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腕の先にあるフラングランを振り回す。リルフィンから引き抜いたそれには会長が何かのコードを仕込んでた訳だけど、風を介して触れることで僕へと会長の仕掛けが流入してくることはなくなってる。僕はリルフィンからそれを引き抜くと同時に、後方に投げた。
もちろんその先には会長がいる。まさかいきなり狙ってくることはおもってないかも知れないという希望というか、願望だ。引き抜いた勢いそのままに後方を確認もせずに投げるなんて……普通は思わないじゃん。そもそもそんな当てずっぽう……とってなる。けど、フラングランはまっすぐに会長に迫ってた。流石の僕のこの目でも、背後は見えない。 視界に治められる範囲なら大抵見えるけど、流石に見えない所まで見える程に高性能じゃない。じゃあなんで寸分違わずに僕の攻撃が会長へと寸分違わずに向かってるのかというと……
『カバーが来ます』
「なに!?」
風が教えてくれるおかげで、僕は攻撃をしてきたテア・レス・テレスの奴の攻撃を避ける事が出来た。なにせ投げたといっても、風では繋がってる。それなら軌道を変える事くらいできる。テア・レス・テレスの横やりを回避して会長に突き刺さるフラングラン。
でも手応えがない。僕は直ぐに振り抜いて確認する。すると目の前に会長がいた。
「つっ!?」
「来るとは思わなかった?」
その通り。まさか自分から近付いてくるとは……まあちょっとだけ想像はしてた。会長は基本自分から戦いに出る奴じゃない。そもそも戦闘に向いてるスキルとは思えないからだ。確かに大量の紙に祝福をストックしてる今なら別だけど、ストックしてない……それに状況によっては臨機応変に書き加えたりするとなると、自分から前に出るのは良策じゃない。
会長の事だからめっちゃ早く書けるんだろうけど、それでも書くと切るでは切る方が単純明快に早いだろう。会長は右手にペンを持ち左手には紙を持ってる。今から書くわけはないし、アレを押しつけてくる気だろう。なら、その腕事切り裂く。幸いにももう片方のフラングランはある――とか思ってた。
『調子に乗るな!』
大きな前足が上から降ってきた。リルフィンだ。こいつからフラングランを抜いたんだから、確かに手が……いや脚が届く位置にいるか。会長の奴はリルフィンの前脚に押さえ込まれてる。避ける……とかしなかったのか? 予想外だった? いや、そんな筈はないだろう。だって会長からは諸にリルフィンの事は見えてた筈だ。リルフィンの奴も相当早く動けるから反応できなかった……って線もなくはない。いや――
「お前!!」
僕は素早くフラングランを振り払う。もちろん足下の会長に向かってだ。なにせなんか持ってた紙をリルフィンに貼ってた。もしかしたら、最初から狙いはリルフィンだったのかも……僕が動いたと同時にリルフィンの奴も力を込めて、会長を踏み砕こうとした。でも僕の攻撃もリルフィンの脚も肩透かしで終わった。何故なら、会長の奴、地面を透過しやがったからだ。確かに透明な足場で地面とかじゃないけどさ……それってありか? ――と思った。