第三話
「ファイエル!」
アドルノの最初の一撃はドレイク側にほとんどダメージを与えられなかった。その攻撃のほとんどが小惑星とエネルギー中和磁場に守られ、傷一つ与えることはなかったのだ。アドルノ艦隊の攻撃と陣容を見たドレイクは笑いを通り越してあきれかえっていた。
「なんだあの攻撃は? 当てる気がないのか? それとも、当て方を知らないのか?」
ドレイク艦隊旗艦、アストライアに据え付けられた指揮シートに座りながら、敵の最初の一撃に憤慨していた。
「若。油断は禁物ですぞ」
参謀兼副官であるテオドール・アルペンハイムがドレイクに口添えした。
「心配するな。じぃ。この陣形を見ろ。戦艦の配置も、巡航艦の配置もむちゃくちゃな上、後方にある艦隊との連携もとれていないようだ。数は二五〇〇隻を下らないが、勝算は十分すぎるほどある」
「はい。しからば、こんな手はいかがでしょう」
テオドールはドレイクに耳打ちをした。テオドールの案を聞いたドレイクはにやりと笑うと、艦隊の後退を命令した。
午後九時三〇分、ドレイク艦隊は小惑星帯の入り口から後退を開始した。それを見たアドルノは直ちに艦隊の前進を指示した。
「逃がすか! ドレイクの首をとるのは我々だ」
おそらく、アドルノでなければ、こうも即決は出来なかっただろう。この後退があからさまな偽装後退であることは遥か後方のヴェルナーですら容易に想像出来た。我先に艦が前進したことで、ただでさえ隙だらけの陣形にさらに回復しようのない隙が生じる結果になってしまった。
艦隊の先頭が小惑星帯の入り口に達した時、小惑星の隙間から、おびただしい数のワルキューレとスパルタニアンの混成部隊が来襲した。
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