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第二百六十九話
                 第二百六十九話  博士もまた
 二人が勉強している間。博士も何か本を読んでいた。
 小田切君がそれを見てだ。その博士に問うた。
「何の本を読んでいるんですか?」
「色々じゃ」
「色々ですか」
「そうじゃ、色々じゃ」
 いきなり会話になっていない。
「色々読んでおるぞ」
「何か十秒で一冊読んでいません?」
「わしは読むのは早い」
 実際にかなりの速読である。
「一分で文庫本一冊は楽勝じゃ」
「そうなんですか」
「それに一度読んだものは絶対に忘れぬ」
 こうした能力まで備わっていた。
「絶対にじゃ」
「じゃあ三週間前の話は」
「一語一語ずっと覚えておる」
 ヒトラーもそうであった。ただし博士の知能指数は二十万であるから比較にならない。
「完璧にのう」
「そうなんですか。じゃあ今日は何冊本を読むんですか?」
「そうじゃな。三百冊といったところじゃな」
 それだけ読むというのである。
「それを読んだらじゃ」
「後はどうするんですか?」
「昼食にしよう」
 まだ朝の九時であった。
「一休みしたらのう」
「わかりました。それじゃあ」
「読書も大事じゃ」
 文庫本を一冊置いてからの言葉だった。
「本には真理がある」
「真理がですか」
「そうじゃ、それがあるのじゃよ」
 言いながらまた本を読みだしている。
「というより読まなければじゃ」
「どうなるんですか?」
「何にもならん」
 そうなのだという。
「知識は科学者の生命線じゃからな」
「それはその通りですね」
 小田切君も納得することであった。
「僕も本は読みますし」
「今は何の本を読んでるのじゃ?」
「仕事のものとは別に」
 こう前置きしてからであった。
「純文学を読んでます」
「ほう、文学をか」
「はい」
 そしてであった。ここからまた話が動くのであった。話は何かのはずみで動くものである。


第二百六十九話   完


                 2010・3・8
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