1282
「つっ……」
会長が顔をしかめる。フラングランはなんか知らんが会長の手に収まってる。けどリルフィンの奴の牙が会長を捉えた。リルフィンはいつもの人間形態じゃなく、召喚獣として呼び出されたから、白い巨大なオオカミの形態をとってる。そしてその口で会長の左腕を食って、その体を振り回してる。このままでは会長の腕がちぎれるんじゃないか?
グロ映像だが、血が出ない分まだましだろう。僕も腕がちぎれるとか色々と経験してるし、その程度ではプレイヤーが止まらないってのもしってる。いや、聞いた話そうなると幾らゲームとわかってても、動転してしまうプレイヤーは沢山居るらしい。
そして過剰なまでに脳波が乱れてると、リーフィアの安全装置が起動して、強制ログアウトをとる。でも会長はそんな事には成らないって思う。てか、でかいオオカミに腕をまるごとかじられてるのに、悲鳴一つあげないしね。
するとリルフィンの奴の口がボコボコといくつも盛り上がる。どうやら口内で何かが起きてるようだ。それでもリルフィンは意地張って加えた会長を振り回ししまいには地面にたたきつけようとする。でもたたきつける前に限界が来たのか口を開けた。すると中から巨大な岩がゴロゴロと出てきた。なんて酷いことをしやがる奴だと思った。
そして解放された会長はフラングランを使ってリルフィンの下顎を床に縫い止める。そしてさらにペンを向ける。僕はそれに介入して二人の距離を離す。
「大丈夫か?」
『さっさとそれを抜け』
頭に直接リルフィンの声が響く。下顎をフラングランで固定されたのはかなりの屈辱だったらしい。僕は頷いて直ぐにフラングランに手を伸ばして……そして止めた。
『どうした、早くしろ!』
「コードが仕込まれてる」
あの野郎どんだけ準備が良いんだよ。どれだけの状況を想定してるのか……僕は会長に目を向ける。すると会長はアイテム使って減ったHPを回復させてた。そして召喚獣が動いた事で周囲も動きだしてる。何人かが、動けないでいるリルフィンへと攻撃を向けてる。
まあデカいオオカミだからな……動けないのなら、先に倒そうと思うのは自然な事だろう。けどその一部をリルフィンは尻尾を振り回す事で退ける。僕も対処するけど、その分会長がへの攻めが手薄になる。会長を自由にさせない、させてもそのリソースをこっちに傾けることが出来ないと、無茶して攻めてる意味が無い。するとさらに別の声が頭に響く。
『風を、風は何でも出来ますよ』
エアリーロの風が降り注ぐ。其れによってリルフィンを狙ってた奴らが吹き飛ぶ。そしてその風の一部が僕の風帝武装に加わって行くのを感じる。そしてフラングランがなくて空いた手に濃い風の渦が出来る。
「そういうことか、助かる!」
僕はその風で直接触れる事無く、リルフィンに刺さってるフラングランを搦めて引き抜いた。しかもこのまま操れそうな気がする。これは……流石に会長だって予想してなかった筈だ!