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第十二話
                第十二話  すれ違い
 博士は夕方まで不気味な研究を続けていた。ふと思い出したように隣にいる小田切君に声をかけてきた。
「食事の用意をしてくれんかの」
「あっ、もうそんな時間ですか」
 小田切君も言われてそれに気付く。
「そうじゃ。だからな」
「わかりました。それじゃあ」
 彼はそれに応えて言う。
「買い物言ってきますね」
「君が行くのか」
「当たり前ですよ」
 そう博士に返す。
「あの車椅子で行けるわけないじゃないですか」
「いいんじゃよ。それが面白いんじゃからな」
「誰の言葉の真似ですか、それ」
「まあ気にするな。それでじゃ」
「ええ」
 話は続く。
「今夜は野菜といかぬか」
「野菜ですか」
「水菜に揚げを入れてな」
 そう注文をつける。
「どうじゃ、それで」
「悪くないですね」
 小田切君の好きな料理でもある。話を聞いてもまんざらでもない。
「それじゃあそれで」
「うむ、後は魚を煮てな」
「カレイでいいですか?」
「そこは任せる」
 話が次第に所帯めいてきた。しかし話は続く。
「それに今日は飯にも凝ってくれ」
「どうします?」
「五穀飯がいいのう」
 博士の好物である。これでも案外健康食というものが好きなのである。
「いいか?」
「わかりました。じゃあそれでいきますんで」
「頼むぞ」
「わかりました」
 こうした軽いやり取りの後で小田切君はスーパーに向かう。歩いてスーパーに向かう。
 暫くしてそのスーパーに辿り着く。夕暮れ時のいい時間であった。
「ねえ美奈子」
 横から女の子の声がしてきた。
「これなんてどうかな」
「悪くないわね」
 見れば二人の少女が玉葱を見ながらあれこれと話をしている。小田切君もそれに気付く。
「何を作るつもりかな」
「マッシュルームはこれね」
「そうね」
「それでお肉は」
「ハヤシライスかな」
 果たしてそうなのか。二人の少女が作ろうとしているものは何か。小田切君はそれが何なのかまだ完全には知らなかったのであった。


第十二話   完


                   2007・2・22

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