第九話
「なかなか、うまいものだ。最適な位置に布陣したな」
シュルツ中佐の位置取りもヴェルナーを嘆息させた。シュルツはヴェルナーの要請があればいつでも左右展開が可能な位置に艦隊を配置したのである。ドレイクもまた、ヴェルナー艦隊の配置を見て、目を見開いた。
「やるものだ。テンシュテットもまるで隙がない」
ドレイクが円運動を終え、ヴェルナー艦隊正面についたとき、ヴェルナー艦隊はその戦闘準備を終えていた。
午前二時、ヴェルナー艦隊はドレイク艦隊に対し、二度目の砲撃を開始した。
「ファイエル!」
ヴェルナー艦隊の砲火がドレイク艦隊先鋒に集中した。
この時代において、艦隊による一点集中砲火の名手は二人存在する。一人は帝国の双璧の一人である、ハインリヒ・ランベルツ・ミッターマイヤー、もう一人がヴェルナー・テンシュテットであった。
だが、二人がこの戦術を採用したのは、正反対とも言える理由であった。ランベルツが艦隊の攻撃力を爆発的に高める、いわば積極的理由として採用したのに対し、ヴェルナーは対空艦隊としての攻撃力の低さを補うためという消極的理由から採用していた。
だが、この苦肉の策が功を奏し、ヴェルナー艦隊は高い対空戦闘能力と正規艦隊に劣らぬ攻撃力を獲得することになった。
「この前の二の舞になる気はないぞ、テンシュテット。装甲の厚い艦を前に出し、砲撃を集中させよ。中央突破して、敵を半包囲する」
ドレイクは戦艦、砲艦群を前に出すとヴェルナー艦隊中央部に攻撃を集中させた。ドレイクの凄まじい攻撃の前にヴェルナー艦隊前衛は次々と塵になっていった。
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