た目とか、多分中身とかも、もっといいやつがいたのかもしれない。どっちかっていうと、あんたにあったのは『お買い得』感で、正直、こんなに長い付き合いになるとは思わなかった。
 ……そうね。そう。私が甘えていたんだわ。わかってる。あなたの優しさに甘えて、私が怠ってきた。それは、本当にごめんなさい。だからお願いよ。機嫌をなおして。
 本当にあなたがすべてじゃない?私って。ここ何年か、それこそ、私の三十代の人生って、あなたがすべてじゃない?そうよ。つらいことも、苦しいことも、楽しいことも、うれしいことも、すべてあなたがそばにいた。私のすべてを知ってるのは、あなただけじゃない。そんなふうにされたら私、どうすればいいか、わからないの。今度からは、ちゃんと、覚えておくようにする。私の気がついていない悪いところがあるなら言って。もっとちゃんと、まっすぐに見ろとか、毎日愛してるっていえとか、なんでもする、なんでもするわ。ちゃんと覚えておくようにするから。
 ううん、私はあなたみたいにおぼえておくことはできないから、ちゃんとこまめに、バックアップとるようにするから……データ用のディスクに音楽書き込ませたりしないから、今日のところは何とか……














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