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斧男
作:灯宮義流



 俺は斧使い二段の腕前を持つ男。通称斧男だ。みんながそう呼び始めた。
 普段は森に行っては、とりあえず目に付いた木を切り倒し、特に目的もなく薪を割っていた。
 でも、やっぱり毎日同じことをしていたら人間というのはいつか飽きるものだ。
 いや……俺は斧を振って物を切り倒すという行為は大好きだ。これはきっと死ぬまでやめられない。
 ならどうしたら良いだろうか……と俺は考えて、すぐに結論が出た。なら対象物を変えればいいんだと。
 そんなわけで俺は、意気揚々と家を出た。小さい頃から全く出向いていなかった町に向かって、自慢の斧を抱えて、気分はご機嫌だ。



 町にいったら、ここにもたくさん木が聳え立っていた。なんだ、町ってのもこんなに木が立っているものなのか。
 俺はそう思って、その木を切り倒した。バコーンバコーン、ちょっと手応えがある。
「ちょっとちょっとちょっと」
 ヒゲ面のオッサンが声をかけてきた。頭に黄色くて硬そうな帽子を被っている。
「アンタ何やってんの?!」
「木を切り倒してるんだよ、わかるだろ見れば」
「どこをどう見たら木と電柱を見間違えるんだ?」
「電柱? そんな変な名前つけてるってことは、お前の木か?」
「いやあそうじゃなくて」
「まあいいや。俺一度切ったものは最後まで切る主義だから」
 バコーンバコーンと、俺はオッサンを無視して切り続けた。
「やめてくれええええ!!!」
 オッサンが飛び込んできた。危ない、と叫んだがもう手遅れだった。
 ベコッ!! という鈍い音とともに、電柱という名前の木と、オッサンの頭がごっつんこした。
「うげえっ」
 ごめんよオッサン。でも突っ込んでくるアンタが悪いんだよ。人が木を切ってる時に近づいたら誰が見てもそうなるだろうに。


 なんか赤くてチカチカする光が見えてきて嫌になった俺は、次の木を目指した。
 今度はぶっとい木があった。しかもすんげえ高い、すげえなあ。
「きゃーーーっ、変態よーー!! 人殺しーーー!!」
 その木の中から、女が出てきた。本当に失礼な奴だなあ。俺は誰も殺してねーよ、怪我はさせたかもしんねーけど、アイツ自身の不注意のせいだ。
 ムカついたからコイツが出てきたこのデッカイ木を切ってやる。ざまあみやがれ。
 ボコーンボコーン、おお、これはすごい手応えだ。切り甲斐があるなあ。
「ちょ、ちょっとアンタ何やってるの?!」
「お前がムカついたから木ぃ切ってんだ」
「アンタ斧でマンション切ろうなんて馬鹿じゃなーい?」
「マンション? 最近は木に名前つけんのが流行ってんだなあ」
「ちょ、ちょっとアンタ大丈夫?」
「俺は斧使い二段の腕前を持つ斧男だぞ。こんなもん楽勝だよっ」
 ボッコーーーーーン、ガラガラガラガラーーーッ。
 マンションとかいう大木も、この俺の手にかかれば、渾身の一撃の下に崩れ去ってく。はっはっは、気持ちいいなあ。
「いやああああ!!! まだ隆人が中にーーーー!!!」
 女がうるかったので、俺はさっさとその場を後にした。しかし、あんな大きいものを切り倒すなんて初めてだから、スッキリした!!


 次に見たのは、赤い色をした、天まで届きそうなくらい高い木だった。
 しかも、中へ向かっていくらか人が出入りしている。最近はみんな木に済むのが流行っているのかなあ。
 まあいいや。こんな高い木なんて、この斧男からしてみれば、立派な対戦相手だ。俺は再び斧を抱えて歩き始めた。
「ちょ、ちょっとアンタ何してるんだよ」
 するとまた変な奴が呼び止めてきた。子どもと女を連れている。しかもへっぴり腰だ。
「またか。都会のモンは斧も見たこともないのか」
「知ってるから怖がってるんだろう? 銃刀法違反だ!」
「俺と斧は一心同体だ。なんか知らないが違反なんてしてねーぞ」
「じゃあアンタ、何切りにいくんだい、それで」
「当たり前だ。そこにあるでっかい木だよ」
「東京タワーを?!」
 そいつはびっくりして腰を抜かした。本当最近の奴らは木に名前つけるのがすきなんだなあ。
「これから俺達はそこの展望台に昇るんだ。なんでお前にそれを台無しにされなくちゃいけないんだ」
「うるせえ、これが俺の仕事だ。とにかく俺は切る」
「く、くそお」
 そいつは弱々しく辺りを見渡してから、地面に落ちていた斧を拾って、俺に襲い掛かってきた。
 なんだ、都会にも斧があるじゃねえかと思いながら、俺はそいつをガキーンと受け止めた。
 何ぃ?! という顔をしているので、俺は斧の柄を押し付けてソイツを吹き飛ばしてから言ってやった。
「俺は斧使い二段の腕前を持つ男。それに数え切れないほどの木を切ってきた。お前みたいに昨日今日斧を持ったような奴に負けるかよ」
「く、くそぉ」
「もう、だらしないなあ」
 といって、横からそいつの子どもがやってきて、斧を両手に持った。
 なんだコイツ、俺とやろうってのか、ガキの癖に。
「斧ってのはこう使うんだよ」
 といって、ガキは俺に向かって斧を両手で放り投げてきた。俺は意図も簡単にそれを避けた。
 馬鹿め、そんな力の斧でこの俺が倒せると思うなよ。
 ザクッ! という音が俺の後頭部から聞こえた。この感触は、小さい頃親父が間違えて俺の頭に斧を刺したときの感触に似ている。
 もしかして、と後頭部を触ると、やっぱり斧が刺さっていた。馬鹿な、斧が返ってくるなんて!
「ま。まさかお前……」
「斧使い免許皆伝さ」
「上には上が……ぐふあ」
 そして俺は、意識が遠くなっていった。執念で意識をしばらく保っていると、あいつらの声が聞こえてきた。
「よくやったわね、タケルくん」
「通信教育で斧使い検定とっておいてよかったね」
「す、すごいぞタケル。さすがパパの息子だ」
 コイツラ……ちくしょう……。俺が悔し涙を流していると、後ろからギギギッという何かがスレる音が聞こえた。
 俺は、最後の力を振り絞って起き上がり、後ろを見てみた。
「パパごめーん。後ろのタワーも切っちゃった」



 一つの大木が倒れた。犠牲者は奇跡的にも四人だけだった。


放置していた小説を書き上げたもの。オチも弱く、いつも以上に意味不明。なんか図らずもいろんな意味で社会現象を皮肉った形になっちゃったなあ。













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