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肩を貫く抜こうのスキル。大きくHPが削られるのがわかる。けど流石に一撃程度でなくなる程じゃない。向こうだって態勢は悪かったし、そこまで力を込められた訳でもないだろう。それよりも……だ。
「こっちに来いよ!」
僕は風を使って奴のスキルを掴む。剣の攻撃範囲を広げるスキルなんだろうそれは刀身から伸びて僕を貫いてる。だから直接触れるとか出来るかわからないし、何よりも危険だろう。だからまずは風を使う。風を拡張された刀身に絡めて、僕は後方に飛んだ。それによってテア・レス・テレスのあいつをこっちに引っ張り戻せないか――と思ったんだ。
「うお!?」
掛かった――と思った。僕の思惑は上手くはまったようだ。まさかスキルを掴んで引っ張られるとは思ってなかっただろう。それに自身が安全圏にいるという、その油断もあったと思う。奴の体が引っ張られて結界を越えてくる。僕はその時の結界のコードの変化も見てた。まあけど本命はこっちだ。僕はこっちに奴がはみ出した瞬間に、肩の刃を抜いて、奴を一瞬で五回は切った。
それはかなりのダメージに成るはずだ。本当なら一気にゼロまで持って行きたかったが、奴がチラッと紙を見せたから僕は一回ひいた。
(厄介だなあれ……)
あの紙に何かスキルがあるのか、無いのか、それは僕にはわからない。もしかしたら、テア・レス・テレスはスキルが封じられた紙とそうじゃない紙を用意しててもおかしくはないからだ。だってそうすればブラフに使える。今の様に、会長が紙にスキルを付与できると知ってる……というかそれはある意味有名だからな。そしてそれを使う様子をテア・レス・テレスはこれまで何度も見せてる。
つまりはこっちは紙を見せられた『何かがある』と強制的に思わされる訳だ。無視できない存在それが一枚のペラペラの紙だと言うのが皮肉めいてる。けど実際無視できないからな。僕たちは床に足をつく。
「やってくれるぜ」
そういう奴は、紙を使う事はしなかった。やっぱりブラフの紙なのか? けど、それはまだわからない。奴はまだこっち側に居る。どうにか誰かが奇襲でも仕掛けてくれれば……とか思うが瓦礫に隠れて接近してたテア・レス・テレスは奴だけじゃない。流石にここまで残ったテア・レス・テレスのメンバーともなると、実力者達だろう。こいつだってそうだ。
僕の攻撃を捌くことは出来てなかったが、反応はしてた。それに適切にあの紙を取り出して僕を引かせたし、強い奴なのは間違いない。こっちは四カ所に二十人ずつ位いて、突撃しきたテア・レス・テレスのメンバーは多くても五・六にんだ。なのにテア・レス・テレスは落ちてない。
それがそれぞれの強さを十分に物語ってる。
(ん?)
僕は奴のHPの不自然さに気付いた。
(おかしい……)
僕は自分の攻撃がどれだけのダメージを与えるか位は把握してる。勿論、それはぜったいじゃない。どんなバフを掛けてるのかとか、整えてる防御性能にだって左右される。あとは単純にどれだけHPを持ってるのか……とかによって変動する。
でも……それでもおかしいと思わざる得ない。なにせ目の前の奴のHPはこっちの攻撃を受けても二割もへってない。自動回復系で回復を促してる? けど現段階で増えてはいない。手応え的には半分かそれ以上削っててもおかしくない。なのに……明らかにこっちが想定してるダメージよりも低い。ある程度――ならそんな門下って思える。
けど、今僕は風帝武装だぞ。勿論密度の濃い風によって僕の攻撃力はブーストされてる。それてあれは……明らかにおかしい。
(もしかして……)
僕は一瞬、目の前の奴から目を離して他のテア・レス・テレスのメンバーのHPを確認する。どうやら同じようなものだ。
(やっぱり、受けるダメージが奴ら、極端に低い!)
僕はそれを確信させた。